本日は全国的に雨天なり、ということか、当地も雨となりました。
きのうの日本テレビ「ヒルナンデス!」では、神田のはちまきというお店が紹介されていました。乱歩ファンにはすでにおなじみといっていいのか、今年3月にもテレビに登場したようです。
▼2016年4月30日:作家のグルメ
それはいいんですけど、同じくきのう、「ヒルナンデス!」の裏のテレビ朝日「徹子の部屋」では追悼特集が放映され、出演者には平井隆太郎先生のお名前も。
▼tv asahi:徹子の部屋 > バックナンバー > 2016年7月 > 7月8日(金)
むしろこちらを視聴するべきだったんですけど、まあいたしかたありません。
テレビのあとは映画の話題。
今月23日に公開される「屋根裏の散歩者」の予告篇です。
どうでもいいことですけど、おなじわだち、ではなく、おなじてつ、でいいのではないかと、どうも気になりました。
こちらは完成披露舞台挨拶。
こんなのもアップロードされてましたので、ついでにお知らせしておきます。
「屋根裏の散歩者」はいくたびも映像化されてますけど、「二銭銅貨」はいまだ映画にもテレビドラマにも漫画にもなったことがないはずで、そのあたりにも「二銭銅貨」の乱歩らしくなさが窺えると思います。
点字狂です。
これも図版にしといたほうがいいだろうな、と思って、暑さでぼーっとしながらつくってみました。まず、初出。
お次は、乱歩が手を加えた修正版。
そして、乱歩の間違いを点字狂が訂正した正解版。
こっちのほうもつくっときました。
しかし、こんなことばっかやっとってもなあ。
それから、ついさっきメールでお知らせいただいたんですけど、あしたの「ヒルナンデス!」に乱歩ゆかりのお店が登場するそうです。
▼日テレ:ヒルナンデス!
放送は午前11時55分から午後1時55分。
「江戸川乱歩が愛した天ぷらの名店で極上あなご天丼を発見!」だそうです。
そういえば、乱歩ゆかりの清風亭で、今年はいまだただの一度も鰻を食してないではないか。
乱歩の父祖の地である三重県津市はなぜか鰻が名物で、新玉亭とかうなふじとかおがわとか、県立図書館その他、津市に用事があったらよく立ち寄ってはいるんですけど、いかんなあ、地元のそれも乱歩ゆかりの鰻屋さんをもっと大事にしなければ。
みなさんも、機会があればぜひどうぞ。
お暑うございます。
青空文庫はこれが来ました。江戸川 乱歩:怪人と少年探偵: 作者のことば 怪人二十面相はまほうつかいのようなふしぎなどろぼうです。二十のちがった顔を持つといわれる変そうの名人です。名探偵明智小五郎の助手小林少年と少年探偵団の団員たちは… https://t.co/xsnhh6ua9J 青空文庫 #青空文庫
— 青空文庫新着情報 (@aozoranow) 2016年6月29日
それでまあ、こんな感じになるわけです。
こんな感じで、厚さ四センチほどもある月刊ないしは隔月刊のコミック誌が、いまや一か月に三冊か四冊、書斎のすみや廊下のすみでじわじわじわじわ増殖しているわけです。
ええかげんにしてもらえんものかのう。
キリンメッツコーラはまだ飲んだことがないんですけど、近所のマックスバリュ名張店で段ボール箱をもらってきました。
並んでる雑誌は、左から順に、「乱歩アナザー」連載中の「少年マガジンエッジ」6月号、「孤島の鬼」連載中の「ARIA」6月号、おなじく「孤島の鬼」連載中の「B・BOY GOLD」6月号、「少年マガジンエッジ」7月号、「ARIA」7月号、少年探偵団シリーズを原案にした「TRICKSTER」の連載が始まった週刊少年マガジン増刊「マガジンSPECIAL」7月号、「ARIA」8月号、「B・BOY GOLD」8月号。
それにしても、これはいったいなにごとか、と思います。
昭和4年から5年にかけて発表された長篇小説が、著者の死去から半世紀も経過したいまになって、なんと二作併行して漫画化進行中! なんてのは空前絶後のことにちがいありません。
