Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2017.05.03,Wed
大型連休も後半に突入いたしました。
私はきょうも犬と納屋に籠もる予定ですが、京都市の図書館がやらかした、と報じられましたので、なにやら他人事とは思われず、無断転載しておきます。京都新聞
桑原武夫氏の蔵書1万冊廃棄 京都の図書館、市職員処分
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館内に設置されている故桑原武夫氏の記念コーナー(27日午後0時25分、京都市右京区・市右京中央図書館)
京都大人文科学研究所を拠点とした「新京都学派」を代表する仏文学者、故桑原武夫氏(1904~88年)の遺族が京都市に寄贈した同氏の蔵書1万421冊を2015年、当時、市右京中央図書館副館長だった女性職員(57)が無断で廃棄していたことが27日、分かった。市教育委員会は同日、女性を減給6カ月(10分の1)の懲戒処分とした。
蔵書は1989年に市国際交流会館(左京区)が開館した際に寄贈され、一般公開されていた。市教委によると、2008年に京都に関する資料を収集する機能を備えた右京中央図書館がオープンしたのに合わせ、蔵書を同館に移動させたが、保存場所がないとして、向島図書館の倉庫に移した。15年に向島図書館の職員から、「置き場所がなく処分したい」と女性職員に相談があり、了承したという。
今年2月、市民から「蔵書を閲覧したい」と右京中央図書館に問い合わせがあり、同館職員が「廃棄した」と答えたため、市民が市教委に連絡。市教委が調査し、発覚したという。市教委は「貴重な蔵書を廃棄してしまい、大変申し訳ない」と話している。
女性職員は生涯学習部の担当部長で、27日付で部長級から課長補佐級へ降任した。
蔵書は日本文化研究、日本と世界の名著などの全集類のほか、政治や哲学の仏語原書など。右京中央図書館には、現在も「桑原武夫コーナー」として、桑原氏が生前に使用していた机や椅子、直筆のノートなど20点が置かれている。
桑原氏は「赤と黒」で知られる小説家スタンダールや「社会契約論」を著したルソーなどフランスの文学や哲学、評論などの研究で知られる。研究対象は人文科学全般に及び、哲学者の故鶴見俊輔氏や民族学者の故梅棹忠夫氏ら多くの学識者に影響を与えた。国際日本文化研究センター(西京区)の創設にも尽力。京大学士山岳会の遠征隊長を務めるなど登山家としても知られる。
【 2017年04月27日 15時00分 】
毎日新聞
桑原武夫蔵書
遺族に無断で1万冊廃棄 京都市が謝罪
毎日新聞2017年4月27日 15時00分(最終更新 4月27日 18時40分)
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桑原武夫さん
フランス文学者で元京都大教授、桑原武夫さん(1904~88年)の遺族から寄贈された蔵書約1万冊を、京都市が2015年に無断で廃棄していたことが、遺族側関係者などへの取材で分かった。利用実績が少なかったことから「保管の必要はない」と判断したという。市教委は判断が誤りだったと認め、遺族に謝罪した。
京都大人文科学研究所長などを務めた桑原さんは「ルソー研究」などで人文学に共同研究の手法を取り入れ、哲学者の梅原猛さんや故・鶴見俊輔さん、文化人類学者の故・梅棹忠夫さん、フランス文学者の故・多田道太郎さんらを育てた。戦後日本の知識人に大きな影響を与え、87年に文化勲章を受章した。
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桑原さんの遺族から寄贈された蔵書目録の一部=京都支局で
蔵書は、和漢洋の古典や文学、哲学、風俗など。学術的価値の高い一部は京都大などが保管しているが、市は名誉市民でもあった桑原さんの幅広い関心を物語る貴重なコレクションとして88年に寄贈を受けた。
