伊賀市も名張市も、小さな盆地の底で隣り合い反目し合って平成最後の年を過ごしているわけですが、昨年秋のこと、名張市単独では無理だけど伊賀市と連携すればなんとかなるのではないか、という考えが私の頭に閃光のようにひらめきました。
といったところで、シリーズ最後の登板がこれでした。炎の大連投4月上旬篇最終日 お世話さまです。 さっそく参ります。 1月3日付「市長への手紙」に、次のとおり記しました。 《乱歩関連資料の収集にあたって、視聴覚資料やコミックを対象外とすることには大きな問題があると思われます。名張市立図書館の資料収集における原則やルールはどうあれ、映像化や漫画化を無視して乱歩関連資料の収集は成り立たないのではないかと判断される次第ですが、いかがなものでしょうか。》 1月15日付ご回答で、次のとおりお答えいただきました。 《公共図書館の使命は利用者に求められた資料を提供することにありますが、資料の収集にあたっては当然予算の制約を受けることから、その制約の中で資料の収集を行うことになります。乱歩関連資料には当然のことながら視聴覚資料やコミックも含まれますが、市立図書館においても、限られた予算の中で多くの市民の皆さんに図書館を利用していただけるよう幅広く資料収集を図る必要があるため、乱歩関連資料についても一定の基準を設けて収集を行っていますのでご理解いただきますようお願いします。》 「公共図書館の使命は利用者に求められた資料を提供することにあります」というのは大きな心得違いで、市民としてはあまりの情けなさに思わず落涙しそうになってしまいますが、その点にはまたあらためて触れることにして、いくら名張市が財政難だからといって、名張市立図書館が「乱歩関連資料には当然のことながら視聴覚資料やコミックも含まれます」と認識している資料を収集しないことには、1月3日付「市長への手紙」にも記しましたとおり、やはり大きな問題があります。 そこでお聞きいたしますが、名張市立図書館が、資料のデータは収集するが、資料は購入しない、という資料収集を進めることはできないものでしょうか。 たとえば先月、乱歩原作の漫画『怪人二十面相 上巻』がワニブックスから出版されました。 名張市立図書館は、これを収集すべき乱歩関連資料であると認識しながら、予算の制約から収集していないものと推測されますが、書誌データを記録するだけでも資料収集にはなるものと愚考いたします。 同書の書誌データは当方のブログでこのように記録しております。 http://nabariningaikyo.blog.shinobi.jp/Entry/5165/ これは同書を購入して確認したデータですが、わざわざ購入しなくても、たとえば国立国会図書館のオンラインサービス「NDL ONLINE」でも次のとおり書誌データが公開されております。 https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I028819844-00 つまり、財政難のせいで購入はできなくても、書誌データを収集することは可能ですから、それを記録しておくことが、乱歩関連資料の収集をつづけている公共図書館の最低限の責務ではないか、と判断される次第です。 つきましては、乱歩関連資料のうち漫画、視聴覚資料、定期購読していない雑誌に関して、購入はせずに書誌データだけを収集して記録してゆくことが名張市立図書館に可能かどうか、お知らせいただきたいと思います。 一円のお金もかからないのですからいくらでも可能なはずですが、もしも不可能なのであれば、その理由をご説明ください。 よろしくお願い申しあげます。 |
お役所のみなさんは、お金がないから何もできません、と嬉々としておっしゃるわけですけど、お金はありませんからこういうことはとてもできませんけどこのあたりまでのことならちゃんとできます、みたいなことをちっとは示してくださらぬか、とつねづねお願い申しあげてはいるわけですが。
それでまあ、どうして名張は知性に縁がない土地柄なんですか? と尋ねられたことは一度もありませんが、以前にはときどき、どうして名張市立図書館は何もしないんですか? とのお尋ねをいただくことがありました。
乱歩関連資料であれ、ミステリ関連資料であれ、税金でしこたま買い込んだり何千冊とただで寄贈していただいたりしているにもかかわらず、死蔵したまま何もしようとしないのはいったいどうしてなんですか? という疑問を抱く人が少なからずいらっしゃったわけです。いったいどうしてなのか、といいますと、図書館関係者のなかに本を買って読む習慣のある人間や図書館で調べものをしたことのある人間が存在しないからで、要するに図書館のことも本のことも何もご存じありませんから、資料の収集や活用のことなんてまったく理解できず、これすなわち知性に無縁な土地柄なりということになります。
とはいえ、名張は魯鈍や白痴しか生まれない呪われた土地である、ということでは決してなく、有能な人材も生まれるには生まれるんですけど、みんなよそへ出ていってしまいます。
そういう人たちが思う存分有能さを発揮できる場がありませんから、どうしてもそういうことになってしまいます。
これは単なる私の思い込みではなく、とくに教育関係者がよく口にするところです。
たとえば、あれはたしか名古屋高裁で名張毒ぶどう酒事件の再審開始の取り消しが決定された日の翌日のことでしたから六年前、2012年5月26日土曜日のことだったはずですけど、わが母校たる三重県立上野高等学校同窓会京阪神支部の定期総会後の記念講演会で講師を務めたおり、前座で挨拶してくださった当時の校長先生が、有能な卒業生は「上野高校の校歌じゃありませんけど、越えてあふれて外に出ていってしまいます」と、高校がある伊賀市を離れていた気楽さもあったのか、本当のことを糸を引くような直球を思わせる正直さでおっしゃってました。
そういや上野高校の校歌にそんな歌詞があったなと思い出しましたけど、とにかく横光利一の昔から、わが母校の有能な卒業生は四方を囲む山々を越えてあふれて外に出ていっちゃってたわけなんですけど、名張市においても事情はまったく同様で、官民双方それはもう見事なくらいのあれしか残っておりません。
というところで、4月5日木曜日付「市長への手紙」です。