しかも、乱歩自身は「現代では関心を持つ人は殆どない」としていた同性愛が大きな売りのひとつになっているんですから、世の中なにがどう転ぶかまったくわかりません。
ではここで、コミック二作における諸戸と箕浦のなんたらシーンをごらんいただきましょう。
「B・BOY GOLD」8月号、環レンさんの連載第二回。
「ARIA」では6月号、naked apeさんの連載第四回にこの場面が登場しました。
こうなるともう、「孤島の鬼」は本朝近代文学における通俗の極北に燦然と輝いている、といっても過言ではないかもしれません。
そんな作品を書く作家になるなどと、処女作「二銭銅貨」はまったく告げていませんでしたけど。
ちなみに「二銭銅貨」九十九円電書のほうは、構想はほぼ固まった感じなんですけど、暑さのせいもあって、実務面はほったらかしとなっております。
それにしても、毎日あつおますなあ。
暑い日がつづきます。
名張市のおとなり伊賀市ではおととい、自宅の畑で農作業をしていた八十代の女性が熱中症で死亡した、と報じられております。どちらさまもこの暑さにはくれぐれもご注意ください。
ところで私は点字狂。
きのうは金子修さんの『てんじ手作り絵本 おぼえちゃ王』で点字のお勉強にいそしみました。
この本です。
▼少年写真新聞社:719 てんじ手作り絵本 おぼえちゃ王
ちょっとお勉強しただけで、「二銭銅貨」の点字にはまだ変なところがある、ということに気がつきました。
絵本に出てきた例文をいくつか引いてみましょう。
カメヤカニワカワイイナ
ナエワニワニウエナイカ
ライオンワオリニイレル
アリワナニイロカナ
アメワナカナカフラナイ
もうおわかりでしょう。
係助詞はは点字ではわと表記されるみたいです。
ですから、「二銭銅貨」に「ウケトリニンノナハ」とあるのは、ほんとは「ウケトリニンノナワ」となっているべきなんですけど、作中でひどい目に遭わされた松村は、青空文庫から引きますと「俺は点字について詳しくは知らなかったが、六つの点の組合せということ丈けは記憶していた。そこで、早速按摩を呼んで来て伝授に与ったという訳だ」といったあんばいのにわか点字ユーザーに設定されていますから、このミスに目くじらを立てる必要は全然ありますまい。
松村が点字初心者であるという事実をより重層的に肉づけするため、暗号には影響を及ぼさない範囲で作者が作中にわざとミスを仕込んだ、なんてことはおそらくまったくなくて、乱歩が本気で間違えただけの話だと思われます。
拗音符の問題といい、係助詞はの問題といい、これは目の見える人間がどうしても陥ってしまいがちな誤りであるといっていいでしょう。
それでは、大正12年の発表からじつに九十三年の日月を隔てて、「二銭銅貨」に登場した点字がここにようやくあらまほしくも正しい姿を現します。
「ハ」を「ワ」に改め、「ン」を「撥音符」に差し替えました。
あまりにも暑いのでここまで。
こんなことばかりもしてられないんやけど、と思いつつ、煩雑な日常から逃れてついつい点字狂になってしまう私です。
「二銭銅貨」の翻訳について話をつづけますと、韓国と台湾でも訳されているものの、手もとに現物がないため仔細は不明。以上、中国、フランス、アメリカ、韓国、台湾、といったあたりが「二銭銅貨」の翻訳圏ということになるかと思いますが、これはむろん正確な情報ではありません。
ここで国内に目を転じて、過去十年ほどの、というか、『江戸川乱歩著書目録』以降の新しい著書から「二銭銅貨」が収録されたものを拾っておきましょう。
編年体大正文学全集 第十二巻 大正十二年
平成14・2002年10月25日 ゆまに書房 ◎
屋根裏の散歩者 江戸川乱歩全集 第1巻
平成16・2004年7月20日 光文社 光文社文庫
江戸川乱歩全集 1
平成18・2006年11月20日 沖積舎 *復刻版
江戸川乱歩 ちくま日本文学007