市教委が遺族に伝えた報告によると、蔵書は当初、市国際交流会館(同市左京区)に書斎を再現した「桑原武夫記念室」で保管していた。2008年に新しく完成した右京中央図書館(同市右京区)に記念室を移した際、蔵書については市立図書館全体の図書と重複が多かったため、正式な登録をせずに旧右京図書館(同区)で保管。翌年に向島図書館(同市伏見区)の倉庫に移した。
その後、向島図書館も改修のため保管できなくなり、施設管理担当の職員が右京中央図書館の職員に相談。この際、蔵書に関する問い合わせが08年以降1件のみと活用されている状態でなかったことや「目録があれば対応できる」との判断から、遺族に相談せずに15年12月に廃棄した。
今年2月に一般利用者からの問い合わせで判明。市教委は3月、「先生の活動のもととなった貴重な蔵書を職員の認識不足で廃棄してしまった。取り返しのつかないことになり申し訳ない」と遺族に謝罪したという。
遺族の一人は「相談さえあれば他に受け入れ先を探せたかもしれない。『桑原武夫』という存在が忘れ去られたようで残念だ」と話している。
京都市教委は27日、蔵書の廃棄を了解したとして右京中央図書館副館長だった生涯学習部担当部長(57)を減給6カ月(10分の1)の懲戒処分にしたと発表した。【榊原雅晴】
NHK NEWS WEB
桑原武夫さんの蔵書1万冊余を廃棄 京都市立図書館
4月27日 19時05分
京都市の市立図書館が、フランス文学者で文化勲章受章者の故・桑原武夫さんの遺族から寄贈を受けた、1万冊余りの蔵書をすべて廃棄していたことがわかり、京都市は遺族に謝罪しました。
文化勲章受章者で京都大学名誉教授を務めたフランス文学者の桑原武夫さんが、昭和63年に83歳で亡くなった際に、遺族から桑原さんの蔵書1万冊余りが京都市に寄贈されました。
京都市によりますと、蔵書は市立の右京中央図書館が管理を担当し、市内の別の図書館の倉庫に保管していましたが、おととし12月、改修工事のため保管場所がなくなったなどとして、右京中央図書館で当時、副館長を務めていた女性の判断で、すべて廃棄したということです。
副館長は、桑原さんの蔵書であることを知っていましたが、大半が一般の蔵書と重複し、桑原さんの蔵書の目録を保存しておけばよいと考え、遺族の了解をえないまま廃棄の判断をしたということです。
ことし2月に、蔵書に関する外部からの問い合わせを受け、廃棄の事実がわかりました。
京都市は、遺族に謝罪するとともに、当時の副館長を減給6か月の懲戒処分にしました。
京都市によりますと、市の謝罪に対して遺族は「残念です」と話していたということです。
京都市の在田正秀教育長は「ご遺族はもとより、寄贈にご尽力いただいた関係者と市民の皆様に心からおわび申し上げます」とコメントしています。
蔵書の寄贈なんて、図書館にしてみたらじつはありがた迷惑な話なんどっせ、ということがよくわかります。
名張市立図書館も二十二年ほど、慶應義塾大学推理小説同好会OB有志その他のみなさんから頂戴した寄贈図書を地下書庫に死蔵してるわけですけど、あれも図書館にしてみれば邪魔で目障りなものでしかないにちがいありません。
しかし図書館関係者全員が知らん顔を決め込んでますから、そうなるともう存在しないのと同じことになってしまいます。
ほんと、いったいどうすればいいのやら。
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Posted by 中 相作 - 2017.05.01,Mon
手もとの電子書籍リーダー、キンドルペーパーホワイトには、ごく一部の例外を除き、価格ゼロ円のキンドル本しかダウンロードしないことを旨としてみると、読書ライフが俄然楽しくなりました。
いやまあ、読書ライフはそもそも楽しいものではありますけれど、キンドルで無料の本を読む楽しさは知りませんでした。暗いところでも読めますし、軽くて薄いですから手や腕の負担にもなりません。
納屋で犬と寝転がって読書するにはぴったりのツールです。
まあ、電子書籍とはしょせんその程度のものである、ということなのかもしれません。
