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Posted by 中 相作 - 2015.04.11,Sat
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毎日新聞
 平成27・2015年4月7日 毎日新聞社

SUNDAY LIBRAR:岡崎武志・評『餃子の王将社長射殺事件』『晩鐘』ほか
 岡崎武志
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SUNDAY LIBRARY:岡崎 武志・評『強打者』『それを愛とは呼ばず』ほか

2015年04月07日

 ◇力を尽くした真剣勝負の裏側

◆『強打者』飯尾哲司・著(竹書房/税抜き1200円)

 春。さあ、プロ野球の開幕だ。今年も何かと話題が多いなか、注目の一つは、ホークス新監督に就任した工藤公康の采配ぶり。現役時代、各チームを「優勝請負人」として渡り歩いた大投手だった。

 飯尾哲司『強打者』は、投手生涯に、1万4369人もの打者と対戦した工藤に、「私にとっての『強打者』」とは誰かを徹底して聞き出した。結論は「私が苦手だった打者は、私にとっての『強打者』なのです」。

 たとえばイチロー。驚異的な記憶力を生かし、一度見たボールを忘れない。その「イメージ力」こそイチローだという。力を尽くして対した者同士ならではの評価だ。元阪急の石嶺和彦は内角打ちの名手。プロ入り初のサヨナラヒットを打たれた忘れられない打者だ。

 近鉄時代の中村紀洋とは、チームの勝敗を越えて、アイコンタクトで勝負を挑んだという。テレビや観客席からは見えない、白熱のドラマがあったことを我々は知る。野球はやっぱりおもしろい。今年のホークスに注目だ。

◆『それを愛とは呼ばず』桜木紫乃・著(幻冬舎/税抜き1400円)

 『それを愛とは呼ばず』の著者・桜木紫乃は、2013年に『ホテルローヤル』で直木賞を受賞。本作も官能的な愛の物語だ。50代半ばの伊澤亮介は、社長であり年上の妻でもある章子を失う。同時に仕事と故郷を奪われた亮介は、元タレントの紗希と銀座のキャバレーで運命的な出会いを果たす。共に夢を失った2人がたどり着いたのは、北海道。女の狂気に蜘蛛の糸のように搦めとられる男。それは愛だったのか? 波乱のラストまで目が離せない。

◆『宝塚歌劇』永井咲季・著(平凡社/税抜き2600円)

 昨年創立100周年を迎えた宝塚歌劇団。余興として水泳場の舞台で始まった少女たちの無邪気な歌劇が、夢を紡ぐ一大エンターテインメント装置として成長する。永井咲季『宝塚歌劇』は、その変貌の100年を追いながら、同時に、機関誌『歌劇』を通覧、研究する。そこに寄せられた熱烈なるファンの声から、著者は通底するキーワードとして「なつかしさ」を導き出す。宝塚特有の情緒を「なつかしさ」で読む視点が大変新鮮。これが卒論とは驚きだ。

◆『乱歩ワールド大全』野村宏平・著(洋泉社/税抜き1500円)

 日本ミステリーの神様・江戸川乱歩を、野村宏平が浩瀚な研究書『乱歩10+件ワールド大全』で解剖する。ポプラ社の「少年探偵」シリーズに飽き足らず、小学生にして大人の乱歩を堪能していたという。そんな早熟な乱歩マニアが、全著作を洗い出し、キャラクター、トリック、シチュエーションなど、さまざまな角度でその魅力を検証する。乱歩作品に頻出する「幼児」は、なぜ誘拐され、殺されるのか? 言われて初めて気づく乱歩の不思議な世界。

◆『第三の産業革命』山形浩生・監修(角川学芸出版/税抜き2500円)

『第三の産業革命』は、インターネット社会の変化と影響を記録する「角川インターネット講座」シリーズの一冊。監修の山形浩生は、いま話題のトマ・ピケティ『21世紀の資本』の翻訳者でもある。蒸気、電気の発明で起きた「産業革命」に続く、現代のネット社会における情報技術革命。しかし、前代の「産業革命」による豊かな社会は実現できたのか? 企業、労働、情報、金融など各分野のエキスパートたちが、その変化の本質を解き明かす。

