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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2011.05.31,Tue

 数日前、3・11の被災者のおひとりに、その後いかがですか、とメールでお訊きしたところ、意気あがらず、との返信を頂戴した。

 

 意気あがらず。

 

 なるほど、被災者であろうとなかろうと、3・11以降の日本人は多かれ少なかれ、意気あがらず、という状態にあるのではないか、と思った。

 

 むろん、ここんとこもう意気あがりまくりでさ、みたいな日本人もなかにゃ存在するのであろうけれども、そういうのとはあまり同席したくないなと思っている不肖サンデーは、やはりご多分にもれない。

 

 3・11以降、どうも意気があがらない。

 

 意気があがらない状態で平熱教室なんてのをつづけて、さあ、図書館っていったいなにをするところなのか、みんなで考えてみようね、みたいなこといってると、なさけないやらあほらしいやら、どうしてこんなぱかなことやんなくちゃなんないわけ? という気にもなってくるのだが、ぐちぐちいってないでつづけることにしよう。

 

 ところで、意気あがらず、というのは、乱歩が2・26以降の自身について述べたとき使用した表現で、上記の返信ももちろんそれを踏まえたものだ。

 

 『探偵小説四十年』の昭和11年、「意気あがらず」と題された章から引用。

 

 貼雑帳のこの年度のはじめに、私は次のように書き入れている。「この正月号から又イヤイヤながらも続きものを二つ書きはじめたが、この年二月、二・二六事件起り、自由主義、個人主義没落の前兆既に歴然たり。唯美主義の如きは消えてなくなるべき時代がはじまった。たださえ創作慾を失いかけていた私は、このころよりして愈々意気揚らず、切り抜きなども興味がうせて不勉強であったので、この貼雑帳も甚だ淋しくなるのである」

 

 とはいえ、「イヤイヤながらも続きものを二つ書きはじめた」というのは、じつは眉につばをつけて読むべきくだりであって、フィルポッツの「赤毛のレドメイン」に触発されて乱歩なりの本格をめざした「緑衣の鬼」、のちに乱歩のホームグラウンドとなる少年ものの第一作「怪人二十面相」、この二作を書きはじめたんだから、胸中に期するところはあったはずだ。

 

 しかしまあ、2・26にショックを受けて、なんかもう意気あがらず、みたいなことになっちゃった、というのも正直なところだろう。

 

 さて、図書館というのは本を読むところだよね、というところから話をはじめた。

 

 名張市立図書館が、乱歩にかんしてなにかする、乱歩に特化した運営を進める、というのであれば、とりあえず乱歩の全作品が読める図書館をめざすべきだっちゃ、というのがこれまでの結論なわけだけれど、この流れるような論理の展開は、どなたにも理解していただけたものと思う。

 

 でもって、とくに異論や反論も出されないものとも思う。

 

 いささか補足を連ねておくならば、乱歩の全作品というカテゴリには、代作も含めるべきだろう。

 

 「蠢く触手」もむろんそうだけど、ポプラ社から出ていたリライト版もすべて含める。

 

 それから、対談、鼎談、座談、講演のたぐい、あるいは、アンケート回答、書簡、みたいなものも含まれるべきだろう。

 

 デビュー以前の作品も、やはり含めるべきだよね。

 

 たとえば、「活動写真のトリツクを論ず。」という文章があって、これは最近、立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センターの手で翻刻され、活字で読めるようになった。

 

 2011年5月26日:雑誌:大衆文化 第5号

 

 大正6年に執筆された映画論の草稿で、乱歩邸に保存されていたものだが、作家デビュー以前の作品だからといって、ネグレクトするべきではないだろう。

 

 ところで、不肖サンデー、少し以前に、名張市立図書館は乱歩から手を引いたらどうよ、みたいな提案をささやかにつづけていた。

 

 乱歩関連資料を収集いたします、とかいっておきながら、なにもせん。

 

 ほんとうに、なんにもせんのよ。

 

 名張市立図書館の公式サイトに、収集資料にもとづいて乱歩関連のデータベースを掲載する、くらいのことはしてもいいはずなのだが、というか、当然してなければおかしいわけなのじゃが、うすらばかどもなんにもせんわけよ。

 

 だからもう、やめとけよと、乱歩の看板なんか降ろしてしまって、収集した乱歩関連資料はそっくりそのまま立教大学にプレゼントして、いいように活用してもらったらいいではないか、みたいなことを提案しておった。

 

 しかし、3・11を機に、考えを改めた。

 

 リスク分散、というやつの重要性に思いいたった。

 

 立教大学と名張市立図書館、それぞれが乱歩関連資料を管理し、活用すればいいではないか、と思う。

 

 立教大学は乱歩のご遺族から直接引き受けた乱歩関連資料をもとに、名張市立図書館は公共図書館として収集した乱歩関連資料にもとづいて、ついでにいえば寄贈を受けた資料にももとづいて、それぞれ活用を進めてゆくべきだろう、と決意をあらたにした。

 

 不肖サンデーが決意したって、そもそもなんの意味もないのだが、手前どもはなにも考えないことにしております、とか、手前どもはできるだけ働かないようにしております、とか、そんなことをおっしゃる名張市役所のみなさんになりかわって、ちょいと考えてちょいと決意をあらたにした、ということだとご理解いただきたい。

 

 さてさて、とにもかくにも、乱歩作品を読むための資料収集、というのは、これまでに述べてきたようなことであって、まだ比較的、簡単である。

 

 江戸川乱歩、というクレジットの入った作品を、かたっぱしから集めればいいのである。

 

 本屋さんへ行って、あるいは古本屋さんへ行って、乱歩の本、くださいな、というだけで、とりあえず、話ははじまる。

 

 ところが、乱歩について知るための資料収集、ということになると、そうは問屋が卸さない。

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