平成20・2008年1月10日 筑摩書房
江戸川乱歩短篇集
平成20・2008年8月19日 岩波書店 岩波文庫 ◎
夢見る部屋 日本文学100年の名作 第1巻 1914-1923
平成26・2014年9月1日 新潮社 新潮文庫 ◎
心理試験 江戸川乱歩文庫
平成27・2015年11月30日 春陽堂書店 春陽文庫 *新装版
江戸川乱歩傑作選 獣
平成28・2016年2月10日 文藝春秋 文春文庫
D坂の殺人事件
平成28・2016年3月25日 KADOKAWA 角川文庫
◎は、初出の点字が修正されずに生きている版であることを示します。
以上、電子書籍は対象とせずにお送りしました。
もしかしたら「二銭銅貨」九十九円電書には、「二銭銅貨」の初刊以来の収録履歴、つまり、春陽堂の『心理試験』からKADOKAWAの『D坂の殺人事件』まで、簡単なリストを入れておいたほうがいいのかもしれません。
しかし、そんなことしてる暇はとてもないんやけど。
ちょっとメモしておきますと、乱歩名義による「黄金虫」の少年少女向け翻訳は、『江戸川乱歩著書目録』でチェックしてみたところ、次のような収録過程をたどっているようです。
世界名作 黄金虫 少年文庫
昭和24年6月10日 光文社
黄金虫 世界名作全集59
昭和28年9月25日 大日本雄弁会講談社
少年少女世界文学全集 11 アメリカ編第1巻
昭和36年7月20日 講談社
現物を確認してみなければたしかなところはわかりませんが、たぶん同じ訳文が使用されているはずです。
さて、ほんの気分転換のつもりで手をつけてみたらいろんなことが気になってきちゃって、いっそもう点字狂とお呼びいただきたい気分なんですけど、気になったことのひとつは、外国語に翻訳された場合、「二銭銅貨」の点字はどんなふうに処理されているのか、ということです。
調べてみました。
まず中国では、珠海出版社から2001年に出た乱歩驚険偵探小説集第三輯『影子殺人』に「二銭銅幣」として収録されているのですが、点字はこんな感じ。
桃源社版全集のものが、カタカナはそのままに、中国人読者のためにアレンジされてます。
フランスでは1990年、フィリップ・ピキエ社から出版された『La chambre rouge』に「La pièce de deux sen」として収められていますが、点字の図版は桃源社版全集のものを使用し、ほかにこんなのも添えられています。
しかし、よく見てみると、点字の図版は左右が逆になっとるがな、と申しあげてもおわかりにならないでしょうから、写真でごらんいただきたいと思います。
ついでですから、拙宅庭の紫陽花もお楽しみください。
見開きの左側ページにあるべき「ゴケンチョー……」が右に行っとります。
間違いに気づいたフランス人読者は、おそらくひとりもおらんかったと思いますけど。
英語訳となると、ちょっとすごいです。
2008年にハワイ大学出版から出たアンソロジー『Modanizumu』に収録された「The Two-Sen Copper Coin」の暗号は、写真の外縁に乱歩らしく窃視症めいた加工を施してご紹介申しあげますと、ほれこのとおり、すべてアルファベットになっております。
つまり、「ゴケンチョー……」で始まる日本文も英文に置き換えられてるわけです。
なんとも手の込んだ翻訳で、訳者のジェフリー・アングルスさんに心から敬意を評しつつ、アメリカ版ゴケンチョーを引いておきましょう。
JUSTTAKEFAKEM
ONEYFROMSHOJI
KIDOCALLYOURS
ELFDAIKOKUYA!!
しかも、当然といえば当然なんですけど、何文字かずつ飛ばして読むと「ゴジヤウダン」が現れる、という原作の趣向もちゃんと踏襲されてます。
さすがに八文字ずつ、とはまいらず、八より大きな数になりますけど、飛ばして読むとたしかにひとつの単語になるという寸法。
わかるかな?
