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Posted by 中 相作 - 2014.01.14,Tue
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 平成26・2014年1月11日 産経新聞社、産経デジタル

探偵・金田一耕助の瞳に映った故郷は… 横溝正史が描いた神戸
 戸津井康之、岡本義彦(写真)
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【舞台の遺伝子】
探偵・金田一耕助の瞳に映った故郷は… 横溝正史が描いた神戸

2014.1.11 14:20 (1/4ページ)



明石港の燈台越しに臨む淡路島。横溝が描写した「墨絵」のようだ=兵庫県明石市

 夕暮れ時、水面に周囲の風景や空の色が映る。神戸市須磨区の堂谷池。水際から仰ぐ須磨寺は荘厳で美しい。同時に寒空のもと、どこか寂しいたたずまいだ。

 〈神戸も戦災がひどくて、須磨のあたりも大部分焼きはらわれているが、須磨寺を中心として、わずかばかり焼けのこったこのあたりのたたずまいが、折りからそぼ降る秋雨のなかに、辛(かろ)うじて古風な時代の昔をたもっている…〉

 横溝正史の『悪魔が来りて笛を吹く』。戦後の混乱期の「帝銀事件」を彷彿(ほうふつ)とさせる東京の宝石店で起きた事件を軸に物語は展開。重要な舞台として、この須磨寺をはじめ、兵庫県の街並みが随所に登場する。

 かつて、寺の界隈(かいわい)は豪華な別荘が立ち並んでいたというが、戦災で多くが焼かれたという。この一節は、探偵、金田一耕助が容疑者のアリバイを探るため、須磨寺近くの宿に泊まった時の描写だ。

【舞台の遺伝子】
探偵・金田一耕助の瞳に映った故郷は… 横溝正史が描いた神戸

2014.1.11 14:20 (2/4ページ)

 神戸は横溝の故郷。事件とともに、没落してゆく旧華族の“斜陽”の要素も描かれ、幼い頃から戦後にかけて見聞きした故郷の移り変わりを小説に重ねたのかもしれない。

 横溝正史は明治35年、神戸市中央区で生まれた。大阪薬学専門学校(現大阪大学薬学部)卒業後、薬剤師となり、神戸市内で家業の薬局を継ぐが、江戸川乱歩のすすめで上京。作家として独立する。

 独特の作風とミステリーの根底には戦時中の岡山県での疎開体験が大きく影響したといわれている。『本陣殺人事件』『八つ墓村』『獄門島』…。作品には岡山県を舞台にした傑作が多い。その中で『悪魔が来りて笛を吹く』は、故郷・神戸と周辺の描写にかなりの重点を置いている。

 10年前、横溝の生誕碑を神戸市中央区内に建立するために尽力した探偵小説研究家、野村恒彦さん(59)は「横溝といえば岡山、という印象が強いが、神戸が生んだ探偵小説家として誰も異論はないでしょう」。

【舞台の遺伝子】
探偵・金田一耕助の瞳に映った故郷は… 横溝正史が描いた神戸

2014.1.11 14:20 (3/4ページ)

 野村さんは長年、横溝と神戸の関係を調べ続けてきた。『悪魔が来りて笛を吹く』について、「神戸を中心とした描写は、450ページある小説の中で、実に97ページも費やされています」と解説する。


 宝石店「天銀堂」で店員10人が何者かに毒殺され、宝石が奪われる事件が起こり、世の中を震撼(しんかん)させる。その事件の容疑者とされた椿元子爵が姿を消した-。実際の「帝銀事件」や旧華族の没落などを背景に描かれた作品だ。

 探偵、金田一耕助は、容疑者の椿元子爵のアリバイを調べるため、須磨寺近くの宿に滞在。さらに明石の港から淡路島へ船で渡る。

 〈桟橋の根もとには雨にうたれた伝馬船がいっぱい、浪のうねりにあおられて、揺り籠(かご)のように揺れている。港の出口にはそれでもいくらかスマートな燈台がひとつ。その向こうに淡路島が墨絵のようにけむっている…〉

 明石海峡大橋が架かっていない当時の淡路島は“遠い島”だっただろう。「墨絵のようにけむる」という不気味な描写が印象的だ。横溝の傑作『獄門島』を彷彿(ほうふつ)とさせる。

【舞台の遺伝子】
探偵・金田一耕助の瞳に映った故郷は… 横溝正史が描いた神戸

2014.1.11 14:20 (4/4ページ)

 野村さんは「獄門島は岡山県の島がモデルですが、登場する地名は架空。一方、『悪魔が来りて笛を吹く』では淡路島などの地名はすべて実名です」。帝銀事件をテーマにした以上、「リアルに描くため、故郷で土地勘のある兵庫県を選んだのでしょう」と分析する。


 「最も影響を受けた推理作家は?」。貴志祐介さん、綾辻行人さんら関西在住の現代推理作家たちに尋ねると、必ず共通の作家の名が返ってくる。「もちろん横溝正史です」

 上京後も望郷の念を込めて描き続けたその精神は、関西を拠点に踏ん張る後輩作家たちの誇りとなり、心に根付いている。

文・戸津井康之

写真・岡本義彦

 ■『悪魔が来りて笛を吹く』 横溝正史が探偵小説雑誌『宝石』に昭和26年から2年間連載した長編小説。探偵、金田一耕助のもとに天銀堂事件の容疑をかけられ失踪し、信州の霧ケ峰で遺体で発見された元子爵、椿英輔の娘、美禰子(みねこ)が父の遺書を持って訪れる。金田一が元子爵の死の謎を調べ始めたところ、椿邸に同居する元伯爵が何者かに殺害される。陰惨な連続殺人の始まりだった…。
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