借金と教養とTPP

　昨年11月に出たちくま文庫『言葉なんかおぼえるんじゃなかった──詩人からの伝言』。

　▼筑摩書房：言葉なんかおぼえるんじゃなかった　─詩人からの伝言　田村 隆一 著 , 長薗 安浩 著

　「第十四話　借金」から引用。

　三十歳の頃、江戸川乱歩先生に借りた十万円のこと、ぼくは忘れてませんよ（笑）。

　ついでですから、「第六話　教養」からも引用。

　いいかい、今は過去の上に在るんだぜ。過去と今はつながっているんだ。継ぎ目がわかりにくい積み木みたいなものさ。だから、過去を大事にしないということは、今を大事にしないということになるんだ。
　過去、現在、未来。
　昔の人は、「一寸先は闇」という言葉で未来のことを表現したけど、そこには、一寸先もわからないから生きていくファイトが湧くという意味があるんだ。わかったら、やになっちゃうだろ。生活に疲れ切った十年後の自分がわかったら、生きていく意欲なんてなくなるぞ。たるみきった自分の顔をつきつけられたら、絶望しちゃうだろう（笑）。
　そして、その「一寸先は闇」を、つまり未来を生きていくために、過去から積み重ねた知恵が大事になってくるんだ。その知恵こそを、教養と呼ぶのさ。

　過去を大事にしなかったせいで、いまを大事にすることがまったくできない名張のまちで、おととい撮影。

　お昼ごはん食べて、店から外に出たら、降ってるか降ってないかわからないくらいの雨で、そのせいもあってか、まち全体が死んだみたいに静まり返って、歩くひとの影はなく、ただみる、よろよろと通過する一台の自転車。

　思わず写真を撮ってしまいました。

　さて、乱歩没後五十年の年も2月の20日。

　ここへ来ていよいよ気にかかるのがTPP問題ですが、先日「RAMPO Up-To-Date 2015」にも記載さましたこのウェブニュース。

　▼INTERNET Watch：（これでも）超高速！　TPP著作権問題の経緯と展望（2015年2月13日）

　福井健策さんによるえらく長い記事ですが、とりあえずポイントは、

　「最短シナリオでも、来年著作権切れを迎える江戸川乱歩や谷崎潤一郎の保護が延びるケースは考えにくい」

　というところでしょう。

　福井さんのお考えどおりにことが進むのであれば、来年の1月1日から乱歩作品も谷崎作品もパブリックドメインということになります。

　いったいどうなることでしょう。

　とかいいつ、きょうもお昼にしようっと。