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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2017.04.20,Thu

 『「坊っちゃん」の時代』の第五部「不機嫌亭漱石」では、いわゆる修善寺の大患が描かれます。

 明治も暮れ方のある夏、漱石は胃潰瘍の入院加療を終え、伊豆修善寺の菊屋旅館で転地療養の日々を送りますが、ある日、大量に血を吐いて死線をさまよいます。

 というか、ほぼ死んでしまい、また生き返ってきます。

 第五部の第一章は「雨降る」。

 幕開けは、漱石が雨のなか、人力車で菊屋旅館へ向かうシーンです。

 はっはーん、と私は思いました。

 なにしろ『「坊っちゃん」の時代』に乱歩が登場すると思い込んでいたものですから、修善寺で療養している漱石と、母方の祖母と熱海で夏休みを過ごし、雨の日のつれづれに貸本屋で黒岩涙香の『幽霊塔』を借りて読んだ乱歩とが、どこかですれ違ったりなんかする筋立てになっているのであろうな、と踏んだわけです。

 第五部以前にも村山槐多や南方熊楠がカメオ出演していましたから、乱歩もきっとその伝であろう。

 しかし、平井太郎少年は最後まで姿を見せず、肩透かしをくらった私はおおきに茫然といたしましたが、そのいっぽうで「煢然けいぜんとして独り老いるのは惨めというほかはない」という漱石の内的独白に切実な共感をおぼえました。

 あとで調べてみたところ、煢然というのは、孤独なさま、たよりないさまを意味する形容動詞でした。

 ちなみに漱石は四十九歳で死去していて、修善寺の大患は四十三歳のときのこと。

 さらにちなみに乱歩の父親、平井繁男は漱石と同じ慶応3年生まれです。

 第五部第十四章「煢然として独り老ゆ」に描かれた漱石の独白は、いったいどの作品にもとづいているのか。

 ネット検索した結果、青空文庫の「思い出す事など」がひっかかってきました。

 青空文庫:思い出す事など

 明治43年から翌年にかけて朝日新聞に連載された随筆です。
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