炎の大連投四日目 お世話さまです。 教育次長と図書館長のご回答をお願いしているところではありますが、ついでですから教育次長にもう一点、乱歩関連資料に関してお聞きしておきたいと思います。 平成28年12月定例会の一般質問で名張市立図書館の乱歩関連資料に関する質問が提出され、教育次長が答弁にお立ちになりました。 その答弁内容を、ネット上で公開されている議事録から引用いたします。 《ご答弁のなかにそれから、江戸川乱歩資料としての図書館の役割ということでございますけれども、昭和62年に現図書館が開館した際、それまで収集してきた資料や乱歩さんのご遺族からお借りした資料を展示する江戸川乱歩コーナーを図書館内に設置をいたしました。その後も関係資料の収集に努めるほか、乱歩資料を嘱託員が編集した江戸川乱歩リファレンスブックを全3巻発行するなどして、乱歩研究に資することに努めてまいりました。しかしながら、さらに研究を進めるためには、それを専門とする職員の配置など、課題も多いのが現状でございますが、今後寄贈された資料の活用策も含めて検討していきたいと考えております。》 http://ssp.kaigiroku.net/tenant/nabari/MinuteView.html?council_id=618&schedule_id=3&is_search=true# 事実誤認があるようですから、それを訂しておきたいと思います。 まず、「さらに研究を進める」とのことですが、図書館は研究機関ではありませんから、研究を進める必要はありません。 したがって、「それを専門とする職員の配置」も必要ありません。 江戸川乱歩リファレンスブックを編集した嘱託員というのは私のことですから、ここでややくわしい説明をほどこしておきますと、江戸川乱歩リファレンスブックはいわゆる目録です。 目録というのは、要するにリストです。 デジタル大辞泉には《2 所蔵・展示などされている品目を整理して書き並べたもの。「展覧会の目録」「財産目録」》との語釈が記されています。 江戸川乱歩リファレンスブックというのは、ごく大ざっぱにいってしまえば、名張市立図書館が収集した乱歩関連資料のリストです。 通常の図書館であれば、こうした目録は職員が作成します。 ところが名張市の場合、貴職もよくご存じのとおり、職員のレベルがあまり高くありませんから、というかものすごく低いものですから、収集資料のリストをつくるということすら思いつきませんでした。 むろんそれ以前に、乱歩関連資料として何を集めるのか、収集対象を明確にすることもなされておりませんでした。 ひとことでいえば、無茶苦茶です。 どうしてこんな無茶苦茶な事態が招来されたのかと申しますと、要するに名張市立図書館の職員をはじめとした関係者が異様なまでに無能で怠慢だったからです。 以上、名張市立図書館による乱歩関連資料の収集がいかにずさんででたらめであったのか、あらためてご認識いただくために贅言を費やしました。 では、ここで質問です。 平成28年12月定例会一般質問で教育次長が「課題も多いのが現状でございますが、今後寄贈された資料の活用策も含めて検討していきたい」とお答えになっていらっしゃいますが、具体的にどのような課題があり、それぞれの課題ついてどのような検討が進められてきたのか、教育次長のご回答をお願い申しあげます。 よろしくお願い申しあげます。 |
あいやー、おしまいからふたつめの段落に「それぞれの課題ついて」とあるのは「それぞれの課題について」の誤記でした。
いやお恥ずかしい。
怒りに眼がくらんでいたのかもしれません。
しかし、「市長への手紙」を出して誤りを訂正する必要もないでしょうから、この誤記は誤記のままとしておきます。
さてそれで、いつも申しあげておりますとおり、正直にお答えいただければ結構なんです。
うわっつらだけとりつくろって、何か考えてるふりなんかしていただく必要はまったくありません。
何も考えておりません、名張市だもの、と糸を引くような直球でどうぞ。
任期満了にともなう名張市長選挙がきのう始まりました。
きょうは新聞の休刊日で、ウェブニュースもお休みとなっております。ローカルメディアのきのうの記事ををどうぞ。
▼伊賀タウン情報YOU:現職1人、新人2人が立候補 名張市長選が告示(2018年4月8日)
それでえーっと、4月4日水曜日付の「市長への手紙」です。
炎の大連投三日目 お世話さまです。 名張市立図書館のネーミングライツパートナー募集に関してお願いを申しあげているところではありますが、それに関連してひとこと、愚見を申し述べたいと思います。 単刀直入に申しあげますと、名張市立図書館の評判は必ずしも良好なものではなく、そのためネーミングライツパートナーを募集しても、平成28年同様、応募がゼロに終わる公算がきわめて大きいと判断されます。 具体的な例をあげますと、「市長への手紙」を通じてお手数をおかけした甲斐があり、昨年9月21日、名張市立図書館が長く図書寄贈などのご協力をかたじけなくしていた慶應義塾大学推理小説同好会OB会有志のかた数人に名張市立図書館までおいでいただき、寄贈図書の活用などについて話し合っていただきましたが、そのおり、OB会のおひとりから、 「私たちは名張市には、もうさじを投げています」 とのお言葉をたまわりました。 では、ここで質問です。 慶應義塾大学推理小説同好会OB会のみなさんは、どうして名張市にさじをお投げになったのでしょうか。 昨年9月21日、この言葉をその耳で直接お聞きになった教育次長と図書館長のお答えをお願いいたします。 むろん、顧みて思い当たることがないのであれば、その旨をお知らせいただければと思います。 逆に、思い当たるのであれば、さじを投げられっぱなしでいいとお思いなのか、よくないとお思いなのか、もしもよくないとお思いなのであれば、よくない点を改善するためにはどうすればいいとお考えなのか、といった点につきましても、教育次長と図書館長のお答えをいただきたく思います。 さて、上の例からもわかりますとおり、名張市立図書館の、ひいては名張市の評判はあまり良好ではないと判断されますので、名張市立図書館のネーミングライツパートナー再募集もかんばしからざる結果に終わることが目に見えていると申しあげざるを得ませんが、名張市立図書館は全国でただひとつ、ほぼ半世紀にわたって乱歩関連資料を収集してきた図書館なのですから、その点を全面的に押し出して再募集すれば、パートナーとして名乗りをあげてくれる法人も出てくるのではないかと愚考する次第です。 そのあたりの点に関しても、教育次長と図書館長のお考えをお聞かせいただければ幸甚です。 よろしくお願い申しあげます。 |
どうして名張市にさじをお投げになったのか、という問題について記しますと、どうしてもこうしてもありません。
寄贈していただいた本を二十年も地下書庫に死蔵してうんともすんともいわなかったんですから、たいていの人はさじの一万本や二万本、束になって投げてくださるであろうなと推測される次第です。
しかし、いくらさじを投げられても平気の平左で蛙のつらにお小水なのがお役人と呼ばれる不思議な種族です。
その場しのぎさえできりゃみなさんそれでご満足なんですけど、たまにゃその場しのぎの後日談でもお聞かせいただこうか、みたいな感じで、名張市はどうしてさじを投げられたのかな? みたいなことをちょいとお聞きしてみました。
しかし名張市の場合、なにしろ知性にはまるで無縁な土地柄ですから、お役所の人たちに過大な期待をしていただいてもまことに心苦しいことながらむなしいばかり、昨年9月、慶應義塾大学推理小説同好会OB会のみなさんがおいでくださった機会に確認したところでは、同OB会から図書寄贈を受ける話がまとまった当時の名張市立図書館の館長さんは、それ以前は市内の市立幼稚園の園長先生をしていらしたかたでした。
私が乱歩資料担当嘱託を拝命したときの館長さんも同じかたでしたが、図書館のことも本のことも何もご存じなく、そもそも名張市立図書館の歴史において図書館のことや本のことにくわしい館長さんなんてただのひとりもいなかったと断言してもいいように思います。