みんなチャレンジしてみてよね。
話がだんだん大風呂敷と化している観は否めませんが、実現性は二の次にして、「二銭銅貨」九十九円電書にポーの「黄金虫」を乱歩訳で収録する、という話をつづけます。
改造社の世界大衆文学全集『ポー、ホフマン集』以外でも、もとより代役とはいえ、乱歩が「黄金虫」を翻訳していたことを思い出しました。講談社の少年少女世界文学全集『アメリカ編 第1巻』です。
発行は昭和36年7月20日。
つまり『探偵小説四十年』刊行の十五日後に出た本で、収録はストー夫人、ホーソーン、ポーの諸作と民話集。
思い出した以上、こちらの訳文を採用することにいたします。
理由は単純。
私には、近所でも評判の可愛い男の子であった遠い昔、地域の名門、三重県名張市立名張小学校の図書室にあったこの本を借り出して読んだものであった、という懐かしい記憶があるからです。
あれがはじめて手に取ったポーの本で、そのあとはたぶん、地域の名門、三重県名張市立名張中学校にいやいやながら通っていたその当時、旺文社文庫のポーの作品集をいまはなき岡村繁次郎が経営していたいまはなき岡村書店で購入して読んだのではなかったかしら。
ともあれ、少年ものを本領とした乱歩への敬意もこめて、少年少女向けにリメイクされた「黄金虫」をいただくことにいたします。
それから、せっかく乱歩が訂正した点字の図版をつくったことでもありますから、桃源社全集版の「二銭銅貨」も収録してしまいます。
初出テキストよりは読みやすくなっているはずですし、その筋の読者には初出との異同をチェックする酔狂もお楽しみいただけます。
テキストは、青空文庫の平凡社全集版をちょこっといじるだけですぐ完成です。
そんなこんなであれこれ考え、小説もいろいろ取り揃えてみたいと思います。
いまのところ思いあたるのは、収録順に次のようなところです。
黄金虫
エドガー・アラン・ポー(1843年)、江戸川乱歩訳 昭和36年7月20日
噫無情(抜粋)
ヴィクトル・ユゴー(1862年)、黒岩涙香訳 明治39年4月25日
踊る人形(抜粋)
アーサー・コナン・ドイル(1903年)、三上於菟吉訳 昭和4年10月5日/大久保ゆう改訳 平成20年1月30日
二銭銅貨荒筋
江戸川藍峯 大正9年5月10日
二銭銅貨
江戸川藍峯 大正9年
私
谷崎潤一郎 大正10年3月1日
二銭銅貨
黒島伝治 大正15年1月1日
二銭銅貨
江戸川乱歩 昭和33年9月25日
二銭銅貨
江戸川乱歩 昭和36年10月20日
戌神はなにを見たか(抜粋)
鮎川哲也 昭和51年2月20日
なんか、「二銭銅貨」にちょっとでも関係のあるあるいはありそうな小説を適当にかき集めただけなんですけど、九十九円でどうでしょうか。
朝もはよからカンテラはさげてませんけど、「二銭銅貨」の点字をつくっておりました。
むろん青空文庫でも、点字は図版として掲載されております。▼青空文庫:二銭銅貨
これです。
「二銭銅貨」の初出の点字には誤りがあり、乱歩は昭和36年の桃源社版全集でそれを訂して、「あとがき」にこう記しました。
今度、この小説に使われている点字の書き方に間違いがあることを気づいたので、訂正しておいた。これは最初の私の原稿が間違っていたのである。
青空文庫の「二銭銅貨」、底本関係はこうなっております。
底本:「江戸川乱歩全集 第1巻 屋根裏の散歩者」光文社文庫、光文社 2004(平成16)年7月20日初版1刷発行
底本の親本:「江戸川乱歩全集 第一巻」平凡社 1931(昭和6)年6月
昭和6年の平凡社版全集には点字の誤りがそのまま引き継がれていたはずですが、2004年の光文社文庫版全集には昭和36年の桃源社版全集で訂正された点字が使用されていて、これを要するに、テキストは平凡社版、点字は桃源社版、という措置が講じられたものと思われます。
では、誤りがあったという初出の点字はどんなんであったか。
「新青年」大正12年4月号の誌面に準拠し、朝もはよからカンテラはさげずに作成した九十九円電書用点字はこちらとなっております。
ついでですから、乱歩が訂正した桃源社版全集の点字も図版にしてみました。
これどす。
ビフォアとアフターを比較してみますと、ビフォアでは「濁音符」というフレーズが一行で処理されていますが、アフターでは二行になっております。
しかし、そんなことは些細な違いであって、より本質的な違いは、ビフォアにあった拗音符がアフターでは姿を消している、という一事です。
拗音符はどこへ消えたのか。
いやいや、消えてはおりません。
ビフォアの拗音符は、六字名号で表現すれば「弥」一文字。