未読だった漱石の「思い出す事など」をキンドルで読み進め、随筆というのはなかなか面白いものだとあらためて認識しましたので、これも読んだことがなかった漱石の「永日小品」をゼロ円でダウンロードしたところ、ロンドン時代も含めた断片的な回想が筆の力も手伝ってまことに興味深く、かと思うと集中の一篇「蛇」は「夢十夜」に通じる不気味さで、「永日小品」のあとは「夢十夜」をキンドルに。
いっぽう、紙の本では夏目鏡子述、松岡譲筆録の『漱石の思い出』を文春文庫で。
キンドルではちょっと長いものを読んでみたくなり、創元推理文庫で『魔都』が出るとか出たとかいう情報に接しましたので、現代教養文庫の久生十蘭傑作選で読んだきり内容なんてすっかり忘れていたのをさいわい、じゃあ読んでみるか、と思ってゼロ円のキンドル本をダウンロードしました。
ただ、電子書籍は紙の本に比べると、どうも記憶に残りにくい、読んでもすぐ内容を忘れてしまう、といったような印象があるのですが、これはむしろ加齢のせいだと考えるべきか。
とりあえず読んでるときに面白ければ、本なんてそれでいいという気もいたしますし。
Posted by 中 相作 - 2017.04.29,Sat
大型連休がスタートいたしました。
いかがお過ごしでしょうか。私はとくにどうということもありませんが、納屋および書斎の整理がようよう山を越えてやれやれといったところです。
整理の合言葉は、段ボール箱撲滅、といったことでした。
本でも雑誌でもコピーのたぐいなんかでも、とにかく段ボール箱に放り込んで積みあげてしまいがちなもので、いつかもご覧いただきましたが、コミック雑誌なんてこんな感じでした。
しかし近所のマックスバリュ名張店で貰ってきた段ボール箱などというのは色気にも雅趣にも風情にも欠けますから、むしろ段ボール箱の一掃を整理の第一目標に掲げるべきではないかと考え、鋭意邁進してまいりました。
おかげさまで段ボール箱の残存数は、書斎はゼロ、書庫兼トイレは一、納屋は三、ということになりました。
せっかくここまで片づいたんだから、もうやみくもに本や雑誌を買うのはやめよう、ときっぱり決意したいなと思いつつ、きょうもコミック誌を買ってしまいました。
こんなふうに紐をかけられて本屋さんの店頭に並んでましたから、乱歩がらみの連載が休載せずに載ってるかどうかを確認することもできませんので、とりあえず買ったわけなんですけど、ほんとうにもうこんな明け暮れからは足を洗わなくちゃ。
Posted by 中 相作 - 2017.04.26,Wed
中井洽さんのご逝去が報じられました。
▼NHK NEWS WEB:中井洽元衆院議員が死去 国家公安委員長など務める(2017年4月24日)いやー、まいった。
中井洽さんは慶應義塾大学推理小説同好会のご出身で、同好会OBのみなさんから名張市立図書館が、名張市は乱歩の生誕地だから、という理由でミステリ関連の蔵書を寄付していただく橋渡しをしていただいたかたなんですけど、このブログの読者諸兄姉はとっくにご存じのそのとおり、名張市立図書館は資料収集のことなんてなんにも知りません。
ですから寄贈を受けた資料も地下書庫に死蔵したまんま、いったい何をどうすればいいんだか見当もつかないありさまです。
そもそもいつごろの話だったのかというと、私が名張市立図書館のカリスマ嘱託を拝命した平成7・1995年10月にはすでに地下書庫に寄贈資料が鎮座してましたから、少なくとももう二十二年ほどがとこ、市立図書館は無策無能を決め込んでいることになります。
ただまあこれも無理からぬところで、名張市あたりのお役人なんてそれはもうびっくりするくらいあれですから、図書館が乱歩関連資料を収集するとしても古本屋さんでやみくもにあれこれ買い求め、それを本棚に並べたらもういっちょあがりなわけです。
書誌データ拾って体系化する、なんてことは思いもつきません。
要するに、図書館による資料収集を展示や陳列のレベルでしか考えられないという寸法です。
となると、死蔵してるよりはネットオークションで売りさばいたほうがまだましでしょうから、①永遠に死蔵、②ネットで売却、この二択の結論を名張市の市長さんに出していただこうと私は少し前から考えていたわけです。