それにそもそもお役所ってのはよく指摘されるごとく厳然たる前例踏襲の世界ですから、乱歩関連資料の収集にしても、寄贈図書の活用にしても、最初にちゃんと決めるべきことを決めておかないことには、無茶苦茶ぐだぐだなまま二十年でも五十年でも平気の平左で過ぎてしまいます。
それでわれらが名張市立図書館、決めるべきことをいっさい決めず、というか、何を決めればいいのかまるで理解できず、というより、何かを決めなければいけないということにとんと考えが及ばず、そのせいでいろんなみなさんの期待を裏切りつづけながらこんにちに至っているわけなんですけど、これはいまさらどうしようもないことなんだろうなと思われます。
いやほんとに困ったことだなあ。
任期満了にともなう名張市長選挙はいよいよきょう告示日を迎えます。
毎日新聞も伊勢新聞同様、市長選の話題は財政難のことから始まります。▼毎日新聞:市長選を前に/上 振興税導入は一定の効果 経費増“再建”道半ば /三重(2018年4月5日)
ほんと、お金がないんです。
そういえば2015年12月28日、お役所の仕事納めの日でしたけど、私は市長のご指名を受けて市長ともども上京し、平井隆太郎先生にお別れを申しあげてまいりましたが──
▼2015年12月29日:平井隆太郎先生にお別れを申しあげてまいりました
このエントリにも「市長としてはもしかしたら、生誕百二十年や没後五十年を迎えても財政難のため記念事業らしきものがなにもできなかったことを、憲太郎さんに内心でお詫び申しあげたいという心づもりもあったのかもしれません」と記してありますが、市民のひとりとしてそんな忖度までしてしまうほど、名張市にはほんとにお金がないんです。
早い話、名張市立図書館の乱歩関連資料購入費も、昔は年間何十万円とあったらしいんですけど、いまやゼロであると、これは名張市公式サイト「市長への手紙」を利用して確認したところです。
したがって、乱歩関連資料の収集には一般の新刊購入費用があてられているわけで、なにしろ予算ゼロ円なわけですから、名張市立図書館は乱歩関連資料の収集事業を継続しております、とはじつはいえないのかもしれません。
そんなことも踏まえつつ、4月3日火曜日付の「市長への手紙」です。
炎の大連投二日目(上) お世話さまです。 名張市立図書館のネーミングライツパートナー募集に関してお願いを申しあげたばかりではありますが、それはそれとして、2月11日付「市長への手紙」に対する2月22日付ご回答に関して、ひきつづきお尋ねいたします。 河出書房新社『花森安治』(平成28年4月30日初版)についてお聞きいたしますが、ここでひとつ確認しておきますと、この書籍は名張市立図書館が発行時点で乱歩関連資料として購入したものではありませんでした。 名張市立図書館における平成28年度の乱歩関連資料収集実績は、次の表のとおりです。 http://blog.cnobi.jp/v1/blog/user/ca86a8f73089f7e81229d40fe609f8c8/1504400570 あまりにもお粗末、というしかない実績でしたから、収集すべきだと判断されるにもかかわらず収集されていない資料を平成28年4月から翌29年3月まで各月二点、二回にわけて合計二十四点をピックアップし、これらは収集対象ではないのでしょうか? とお聞きいたしました。 第一弾として平成29年12月10日付「市長への手紙」に列挙したのは、この十二点です。 ▽『花森安治』河出書房新社 ▽『電話ミステリー倶楽部』光文社 ▽『乱歩アナザー 1』講談社 ▽『文豪聖地さんぽ』一迅社 ▽『キミこそ名探偵!』ナツメ社 ▽『ハヤカワミステリマガジン』9月号 ▽『Dの殺人 まことに恐ろしきは』KADOKAWA ▽『屋根裏の散歩者』キングレコード ▽『検閲と発禁』森話社 ▽『TRICKSTER 1』バンダイビジュアル ▽『全員少年探偵団』ポプラ社 ▽『悲劇喜劇』3月号 第二弾として平成29年12月11日付「市長への手紙」に列挙したのは、この十二点です。 ▽『リメイクの日本文学史』平凡社 ▽『乱歩奇譚 幻』光文社 ▽『江戸川乱歩館』徳間書店 ▽『少年探偵団 BD7』ベストフィールド ▽『定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』リイド社 ▽『〈変態〉二十面相』六花出版 ▽「パノラマ ジオラマ グロテスク 江戸川乱歩と萩原朔太郎」萩原朔太郎記念水前橋文学館 ▽『怪書探訪』東洋経済新報社 ▽『みんなの少年探偵団』ポプラ社 ▽「すばる」2月号 ▽『明智小五郎』汐文社 ▽『乱歩の猟奇』光文社 書名や著者名から乱歩との関連が窺えない資料はともかく、乱歩の単著、それもたとえば先月31日に閉店を迎えたブックスアルデ近鉄店のような名張市内の新刊書店にも並んでいた文庫本にさえ見落としがあったのですから、名張市立図書館による乱歩関連資料の収集がきわめてずさんででたらめであることは火を見るよりも明らかであると申しあげるしかありませんが、この点に関しては後日あらためてお聞きするつもりでおりますので、本日はここまででとどめます。 さて、上記二十四点の最初にあげた『花森安治』に関しては、平成29年12月18日付のご回答で「ご指摘のあった『花森安治』は増補新版ですが、当館では平成23年刊行の資料を所蔵しています」とのお答えをたまわり、さらに同年12月28日付ご回答では「出版時には気づきませんでしたが、収集対象ですので今年度中に購入します」とのお知らせもいただきました。 ですから、本年1月3日付「市長への手紙」で、「平成28年4月に河出書房新社から発行された『花森安治』について、旧版を所蔵しているのであればわざわざ血税つかってリニューアル版を収集対象とする必要はないのではないか、という考えかたもあるものと思われます。どうして旧版のほかにリニューアル版まで収集対象とするのか、ご説明ください」とお願いいたしましたところ、1月15日に「旧版とリニューアル版(増補新版)とを別の資料と考え収集対象としました」とのお答えをいただきました。 そんなことをお聞きしたわけではありませんでしたので、1月31日付「市長への手紙」でこんなことをお願いいたしました。 《まず河出書房新社『花森安治』について。「旧版を所蔵しているのであればわざわざ血税つかってリニューアル版を収集対象とする必要はないのではないか、という考えかたもあるものと思われます。どうして旧版のほかにリニューアル版まで収集対象とするのか、ご説明ください」とお願いしたところ、「旧版とリニューアル版(増補新版)とを別の資料と考え収集対象としました」とのお答えをいただきましたが、そんなことをお聞きしたわけではありません。この増補新版はNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の人気を当て込んでリニューアルされたもので、別丁を入れて二百四十ページほどの書籍に乱歩の対談が十二ページ収録されているだけ、もとより両者の内容に違いはありません。