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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.05.06,Mon
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Posted by 中 相作 - 2011.02.17,Thu
書籍
 
江戸川乱歩に愛をこめて
 編:ミステリー文学資料館
 平成23・2011年2月20日初版一刷 光文社 光文社文庫
 A6判 カバー 371ページ 本体686円
 
p3
まえがき
 ミステリー文学資料館
p7ー20
講談・江戸川乱歩一代記
 芦辺拓
 初出:文藝別冊江戸川乱歩 2003年 河出書房新社
p21ー64
無闇坂
 森真沙子
 初出:小説王 1995年1月号
p65ー84
新・D坂の殺人事件
 恩田陸
 初出:青春と読書 1998年2月号
p85ー131
屋根裏の散歩者
 有栖川有栖
 初出:小説中公 1993年10月
p133ー139
屍を
 江戸川乱歩、小酒井不木
 初出:探偵趣味 昭和3年1月号
p141ー186
悪魔のトリル
 高橋克彦
 初出:別冊小説現代 冬号 1983年12月
p187ー218
死聴率
 島田荘司
 初出:小説現代 1985年2月号
p219ー250
怪人明智文代
 大槻ケンヂ
 初出:アート偏愛 異形コレクションXXXIV 井上雅彦監修 光文社文庫
p251ー283
東京鐵道ホテル24号室
 辻真先
 初出:問題小説 2008年12月号
p285ー320
女王のおしゃぶり
 北杜夫
 初出:オール讀物 1966年3月号
p321ー356
小説・江戸川乱歩の館
 鈴木幸夫
 初出:小説宝石 1969年8月号
p357ー371
解説
 新保博久
 
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まえがき
 
ミステリー文学資料館  
 
 先に当館では『シャーロック・ホームズに愛をこめて』およびその続編を刊行してご好評をいただきました。ホームズのように模作、贋作、パロディが後続作家によって数多く書かれ、原典の魅力を盛り上げている例を日本で探すなら、金田一耕助や明智小五郎といった名探偵をしのいで、明智小五郎の生みの親・江戸川乱歩そのひとを挙げるべきでしょう。
 
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講談・江戸川乱歩一代記
 
芦辺拓  
 
 本日は、探偵小説家・江戸川乱歩の一代記をお話しいたします。
 江戸川乱歩、本名を平井太郎と申します。いたって、普通のお名前で、明治二十七年、西暦では一八九四年の十月二十一日に平井家の長男として、現在の三重県名張市、当時で申しますと名賀郡名張町に生まれました。
 
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無闇坂
 
森真沙子  
 
 1
 
 千駄木界隈。それが津川美由紀の住んでいた町だ。
 下町にとりたてて思い入れがないわたしには、この町はどこか痛ましく、無残に見える。
 古い家並みのそこここに今風のマンションが醜く浮き上がり、地上げされた家が廃屋のまま、影のように放置されていたりする。
 
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新・D坂の殺人事件
 
恩田陸  
 
 今日も渋谷の駅前は、毒々しいようでいて驚くほど均一な色彩の若者でいっぱいだ。
 D坂への入口は、季節の折々に、企業と市場の思惑に、次々と浮気に仮面を付け替えてゆくファッションビルの広場になっている。人待ち顔、営業の顔、暇潰しの顔とさまざまな表情──だがそれでいて兄弟ではないかと思うほど似ている顔の群れ。
 
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屋根裏の散歩者
 
有栖川有栖  
 
 1
 
 時計の針は午後十一時を回ろうとしている。
 駅横の暗い自転車置場で、高津真希子は深い溜め息をついた。朝とめた場所に自転車がない。前と後ろに二つ、しっかりと施錠しておいたのに盗難にあったらしい。この三年間で二度経験があるだけに、やられたな、とすぐに感じた。念のために目を凝らして場内をぐるりと見て回ったが、やっぱりどこにもなさそうだ。
 
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屍を
 
江戸川乱歩、小酒井不木  
 
 ガラス窓をあけてしのびこむなり、彼はほッと一息ついた。戸外には冬雨がしとしと降って居た。若しあかりがついて居たならば、彼の顔も衣服も、びっしょり濡れて居る筈である。けれども中はまっ闇であった。そうして夜の静かさがあった。それはまったく文字通りの静かさであった。というのは、そこは法医学教室に属する死体解剖室であって、現にその地下室には一個の死体が置かれてあるからである。
 
