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Posted by 中 相作 - 2017.06.12,Mon
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 平成29・2017年6月9日 ヴィレッヂ

江戸川乱歩もビックリ!美味しいところ全部乗せの異色サスペンス・花形新派公演「黒蜥蜴」観劇レビュー
 イトウシンタロウ
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2017.6.9

江戸川乱歩もビックリ!美味しいところ全部乗せの異色サスペンス・花形新派公演「黒蜥蜴」観劇レビュー



花形新派公演「黒蜥蜴」明智小五郎・喜多村緑郎、黒蜥蜴・河合雪之丞
 
乱歩の美味しいところ全部乗せ! 異色のサスペンスエンターテインメント!

「黒蜥蜴(くろとかげ)」と言えば、これまで幾度となく映像&舞台化されてきた、江戸川乱歩の不朽の名作です。没後50年を契機に、演劇界でも昨年から乱歩作品の舞台化が大流行、実に様々な乱歩演劇が上演されてきました。

そんな中でも、今回の花形新派公演「黒蜥蜴」は、まさに異色の作品と言えるでしょう。



Youtubeで観る

舞台『黒蜥蜴』ダイジェスト映像

まず「名探偵 VS 美貌の女盗賊」を演じるのが、歌舞伎から新派へ移籍した喜多村緑郎さんと河合雪之丞さんという意外なお二人。(もちろん、お顔は白塗りです。)物語の中心を流れるのは、なんと彼ら2人のラブロマンスです。

抱き合って妖艶に踊るタンゴ、絡み合う指先、当然のようなキスシーン(男同士)。恋の敵役として登場する、劇団EXILE秋山真太郎さんは銀髪のやさ男で、黒蜥蜴に迫るシーンがあり、探偵(緑郎さん)への嫉妬に狂いながら、ボクシングを駆使して戦います!

そこに「怪人二十面相」や「一寸法師」といった別作品の人気キャラクターも次々登場して…まさに「美味しそうなものは全部入れてみました!」と言わんばかり、江戸川乱歩もビックリのお芝居です!

顔が白い…だがそれがいい!乱歩の耽美な世界感と溶け合う、新派独自の女方(おんながた)



花形新派公演「黒蜥蜴」黒蜥蜴・河合雪之丞

注目すべきは、やはり主演のお二人、名探偵・明智小五郎役の喜多村緑郎さんと黒蜥蜴役の河合雪之丞さんです。というか、このお二人には、注目せざるをえません。だって、異様に目立つんです!

長身で端正なお顔立ち、ド派手な衣装、流麗な立ち居振る舞い、美しい声…。お二人が舞台上で視線を集める理由は無数にあります。が。やはり、最大の要因は――卑近な感想で恐縮ですが、言わないわけにいきません。お顔の色です!白い!



花形新派公演「黒蜥蜴」明智小五郎・喜多村緑郎、黒蜥蜴・河合雪之丞

歌舞伎のように、登場する役者さんみんなが白く塗っているわけじゃありません。他の主要な役者さん、脇役のみなさん、ごく普通のお顔色です。(厳密には、ヒロインの令嬢と敵役の何人かは塗ってますが。物語上で特に化粧をする理由もなく洋装で白いのは、主演のお二人だけです。)

「そういうの、物語に合わないんじゃない?」と、思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが! なかなかどうして、これが、乱歩の耽美で退廃的な世界観と絶妙にマッチするんです。

美しさを探求するあまり、敵方である探偵に愛情を抱いてしまう黒蜥蜴。同じく、敵である女盗賊の才知に魅了される明智小五郎。本来、惹かれ合ってはならない2人が抱く不思議な恋心…それが、「女方(おんながた)」というある種倒錯した演技様式を使うことによって、実に巧みに表現されていくんです。

歌舞伎の様式美を活かした演出「だんまり」シーンは超クール!



花形新派公演「黒蜥蜴」明智小五郎・喜多村緑郎、黒蜥蜴・河合雪之丞

物語中盤では、「暗闘(だんまり)」と呼ばれる、歌舞伎特有の演出が入ります。登場人物がせりふ無しで、暗中にさぐりあう動作を誇張して表現する動き…平たく言えば、現代劇で挿入されるダンスシーン、みたいなものでしょうか。

これが、実に自然に、クライマックスの乱闘シーンに挿入されるのです。さっきまで、チャンバラやガンアクションで激しく戦っていた人物全員が、ある瞬間、凍りついたように一斉にこの「だんまり」を始めて、思わず「おお!」と客席からも声が漏れました。控えめに言って、とてもクールです。



花形新派公演「黒蜥蜴」黒蜥蜴・河合雪之丞、雨宮潤一・秋山真太郎(劇団EXILE)

明治時代、「旧派(歌舞伎)」に対するカウンターカルチャーとして、西洋からの文化流入や時代の流れに沿って作られたのが、この「新派」演劇なんだそうですが。スーパー歌舞伎などにも出演されている緑郎さん、雪之丞さんのお二人が、歌舞伎の様式を活かして上演されるこの「黒蜥蜴」は、21世紀の「新派」と呼ぶにふさわしいお芝居と言えるんじゃないでしょうか。

そもそも「江戸川乱歩」自体が「エドガー・アラン・ポー」に憧れて小説を書いた和洋折衷の作家です。西洋文化を、日本独自の様式美に置き換える「和洋化」の手法は、江戸時代の娯楽文化をその起源にしていると言わるくらいですから、乱歩の世界観が「新派」の演劇に合うのは必然なのかもしれません。

乱歩の時代に造られた三越劇場は、創立90周年!舞台美術にも活かされた豪奢な装飾と、心憎い演出。



花形新派公演「黒蜥蜴」明智小五郎・喜多村緑郎、黒蜥蜴・河合雪之丞

この「黒蜥蜴」が上演されている三越劇場ですが。今年で創立90周年を迎えるそうです。世界初”百貨店の中にある劇場”としてオープンしたのが、昭和9年。奇しくも、乱歩が名探偵シリーズを精力的に書いていた頃ですね。

場内に一歩入れば、大理石仕上げの壁に石膏彫刻の美しい文様、ステンドグラスをはめ込んだ天井が目に入り、乱歩の描く[大正~昭和初期]の時代に迷い込んだようです。否が応にも高まるお芝居への期待感。

緞帳が上がると、「あっ!」と思います。客席と全く同じ文様が描かれた壁や扉の舞台セット、三越劇場の周壁を完コピした洋館の室内が、そこに建っているからです。観客は劇場まるごと、黒蜥蜴や明智小五郎のいる時空間にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。地味ですが、心憎い演出でした。

このレビューを書いたのは



イトウシンタロウ
劇作家・演出家
「個性的な女子」をフィーチャーした作品制作を行う創作団体「NICE STALKER:ナイスストーカー」主宰。
公式サイト:http://nice-stalker.com

公演情報
六月花形新派公演
「黒蜥蜴」

【原作】江戸川乱歩
【脚色・演出】齋藤雅文

【出演】
明智小五郎・・・喜多村緑郎
黒蜥蜴・・・河合雪之丞
雨宮潤一・・・秋山真太郎(劇団EXILE)
岩瀬早苗・・・春本由香
片桐刑事・・・永島敏行

2017年6月1日(木)~24日(土)/東京・三越劇場

公式サイト
新派「黒蜥蜴」
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