乱歩作品が時代にどう受容されたかを跡づける意味でリニューアル版も当然収集の対象となることはいうまでもありませんが、財政難にあえぐ名張市の市立図書館が購入すべきかどうか、というよりも、乱歩の単著にさえ驚くほど見落としがある名張市立図書館の乱歩関連資料収集において、こんなリニューアル版を購入することにどんな意味があるのかという気さえいたしますが、そうした観点に立って、「旧版とリニューアル版(増補新版)とを別の資料と考え収集対象としました」との判断が妥当であったと考えるのか否か、お答えいただきたいと思います。》 これに対し、2月8日付で「旧版とリニューアル版(増補新版)の内容紹介を比較し別の資料と考え収集対象と判断しました」とのご回答を頂戴いたしました。 ですから、2月11日付「市長への手紙」で次のとおりお願いいたしました。 《まともなお答えをお願いします。 「収集対象と判断しました」とおっしゃるその判断が妥当であったとお考えなのかどうか、その点をお聞きしております。 市立図書館が現場の判断としてリニューアル版を購入したわけですが、1月31日付「市長への手紙」にも記しましたとおり、名張市の財政事情の厳しさや名張市立図書館による乱歩関連資料収集のずさんさに鑑みて、リニューアル版を購入したことははたして妥当であったのか、そうではなかったのか、その点の市長判断をお聞きしております。 お答えをお願いいたします。 お答えは、妥当か否かの二者択一でお願いします。》 2月22日付ご回答は「2月8日付で回答いたしましたように、旧版とリニューアル版(増補新版)の内容紹介を比較し収集対象と判断いたしました。このことは妥当であったと考えています」とのことでした。 〔(下)につづきます〕 |
えーっと、あまりにも長々しいのでバイト数オーバーとなり、あわてて二回にわけて送信する仕儀となりました。
炎の大連投二日目(下) 〔(上)のつづきです〕 同じお答えばかり頂戴しておりますので、判断の結果はよく承知しております。 1月31日付「市長への手紙」に「乱歩作品が時代にどう受容されたかを跡づける意味でリニューアル版も当然収集の対象となることはいうまでもありませんが」と記しましたとおり、平成28年刊の『花森安治』が収集対象であることはもとより論をまちませんが、そのあとにつづけて「財政難にあえぐ名張市の市立図書館が購入すべきかどうか、というよりも、乱歩の単著にさえ驚くほど見落としがある名張市立図書館の乱歩関連資料収集において、こんなリニューアル版を購入することにどんな意味があるのかという気さえいたしますが、そうした観点に立って、『旧版とリニューアル版(増補新版)とを別の資料と考え収集対象としました』との判断が妥当であったと考えるのか否か、お答えいただきたいと思います」とお願いした観点がいっさい顧慮されていないように見受けられます。 判断の結果ではなく、判断の過程をお聞きしております。 どういうプロセスを経て「妥当であったと考えています」という結論に至ったのか、いつまで経ってもその点の説明ができないということは、要するに何も考えていなかったということだろうと判断するしかありません。 推測してみましょう。 平成28年刊の『花森安治』は収集対象ではないのか? と尋ねられた。 あわてて調べてみると、乱歩の対談が収録されていた。 さらに、乱歩関連資料として購入したものではなかったが、平成23年刊の『花森安治』を所蔵していることも判明した。 そこで、気休めとかいいわけとかになるかもしれないという気がして、「ご指摘のあった『花森安治』は増補新版ですが、当館では平成23年刊行の資料を所蔵しています」と胸を張って答えた。 そのあと、平成28年刊の『花森安治』に関して「出版時には気づきませんでしたが、収集対象ですので今年度中に購入します」と殊勝らしく答えた。 それは税金の無駄遣いなのではありませんか? と突っ込まれた。 おっしゃるとおりです、と答えるわけには行かない。 だから「旧版とリニューアル版(増補新版)とを別の資料と考えた」とかなんとか、答えになっていない答えをくり返した。 そんなことばかりいってないで、妥当か否かの二者択一で答えてください、と突っ込まれた。 妥当ではありませんでした、と答えるわけには行かないので、妥当でした、と答えた。 ざっと、上記のようなことではなかったでしょうか。 中央におきましても、不用意不誠実不正確で虚偽に満ちた国会答弁に整合性を与えるため省ぐるみで文書改竄という不正行為に走ってしまい、そのせいで民主主義の根幹が揺らいでしまったりすることもなくはないようですから、寄せられた質問にはやはり真摯に正直に答えるのが肝要ではないかと愚考される次第です。 ちなみに付記しておきますと、この『花森安治』案件で問題なのは、リニューアル版の購入が税金の無駄遣いかどうかという点ではなく、名張市立図書館に図書館としての資料収集能力が絶望的に欠如しているという点ですが、この点に関しては後日あらためてお聞きするつもりでおりますので、本日はここまででとどめます。 それではつづきまして、平成28年4月に刊行された平凡社『リメイクの日本文学史』についてお聞きしたいと思いますが、名残り惜しいような気もいたしますので『花森安治』に関してもう少々お尋ねいたします。 平成28年4月に発行された『花森安治』が乱歩関連資料として収集されたのかどうか、実際のところはよくわかりませんが、昨年12月28日付ご回答にありました「今年度中に購入します」とのお言葉にもとづき、すでに収集されたものと仮定してお聞きいたします。 名張市立図書館が『花森安治』を乱歩関連資料として収集したという情報を、名張市民はいったいどうすれば知ることができるのでしょうか。 昨年8月16日付「市長への手紙」への8月24日付ご回答で、名張市立図書館による乱歩関連資料収集の目的として、次のようなお答えをいただきました。 《収集の目的は、日本における探偵・推理小説の礎を築いた名張生まれの作家・江戸川乱歩を顕彰し、収集した資料により市民の皆さんに江戸川乱歩についての知識や興味・関心を高めていただくためです》 名張市立図書館の開館は昭和44年、西暦でいえば1969年ですから、来年でちょうど五十周年を迎えることになりますが、川崎秀二先生の鶴の一声に踊らされ、開設準備の段階から営々孜々として乱歩関連資料の収集をつづけてここに半世紀、名張市民の「江戸川乱歩についての知識や興味・関心」はいったいどれほど高まったのかというと、まったく高まっていないというのが正直なところでしょう。 五十年にわたって継続してきた事業の成果がゼロであるという厳しい現実を直視し、厳しいついでに名張市が直面する厳しいうえにも厳しい財政状況にも鑑みて、事業そのものの廃止を検討すべきではないかとさえ考えられる次第ではありますが、この点に関しては後日あらためてお聞きするつもりでおりますので、本日はここまででとどめます。 さて、名張市立図書館における乱歩関連資料収集が「市民の皆さんに江戸川乱歩についての知識や興味・関心を高めていただくためです」というとんちんかんな目的を有していると仮定した場合、図書館がどんな資料を所蔵しているのかを市民が容易に知ることができなければ、とんちんかんな目的は果たすことができません。 そこで、さきほどの質問です。 念のために、もう一度記しましょう。 平成28年4月に発行された『花森安治』を名張市立図書館が乱歩関連資料として収集したという情報を、名張市民はいったいどうすれば知ることができるのでしょうか。 よろしくお願い申しあげます。 |
