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Posted by 中 相作 - 2015.08.07,Fri
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日本経済新聞
 平成27・2015年8月3日 日本経済新聞社

春秋
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春秋

2015/8/3付

 「あの泥棒が羨ましい」。大正12年に発表された推理作家、江戸川乱歩のデビュー作「二銭銅貨」の有名な冒頭だ。場末の下宿屋、学はあるがまともな職がない2人の青年が「窮乏のドン底」にあえいでいた。そこへ世間を揺るがす窃盗事件が発生、このせりふとなる。

▼犯罪者を羨ましがるほどの貧困生活。作中の描写は作者の現実が下敷きになっている。自伝「探偵小説四十年」を読むと、この4年前には古本屋経営に失敗し「窮乏のドン底」だったとある。早大卒業から作家専業になるまでの8年間に貿易商勤務、事務機の行商、漫画誌編集、ラーメンの屋台引きなどと職を転々とした。

▼こうした日々の中で小説の着想をいくつも仕込んだ。例えば押し入れの天井板を外し、下宿屋の屋根裏を這(は)い回る男の話がある。造船所勤務のころ、出社が嫌で独身寮の押し入れに隠れていた体験が出発点だそうだ。仕事が続かぬ青年乱歩を見て、やがて日本に推理小説という新分野を切り開く未来を誰が想像できたろう。

▼昨年は生誕120年、今年が没後50年。つい先日、7月28日が命日だった。推理物が盛んな国には特徴が2つある。理の重視と人権意識の浸透だ。独裁者や公権力が問答無用で怪しげなやつを捕らえ、拷問で「自白」させる社会に名探偵の出番はない。乱歩が種をまき、戦後本格的に花開いたミステリーの活況を誇りたい。
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