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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2011.01.28,Fri
 横溝正史と江戸川乱歩(16)
 
 いくら考えてもよくわかりません。「桐屋敷の殺人事件」で探偵役を務めるはずの刑事が「パノラマ島奇談」に登場した富豪と同じ姓だったのはなぜ? という疑問のことです。むろん正史は両者の一致を自覚していたことでしょう。菰田というのは乱歩作品の、それもその時点では「新青年」に発表された最新の乱歩作品の登場人物に与えられた姓であり、同じ警察署に勤務する人間につけられた遠藤や山田といったものに比べればやや一般的ではない姓でもありますから、正史は乱歩作品に使用されたのと同じ名前をあえて選択したと考えざるを得ません。正史には「新青年」が発売されれば乱歩は必ず「桐屋敷の殺人事件」を読むだろうという確信もあったはずで、だとすれば菰田という名前には正史から乱歩に向けたなんらかのメッセージが籠められていたと考えたいところなのですが、実際にはいかがなものか。もしかしたら呼び水だったのではないか。
 
 昭和3年「陰獣」年表(2010年10月30日)
 
 昭和3年5月5日、「新青年」6月臨時増大号が発売されました。正史が坂井三郎名義で訳したヒュームの「二輪馬車の秘密」が掲載され、その感想を記した乱歩の手紙が正史のもとに届いたのは翌6日のこと。乱歩が小説の執筆を再開する気になっていると見て取った正史は7日か8日に乱歩を訪ね、「パノラマ島奇談」の二倍にあたる原稿料を提示しながら「新青年」増刊号に百枚程度の小説を依頼しましたが、乱歩は確たる返事をしませんでした。そこで正史は乱歩の再起を促すための呼び水として「桐屋敷の殺人事件」を書いたのではないか。そう考えてみると「桐屋敷の殺人事件」が発表された7月号の「編輯局より」にあった「もうそろそろ不木、三郎、乱歩の二世が出さうなものだのに、一向さういふ気配が見えないのはどうしたものか」という文章も乱歩を誘う呼び水めいて見えてきますし、何より探偵の菰田は「パノラマ島奇談」でひとたび死にながら蘇生してきた人物と同じ名なんですから乱歩復活の呼び水としてはこれ以上ない名前だということになります。
 
 つづく。
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