こんな長文を読まされる職員のみなさんもさぞや大変でしょうけど、大うそ並べてその場しのぎばっかかましてるからこげなこつになるばい。
新年度最初の週が過ぎようとしております。
嵐のような週でした。
おれって軽いきちがいだろうな、との確信を深めつつ、さすが巳年生まれは執念深いぜ、とも納得いたしました。
「市長への手紙」といえばあす8日、任期満了にともなう名張市長選挙が告示されます。
▼伊勢新聞:名張市長選あす告示 現新の三つどもえ 15日投開票 三重(2018年4月7日)
で、名張市といえば財政難です。
ですから市長選挙になっても、話題はまず財政難のことになります。
ほら。
▼伊勢新聞:<名張市政の課題・上> 財政難、県内ワースト 水のない水路、荒れた道路(2018年4月5日)
引用。
市の財政は極めて深刻だ。自治体の財政健全度は、実質公債費比率、将来負担比率、経常収支比率で大まかに把握できるが、市の28年度決算では、いずれの数値も県内の市町でワーストだった。
うち経常収支比率は「財政の弾力性」を示す。高いほど財政が硬直化している、つまり自由に使える予算が少ないということ。財政規模に対する負債の大きさを示す将来負担比率は県に記録が残る過去10年、連続で県内ワーストだ。
貯金に当たる財政調整基金も極端に少ない。25年度決算で、わずか59万円と事実上は底をついた状態に。3年間で2億7千万円にまで持ち直したが、それでも標準的な金額の2割にも満たないという。
ここまで徹底して、また長きにわたってお金がありませんから名張市のお役人衆も心得たもので、
「お金あらしませんねて〜、お金あらしませんさけなんにもできしませんねて〜、ほんまにもうしゃらしませんねさなあ〜」
などと財政難を無能と怠慢の隠れ蓑にすることが常態となっております。
そらまたなんちゅう隠れ蓑願望やねん。
といった次第で、新年度第一号の4月2日月曜日付「市長への手紙」はこうなっております。
件名は冒頭に太字で示しました。
炎の大連投一日目
お世話さまです。 新年度を迎えました。 今年度もよろしくお願い申しあげます。 さて、3月19日付「市長への手紙」に対する3月27日付ご回答、ありがたく拝受いたしました。 しかしながら、毎度同じお願いばかりくり返してまことに恐縮ではありますが、どうかまともなお答えをお願いいたします。 質問したことにちゃんとお答えいただかないと、いつまでも同じ質問をつづけることになります。 したがいまして、再質問です。 3月5日付「市長への手紙」で名張市立図書館によるネーミングライツパートナーの募集についてお聞きしたところ、3月15日付ご回答で「再募集については今後の検討課題としました」とお教えいただきました。 そこで、3月19日付「市長への手紙」で、「再募集に関する検討がいつ、何回にわたって、誰によって行われ、どういった情報が収集されているのか、さらに、現時点でどのような検討結果が得られているのか、ぜひご説明いただきたいと思います」とお願いしましたにもかかわらず、3月27日付ご回答にまともなお答えはいっさい記されておりませんでした。 もしかしたら、あれも、これも、と一度にお聞きしたことがいけなかったのかもしれない、と思いあたりましたので、とりあえず一問だけ、再質問することにいたします。 名張市立図書館のネーミングライツパートナー再募集に関する検討は、いつ、誰によって行われたのか、お教えください。 よろしくお願い申しあげます。 |
とにかく質問には正直に答えましょう、という寸法です。
もしも検討してないのであれば、検討しておりませんと、正直に答えていただければそれでいいんです。
名張市のお役人のみなさんが無能で怠慢なのはよく承知しておりますから、そうしたお役人しかいない自治体において、しかも三重県でトップの、ということは日本でもトップレベルの財政難にあえぐ自治体において、もともとずさんででたらめなものでしかなかった乱歩関連資料の収集を、せめて公共図書館としてごくふつうのレベルで維持するにはどうすればいいのか、といったってそんなことはしょせん無理ですから、こりゃ最低でもどっかに手伝ってもらわなくちゃな、というか、正直にいえば名張市立図書館が市民の税金でやみくもに集めてろくにリストもつくろうとしなかった乱歩関連資料をどっかに丸投げして楽になるしかないな、ということを関係者のみなさんに理解していただくために新年度第一週を嵐のような週にしてしまっているわけです。
嵐を呼ぶ男、ってやつですか。
ハナニアラシノタトヘモアルゾ、「サヨナラ」ダケガジンセイダ、ってやつでしょう。
4月になりました。
きのうはきのうを最後に閉店となる大型商業施設、近鉄プラザ桔梗が丘に足を運んで地元資本の本屋さんであるブックスアルデ近鉄店も覗いてみたのですが、これ買っとこ、と思う本が一冊もありませんでした。しばらく前から新刊を並べなくなっていたのか、角川文庫の2月の新刊『ドラコニアの夢』も近鉄店には入ってなくて、市内瀬古口にある本店に入荷していたのを近鉄店まで運んでもらい、それを受け取りにゆくという仕儀となりました。
ことほどさように名張市ではいろいろ終わりつつあるわけですけど、市内にあった三重県立名張桔梗丘高校というのもこの3月で閉校となり、その吹奏楽部OBによる演奏会が市内の会場できょう催されます。
ちょっとした義理から、聴きに行かにゃなりません。
ほんとにあれこれ寂しい話ですけど、いまから二十四年前に放映された鮎川哲也原作のテレビドラマ、まだ活気があった名張のまちも出てきますので、ご参考までにお知らせしておきたいと思います。
いっぽう例のものは、おかげさまで一位をキーブしております。
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商品は出回ってるらしいんですけど、版元に代送を依頼してある献本、まだ届いてはいないみたいな感じで、まあ自転車に乗った小さな出版社のことですから、多少のことは大目に見てやっていただきたいなと思います。
いや、二位でも三位でも、何位だっていいと思いますよ。
人間、何位につけていようと、堂々と胸を張って生きることが大事なんじゃないでしょうか。ま、私はいまんとこ一位ですけど。
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わは。
わはわは。
さて、3月もきょうでおしまい。
拙宅にほど近い大型商業施設、近鉄プラザ桔梗が丘もきょう31日を最後に閉店となります。
何もかも終わってしまう感じですけど、お役所のみなさんとの愉快なおつきあいは終わりません。
さっそく行きます。
▼2018年3月16日:心から安堵したことについて
