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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2011.07.25,Mon

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大阪日日新聞

 平成23・2011年7月23日 新日本海新聞社大阪本社

 

江戸川乱歩(上)

 三善貞司

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なにわ人物伝 -光彩を放つ-

 

江戸川乱歩 (上)

 

2011年7月23日

 

雑誌「新青年」に掲載、好評 『二銭銅貨』で作家デビュー

 

三善 貞司

 

20110725a.jpg

 

「江戸川乱歩寓居跡」銘板=大阪府守口市八島町

 

 「怪人二十面相」で胸を高鳴らせた少年時代を、懐かしく回想する人は多いはずだ。その作者江戸川乱歩を本項に入れると怪訝(けげん)に思われようが、彼が推理作家としてデビューした地は大阪である。

 

 地下鉄谷町線守口駅で降り、2番出口を上がると「桃町緑道」(大阪府守口市八島町)が見えるが、その入り口の広場裏の民家に「江戸川乱歩寓居(ぐうきょ)跡」の銘板が掛かっている。後に乱歩は東京に永住するが、それまでは46回も転居した引っ越し魔で、守口だけでも5回も変わり、5回目がここだ。

 

 「私が処女作『二銭銅貨』を書いたのは、大正十一年の夏、雑誌『新青年』に掲載されたのが翌年の四月号だから、数え年三十の遅いスタートであった」

 

 彼はこう回顧している。日本で最初の本格的推理小説『二銭銅貨』は、失業中で貧乏のどん底にあった乱歩が、この借家で書き上げたものだ。代表作の一つ『屋根裏の散歩者』も、ここで想を練っている。

 

 「天井を眺めると好都合にも、多分電燈(でんとう)工夫の出入り場所であろうが、押してみるとグワグワする。板をはずし首だけを真っ暗な天井裏に差し入れて見回すと、なんとなかなか捨て難い眺めだ。それがあの作品の背景になっている」との文言もある。

 

 乱歩の本名は平井太郎。明治27(1894)年三重県名張町に生まれた。父繁夫は郡役所書記。祖父の代まで藤堂藩に仕えた武士。筆名はエドガー・アラン・ポー(アメリカの作家。恐怖・推理小説の開拓者)をもじったものだ。

 

 小学生のころ、読書好きの母から菊池幽芳(きくちゆうほう)訳の『秘中の秘』を毎晩読んでもらって眠りにつき、探偵小説に興味をもつ。中学生になると押川春浪(おしかわしゅんろう)の冒険小説や、黒岩涙香(くろいわるいこう)の怪奇小説に熱中するが、父繁夫が経営した平井商店が倒産。飛び出して苦学を重ねながら大正5(1916)年早稲田大学政経学部を卒業する。数奇な生涯をたどった耽美(たんび)派のポーにはまったのは、早稲田時代だ。真似(まね)て習作も試みるが反響はゼロ。貿易会社、造船所、役所吏員、活版工、古本屋経営、化粧品会社勤務と転々と職を変えるが、なにひとつ長続きしない。大阪に移り、弁護士手伝い、大阪時事新報記者、大阪毎日広告営業マンと尻軽ぶりを発揮、同8年恋人の隆子と結婚したときは、流しの中華ソバ屋であった。新婚早々乱歩は大八車を引きチャルメラを吹き、隆子が湯を沸かしネギを刻むありさまだ。

 

 日本一の推理作家になってみせると妻に大言壮語した乱歩は、大正11年ようやく守口の借家で『二銭銅貨』と『一枚の切符』をまとめ、細い糸をたぐって「文学界」の馬場孤蝶(ばばこちょう)に送るが、返事ももらえず原稿のみ戻ってくる。自信喪失した夫を隆子は励まし、今度は創刊されて間もない「新青年」に同稿を投稿したところ、見ず知らずの編集長森下雨村(もりしたうそん)(作家。海外の推理小説紹介者)が認め、翌12年の4月号と7月号に両作とも掲載された。『二銭銅貨』はポーの『黄金虫』や『盗まれた手紙』をヒントに、独特の暗号解読を混ぜたもの。『一枚の切符』は自殺にみせかけた他殺事件で、今読んでも実に新鮮だ。

 

 好評に気を良くした乱歩は、『D坂の殺人事件』『心理試験』『黒手紙』『赤い部屋』と次々に同誌に発表。同14年にまとめて単行本『心理試験』を刊行して世に出る。この中で『D坂の殺人事件』に初めて名探偵明智小五郎(あけちこごろう)が登場。棒縞(ぼうじま)の浴衣と格子戸を組み合わせて錯覚をおこす謎を見事に解いて喝采を浴び、熱烈な小五郎ファンを生んだ。

 

 こうして推理の新鋭作家となった乱歩は、大阪に横溝正史(よこみぞせいし)らと「探偵趣味の会」を創設、機関紙「探偵趣味」刊行、『人間椅子』『屋根裏の散歩者』などの傑作を発表する。

 

(地域史研究者)

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