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Posted by 中 相作 - 2011.10.31,Mon

ウェブニュース

 

毎日jp

 平成23・2011年10月26日 毎日新聞社

 

第65回読書世論調査:あすから読書週間 本とどう向き合う

 聞き手=井上卓弥 写真=西本勝

 聞き手=木村光則 写真=手塚耕一郎

 Home > エンターテインメント > 毎日の本棚 > 記事

 

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第65回読書世論調査:あすから読書週間 本とどう向き合う

 

 27日から始まる「読書週間」--。東日本大震災によって日本中が揺さぶられた今年、毎日新聞が毎年9月に実施している「読書世論調査」では、「本は読まない」という回答が大きく減少し、例年以上に、読書を通じて世の中の出来事と向き合おうとする回答も目についた。日本人は今、本から何を学ぼうとしているのか。それぞれの世界で「読書の達人」として知られるお二人に、本とどう向き合ったらよいかを聞いた。

 

 ◇翻訳と書評、「源」は一緒 積極的にかかわって--翻訳家・文芸評論家、鴻巣友季子さん

 

 8月、翻訳家の日常を余すところなくつづったエッセー集「全身翻訳家」(ちくま文庫)を刊行。今月には初の書評集「本の寄り道」(河出書房新社)が出版された。1987年以来、外国の文学作品数十冊の翻訳を通して豊かな世界を読者に伝えてきたが、本とのつきあいは、どんなふうに始まったのだろうか。

 

■20111031a.jpg

 

翻訳家・文芸評論家の鴻巣友季子さん

 

 「子供のころ、翻訳物の世界をバリアーみたいにして閉じこもっていました。原点はウェブスターの『あしながおじさん』。親が悲観するぐらい本ばかり読んで(笑い)小学6年までに、分からないなりに外国古典文学を一通り読み終えて」

 

 15歳で安部公房の「箱男」「砂の女」に衝撃を受け、19歳で難解とされるジョイスに出会う。ポストモダンなどの「冒険」も重ねた。

 

 「そうした読書遍歴の末、大学生時代には『絶対に翻訳家になる』と決心しました。本を読んで文章を書くのが好きだけど、作家になる技量はない。語学もわりと得意で、好きな三つのことを同時にかなえられるのが、私の場合、翻訳家という仕事だったんです」

 

 当時はバブル真っ盛り。花形職種は国際線の客室乗務員や同時通訳で「なぜ、翻訳家なんて地味な仕事を?」と不思議がられたことも。それでも<なにを見ても翻訳を思い出す>(「全身翻訳家」あとがき)ほど没頭し、03年にE・ブロンテの名作「嵐が丘」(新潮文庫)新訳版を出すと、一気に書評の依頼が増えた。

 

 「読者の多い全国紙で書き始めたので『分かりやすく言葉を凝縮する』が最大テーマ。話芸で盛り上げて読者を本の前につれていく書評もありますが、私のは作品のエッセンスを正確に忠実にすくい取って伝えようとするスタンスです」

 

 翻訳、そして書評とエッセー執筆--。当初は「使う頭の筋肉がそれぞれ違う」と考えていたが、書評の仕事が増えるにつれ「あれっ」という発見があった。

 

 「自分のコアな部分が出てきて『一行ずつ解釈して自分の言葉で書いていく翻訳と感覚的にいっしょだ』と気付きました。翻訳と書評やエッセーは『源』を同じくするものだったんです。私の書評は本当に『翻訳者書評』なんですね」

 

 「本の寄り道」では04年から11年までの<おすすめの240冊>を厳選し、30代から読み込んだ日本の現代作家の傑作や「世界文学」を網羅した。最新書評のインドラ・シンハ「アニマルズ・ピープル」は1984年、インドの化学工場で起きた史上最悪とされる汚染事故を題材にした作品。

 

 「ユートピアをうたった科学と企業に人々の暮らしがゆがめられるという点では、石牟礼道子の『苦海浄土』にも通じますし、3・11の原発事故にも重なる。想定って『想像力の壁』のことだと思うんですね。その壁を打ち壊していくのに読書ってやはり欠かせないだろうと」

 

 最後に翻訳家ならではの本の楽しみ方を尋ねた。

 

 「翻訳は文章を読んで情報として処理し、自分の言葉で変換する行為。実は人間が行動する時には必ず何らかの翻訳行為があって、いわば人間の活動の最小単位が翻訳なんです。翻訳家は、その最小単位からあんまり出ていない小心者(笑い)。テレビのバラエティーを受動的に眺めるのは、変換や翻訳がいらない分ラクですが、自分なりに翻訳しながら何事にも積極的にかかわったほうが面白いはず。『積極的な翻訳者』として読書を十分に楽しんでほしいですね」【聞き手・井上卓弥、写真・西本勝】