▼2018年3月21日:転落から低迷へ
▼2018年3月29日:当地も桜の季節です
つづきです。
お世話さまです。
3月19日付「市長への手紙」に対する3月27日付ご回答、ありがたく拝受いたしました。
しかしながら、毎度同じお願いばかりくり返してまことに恐縮ではありますが、どうかまともなお答えをお願いいたします。
質問したことにちゃんとお答えいただかないと、いつまでも同じ質問をつづけることになります。
したがいまして、再質問です。
3月5日付「市長への手紙」で名張市立図書館によるネーミングライツパートナーの募集についてお聞きしたところ、3月15日付ご回答で「再募集については今後の検討課題としました」とお教えいただきました。
そこで、3月19日付「市長への手紙」で、「再募集に関する検討がいつ、何回にわたって、誰によって行われ、どういった情報が収集されているのか、さらに、現時点でどのような検討結果が得られているのか、ぜひご説明いただきたいと思います」とお願いしましたにもかかわらず、3月27日付ご回答にまともなお答えはいっさい記されておりませんでした。
もしかしたら、あれも、これも、と一度にお聞きしたことがいけなかったのかもしれない、と思いあたりましたので、とりあえず一問だけ、再質問することにいたします。
名張市立図書館のネーミングライツパートナー再募集に関する検討は、いつ、誰によって行われたのか、お教えください。
よろしくお願い申しあげます。
週明けに、「まともなお答えをお願いします」とでも題して、例のところにお送りする予定です。
とはいえ、私の見るところ、再募集に関する検討など、ただの一度もなされてはおりません。
名張市立図書館のネーミングライツパートナーを募集した関係者は、いざ蓋を開けてみて、名張市立図書館の評判の悪さに驚き、こらなんべん募集したかて手ェあげてくれるとこなんかいっこもないわな、と骨身にしみて理解してくださったのではないでしょうか。
なにしろあなた、ことあるごとにネット上で私に噛みつかれてる図書館なんですから、そんな図書館の命名権なんて死んでもいらねーよ、と思わない人間なんてひとりもいないんでないかい。
もっとも、全国でただひとつ乱歩の関連資料を専門的に収集してる図書館なんですから、その線で図書館としてごくふつうのことをごくふつうにやっていれば、ネーミングライツパートナーの募集に応じてくれるとこも出てくるんじゃないかと思いますけど、それには図書館から腐れ公務員を追い出すことが必要になります。
そんなことはともかくとして、関係者のみなさんには再募集する気なんてまったくないはずなんですけど、思いつきで募集してみましたけど全然だめだったのでもう二度としません、なんてことはいえませんから、適当なこといってその場しのぎをかましてるだけだと思われます。
ほんと、もうちょっと正直になろうぜ。
さあ腐れ公務員ぼこぼこにしてやろっと、とまいりたいところではありますが、よく考えてみたらきょう30日は『乱歩謎解きクロニクル』の発売日です。
▼言視舎s-pn.jp:乱歩謎解きクロニクルじつは数日前から出回っていたらしく、予約してあったのが届きましたというメールを26日の月曜に頂戴したりもしていたのですが、一応きょうが発売日ということになっておりますので、あらためてご案内をひとくさり。
すでにごらんいただきました目次とあとがきを再掲し、新たに「涙香、『新青年』、乱歩」のはしがきを転載したいと思います。
段落間の一行あきはブラウザ上の読みやすさに配慮し、転載にあたって新たに設けたものです。
目次の初出データも転載するにあたって添えたもので、実際には巻末にまとめて記載されております。
目次
涙香、「新青年」、乱歩 9
はしがき 9
第一章 「新青年」という舞台 14デビューと疎外感/回想記から自伝へ/かけがえのない場/紛れ込む誤認/発見された草稿/浮かびあがる疑問
第二章 絵探しと探偵小説 39
「二銭銅貨」の逸脱/「一枚の切符」の反転/「恐ろしき錯誤」の妄想/探偵趣味と小説作法/二重性の影/かりそめの器/謎ではなく秘密
第三章 黒岩涙香に始まる 68
人嫌いから社交家へ/小説を書けない日々/「本陣殺人事件」の衝撃/垂直性の選択/第一人者の戴冠/うつし世と夜の夢
初出:中相作『涙香、「新青年」、乱歩』名張人外境、二〇一〇年五月二十九日
江戸川乱歩の不思議な犯罪 97
昭和四年 虐殺/大正十五年 対立/昭和二年 放浪/大正十三年 猟奇/昭和三年 再起/昭和十年 敬慕/昭和四年 変転/昭和三年 詐術
初出:江戶川亂步『完本陰獣』藍峯舎、二〇一八年二月二十五日
「陰獣」から「双生児」ができる話 121
二組の双生児/正体をめぐる謎/カムバックの舞台裏/編集者横溝正史
初出:江藤茂博、山口直孝、浜田知明編『横溝正史研究4』戎光祥出版、二〇一三年三月一日
野心を託した大探偵小説 133
初出:「小説現代」第五十一巻第九号、講談社、二〇一三年九月一日
乱歩と三島 女賊への恋 139
初出:江戶川亂步、三島由紀夫『完本黒蜥蜴』藍峯舎、二〇一四年五月十五日
「鬼火」因縁話 151
東京へ/暗い絵/水と火/廃園で/冬の旅
初出:横溝正史『鬼火』藍峯舎、二〇一五年六月二十五日
猟奇の果て 遊戯の終わり 175
土蔵の死骸/二冊の豪華本/猟奇耽異の器/文学派の領土/美しい死体
初出:江戶川亂步『幻想と怪奇』藍峯舎、二〇一五年十二月二十五日
ポーと乱歩 奇譚の水脈 191
初出:エドガー・アラン・ポー、江戶川亂步『赤き死の假面』藍峯舎、二〇一二年十二月二十五日
引用底本一覧 201
作品年譜 206
あとがき 215
はしがき
昨年十月三日、横浜市の県立神奈川近代文学館で特別展「大乱歩展」が開幕した。江戸川乱歩をテーマにした展示会としては、ともに池袋で開かれた二〇〇三年の「江戸川乱歩展 蔵の中の幻影城」、翌年の「江戸川乱歩と大衆の20世紀展」のあとを受ける大規模な催しで、館長の紀田順一郎先生が長く念願していらっしゃった企画だと聞く。
書籍や雑誌、原稿、書簡、写真のたぐいはいわずもがな、乱歩が不届きな出版社から召しあげた紙型までもが陳列された圧倒的な展示内容で、文学館のスタッフは毎朝、前日の入場者が息を呑みながら展示ケースのガラスに残していった指紋や掌紋を、開館時刻までにきれいに拭き取る作業に追われたという。開幕初日には記念講演会も催され、小林信彦さんが「乱歩の二つの顔」と題してお話しになった。
同じ日、池袋にあるミステリー文学資料館では、開館十周年を記念したトーク&ディスカッション「『新青年』の作家たち」がスタートした。土曜の午後に開講される全九回の連続講座で、毎回ひとりずつ「新青年」ゆかりの作家がとりあげられる。初日のテーマは江戸川乱歩。館長をお務めだった権田萬治先生からご慫慂をいただき、講師を担当することになった。開始は午後一時三十分。小林信彦さんの講演が始まる三十分前である。
撃沈だな、と観念した。どちらも乱歩をテーマとしながら、講師には雲泥というも愚かな開きがある。のみならず、むこうは異国情緒たっぷりな港の見える丘公園に建つ文学館、こちらはビルの地下一階、迷路のような狭い通路をたどった先の小さな会議室が会場である。選択に迷う乱歩ファンなど存在しないものと思われた。
