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Posted by 中 相作 - 2015.11.18,Wed
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 平成27・2015年11月15日 サイゾー

【江戸川乱歩】フェロモン香水を映画館でぶちまけた? 3ヴァージョン存在し、その全作がDVD化されない映画『RAMPO』の謎
 天野ミチヒロ
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【江戸川乱歩】フェロモン香水を映画館でぶちまけた? 3ヴァージョン存在し、その全作がDVD化されない映画『RAMPO』の謎

2015.11.15

――絶滅映像作品の収集に命を懸ける男・天野ミチヒロが、ツッコミどころ満載の封印映画をメッタ斬り!

今回の映画「映画誕生100年 江戸川乱歩生誕100周年記念 松竹創業100周年作品」『RAMPO』(94年)

 今年は江戸川乱歩没後50年(1965年7月28日没)にちなみ、フジテレビの深夜アニメ枠では、命日に合わせて7月から『乱歩奇譚 Game of Laplace』が放送されていた。これは、「乱歩作品初のアニメ化」という触れ込みだったが、フジテレビは1968年に虫プロダクションが制作した『わんぱく探偵団』を放送していたことをお忘なのだろうか(笑)?

 それはさておき、1994年の乱歩生誕100周年の際、同時に創業100年を迎えた松竹が総力を挙げた大作が公開された。その作品こそ、「映画誕生100年 江戸川乱歩生誕100周年記念 松竹創業100周年作品」と銘打たれた『RAMPO』だ。だが、この作品は内紛をきっかけにふたりの監督による2つのヴァージョンが作られ、同日に別々の劇場で上映されるという日本映画史上前代未聞の事態に発展した。さらに松竹社内でお家騒動が勃発し、その影響で翌年公開された海外輸出版を含める3ヴァージョンのいずれもが、未だDVD化されていない。

■『RAMPO』のあらすじ



※画像:『RAMPO』黛りんたろうver.

 ミステリー小説を「探偵小説」と称していた昭和初期の東京。江戸川乱歩(竹中直人)は、とある事件で夫殺しの嫌疑をかけられている女性・静子(羽田美智子)に興味を惹かれる。その殺人事件の状況が、発禁になった自分の小説『お登勢登場』にそっくりだったためだ。乱歩は小説の中に、己の分身・明智小五郎(本木雅弘)を登場させ静子を助けようとしたが…。

 横溝正史役に香川照之が起用され、ほかにも佐野史郎、平幹二朗ら、実力俳優が脇を固め、現実と小説世界が交錯しながら、怪しく繰り広げられる乱歩の幻想世界……。

■名物プロデューサー・奥山和由とは?

 作品をプロデュースしたのは、35歳の若さで松竹取締役に就任した名物プロデューサー・奥山和由(現、KATSU-do代表取締役、チームオクヤマ代表取締役社長、祇園会館代表取締役社長、吉本興業エグゼクティブプロデューサーなど)。

 奥山は『その男、凶暴につき』(89年)で北野武監督を見出し、「シネマジャパネスク」なる未だよくわからない実験的プロジェクトで、ショーケン主演の伝説的テレビドラマ『傷だらけの天使』をトヨエツこと豊川悦司で映画化(97年、監督・阪本順治)、御大・今村昌平監督の『うなぎ』(97年)をヒットさせるなど、話題作を次々とプロデュースした。

 また、製作資金を投資家(企業など)から調達し興行成績に応じて配当、企画内容は投資家に文句を言わせないプロデューサー主導の「映画投資ファンド」を日本で初めて立ち上げた。奥山は90年代の邦画界を席捲した時代の寵児だった。

 しかし鳴り物入りのこの作品は、なんとヴァージョンの異なる2種類の『RANMPO』が、別々の映画館で上映されるという異常事態となった。NHKの演出家・黛りんたろう監督が完成させた作品が、大衆娯楽作品を目指す奥山としては納得できない出来だったためだ。奥山は撮り直しを命じたが、黛監督はこれを拒否。そこで急遽、奥山自身がメガホンを取り、黛版の実に約70%に及ぶシーンを撮り直したのだ。

【江戸川乱歩】フェロモン香水を映画館でぶちまけた? 3ヴァージョン存在し、その全作がDVD化されない映画『RAMPO』の謎

■ふたつの『RAMPO』の違い



※画像:『RAMPO』奥山和由ver.

