Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2010.09.01,Wed
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日本経済新聞
平成22・2010年8月20日 日本経済新聞社
キャタピラー 戦時下の夫婦、強烈なドラマ
宇田川幸洋
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今年のベルリン国際映画祭で寺島しのぶが最優秀女優賞を受賞した話題作だ。
■20100901a.jpg
主演の寺島しのぶ (C)若松プロダクション
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」(2007年)の若松孝二監督作品。
「1940年日中戦争」の字幕があり、戦闘の記録映像がモンタージュされてから、日本兵が中国人の女性を追いつめて、犯し、銃剣で刺殺するシーン。この映画の主人公の黒川久蔵(大西信満)である。
場面かわって、時間経過の字幕はないが(脚本を参照したところ、「昭和19年春」、つまり4年後)、太平洋戦争もいよいよ敗色濃厚になってきたころ。ある村の出征兵士を送り出す行列を割るように、1台の黒い乗用車がはいってくる。
車で送られてきたのは、黒川久蔵。妻、シゲ子(寺島しのぶ)ら家族の、久蔵を見ての反応が、まずうつされる。シゲ子は、半狂乱で戸外へとび出す。
四肢をすべてなくし、顔半分がやけどでひきつれた久蔵がうつされ、タイトル「キャタピラー」が出る。
キャタピラー、すなわち芋虫。江戸川乱歩の短篇(たんぺん)小説「芋虫」から想をえた、異様な夫と妻のものがたりが、ここからはじまる。
久蔵は、耳も聞こえず、口もきけないが、食欲と性欲はさかんで、シゲ子にセックスを求めはじめる。
「生ける軍神」と賞揚(しょうよう)された名誉も信じ、「男」としてふるまっている。
しかし、徐々に「軍神」という虚構のバカバカしさに気づき、また、セックスにおいてシゲ子が主導権をとるようになると、「男」の矜持(きょうじ)もゆらいでくる。
すると、中国戦線で自分のしたことが、フラッシュバックし、被害者の恐怖をみずから感じるかのように恐怖にくるしめられる。強引だが、このあたりが、心理的な見せどころだろう。
あらけずりではあるが、強烈なドラマである。1時間24分。
★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2010年8月20日付]
★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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