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Posted by 中 相作 - 2017.10.14,Sat
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現代ビジネス
 平成29・2017年10月1日 講談社

ラサール石井さん「読書とは、頂上の見えない登山のようなもの」
 大西展子
 Home > 本/教養 > 記事

2017.10.01

ラサール石井さん「読書とは、頂上の見えない登山のようなもの」

読みたい本がどんどん増えていく

ラサール石井

西遊記は「元祖RPG」

実家にある本は何でも読み尽くして、幼稚園の頃から『主婦と生活』なんかも読んでいました(笑)。覚えたての漢字を読むたびに周りの大人が「すごーい!」と褒めるものだから嬉しくて。それ以来、本を読むのが好きになりましたね。

1位の『西遊記』は小学校3、4年生の頃に友達の家にあった全集で読みました。子供向けのシリーズではなくて、大人が読む分厚い『西遊記』だったので少し難しかったんですが、毎日通ってひたすら読み続けましたよ。



孫悟空たちが様々な苦難を一つ一つクリアして、ゴールの天竺へ行くという、今のロールプレイングゲームの元祖ですね。中でも金角と銀角という妖怪が孫悟空にやられて、ひょうたんの中に吸い込まれて溶かされてしまうところや、芭蕉扇といって火を鎮める団扇をもつ仙女との戦いに胸を躍らせていました。

最初は悟空を始め、猪八戒も沙悟浄も悪い奴でね。でも、彼らを仲間にして敵をやっつけていくというのが当時の僕には新鮮でした。これはもうアメコミ映画の『スーサイド・スクワッド』そのもの。

そして、三蔵法師と共に旅するうちに、彼らの間に友情や正義感が芽生えていくのは今大人気の漫画『ワンピース』と似ていて、そういう意味ではエンターテインメントものの原点だと思う。

5歳上の兄貴が漫画雑誌を買っていたので、3歳ぐらいから、『マガジン』や『サンデー』などの少年漫画雑誌を読み始めました。中でも手塚治虫先生は僕にとって神様みたいな人で、2位は手塚先生のSF作品『0マン』です。



先生は動物をメタモルフォーゼさせるのが好きで、この作品も0マンと言われるリスに似た超人類と人間の抗争を軸に物語が展開します。日本兵に拾われ、育てられた0マンのリッキー少年が人間と折り合っていくなかでの苦悩が描かれる、読み応えのある作品です。

自分で書いてみて分かったこと

僕は学生時代から井上ひさしさんのファンでしたから、3位に挙げた戯曲『藪原検校』が渋谷の西武劇場で上演されたときも観劇しました。それまでの井上作品のハチャメチャな喜劇路線から一転して、非常に暗く、シリアスな芝居だったから衝撃を受けましたね。



座頭、いわゆる盲人の話なんです。生まれながらに目が見えない杉の市は晴眼者を見返すためには金を手に入れるしかないと考え、貸金の取り立てで頭角を現します。

学者の塙保己一からは、知性と品性を磨くことこそ晴眼者と対等の場に立つための唯一の道と説かれますが、悪行の限りを尽くし成り上がっていきます。杉の市は悲劇的な最期を遂げるのですが、井上さんが描く、差別されている人間のエネルギーに圧倒されました。今回舞台で初めて『円生と志ん生』という井上作品に出演させて頂き、光栄です。

最近は演出や脚本の仕事も多いのですが、いつも苦しんでいます。締め切りが迫っているのに筆が進まない時なんて、もう最悪。そんな時にニール・サイモンの自伝『書いては書き直し』を読み返すと、彼ほど才能がある劇作家でもこんなに苦労してきたんだ、食えない時代があったんだと思い、もっと頑張らないと、とヤル気が湧いて来るんです。



当時は今ほど脚本家の地位は高くなかったからヒドい目にも遭っているんだけど、奥さんへの愛情の深さや、夫婦で互いに励まし合っている姿に胸を打たれます。

ラサール石井さん「読書とは、頂上の見えない登山のようなもの」

5位の「少年探偵団シリーズ」は小学生の時に、近所の貸本屋で見つけました。表紙はすごく怖いんだけど、好奇心で手に取ってみたんです。主人公は明智小五郎で、彼をサポートする小林少年ら少年探偵団の子供たちのなかには、戦災孤児とか浮浪児もいるんですね。

でも、主人公たちのライバルの怪人二十面相が狙うのは金持ちばかりだから、そのギャップの妙もあった。ちょっとエロチックなシーンもあって、いやあドハマりしました。

この本のおかげで推理小説を好きになってエドガー・アラン・ポーを読むようになり、6位の『黄色い部屋の秘密』へ導かれて行くわけです。この作品は完全密室殺人で驚愕のトリックが用意されているんですが、最後はエエーッ! そんな馬鹿な! と思ったのを覚えています。



年を取るほど本が読めると思っていたんですが、最近忙しくて読む暇がないんですよ。なのに、本屋さんに行くと気に入ったものを全部買うから読んでも読んでも本が増えていくばかり。だから、僕にとっての読書は、どんなに登っても限りなく続いていく高い山みたいな感じです。

(取材・文/大西展子)

ラサール石井さんのベスト10冊

第1位『西遊記』(全10巻)
中野美代子訳 岩波文庫 1000円(1巻)
三蔵法師が孫悟空、猪八戒、沙悟浄と共に取経のため天竺を目指すが、途中、妖怪など虚実が入り乱れる一大伝奇小説

第2位『0マン』(全2巻)
手塚治虫著 講談社 900円ほか
「0マン」と呼ばれる、非常に優れた知能と体力を持つ、リスに似た生物と人間との抗争を軸とした大河ドラマ

第3位『藪原検校
井上ひさし著 新潮文庫 530円
目が見えない杉の市は晴眼者に伍して生きていくため数々の悪事を重ね、盲人の最高権力の座・検校位に就くが…

第4位『書いては書き直し
ニール・サイモン著 酒井洋子訳 早川書房 3600円
「書けば当たる作家」はいかにして生まれたか。創作と人生をユーモラスに語った自伝

第5位「少年探偵団シリーズ
江戸川乱歩著 ポプラ文庫クラシック 560円ほか
明智探偵と助手・小林少年率いる少年探偵団が怪盗と繰り広げる推理アドベンチャー

第6位『黄色い部屋の秘密
ガストン・ルルー著 高野優、竹若理衣訳 ハヤカワ文庫 980円
真夜中、令嬢の部屋から悲鳴と銃声が響いた。完全な密室殺人の謎に少年記者が挑む

第7位『蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ
芥川竜之介著 岩波文庫 700円
「文章の味わいがいい。ちょっとした皮肉、諧謔、オチみたいなものを教えられました」

第8位『吾輩は猫である
夏目漱石著 岩波文庫 700円
「小学生のときに無理して読んだ。人間を猫の目から風刺的に描いていて痛烈で愉快」

第9位『竜馬がゆく』(全8巻)
司馬遼太郎著 文春文庫 650円ほか
「幕末維新を先導した坂本竜馬の生涯。信じるものに向かって生きる勇気をもらえる一作」

第10位『大いなる助走
筒井康隆著 文春文庫 619円
「『直廾賞』候補作家が陥る混乱と狂気と、地方の同人誌界の厭らしさの描き方がうまい」

『週刊現代』2017年10月7日号より
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