アフターにも「弥」はちゃんと使用されていて、しかし不思議なことに、「ゴケンチョーショージキドー」の「弥」を拾ってみると、驚くべし、最初の「弥」は「チ」と読まれ、次の「弥」は「シ」と読まれています。
なおかつ、アフターの「ョ」は「無阿弥陀」であったり、「無弥陀仏」であったりしているうえ、「無阿弥陀」は「ウケトレウケトリ」では「ト」と読まれているではありませんか。
なんじゃこれは。
で、いろいろ考えてみた結果、乱歩は点字における拗音符の使用法を間違えていた、ということが判明しました。
ビフォアでは、「ゴケンチョー」の「ョ」が「拗音符+ヨ=ョ」とされておりますけれど、これが誤り。
アフターを見てみると、「拗音符+ト=チョ」と訂正されていて、これが正解です。
点字における拗音符の使用法は、グーグル検索したらトップでヒットしたこのページでどうぞ。
▼haruのデータルーム:点字 3 (日本語の覚え方)
つまりはローマ字感覚で、拗音符にトをつづけると、「to」が「tyo」に拗音化して、それが「チョ」を示す点字である、ということになるみたいです。
ですから、ビフォアにしてもアフターにしても、そもそも最初の「ゴ」の表記からしておかしいわけです。
乱歩は「陀」「無弥仏」を「濁音符」「ゴ」としていますが、これを正確に記すならば、「濁音符」「コ」となります。
「濁音符+コ=ゴ」という寸法です。
要するに乱歩は、拗音符の使用法のほかに、もっと大きな間違いを犯していたことになります。
点字をかなに置き換えるときの表記が間違っていた。
いや、間違いと断定はできないにしても、不適切であったことはたしかだと思われます。
そこで私、「二銭銅貨」の点字を正しい表記に、いやいや、正しいといってしまうのはやはりあれでしょうから、あらまほしき姿に、ということにでもしておきますが、とにかく新たに図版化してみました。
こちらになっております。
この図版もおまけにつけて、気になるお値段はわずかに九十九円。
なんとか出したってもらえまへんか大将。
さすが梅雨とあって一日むしむししてるのにはまいってしまいますが、これが出ました。
▼双葉社:日本推理作家協会賞受賞作家 傑作短編集 3 隣りの不安、目前の恐怖乱歩作品はなにが採られてるんだろう、と思っていたのですが、なんのことはない、というべきか、あるいは、なんということか、というべきか、とにかく「陰獣」でした。
それから、これも出てました。
マガジンスペシャル買ってきたぞー!PEACH-PIT先生のポスターやっぱり素敵♡問題は、どうやって雑誌から切り離すかってとこだな(´°ω°`) pic.twitter.com/G1YGFf2T50
— Yu-rabi (@rabi_yu) 2016年6月20日
出たとゆうからこうては来たが、この「TRICKSTER」とやら、乱歩とはほぼ無関係な漫画ではないかいな。
「江戸川乱歩『少年探偵団』より」とはなってますけど、クレジットはこんな感じです。
キャラクターデザイン:PEACH-PIT
漫画:マントヒヒ・ビンタ
原作:Jordan森杉
脚本:吉田恵里香
ちなみに「マガジンSPECIAL」7月号、厚さは四センチ近くあるんですけど、この手の雑誌が書斎で増殖してスペースを占拠してゆくのはほんとに困ったことだと思います。
さて、「二銭銅貨」九十九円電書化計画の件ですが、おまけはなにがいいのか、というと、これは小説でもOKだと思われます。
というのも、作中に、
「俺は暗号文については、以前に一寸研究したことがあるんだ。シャーロック・ホームズじゃないが、百六十種位の暗号の書き方は俺だって知っているんだ。── Dancing Men 参照──で、俺は、俺の知っている限りの暗号記法を、一つ一つ頭に浮べて見た」
と記されていて、作者が参照しろといってるわけですから、その意を汲んでドイルの「踊る人形」を収録してやっても面白いのではないか。
さいわい、青空文庫で公開されてますし。
▼青空文庫:踊る人形
しかし、全文を収録する必要はないかもしれません。
作者が参照しろといってるのは、青空文庫のテキストからホームズの言を引きますと、
「私はそれなりに暗号の類型を熟知しておりまして、その主題でつまらない小論を書いたこともあり、その中で百六十種の暗号法を分析してはいたのですが、正直、今回のものは私も初めて見ました」
とあるあたりですから、いくら青空文庫のテキストがつかえるからって、「踊る人形」をまるっと収録するなんてのはちょっとばかみたいな話なのかもしれません。
