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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.04.25,Thu
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Posted by 中 相作 - 2017.04.19,Wed

 あっちこっちなかなか片づきません。

 気の向くまま、ふと思いついて、キンドル本で読んだ関川夏央さんと谷口ジローさんの『「坊っちゃん」の時代』から、とても印象に残った漱石の独白、つまり吹き出しですけど、それを引用してみます。

 第五部「不機嫌亭漱石」の第十四章「煢然として独り老ゆ」、すなわち全体の最終章のいっこ前の章なんですけど、以下、吹き出し単位で一行あけながら。

相撲がつに
組んでかっきり
合ったとき

土俵のまん中に
立つ彼らは
存外ぞんがいに静かだ

けれども
その腹は

一分とたたぬ
うちに恐るべき波を
打つ 汗は幾筋と
なく流れ落ちる

二人の力士が
一見落ち着いて
いるのは相克あいこく
する力がわずかに
平均を得ている
からで

これを
互殺ごさつ
という

自分の
生活もまた
同じだ

自分は
つとめて
静かに日々を
消光しようこうしている
かに見えて

その内実は
妻子を養わんが
ために世間と
組み合って

互殺の和の
脂汗をした
たらせている

柔和な笑いの
下に殺伐さつばつの気を
みなぎらせている

官の権威を
借りず また
組織の一員たる
こともせず

自活自営の
道を歩む個人に
とって 自然は公平
で冷酷な敵だ

……
そして社会は
不正で人情
のある敵だ

……
そう思う
自分さえ

日に
何度となく
自分の敵になる

疲れても
ぬ戦いを
持続しながら

煢然けいぜんとして
ひとり老いるのは
みじめというほか
はない

惨めという
ほかはなくとも
……

僕は
官の世話に
ならない

大学の世話に
ならない

博士号の
世話にも
ならない

一介いつかい
夏目金之助と
してこの
引き受けて

偶然生還
したこの世に
とどまる心算つもり

いらん
ものは
いらんのだ

いやな
ものは
いやなのだ

 「煢然」ということばの意味はわかりませんでしたが、「煢然として独り老いるのは惨めというほかはない」という独白がひえびえと胸に迫ってくるのをおぼえました。
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