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Posted by 中 相作 - 2013.06.08,Sat

ウェブニュース

大阪日日新聞
 平成25・2013年6月5日 新日本海新聞社大阪本社

御大礼記念国産振興東京博覧会鳥瞰図
 池田治司
 Home > 連載・特集 > 浪華紙魚百景 大商大商業史博だより > 記事

浪華紙魚百景 大商大商業史博だより


御大礼記念国産振興東京博覧会鳥瞰図


2013年6月5日


小説の舞台となった博覧会




江戸川乱歩『黄金仮面』の舞台となった御大礼記念国産振興東京博覧会の鳥瞰図




黄金仮面が跳梁する上野公園の情景をほうふつさせる「東京大正博覧会第二会場夜景之真況」


 世間を騒がす黄金仮面が、貴賓御巡覧の日に博覧会の会場に現れる。昭和5(1930)年から翌年にかけて月刊誌『キング』に連載された江戸川乱歩の「黄金仮面」に登場する上野公園の産業博覧会の場面である。これは、天皇即位の礼を記念して「昭和3年の春に行われた御大礼記念国産振興東京博覧会がモデルと思われる」(江戸川乱歩全集第7巻『黄金仮面』光文社)。


 物語で黄金仮面は、「第一号館」に陳列された「志摩の女王」と呼ばれる時価20万円の大真珠を盗み、客引きを当て込んで「黄金仮面」の外題の喜劇を上演していた「演芸館」の裏口から満員の会場へ紛れ込む。傍若無人にそれを保護色にして舞台へ上がり、半信半疑の見物客を尻目に木戸口から逃げる。150尺の「産業塔」に続く大道へ出て貴賓に鉢合わせになり、追っ手に囲まれながら最敬礼をして疾風(はやて)のごとく駆け去り、両大師の前にそびえる「産業塔」に駆け上がる。しかし、探照灯の小部屋で行き止まりとなり、やむなく屋根に這(は)い上がってピストルを盾に居直る。


 日が暮れて怪物の姿が闇に隠れたあと、もう一つの探照灯をその屋根に向けて照らすと、怪物は頂上の金色の棒から力なく垂れ下がって揺れている。警官の指示で、屋根に上る足場を手配するために探照灯係の男がらせん階段を下りていく。実は彼が黄金仮面で、屋根の上には衣装ばかりでもぬけの殻。


 当館の中谷コレクションには「御大礼記念国産振興東京博覧会鳥瞰(ちょうかん)図」がある。これに黄金仮面の足取りを当てはめれば、まず現在の上野公園の西洋美術館と東京都美術館の間にある緑地帯の噴水池の東側に立っていた博覧会の「東一号館」に忍び込み、次にその南東、現在の東京文化会館辺りにあった「演芸館」に入って、そこから大通りに出て北上し、とんがり屋根の「記念館」で探照灯係に化けて逃げ去ったことになる(本来小説の「産業塔」に比定される150尺の「万歳塔」が南側の公園入り口にあったので、この部分には創作がある)。


 しかし、「産業塔」を照らすもう一つの探照灯の位置が分からない。同じく上野公園で開かれた大正3(1914)年の「東京大正博覧会第二会場夜景之真況」には、不忍池の上空を照らす光の帯が描き出されている。年代がさかのぼるし照らす方向も違うが、イメージとしては黄金仮面が跳梁(ちょうりょう)する上野公園の情景をほうふつさせる。博覧会という非日常の世界は、ミステリーの舞台としても申しぶんがない。


 (大阪商業大学商業史博物館学芸員・池田治司)

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