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Posted by 中 相作 - 2013.07.06,Sat

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ぴあ映画生活
 平成25・2013年7月3日 ぴあ

『偽りの人生』特集:兄になりすました男の人生は “真実”か“偽り”か?
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『偽りの人生』特集:兄になりすました男の人生は “真実”か“偽り”か?

(2013/07/03更新)

名優ヴィゴ・モーテンセンの主演最新作『偽りの人生』が公開される。本作は双子の兄を殺し、彼に成りすまして新たな人生を生きようとする弟の姿を追った重厚なサスペンス劇だ。そこで描かれるのは、ひとりの男のついた嘘の行方。彼のついた嘘は“真実の人生”になるのだろうか?






『ロード・オブ・ザ・リング』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』などで活躍する名優ヴィゴ・モーテンセンの主演最新作『偽りの人生』が公開される。本作はヴィゴが「第二の故郷」と呼ぶアルゼンチンを舞台に、ある理由から双子の兄を殺し、彼に成りすまして新たな人生を生きようとする弟の姿を追った重厚なサスペンス劇だ。そこで描かれるのは、ひとりの男のついた嘘の行方。彼のついた嘘は"真実の人生"になるのだろうか?





ヴィゴ・モーテンセンはハリウッドで圧倒的な成功を収めてからも"スター"の座に安住することなく、俳優として刺激的な題材を求めて世界各国を巡ってきた。そんな彼がある日、プールで偶然に出会ったのがアルゼンチンの新人監督アナ・ピターバーグだ。アナが声を勇気を出して彼に声をかけたことから交流が始まり、彼女の書いていた脚本『偽りの人生』が完成する。ヴィゴは「物語の構造の見事さに驚いた。キャラクターたちが完璧に定義づけられた、非常に独創的なサスペンス・スリラーだと思った。映画界では何年にもわたって多くのサスペンス・スリラーが作られているが、アナの脚本はどんな形式にも則っていない独特な物語だった」と振り返る。
さらにヴィゴは本作で初めて双生児役に挑戦し、ひとりで兄と弟を演じ分けた。「僕は挑戦し、変貌するのが好きだ。双子の兄弟の違いはそれぞれに肉体的かつ行動的な特徴があり、声のトーンや抑揚を変えて表現しなくてはならなかった。でも僕たちは、その違いを大げさにはしたくなかった。微妙なニュアンスが必要だったんだ」。数々の難役をこなしてきた彼が"自分"を相手に演じる場面は注目だ。

世界が注目する良作量産国:アルゼンチン

本作の舞台となったアルゼンチンは、南米でも映画産業が活発な国だ。国営映画協会が外国映画を制限し、自国映画を保護する立場をとっており、着実に映画人も輩出している。近年ではフアン・ホセ・カンパネラ監督の『瞳の奥の秘密』が2009年の米アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、日本でも人気を集めた。本作には『瞳の…』に出演したソレダ・ビジャミル、ハビエル・ゴディーノら俳優陣やスタッフたちが多く参加している。





本作の主人公アグスティンは医師として活動し、妻の所有する高級マンションで穏やかに暮らしているが、なぜか心が満たされない日々をおくっている。そんなある日、彼のもとに長らく絶縁状態にあった双子の兄ペドロが訪ねてくる。彼らの故郷であるティグレで養蜂業を営んでいる兄は見た目も生き方もアグスティンとは正反対だ。兄は突然、拳銃を取り出し「自分は末期ガンなので7万ペソと引き換えに自分を殺してほしい」と言い出す。アグスティンはもちろん兄の要求を即座に断るが、心の中に抱えた想いは消えない。別の誰かになって人生をやり直してみたい。
本作はある偶然からアグスティンが兄を殺め、自身が"兄"になってティグレへと戻る場面から始まる。彼は兄になることで退屈だった都市の暮らしを捨て去ることができたが、今度は故郷で生前の兄が手を染めていた誘拐ビジネスのトラブルに巻き込まれていく。アグスティンは"他人"として生きていくことができるのか?兄が残した人生と彼はどう向き合うのか?本作は重厚なサスペンスを主軸にしながら、ひとりの男の数奇な運命を描いていく。

双子映画の系譜

一卵性双生児はこれまで数々の映画に登場してきた。デイヴィッド・クローネンバーグ監督は『戦慄の絆』で性格の違う双子がひとりの女性を巡って壮絶な駆け引きを繰り広げる様を描き、塚本晋也監督は江戸川乱歩の小説を基に『双生児』を発表し、異なる環境で育った双子のドラマを描いている。カメラはキャラクターの内面を写すことができない。だからこそ見た目が同じの双生児は多くの映画人たちを魅了してきたのではないだろうか。





本作は”なりすまし”をモチーフにしたサスペンスでありながら、物語が進むうちに”人生の行方はどのようにして決まるのか?”、”本当の自分とはどこにあるのか?”を描く重厚なドラマが立ち上がってくる。モーテンセンは「この映画でとても独創的で面白いと思えるものは"嘘を通して真実に到達する"という点だ。兄ペドロになったふりをするときのアグスティンは明らかに嘘をつくが、ある意味、彼はアグスティンとしても嘘をついていたんだ。彼は自分でそうあるべきだと思うアグスティンを演じていたにすぎない。両親がそうあってほしいと望むアグスティン、妻が望んでいると彼が考えるアグスティン。社会が望んだ人間、誰もが喜ぶと彼が信じた人間だった」と語る。
自分の人生を捨て、兄になりすましたひとりの男が、兄であることさえもやめた時、そこにあるのはかつての自分=弟の人生か、それとも?『偽りの人生』は緊迫のドラマを通して”真の人生”について考えさせられる作品に仕上がっている。

『偽りの人生』
7月12日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
『偽りの人生』公式サイト
http://www.itsuwari-jinsei.com/



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