何人の方にお集まりいただけるのか、撃沈の不安に怯えながら当日を迎えたが、ありがたいことに定員の三十五人近い入場があった。名張市民の税金で用意した二銭銅貨煎餅も、手みやげとして全員にお受け取りいただくことができた。「涙香、「新青年」、乱歩」と題して一時間ほど喋り、三十分あまりディスカッションして、講師としての役目を終えた。
このまま埋もれさせるには惜しい内容だ、といってくれる人はひとりもなかったが、本人としては喋りっぱなしで捨て置くのはしのびない。時間の制約から意を尽くせなかったところもある。そこで、トークの梗概を自分のウェブサイトに連載することにした。話した内容をただ再現するのではなく、昨年十二月に出た長山靖生さんの『日本SF精神史』(河出書房新社)に教えられて海野十三の「探偵小説雑感」を引用するなど、トーク以降に得た知識や所見も加えながら書き進めたものだから、いつまでたっても終わらない。年が改まり、バンクーバー冬季五輪もたけなわの二月なかばにようやくけりがついた。
今度は連載分を一本の原稿にまとめることを思いつき、この国では今年が電子書籍元年になると喧伝されていることから、新書判のフォーマットでレイアウトしたPDFファイルをインターネット上で公開することにした。ダウンロードすれば、アドビ社のAdobe Readerで読むことができる。ツールバーの「表示」で「ページ表示」を選択し、「見開きページ」と「見開きページモードで表紙をレイアウト」をオンにすると、しょせんまがいものとはいうものの、電子書籍らしい雰囲気は思いのほかに実感される。
簡単な作業だと踏んでいたのだが、サイト連載分が冗漫でばか長くなったため、結局は最初から書き改めるに等しい手間がかかった。一月に刊行された川西政明さんの『新・日本文壇史 第一巻 漱石の死』(岩波書店)の影響で年月日や住所をやたら詳しく記したりもして、去年のトークはほとんどかたちをとどめていない。面目を一新した、といいたいところだが、枝葉に筆を費やしたせいでまとまりを欠き、というよりは、幹になったのが一時間程度のトークでしかないのだから、そもそもまとまりなど求めようもなく、大きく深いはずのテーマを表面だけ軽くなぞることに終始しているのは致し方のないところであろう。こんなことならやんなきゃよかった、と思わぬでもないが、なにしろ電子書籍元年である。ついうかうかと調子に乗ってしまった。
「涙香、「新青年」、乱歩」というタイトルについて述べておくと、お読みいただけばおわかりのとおり、黒岩涙香にはまったくといっていいほど関係がない。こんな内容でタイトルに涙香を謳っては羊頭を掲げて狗肉を売るの謗りを免れないところだが、これもお読みいただければおわかりのとおり、乱歩の顰みに倣ってまず涙香を掲げた、などと記してしまうと、天国の涙香からも乱歩からも、ともに大目玉を頂戴してしまうに相違ない。罰当りないいわけはこのあたりまでとしておく。
二〇一〇年五月二十九日、アップル社iPadの国内発売が開始された翌日に
あとがき
江戸川乱歩の生誕地、三重県名張市に生まれ育って一九九五年十月から二〇〇八年三月まで市立図書館の乱歩資料担当嘱託を務めた。知性にはまるで無縁な土地柄である。図書館といっても館長は日本語の読み書きさえ怪しいお役人だし、乱歩関連資料を収集しておりますと立派な看板を掲げても内情はいっそ痛快なまでにでたらめである。どれほどでたらめであるかは昨年十月に配信された電子書籍『江戸川乱歩電子全集 第16巻』(小学館)収録のインタビュー「カリスマ嘱託の驕慢と頽落」で委曲を尽くしておいたからここでは述べない。とにかく嘱託を拝命したのだからと名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック1として『乱歩文献データブック』を編纂し、第一章第六節「大衆意識の可能性──江戸川乱歩」で乱歩を思想史に位置づけた鷲田小彌太さんの『昭和思想史60年』(三一書房、一九八六年)も乱歩関連文献の一点として記載した。刊行は一九九七年三月。ふと思いついて、鷲田さんに一冊お送りしたと記憶している。
ちょうど二十年後の昨年三月、その鷲田さんから突然連絡が入った。津市立三重短期大学の教え子との会合に出席するため津へ行く、名張まで足を伸ばすから会えないかというのが用件だった。五月の夜、初めてお目にかかった鷲田さんは凄まじいような勢いでお酒を飲みながら、乱歩の本を書け、とおっしゃった。枚数は二百五十枚、締切は十一月末、出版社も決めてあるからとかなり強引なお話だったが、せっかくのご指名をお断りする道理はどこにもない。とはいえ半年で二百五十枚、田舎でのんびりくすぶっている非才の身にそんな芸当が可能かどうか、内心首を傾げながらわかりましたと答えてさっそく書き始めてみたものの、じきに不可能だと判明した。しかし、やっぱり無理でしたと開き直れるような度胸はない。これまでに書いたものを寄せ集めてお茶を濁すことに決め、なんとか二百五十枚、言視舎の杉山尚次さんに電子メールでPDFファイルを送信した。同じようなことばかり書いてあるからものにならないだろうと踏んでいたところ、杉山さんからひとつのできごとにいろいろな角度からスポットが当てられている点が興味深いと意外な評言をいただいて、ああ、江戸川乱歩は富士山だなと思い当たった。
富士の頂角、広重の富士は八十五度、文晁の富士も八十四度くらい、北斎に至っては三十度くらいという著名なフレーズが事実かどうかはともかく、富士山は見る位置、描く人間によってさまざまに姿を変えると伝えられる。乱歩も群盲に撫でられる一頭の巨象のような存在で、『乱歩文献データブック』に頂戴した中島河太郎先生のエッセイ「江戸川乱歩評判記」も「各人各説でまだまだ乱歩の全貌を摑むのは容易でない」と結ばれていた。だから本書も変わり映えのしない素材を扱った同工異曲の実話読みもの八篇、何の愛想もなく漫然と並べてお茶を濁しているだけの本では決してなく、視点を少しずつずらしながら仰ぎ見た富嶽百景ならぬ乱歩八景の試みなのであると思い込むことにした。同じ時代の同じ舞台に同じような人物がくり返し登場することからフォークナーや中上健次の向こうを張ってタイトルにサーガと謳おうかとも考えたのだが、それでは印象がフィクションめいてくるうえ大仰に過ぎる気もしてクロニクルに落ち着いた。巻末の「作品年譜」にはクロニクルの面目が躍如としているような気配がないでもないだろう。
収録作品に簡単に触れておくと、「涙香、「新青年」、乱歩」は「はしがき」に記したとおり二〇〇九年の短い講演がもとになっている。残りは乱歩作品を中心に少部数の豪華本出版を手がける藍峯舎の書籍に寄せた解説が大半を占め、刊行時期は二〇一二年からつい先日の今年二月まで。二〇一三年の『横溝正史研究』は「横溝正史の一九三〇年代」を特集したナンバーだったが、あいにく一九二八年から二九年にかけての話題しか思いつかなかったから「一九三〇年代前夜の正史と乱歩」という副題をつけてお茶を濁した。同じく二〇一三年の「小説現代」はグラビア「奇跡の発見! 江戸川乱歩『黄金仮面』、戦前の生原稿450枚」の掲載号で、解説を担当したところ肩書を求められたため江戸川乱歩書誌作成者というのをでっちあげてお茶を濁した。
