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Posted by 中 相作 - 2015.07.25,Sat
ウェブニュース

週刊文春WEB
 平成27・2015年7月21日 文藝春秋

明智小五郎を変人に! 実相寺監督、配役の妙
 春日太一
 Home > 連載 > 春日太一の木曜邦画劇場 > 記事



明智小五郎を変人に!
実相寺監督、配役の妙


『D坂の殺人事件』

文 春日 太一

2015.07.21 07:00



1998年作品(90分)
東映
4500円(税抜)
レンタルあり

 子供の頃から江戸川乱歩の小説が好きだった。乱歩の描く、狂気に憑かれた犯罪者たちによる猟奇的な殺人の数々は子供心に恐怖を抱かせるものではあったが、その一方でどことなく滑稽さもあり、そこに心惹かれていた。

 映像化作品も多く観てきた。今回取り上げる『D坂の殺人事件』も、そんな中の一本だ。『屋根裏の散歩者』に続いて実相寺昭雄監督が乱歩原作を映像化した作品である。

 実相寺が他と一線を画しているのは、なんといってもキャスティングだ。『屋根裏』は三上博史、本作は真田広之と、当代の二枚目俳優を犯人役にしているのに対し、名探偵・明智小五郎には容貌魁偉の嶋田久作。一見すると明智の方が異常に見えてしまうため、配役が逆なのではないかと思う人もいるかもしれない。

 だが、それこそが筆者の待ち焦がれていた配役だった。というのも、乱歩映像化作品に触れる度にいつも、明智の描き方に不満があったからだ。

 乱歩原作で描かれる明智は、おかしな犯罪者たちに出会うことを楽しみにしていて、異常な事件に嬉々として挑み、そしてサディスティックに相手を追いつめていく。狂った犯人たち以上に犯罪に魅入られた男なのである。だが、映像化されると必ずといっていいほど颯爽とした二枚目の正義漢として登場する。そこがいつも物足りなかった。それだけに、本作での配役は実に嬉しかった。そして実際に嶋田は期待に応えてくれている。

 蕗屋(真田)は自ら女装し、鏡に映し出される己の姿をモデルに描く贋作絵師。彼は自身を縄で縛って伝説の責め画の贋作を完成させるが、依頼主の女が元の絵のモデルだと知ると嫉妬、彼女を殺害してしまう。検察の依頼を受けた明智は、蕗屋の尋問に臨む。

 全編にわたり真田の倒錯した姿が描かれている作品だ。だが、嶋田がわずか一カットの芝居で、それを凌駕するインパクトを残すことになる。

 物語の中盤、明智は助手の小林少年を連れて現れる。小林少年は女優の三輪ひとみが演じているのだが、これがとにかく妖艶で、とてもただの助手には見えない。その上、明智は検察官にこう言い放つのだ。「僕は、あの子の養育に全てを捧げるつもりです」ここでの嶋田の微笑に爽やかさは全く感じられず、何かただならぬものを想像してしまう。そこにはいくら二枚目が手数を繰り出しても及ばない、真性の変態たる迫力があった。

 異常な犯人を前にしても微動だにせず、冷静に追いつめることができる。それは、自身がより異常な人間であるから。究極の変人――そんな乱歩ワールドの明智像を、嶋田は見事に体現していた。

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