名張市という低能自治体にできるのは、しょせんその程度のことなのね。
しかし、それももったいないといえばもったいない話ですから、名張市立図書館が収集した乱歩関連資料と寄贈を受けたミステリ関連資料、みんなまとめてどこか適当な図書館とか資料館とか、そういったところに寄贈して活用してもらう道はないものか、とぐずぐず思案していたところへ突如として、まさしく青天の霹靂のごとくもたらされたのが中井さんの訃報でした。
中井さんがまさか七十四やそこらでお亡くなりになるとは夢にも思ってませんでしたから、私としては寄贈図書に関して内心忸怩たるものをおぼえざるを得ない次第ですが、いまはただご冥福をお祈りするのみです。
合掌。
Posted by 中 相作 - 2017.04.24,Mon
自分はいったい何をしたのかと振り返ってみますに、これすなわち、本や雑誌を整理するために小さな納屋をつくったらいろいろ物入りで本や雑誌を買い求める余裕がなくなってしまった、ということなのかもしれません。
げんにたとえば国書刊行会の新編日本幻想文学集成、乱歩が収録された巻も買いそびれたまま木の芽どきに突入してしまいました。ただまあ、ほんとに、もうばかみたいに必死になって乱歩の本を身柄確保しつづけなくてもいいんじゃねーの? という気はいたします。
というか、気がしてしかたありません。
乱歩関連の本や雑誌を引き受けて末永く保存活用してくれる公的施設があれば話は別ですが、というか、そんな公的施設があるとすれば名張市立図書館がその筆頭なんですけど、そんな器用な芸当、あの図書館にはとても無理です。
だったら三重県立図書館は? というと、あそこも私同様に余裕がないみたいで、話はいささか旧聞に属しますが、昨年11月25日の中日新聞の記事、ちょっと必要があってスキャンした画像が残ってましたので、天下御免の無断転載。
三重県も伊勢志摩サミット押しつけられたりなんやかんやで大変みたいです。
毎日新聞の記事。
三重県
財政難 人件費31億円を削減 サミット負担重く
毎日新聞2017年2月6日 13時32分(最終更新 2月6日 23時50分)
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伊勢志摩サミットで伊勢神宮内宮を訪問し、参道を歩く安倍晋三首相ら各国首脳=三重県伊勢市で2016年5月26日、代表撮影
17~19年度の3年で
三重県は、予算の財源不足を賄うため、2017~19年度の3年で人件費31億円の削減を県職員労組と県教職員組合に申し入れ、合意したことが6日、関係者の話でわかった。昨年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催の負担などがのしかかり、厳しい予算編成を強いられた。県は今月中に県議会に一般会計当初予算案と関係条例の改正案を提出する見通し。
関係者によると、削減対象は、県職員と教職員、警察官の計約2万4000人の人件費。削減額は、管理職分が7億円、一般職員分が24億円となる。今後3年間にわたり、年2回の期末・勤勉手当(ボーナス)から減額する。16年度の人件費は2227億円だった。
県の財政は22年度の公債費償還のピークを前に厳しさを増している。16年度のサミット関連予算は、国の補助を除いた県の負担は49億円余。うち約35億円に県債を充てた。
17年度一般会計当初予算案は総額7011億円の見通し。財源不足に苦しみ、県は1月中旬、両労組に「人件費を含む財政調整」の協議を申し入れた。11年の鈴木英敬知事就任後、人件費削減は3回目となり、両労組は反発していたが、「断腸の思いで妥結」(県職員労組)した。【田中功一、井口慎太郎】
財政難に対処するに、三重県は人件費の削減という最後の手段に訴えましたが、名張市は固定資産税の税率引き上げという意想外の手法をくり出しました。
しかしまあ、そうでもしないことには前市長のセックススキャンダルに幕引きもできなかったわけだからなあ。
なんか、名張市ってもう無茶苦茶じゃね?