それに、「二銭銅貨」には「踊る人形」以外に「黄金虫」への言及も見えますから、どうせ短篇一本まるごと収めるというのであれば、どう考えたってそら「踊る人形」よりは「黄金虫」でっしゃろ。
青空文庫にも入ってます。
▼青空文庫:黄金虫
しかしなあ、かりに「黄金虫」を収録するとなっても、この佐々木直次郎の訳文はとてもつかえはしないであろうなあ。
なぜかというと、もとより代訳であるとはいえ、乱歩は改造社の世界大衆文学全集『ポー、ホフマン集』で「黄金虫」を訳しているからです。
「二銭銅貨」九十九円電書に収録された「黄金虫」が乱歩訳とされている文章ではない、なんてことになったら、世の乱歩ファンからきついお叱りを受けてしまうことになるものと予想されます。
とはいえ、『ポー、ホフマン集』の「黄金虫」を入れるとなると、訳文全文、自分で入力しなければならんからなあ。
しかも、かりに乱歩訳「黄金虫」をきっちり収録してみたとしても、どうせ代訳じゃねーかばーか、バッタもんで商売してんじゃねーよたーこ、だあれが九十九円も出すと思ってんだこのすっとこどっこい、とかいわれてしまいそうだもんなあ。
それから、「黄金虫」とは関係のないところで、「二銭銅貨」電書化計画にまたひとつ新たな課題が浮かびあがってきて、というのは、青空文庫の「踊る人形」で作中に使用された図版、例の人形の絵なわけですけど、あの図版を目にしたとき遅ればせながらようようやっと、「二銭銅貨」を電書化するためには点字の図版を制作しなければならんがな、ということに気がついてしまいました。
造作なく制作できるはずではあるんですけど、試験的に一冊つくってみるつもりだった「二銭銅貨」の九十九円電書、結構大変なことになってきてるのではないでしょうか。
「二銭銅貨」の九十九円電書に乱歩による自註自解を収録するとなると、そんなテキストは青空文庫には転がっていませんから、ひとつひとつキーボードを叩いて入力しなければなりません。
ただし、「二銭銅貨」への直接的な言及だけを拾えばいいわけですから、それほど難儀な作業ではないものと思われます。自註自解を入れるとなると、「二銭銅貨」に寄せられた批評感想のたぐい、つまり小酒井不木の「『二銭銅貨』を読む」をはじめとした同時代評も収めたほうがいいのではないか。
じつは昔、『乱歩文献データブック』をつくったとき、記載した乱歩文献の附随データとして、
「♥は、その文献で言及されている乱歩作品のタイトル。小説のほか随筆、評論、著書も含み、著書のタイトルが小説のタイトルと重複している場合は『 』で括った」
とか正気の沙汰とは思えない小細工を弄しており、ただしこれ、乱歩没後の文献は対象としてないんですけど、とにかくこうしたデータをすでに拾ってあるわけですから、このうちの「二銭銅貨」をチェックしてけばいいだけの話だということになります。
恥ずかしながら『乱歩文献データブック』では見落としていた乱歩文献、というのも当然あるわけで、刊行後に判明したものも含めて簡単に調べてみましたところ、昭和13年の中島親「日本探偵小説史」あたりが戦前の探偵文壇における「二銭銅貨」への最後の言及ということになるようです。
同時代評、というくくりで収録するのであれば、まずそのへんまでで充分だろうと思われます。
ちなみに、昭和13年というのは戦前最後の探偵雑誌「シュピオ」が終焉を迎えた年であり、その前身たる「探偵文学」が乱歩特集を組んだのは昭和10年のこと。
そのころには乱歩の登場を文学史に位置づける試みも始められていて、昭和10年の『日本文学大辞典』では木村毅が、翌11年の『世界文芸大辞典』では森下雨村が乱歩の項を担当していますから、そこに見える「二銭銅貨」関連の記述を抜粋しておくことにもいくらかの意義はあろうと判断されます。
というか、この試みは平凡社版乱歩全集の巻末に配された「批評集」の「二銭銅貨」版とも呼ぶべきもので、天国の乱歩の意にも必ずや沿うものであろうと確信する次第です。
しかし、自註自解と同時代評の合わせ技一本だけで、はたして九十九円分の価値があるのかどうか、ということになりますと、はっきりゆうて無理でっしゃろな。
ところで、「週刊現代」最新号には、映画「屋根裏の散歩者」のこんな写真が掲載されてますのんえ。
まあいやらし。
てゆーか、「週刊現代」一冊で四百三十円しましたけど、それに比べれば九十九円なんて屁でもねーだろ、という気がしないでもないんですけど。
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