 

 ◇自分のための孤独、感じて 心の中では大冒険--女優・緒川たまきさん

 

 演劇や映画、テレビドラマなどで幅広く活躍している一方で、澁澤龍彦や谷崎潤一郎などの純文学にも親しむ読書家として知られている。

 

■20111031b.jpg

 

女優の緒川たまきさん=手塚耕一郎撮影

 

 「何をするより読書が好きって気付いたのは小学4年生のころ」。幼いころから一人遊びが好きだったという。「一番興奮できる時間が読書でした。はたから見ると静かなのに、心の中では大冒険というのが楽しみで」と振り返る。

 

 江戸川乱歩の少年少女向けシリーズを読み尽くし、今度は古本屋で本物の江戸川乱歩の小説を買って読むようになった。「装丁も大人向けで心理描写もデリケートだし、面白くてどんどんのめり込んでいった。それから純文学に親しむようになりました」

 

 中学校に進むとウラジーミル・ナボコフやフランソワーズ・サガンなどの翻訳本にはまる。「これがセシルカットの大本なんだな、って。少女期の『いろんなことを知りたい』という欲求もありました」

 

 やがて、海外の小説は翻訳家の文章でニュアンスが変わることに気付き、「自分の感覚そのままで読める」日本文学に向かう。「すごく好きな作家と思ったのは谷崎潤一郎です。谷崎の小説を20代、30代で読み直すと違うものを感じられる。あのときはなぜこれに気付かなかったんだろう、って。同じ小説でも年代で違うものを感じられるのが小説の楽しさ」とも言う。

 

 今年に入って読み直しているのは泉鏡花。「面白すぎて息絶え絶えです。人が人という姿を借りて妖怪変化な世界を描いている。その世界が立ち上ってくるとあまりの美しさに先を読み進められなくなるぐらい」とその魅力を語る。

 

 自身も旅行記や紀行文を出版している。「出版物や紙媒体への興味や憧れは強くあります」。電子書籍の登場で携帯電話で小説が読める時代になったが、「電子書籍と紙の本はまったく違うもの。本はどこに気をとめてもいいし、しおりを挟んだり、付箋をつけたり、読みたいところにすぐページをめくれる。電子書籍を否定はしないけど、自由な感じはしない。電源が切れてしまうんじゃないかと気にしてしまう」と笑う。

 

 3月の東日本大震災には自身も大きな衝撃を受けた。「いろいろなものを失った方や漠然と不安を感じている人々。共通しているのは生と死を強く意識するようになったことだと思う。私自身も生の実感をきちんと感じたいと思うようになった。そういう意味で読書を通じた感受性は高まっていると思います」。震災を受けて仕事への気持ちも変わった。「きちんと責任を持って情熱を傾けられる仕事かどうかを考えるようになりました」

 

 読書は、現在の仕事にも大きな影響を与えている。「本の中では、現実に出会ったことのない人にも出会える。自分にはないものを想像できる。(女優という仕事の)いろいろな引き出しの一つになっている、と思います」という。

 

 幼いころからさまざまな読書を通じ成長してきた。思春期の真っただ中にいる世代に向けて「若いころは自分の感覚と周りがちょっと違うだけで孤独を感じてしまうけれど、読書という行為を根気強く続けていけば、その時の自分にぴったり合うものにいつか出会える。孤独というものの、また違った魅力です。自分のためになる孤独もある、と感じてほしいですね」と語った。【聞き手・木村光則、写真・手塚耕一郎】

 

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 ■人物略歴

 

 ◇こうのす・ゆきこ

 東京生まれ。お茶の水女子大大学院修士課程英文科専攻。クック、クッツェー、アトウッドなど英語文学の翻訳を手がけ、09年には「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」(河出書房新社)でV・ウルフ「灯台へ」を担当した。著書に「翻訳のココロ」(ポプラ文庫)、「明治大正 翻訳ワンダーランド」(新潮新書)、「孕(はら)むことば」(マガジンハウス)、「カーヴの隅の本棚」(文芸春秋)。現在、毎日新聞「今週の本棚」(毎週日曜掲載)に書評を執筆中。

 

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 ■人物略歴

 

 ◇おがわ・たまき

 モデル活動を経て、映画「Pu プ」(94年公開)で女優デビュー。舞台「広島に原爆を落とす日」(97年)でゴールデン・アロー賞演劇新人賞、映画「SF サムライ・フィクション」(98年)で高崎映画祭最優秀助演女優賞をそれぞれ受賞した。最近の出演作品に映画「紙風船」(2011年)や舞台「赤色エレジー」(同)などがある。著書にフォト&エッセー集「Mexico ガイコツ祭り」(ピエ・ブックス)など。

 

毎日新聞 2011年10月26日 東京朝刊

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