振り返ればお茶を濁してばかりの世渡りである。なりゆきに任せてただ馬齢を重ね、この三月には晴れて前期高齢者の仲間入りを果たす仕儀となってしまったが、ほぼ時期を同じくして本書を世に送る機会に恵まれた。講演であれ、解説であれ、出版であれ、田舎でのんびりくすぶっている非才の身を引き立て、ここに至る道を開いてくださったみなさんには感謝の言葉もない。さらにさかのぼればすべての起点は名張市立図書館にほかならず、名張市のお役人がいっそ爽快なまでに無能だったからこそこうした僥倖に逢着できたのである。知性にはまるで無縁な土地柄にも尽きせぬ謝意を表しておくべきかもしれない。
二〇一八年二月二十五日、バンクーバー冬季五輪から早八年、平昌冬季五輪の閉会式が催される日に
おかげさまで、アマゾンの作家研究部門、堂々一位に輝きました。
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記念のスクショでございます。
ポチはこちらとなっております。
▼Amazon.co.jp:乱歩謎解きクロニクル
イシグロもキングもはるか下に見つポチのみ待ちてわれ高齢者。
以上、『乱歩謎解きクロニクル』発売日のご案内をお届けいたしました。
先日、予定を記しました。
▼2018年3月16日:心から安堵したことについて予定どおり、週明けの19日月曜、名張市公式サイト「市長への手紙」を利用して質問を送信いたしました。
文面は3月16日付エントリで公開したとおりですが、末尾にワンセンテンス追加いたしましたので、あらためて全文を公開いたします。
お世話さまです。
名張市立図書館のネーミングライツパートナー募集の件、「再募集については今後の検討課題としました」とのお答えをたまわり、また、「県内・県外の公立図書館におけるネーミングライツ導入の動向や、事業者の応募に関する意向等について情報収集を続けており」とのお知らせもいただいて、心から安堵いたしました。
つきましては、最初の募集以降、再募集に関する検討がいつ、何回にわたって、誰によって行われ、どういった情報が収集されているのか、さらに、現時点でどのような検討結果が得られているのか、ぜひご説明いただきたいと思います。
また、3月5日付「市長への手紙」にスキャン画像へのリンクを設定して冒頭一ページをお読みいただきました「あとがき」は、その後、全文を公開いたしましたのでお知らせ申しあげます。
http://nabariningaikyo.blog.shinobi.jp/Entry/5134/
上記リンク先のエントリではアマゾンの「作家研究の売れ筋ランキング」第三位となっておりますが、現時点では第十位に転落しております。
めでたく第一位を獲得できるよう、まことに僭越ではありますが、名張市役所のみなさんに打って一丸となったご支援をお願い申しあげる次第です。
発売は今月30日の予定となっております。
件名には変更がなく、「心から安堵しました」としました。
例のランキングは、19日月曜の朝にはたしかに第十位だったんですけど、さらに転落していまじゃ落ち目の三度笠、現在ただいま第二十五位に低迷しております。
▼アマゾン:作家研究 の 売れ筋ランキング
しかし、もう3月も下旬ではないか。
どうしてこうもたもたしておるのであろうな。
ネーミングライツパートナー募集の件はいわば傍流で、本筋はあくまでも名張市立図書館による乱歩関連資料の収集であり、それがじつにでたらめでもうどうしようもないのよ、ということなのである。
図書館としてごくあたりまえの資料収集をしてくれればそれで済む話なのに、それができない。
日本にただひとつでいいから、乱歩関連資料を専門的に収集している図書館が存在していてほしい、というのはそれほど無理筋な願いではないのですが、ここ名張市ではそれが気の遠くなるほど実現困難な望みになってしまう。
だから、とにかく開館以来ほぼ半世紀、どうせ税金だからってんで、展示陳列のためにやみくもに買い集めた乱歩関連資料だけはたくさん所蔵してるんだから、せめてそれを差し出して連携という名目でどっかほかの図書館に乱歩方面の面倒をみてもらうように話を進めてはいかがでしょう、そうしないと名張市立図書館に死蔵されたままの乱歩関連資料があまりにも不憫でなりませぬ、と提言してさしあげたのである。
どうして、ようがす合点だ、百も合点二百も承知と来らあ、とふたつ返事でOKしていただけぬのであろうなあ。
しかたがないから、名張市立図書館の乱歩関連資料の収集がどれほどでたらめなものか、具体的に示したうえで市長判断を仰ぐという迂遠なプロセスをたどりつつある最中なんですけど、そういえばもうすぐ市長選挙ではないか。
こんなことやっておってええのかしら。
文春文庫の一月の新刊だった小林信彦さんの『女優で観るか、監督を追うか』をいまごろ読んでいるのだが、そのせいで、じぇじぇじぇ、という流行語を思い出し、ひさしぶりに、じぇじぇじぇ、といって驚いた。
ちなみにこの『女優で観るか、監督を追うか』の「〈ベストテン〉というもの 3」には、昭和48・1973年の邦画ベストテンを回顧して「この頃、『仁義なき戦い』への反発は容易なものではなかった。つまり、『仁義なき戦い』を受け入れるのか拒否するのかが、この年のベスト・テン選出のひとつの目安となったといえる」と記したくだりがあり、この年の「キネマ旬報」ベストテンには「仁義なき戦い」のベストワン獲得を阻止すべく未公開だった「津軽じょんがら節」を授賞対象とするために卑怯姑息な奥の手が弄されたと明かされております。読んでいて思い出したのは平成16・2004年10月刊行の『子不語の夢 江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集』の受賞を阻止すべく本格ミステリ作家クラブや日本推理作家協会が弄したまことにお粗末な奥の手のことで、本格ミステリ作家クラブは「評論・研究部門」に天城一さんの『天城一の密室犯罪学教程』を、日本推理作家協会は「評論その他の部門」に日高恒太朗さんの『不時着』を拉し来たってずいぶんみっともない真似をさらしてくれましたっけ。
けけけ。
腐れ団体はとっとと死ねよ。
けけけけけ。
みたいなことはどうでもいいとして、じぇじぇじぇの件。
じぇ。
じぇじぇ。
じぇじぇじぇ。
これが驚かずにいられるか。
あっというまに二十位圏外に去ってしまっているではないか。
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そんなに早く去るなよ。
何よこのつかのまの栄光。
こうなりゃ腐れ公務員のひとりふたり道連れにして圏外も圏外、大気圏外まですっ飛んでってやろうじゃないの。
遠く圏外に去ってしまった人間の恐ろしさをたっぷり思い知らせてやるぜ。
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