 奥山は出演者やスタッフの一部変更を行い、黛が描いた魔性の女としての静子、彼女の足を舐め回す変態侯爵(平幹二朗)などを修正し、再編集された作品は過剰なまでサービス精神のあふれたものとなった。

 主題歌を変更し、『お登勢登場』のアニメパート、『ゴースト ニューヨークの幻』の脚本家ブルース・ジョエル・ルービンによる英語ナレーションを追加。端役に大槻ケンヂ、三浦友和、阿部寛などを散りばめ、出版パーティーのシーンでは、今やAKBグループの総帥・秋元康、『ベルばら』漫画家・池田理代子、俳優・原田芳雄、アイドル歌手・早見優、作家・林真理子、映画監督の深作欣二に若松孝二、アナウンサーの八木亜希子・河野景子・寺田理恵子など、本筋とは無関係の有名人を大勢登場させた。

 そして話題を呼んだのが、劇中に挿入されたサブリミナル映像。ちなみに、1995年にTBSで放送されたオウム真理教関連番組でのサブリミナル映像が問題となり、同年の奥山版『RAMPO』のWOWWOW放送では、18か所のサブリミナルシーンがカットされた(現在、映画やテレビ放送では全面的に禁止)。

 さらに背景や音楽に使用した「1/fゆらぎ理論」。正直、私の頭では何のことだかわからないが、癒しの効果があるのだそうだ。さらに奥山ギミックはまだ終わらない。観客にセクシーな気分になってもらうため、劇場内にフェロモンを含ませた香水を散布したのだ。作品がビデオ化された際も「このシールに触れるとRAMPOフレグランスミストが香ります」とビデオ本体に書いてあり、同フェロモンをお茶の間にもお届けする徹底したサービスぶりには脱帽というか、呆れた(笑)。ちなみに私がビデオを入手した時はレンタル落ちの中古品だったので、匂いは既に消えていた。

 こうして2つの『RAMPO』が併存する運びとなり、黛版は93分で、キャッチコピーが「ミイラになるなよ、明智君」。奥山版は97分で「夢こそ まこと」というキャッチ。黛りんたろうのクレジットは「脚本協力・監督協力」だった。また、海外輸出用として奥山版に未公開シーンを加え103分に編集し、音楽を川崎真弘から千住明の楽曲に差し替えた『RAMPO インターナショナル・ヴァージョン』も存在し、これは日本でも1995年に公開された。

【江戸川乱歩】フェロモン香水を映画館でぶちまけた? 3ヴァージョン存在し、その全作がDVD化されない映画『RAMPO』の謎

■突然のクーデターによる解任劇



※画像:『RAMPO』インターナショナルver.

 1998年、取締役会で大谷信義専務らのクーデターが起こり、奥山は父の融社長と共にスピード解任された。松竹は「2人の独断的な人事や投資によって映像部門は閉塞状況にあり、この事が業績不振の大きな要因である」と発表し、大谷専務が新社長に就任した。保守派に革新派の奥山親子が追放された形だが、死者も出た先代社長に遡る長い派閥抗争の結末とみる向きが強い。

 これが尾を引き、『RAMPO』以外の奥山作品の多くが未だDVDとして発売されず、松竹系列の劇場でも上映されていない。稀にいくつかの作品が上映されたこともあるが、奥山の名前はクレジットから外されていたという。一切水に流して、3ヴァージョンが同梱された『RAMPO パーフェクトBOX』なんて、夢の夢?
(文=天野ミチヒロ)

■天野ミチヒロ
1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイト ネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物 (UMA)案内』(笠倉出版)など。新刊に、『蘇る封印映像』(宝島社)がある。
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