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Posted by 中 相作 - 2017.08.23,Wed
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 平成20・2017年8月21日 読書人

多面的な美輪明宏の魅力|反逆の精神に真骨頂がある
 高瀬毅
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2017年8月21日

多面的な美輪明宏の魅力
 
反逆の精神に真骨頂がある


美輪明宏と「ヨイトマケの唄」 天才たちはいかにして出会ったのか

著 者:佐藤 剛

出版社:文藝春秋

評者:高瀬 毅(ノンフィクション作家)



美輪明宏と「ヨイトマケの唄」 天才たちはいかにして出会ったのか(佐藤 剛)文藝春秋美輪明宏と「ヨイトマケの唄」 天才たちはいかにして出会ったのか

佐藤 剛

文藝春秋

五年前のNHK「紅白歌合戦」で美輪明宏が「ヨイトマケの唄」を歌った時のことを覚えている人は多いだろう。紅白に関心を無くして久しい筆者も、あの年だけは観た。賑やかに、華やかに演出することが目的のようなステージが、黒ずくめの衣装で美輪が登場しただけで一変。なるほど、それまでの時間はすべてこの瞬間のためにあったのか。そう思いたくなるような緊張感が、会場はもとよりテレビの視聴者にも体感されたにちがいない。

「三・一一東日本大震災」から一年九か月しか経っていないのに、軽薄・薄情・刹那的な風潮に流されていく日常が、フルコーラスの六分間に雲散霧消した。一年のしめくくりの大晦日に、美輪は重いピリオドを刻印したのである。

あの時、美輪は七七歳。

長崎市のミッション系の中学を卒業後、シャンソン歌手を夢見て上京してから六○年余。「人と出会う力」というものがあるとすれば、一つの魅力的な例が本書には詳細に記述されている。

国立音大付属高校に入学した丸山臣吾(美輪の幼名)少年は上京した年の夏、早くも推理小説界の大家、江戸川乱歩と出会う。銀座のカフェにアルバイトとして採用され、そこの常連の一人が乱歩だったのである。アルバイト募集の新聞広告の文句は「美少年募集」。表向きは普通の喫茶店だが、実態は同性愛者がひそかに集まるサロンのような店。物おじしない機転の利く会話で乱歩に気に入られた。

その店に「天才作家」と言われた当時二十六歳の三島由紀夫が出版社の人間たちとやってきた。だが、「何が新進作家だ」と、席に呼ばれても行かない。「私は反権力だから」。六回目に仕方なく行くと「可愛くない子だ」と言われ、「私はきれいだから、可愛くなくてもいいんです」と返し、唖然とさせた逸話が残る。のちに三島が乱歩の「黒蜥蜴」を戯曲にし、美輪が演じることになるのだから、ここでの邂逅は出来過ぎている。

美輪の魅力は多面的だが、ケツをまくれる反逆の精神に真骨頂がある。「ヨイトマケの唄」が人の心をわしづかみにするのは、権威に惑わされず、自らも被爆した長崎で、戦後の苦難を生きる人間の中に命の輝き見つめ、歌いあげているからだ。

五木ひろし、泉谷しげる、桑田圭祐、槇原敬之など、著名なミュージシャンがカヴァーしてきた。「『ヨイトマケの唄』でつながっていく表現者たちの顔ぶれを見ていくとほんものの音楽を目指す人に特有の純粋さと反骨精神が、どこかで共通していることにも気づかされる」と著者は書く。

三島由紀夫はもとより、中村八大、永六輔、寺山修司、加藤和彦、深作欣二、宮崎駿、北野武等々。今日の美輪を美輪足らしめているのは、時代をけん引する「天才」たちとの邂逅があったからだ。

そうした美輪に影響を与えた者たちの説明に割かれ過ぎの所もあり、散漫になった点は否めないものの、永遠に生き続けてほしいと思わせる「天才」への敬意と豊かなエピソードに彩られた著作となっている。
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