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Posted by 中 相作 - 2014.09.16,Tue
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 平成26・2014年9月13日 産経新聞社、産経デジタル

“還暦”乱歩賞に値するミステリー『闇に香る嘘』下村敦史著
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【話題の本】

“還暦”乱歩賞に値するミステリー『闇に香る嘘』下村敦史著

2014.9.13 09:30



『闇に香る嘘』下村敦史著(講談社・1550円+税)

 ミステリー作家の登竜門として名高い江戸川乱歩賞も今年で60回目。賞が“還暦”を迎えた記念すべき年に、選考委員の絶賛を浴びて送り出された受賞作だ。

 主人公は戦後に満州から引き揚げた全盲の男。ふとしたことがきっかけで、男は、30年近く前に中国残留孤児として帰国しずっと肉親だと信じてきた兄が偽物なのではないかと疑う。40代で失明した男は、兄が帰国したときにその顔を確認できていないのだ。手探りの調査を始めた男の周囲で、不穏な出来事が立て続けに起こり…。

 意外な結末に至り、途中の何げない記述が周到な伏線であることに気づく。そんなミステリーの様式美に、人間の情愛や中国残留孤児をめぐる社会問題が絡み、物語の密度は高い。視覚障害者が語り手だけに、においや音など視覚以外の細密な描写も読みどころだ。

 発売前に重版がかかり現在4刷3万1000部。著者は乱歩賞に9回挑戦し5度目の最終候補となる本作で念願の賞を射止めた。過去の選考で3度、著者の作品に接した東野圭吾さんは今月5日の贈呈式で「3回落としたのは正解だった」と話した。人気作家の率直な一言が、本作の完成度の高さを雄弁に物語る。(講談社・1550円+税)

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