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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2014.08.29,Fri
猟奇 12月号 クリスマス・ナムバア
 昭和3・1928年12月1日 第1年第7輯 猟奇社
 A5判 48ページ 10銭

関連
緒生漫筆
 本田緒生
 p14-17
『陰獣』について
 原辰郎
 p22-23
れふき
 p26-27

再録:「猟奇」傑作選 幻の探偵雑誌6(p174-177) ミステリー文学資料館編 光文社文庫 平成13・2001年


緒生漫筆

本田緒生  

 「陰獣」

 一年目か一年半目か、それ共半年目の作なのか私は知らぬ。そんな事、どちらでもいゝ事だけど、それが問題になつた作である。
 一回を読んだ時私は頭を下げた。全くうまい。実にうまい。憎い迄の表現の妙。江戸川氏一流のよさが十二分にまで画き出されてゐる。私は頭を下げた。実にうまい。全くうまい。
 二回目を読んだ時、私の感心はまだ消えなかつた。然し最後の附記を読んだ時私は思はず「はつ」とした。私は初めて夢から醒めた様に呟いた。「此の小説は探偵小説であつたのだ」と。私の感心にひびが入つた。作の魅力が不純になつた。私は知らぬ間に犯人を探してゐた、いつか作の持つ江戸川氏の味を忘れて。
 三回目を読んだ時、私は幻滅の悲哀を感じた。私の感心は後片も無く消えてしまつた。
 後に来た感想を私は今書かうとは思はない、だが私は独言つた。「探偵小説つて云ふものはトリツク無しでは書けないものであるのだらうか」と。

『陰獣』について

原辰郎  

 博文館の宣伝も大いに手伝つてはゐるが、兎に角江戸川氏の「陰獣」に対する評判は意外にも大きかつた。
 この作品は江戸川乱歩氏が、一年半の沈黙──尤もこれは新青年編輯子の宣伝であつて、編輯子は「あ、てる、てる、ひるむ」の存在を忘れたらしいし、新青年十一月号には横溝氏は明かに「あ、てる、てる、ひるむ」を無視、又は暗に江戸川氏の作ならざることを公言してゐる。又江戸川氏は耽綺社同人として幾多の作品に名前を連ね、殊に「飛機睥睨」に於ては同氏が最も重大に地位に立つて居られたとのことだが、こんなことは今の場合どうでもよい。要するに一年半の沈黙の後に発表した作であるとのことで、非常に期待されたらしい。
 私はここに、「陰獣」についての細部的批評を試みやうとは思はない。細部に関する私の感想は平林初之輔氏が新青年十一月号に書いて居られる、「陰獣」評と殆んど一致してゐるからだ。
 実際江戸川氏の「陰獣」に於ける態度はよくないと思ふ。結局、筋のための筋、おとしあなのためのおとしあな、而も、断定的な解決を与ふるべく余りに不合理な点が多いため作者は故意に最後を曖昧にぼかしてゐる。之れは効果を覗つたと云ふよりも寧ろ作者の責任免れの手段としか思はれない。読者としては甚だ迷惑なことである。

 名張人外境:乱歩文献データブック > 昭和3年●1928
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