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悪魔のトリル
 
高橋克彦  
 
 1
 
 これは奇妙な話である。
 一体、どこまでが本当で、どこからが幻想なのか、話を聞いていた当の私にも分からない。ただ、あの夜のことを思いかえしてみると、雨が静かに降り続くなか、パールマンの弾いていたヴァイオリンの哀しい音色だけが私の脳裏に鮮やかによみがえってくるばかりだ。舞台としてはできすぎている。だからこそ、私にはあの話が作りものだったのか、それとも本当の話だったのか、今になってみると、自信がもてなくなってしまうのである。
 
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死聴率
 
島田荘司  
 
 1
 
 八五年の正月があけたばかりだというのにこんな暗いお話をするのはまことに心苦しい限りなのですが、けれどもどうしてもお話しせずにはいられない心境なのです。お許し下さい。
 あれからすでに七年が経ってしまいました。いっときはあれほど世を騒がせた事件なのに、もう一般の人の記憶からはすっかり忘れ去られようとしています。しかしこれは今、私が七年目にしてあかす、あの事件の驚くべき裏側なのです。
 
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怪人明智文代
 
大槻ケンヂ  
 
 晩秋の夕暮れは早く、五時ともなれば住宅街に灯りがともり始めた。けれど空の西方がまだうす明るい。まさに江戸川乱歩が書いた──電灯の光と、空の明るさが、ちょうど同じくらいという、あの、なんとなくへんな気持ちのする時間──に、ゆっくり近づこうとしていた。
 「大槻さん、僕ら外観を撮影してますんで、しばらく休憩していてください」
 
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東京鐵道ホテル24号室
 
辻真先  
 
 東京ステーションホテルは、一九三三年から一九四五年までの鉄道省直営時代は、「東京鐵道ホテル」と改称していた。(レールウェイライター 種村直樹氏著作による)
 
 0
 
 今年の夏も炎暑であった。
 日頃無表情な彼さえウンザリ顔で、抜けるような空を見上げていた。
 その顔に、わずかな緊張感が浮かび──すぐ苦笑いに変化した。
 
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女王のおしゃぶり
 
北杜夫  
 
 1
 
 怪盗ジバコの数々の行跡をすべて書き記したら、大百科事典のごとき膨大な書物となるであろう。なにしろ彼は赤子のとき、乳母車にのって町を押して貰っていたが、道端に非常に立派な空の乳母車がおかれているのを見ると、まだ這い這いしかできなかったのに、乳母の隙を見て──彼女は極度の近眼であった──乳母車を這いおりると、むこうの乳母車に這いあがり、わざとけたたましく泣声を立てた。びっくりした近眼の乳母はその立派な乳母車を押して帰ってきてしまった。それどころではない。母の胎内から生まれるとき、帝王切開の手術があったが、生後五分のその赤ん坊は、手術室からメスと鉗子とホウタイ一本を盗ってきてしまったという話も伝えられている。
 
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小説・江戸川乱歩の館
 
鈴木幸夫  
 
 一 まだ見ぬ色
 
われわれは色盲ではないのか     
まだ見ぬ色があるのではないか 乱歩 
 
 にわかにネオンや色提灯がけばけばしい小路へ、薄暗い横通りから折れこんできた四、五人連れがあった。
 新宿は花園神社わきの、いわゆる青線地帯で、小路が二本、さらにそれを横切って「通り抜けられます」用の細道が三本、それらをはさんで酒家が並んでいる一郭である。飲み屋とは名ばかりの、一坪ほどの店には酒の空びんばかりが並んでいるだけで、二、三人の女が客待ちをしているところである。
 
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解説
 
新保博久  
 
 相変わらず江戸川乱歩(一八九四ー一九六五)作品の映画化は盛んだが、首をかしげるものも多い。むしろ、「芋虫」(光文社文庫版江戸川乱歩全集[以下、乱全と略す]第3巻所収)が原作ではない若松孝二監督の「キャタピラー」(二〇一〇年)のほうが、監督が意図したという反戦映画としては不完全燃焼な印象であるぶん、そもそも反戦小説のつもりがなかった「芋虫」と比べて違和感がないくらいだ。それにしても、原作のファンをも満足させる乱歩映画は五指に余るほどもあるかどうか。
 
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