Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2010.09.28,Tue
妙なもので、きょうはそんなことありませんでしたけど、きのうあたり、あの異常な暑さが懐かしい、という感覚をおぼえてしまいました。いきなり涼しくなったせいでしょうか。狂ったような炎暑の夏は、しかしこうして振り返ってみると、なんだか実体を失ったまぼろしのようなものとして思い出されたりもいたします。
さて、禁煙はどうなったのか。9月後半戦の星取表は、大相撲9月場所でいえばむろん白鵬関ではさらさらなく、せめて稀勢の里関か豊真将関程度には、という願いもむなしく消え果てて、せいぜい高見盛関みたいな戦績に終わってしまいそうな雲行きです。いやはや。
8月のお盆休み、「文學界」9月号に掲載された小谷野敦さんの「母子寮前」を読んでいたら、こんなシーンが出てきて、へーえ、小谷野さんも禁煙をお考えなのか、とちょっとびっくりしました。それともこれは、病床のお母さんを安心させるための言葉であったのか。
母はこの四年ほど、私が禁煙ファシズムと戦っていることに、常識人として理解を示してくれた。あまりに異常だというのは、分かってくれた。だが、私には前から、タバコを減らすかやめるかしてほしいと、常々言っていた。入院中、私は、「五十になったらやめる」と言った。「なんで五十なの」と言うので、「谷崎先生も五十でやめているから」と答えると、「なんでも谷崎先生ね……」と言った。私はその前年、『谷崎潤一郎伝』を上梓していた。
こんなこと書いても信じていただけないかもしれませんが、お盆休みまでの四十数日間にわたって、私は禁煙をつづけておりました。それほど苦労もせずに、と私には思われたのですが、禁煙できてしまいましたので、ついつい気がゆるみ、お盆休みくらいいいか、という気になって、しかし何か口実が必要だとも思われましたので、おととし死去した母親の霊前にお盆のあいだだけ煙草を供えるためにという、つまり私の母親は煙草を嗜んでいたわけですが、そんな理由を見つけて一箱だけ買ってきたのが運のつき、8月の後半は炎熱と紫煙のなかを夢のように過ぎ去り、仕切り直して9月1日にまた禁煙を開始したという次第でした。
お盆休みにすぱすぱやっている最中でしたから、「母子寮前」にはちょっとびっくりさせられ、私には禁煙や節煙を説いてくれる母親はいないけれど、やっぱやめなきゃな、と殊勝な気持ちにさせられました。そもそもこの「母子寮前」、これはむろん私小説ということになるのでしょうが、手ざわりとしてはむしろ手記と呼びたいような作品で、2008年に出た『リアリズムの擁護 近現代文学論集』(新曜社)の「あとがき」を発展させた一篇というべきか、とにかく読者を殊勝な気持ちにさせるところがあるようです。
そんなこんなで9月もそろそろ終わりを告げようとし、現在ただいまは煙草と名残を惜しむ時期、ということにしているわけなのですが。
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