Posted by 中 相作 - 2017.04.23,Sun
私が今年の木の芽どき、いつの年にも増して精神的に不安定だったのは、納屋にまつわるあれこれのせいで気もそぞろになっていたからかもしれません。
納屋ひとつ建ててみるとやはり想定外の必要品というのが避けがたく出てくるもので、このブログに記したところでは遮光ロールスクリーンやWi-Fi中継機なんてそもそもそんな商品が存在することすら知らなかったものを買い求めねばなりませんでしたし、ほかにもたとえば納屋に子機を置くため子機を二台備えたファクスつき電話機を導入したりなんかして、それはもう名張市内のホームセンターや家電量販店や百円ショップを春の嵐にあおられたみたいにいくたびもきりきりと巡回する仕儀となりました。ですから本を買うことがお留守になり、というか、きりがないからもういいのではないか、という気になり、乱歩の新刊の比較的高価なものは購入しないまま春を過ごしつつあります。
もういいのではないか、という気には去年もなって、こんなことを記しました。
▼2016年4月28日:そうだ、ゆるキャラになろう
私という人間には木の芽どきになるとこんなことを口走る傾きがあるのかもしれませんが、去年、私をして、こんな本を買わされるのはどうしてもいやだ、死んでもいやだ、と思わしめてくれたゴマブックスは今年、こんな本を出しちゃってくれちゃいました。
▼Amazon.co.jp:〔大活字名作シリーズ〕怪人二十面相 上
▼Amazon.co.jp:〔大活字名作シリーズ〕怪人二十面相 下
二冊で六千円もしますのんえ。
コマブックスもたいがいにしとかなあかんで。
Posted by 中 相作 - 2017.04.22,Sat
書棚をざっと調べると「思い出す事など」を収録した漱石の本は二冊見つかりましたが、青空文庫のテキストにもとづくキンドル本が無料で入手できますので、それをキンドルにダウンロードしました。
妙なもので、有料の電子書籍をダウンロードするのは、キンドルをなくしたらそのなかのすべての本が一瞬にして失われてしまうから、みたいな理由でとても躊躇されますが、というか、ダウンロードした有料電子書籍は小学館の乱歩全集と『「坊っちゃん」の時代』だけなんですけど、無料の電子書籍となるとためらうことなくダウンロードできてしまう自分がなさけない。それはさておき、「
▼青空文庫:思い出す事など > 十九
まさしく煢然として老いつつある身としては、まことにおこがましいことを申しますが、漱石の境涯が他人のものとは思えませんでした。
『「坊っちゃん」の時代』を読み終えたのは、誰の齢かと思っちゃう六十三歳もそろそろ終幕、納屋の普請が済んであれやこれやの雑務が押し寄せてきていたころでしたけれど、乱歩関連の雑誌を納屋の書棚に整理してそれを眺めたりなんかしていると、なんかここ二十年ほど、結局は時間とお金の無駄づかいをしてきたのではないかという気がしてきて、とくに横にして積みあげたコミック誌の山なんかには泣きたいような気分にさせられてしまいます。
ほんとにコミック誌なんか買っても無駄なだけだ、と思いつつ、きょうもきょうとて「乱歩アナザー」が連載されている「少年マガジンエッジ」を買ってきてしまい、そのせいでまた自己嫌悪めいた感情を抱いている始末。
自己嫌悪といえば、Wi-Fiの中継機ひとつ満足に扱えなかったときには自分の愚かさにほとほと愛想が尽きてしまい、乱歩作品に登場するせりふから引けば「えっ、くそ、死んじまえ、死んじまえ、死んじまえ……」といった絶望的な自己嫌悪にのたうちまわってしまいましたが、こうした精神の不安定、いわゆる木の芽どきというやつのせいだったんでしょうか。
Posted by 中 相作 - 2017.04.20,Thu
『「坊っちゃん」の時代』の第五部「不機嫌亭漱石」では、いわゆる修善寺の大患が描かれます。
明治も暮れ方のある夏、漱石は胃潰瘍の入院加療を終え、伊豆修善寺の菊屋旅館で転地療養の日々を送りますが、ある日、大量に血を吐いて死線をさまよいます。というか、ほぼ死んでしまい、また生き返ってきます。
第五部の第一章は「雨降る」。
幕開けは、漱石が雨のなか、人力車で菊屋旅館へ向かうシーンです。