◆『47都道府県・地名由来百科』谷川彰英・著(丸善出版/税抜き3800円)

 日本には、地形や風土にちなんだものから古来の伝説に由来するものまで、多様な地名が存在する。谷川彰英『47都道府県・地名由来百科』は、日本全国にあるユニークな地名を取り上げ、その意味を紹介している。“キツネの恩返し”のような話がもとになった茨城県の女化、数十年前まではおどろおどろしい状態だったという千葉県の行行林、鬼の面をつけて嫁をおどした姑の話から名づけられた福井県の嫁威など、誰かに話したくなるネタが満載。

◆『天皇の料理番』杉森久英・著(集英社文庫/各税抜き 上660円・下600円)

 「カツレツ」で味に目覚めた明治生まれの若者が、上京後、西洋料理の道に飛び込む。末は宮内省主厨長までになった秋山徳蔵。彼をモデル(小説では秋沢篤蔵)にした長編小説が、杉森久英の『天皇の料理番』。1980年に堺正章主演によりドラマ化され話題となった。この4月からTBS系で、佐藤健主演により再びドラマ化が決定。原作本も文庫でよみがえった。ホテルの下働きからスタートし、一流の料理人となった主人公の姿は今なお感動を呼ぶ。

◆『新編 子どもの図書館』石井桃子・著(岩波現代文庫/税抜き1040円)

 2008年に101歳で逝去した石井桃子は、『クマのプーさん』の翻訳をはじめ、日本で児童文学を育み定着させた第一人者。創作、翻訳のほかに、自宅を開放し、子どもたちのために私設図書館「かつら文庫」を運営してきた実績がある。『新編 子どもの図書館』は、その活動の実践を通して、子どもたちにとって本がいかに必要かを訴える。「人間らしく育ってゆく」ことを、本と結びつけて考える本書は、半世紀後の現代にもきわめて有効である。

◆『大渦巻への落下・灯台』エドガー・アラン・ポー/著(新潮文庫/税抜き490円)

 ミステリー、ホラー、ゴシックなど、広範な仕事を残したのが19世紀初頭にアメリカで生まれた作家、エドガー・アラン・ポー。巽孝之は、ジャンル別にポーの短編を新訳で文庫化している。『大渦巻への落下・灯台』は、その3弾で「SF&ファンタジー編」。地球空洞説に立脚する、途方もない海面の大渦巻にのまれ、そこから脱出する様をスリリングかつリアルに叙述するのが「大渦巻への落下」。灯台守の孤独を描く「灯台」ほか全7編。

◆『生物多様性』本川達雄・著(中公新書/税抜き880円)

 地球上には判明するだけで190万種、実際には数千万種の生物がいる。地球の裏側にいるちっぽけな虫は、我々日本人には関係ない。そう思うあなた。ところが生物学者の本川達雄は、本書のタイトル通り『生物多様性』こそが必要だと主張する。「生物はずっと続くことに至高の価値を置いている」という考えのもと、進化、遺伝などの基礎知識を踏まえ、地球における生態系システムを解説する。多様性と向き合うことで、生命の大切さが見えてくる。

◆『伝統と革新の町・金沢を歩き解く! 金沢謎解き街歩き』能登印刷出版部・著(じっぴコンパクト新書/税抜き800円)

 『伝統と革新の町・金沢を歩き解く! 金沢謎解き街歩き』の著者は、能登印刷出版部。約100年前に金沢で活版印刷業を創業し、以来、金沢の魅力を伝える出版事業を展開してきた。その成果を踏まえ、本書を、金沢の街の謎を解きつつ歩くガイドマップに仕立てた。金沢では江戸時代の古地図と現代の地図が重なるのは? 旧市街地の道が細く曲がりくねっている理由や、金沢城には天守閣がない事実、給料をもらっていた松の存在など興味は尽きない。

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おかざき・たけし 1957年生まれ。高校教師、雑誌編集者を経てライターに。書評を中心に執筆。近著『上京する文學』をはじめ『読書の腕前』など著書多数

※3カ月以内に発行された新刊本を扱っています

<サンデー毎日 2014年4月19日増大号より>
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