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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.05.12,Sun
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Posted by 中 相作 - 2016.05.22,Sun

 なんか、こんなのがあるそうです。


 で、こんなのがあったそうです。


 以上、イベント系のお知らせでした。

 いっぽう、本の話題といたしましては、まず、これが出ました。


 これも出ましたけど──


 残念ながら、当地の本屋さんには並んでおりませんでした。

 こんなんばっかりどっせほんまに。

 さて、幼年期の乱歩を喜ばせた絵探しは、昭和24年の夏に「探偵小説三十年」の冒頭として執筆されながら、結局は発表されることなく篋底深く秘められてしまった草稿「私が探偵小説に心酔するに至った経路」だけに記されていたと思い込んでいたのですが、昭和11年から12年にかけて発表され、中絶に終わった自伝「彼」でも回想されておりました。

 彼に絵を描く興味が芽生えたのも同じ病床の中であった。治癒期に入った彼の枕下にはいつも石盤と石筆とがあった。初めのほどは彼自身の形を描くことはできなかったけれど、その頃(五、六歳の頃)母の一番下の弟、つまり彼の若い叔父さんが勉強のために彼の家に同居していたので、その叔父さんが描いてくれる黒い石の上の白い絵に魂を吸いよせられた。トンネルの中から出て来る汽車の絵も好きであったし、鎧武者や軍人の絵も好きであったが、「絵探し」ほど彼を喜ばせたものはなかった。枯木の枝とばかり思っていると、その枝の線が馬の首であったりする線の一人二役、あの「絵探し」というものを、若い叔父さんはいろいろと描いて見せて、彼に隠れた形を探させるのであった。「謎」というものの魅力が初めて彼の心を捉えたのは、この叔父さんの「絵探し」であった。

 たしかにかくのごとく綴られており、いわれてみればなるほど「線の一人二役」、一本の線が二重の意味を帯びていて、枝であったり馬の首であったりするのが絵探しです。

 ひとつの意味しか有していないと思われた一枚の絵は、まったく別のもうひとつの意味を隠し持っていました。

 絵には秘密が秘められていました。

 そういった秘密の発見が乱歩を異様に喜ばせたことは、「私が探偵小説に心酔するに至った経路」にも確認することができます。

 私の探偵趣味は「絵探し」からはじまる。五六才の頃、名古屋の私の家に、母の弟の二十にもならぬ若い小父さんが同居してゐて、その人が毎晩、私の爲に石磐に絵を描いて見せてくれるのだが、小父さんは好んで「絵探し」の絵を描き、私にその謎をとかせたものである。枯枝などが交錯してゐるのを、じつと眺めてゐると、そこに大きな人の顔が隠れてゐたりする。この秘密の発見が、私をギヨツとさせ、同時に狂喜せしめた。その感じは、後年ドイルや、殊にチエスタトンを讀んだ時の驚きと喜びに、どこか似たところがあつた。少年の頃「絵探し」を愛した人は多いであらうが、私は恐らく人一倍それに夢中になつたのだと思ふ。問答による謎々や、組み合せ絵(ジッグソウ)や、迷路の図を鉛筆で辿る遊びや、後年のクロスワードなどよりも、私にはこの「絵探し」が、何気なき風景画の中から、ボーツと浮かび上つて耒る巨人の顔の魅力が、最も恐ろしく、面白かつた。

 乱歩は絵探しをドイルやチェスタトン、つまりは探偵小説に結びつけていますが、私はいまや、そうではないのではないか、という疑問を強く抱くに至りました。

 つまり、

 絵探し → 探偵小説

 ではなくて、

 絵探し → 暗号 → 探偵小説

 というプロセスをたどって、秘密の発見をめぐる驚きと喜びが乱歩を導き、乱歩に探偵小説を見誤らせていったのではなかったか。
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