はっはーん、と私は思いました。
なにしろ『「坊っちゃん」の時代』に乱歩が登場すると思い込んでいたものですから、修善寺で療養している漱石と、母方の祖母と熱海で夏休みを過ごし、雨の日のつれづれに貸本屋で黒岩涙香の『幽霊塔』を借りて読んだ乱歩とが、どこかですれ違ったりなんかする筋立てになっているのであろうな、と踏んだわけです。
第五部以前にも村山槐多や南方熊楠がカメオ出演していましたから、乱歩もきっとその伝であろう。
しかし、平井太郎少年は最後まで姿を見せず、肩透かしをくらった私はおおきに茫然といたしましたが、そのいっぽうで「
あとで調べてみたところ、煢然というのは、孤独なさま、たよりないさまを意味する形容動詞でした。
ちなみに漱石は四十九歳で死去していて、修善寺の大患は四十三歳のときのこと。
さらにちなみに乱歩の父親、平井繁男は漱石と同じ慶応3年生まれです。
第五部第十四章「煢然として独り老ゆ」に描かれた漱石の独白は、いったいどの作品にもとづいているのか。
ネット検索した結果、青空文庫の「思い出す事など」がひっかかってきました。
▼青空文庫:思い出す事など
明治43年から翌年にかけて朝日新聞に連載された随筆です。
Posted by 中 相作 - 2017.04.19,Wed
あっちこっちなかなか片づきません。
気の向くまま、ふと思いついて、キンドル本で読んだ関川夏央さんと谷口ジローさんの『「坊っちゃん」の時代』から、とても印象に残った漱石の独白、つまり吹き出しですけど、それを引用してみます。第五部「不機嫌亭漱石」の第十四章「煢然として独り老ゆ」、すなわち全体の最終章のいっこ前の章なんですけど、以下、吹き出し単位で一行あけながら。
相撲が四 つに
組んでかっきり
合ったとき
土俵のまん中に
立つ彼らは
存外 に静かだ
けれども
その腹は
一分とたたぬ
うちに恐るべき波を
打つ 汗は幾筋と
なく流れ落ちる
二人の力士が
一見落ち着いて
いるのは相克
する力がわずかに
平均を得ている
からで
これを
互殺 の
和 という
自分の
生活もまた
同じだ
自分は
つとめて
静かに日々を
消光 している
かに見えて
その内実は
妻子を養わんが
ために世間と
組み合って
互殺の和の
脂汗をした
たらせている
柔和な笑いの
下に殺伐 の気を
みなぎらせている
官の権威を
借りず また
組織の一員たる
こともせず
自活自営の
道を歩む個人に
とって 自然は公平
で冷酷な敵だ
……
そして社会は
不正で人情
のある敵だ
……
そう思う
自分さえ
日に
何度となく
自分の敵になる
疲れても
已 め得 ぬ戦いを
持続しながら
煢然 として
独 り老いるのは
惨 めというほか
はない
惨めという
ほかはなくとも
……
僕は
官の世話に
ならない
大学の世話に
ならない
博士号の
世話にも
ならない
一介 の
夏目金之助と
してこの苦 を
引き受けて
偶然生還
したこの世に
とどまる心算 だ
いらん
ものは
いらんのだ
いやな
ものは
いやなのだ
「煢然」ということばの意味はわかりませんでしたが、「煢然として独り老いるのは惨めというほかはない」という独白がひえびえと胸に迫ってくるのをおぼえました。
Posted by 中 相作 - 2017.04.17,Mon
きょうはまた肌寒くなりましたけど、きのうは初夏のような一日になり、名張市にある乱歩ゆかりの
ほんとに死に絶えてました。
名張のまちは本当にもう死んでしまいました。
帰り道、人影のない参道は静まり返り、桜はすでに葉桜、空には気の早い鯉のぼりが見えておりました。
六十五年前の9月、この神社で川崎秀二代議士の応援演説をしたあと、乱歩はこの坂を下って清風亭まで歩いたのか、と不意の感慨をおぼえながら、私も同じように坂道を歩いて、自動車を停めてあったイオン名張店まで戻りました。
イオン名張店三階にあった地元資本の本屋さんも、一階にあったチェーン店のコーヒーショップも、すでに撤退して、立ち寄る先がないものですから、自動車でそのまま家へ。
それから、納屋へ。
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