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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.05.19,Sun
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Posted by 中 相作 - 2013.06.03,Mon

書籍

菊池幽芳探偵小説選 論創ミステリ叢書63
 菊池幽芳
 平成25・2013年5月20日初版第一刷 論創社
 A5変型判 カバー 367ページ 本体3600円

関連
解題
 横井司
 p352-367

解題


横井司  


 1


 菊池幽芳といえば、明治三十年代に隆盛を極めた家庭小説というジャンルの代表作家として近代文学史にその名を刻んでいる。ここでいう家庭小説とは、社会の暗黒面を題材とする悲惨小説・深刻小説・観念小説と呼ばれた作品群の反動として登場した、「家庭にあつて、子女を前にしても公然読んで差支へない道徳小説、純潔小説」(高須芳次郎『日本現代文学十二講』新潮社、一九二四)のことで、光明小説とも呼ばれる。幽芳その代表作家として盛名を馳せ、生前には十五巻にも及ぶ個人全集を刊行するほどであった。だが、その後に登場する、自然主義と名づけられる作家たちの登場によって、通俗的な興味を中心とすると見られた家庭小説が正統的とされる文学史の傍流へと追いやられたこともあり、幽芳は、文学研究の対象として取りあげられることが稀な、忘れられた作家となってしまった。今日における幽芳は、幼いころの江戸川乱歩に初めて探偵小説の面白みを味わわせた作家として、熱心な探偵小説ファンたちに、かろうじてその名を知られている作家といってよいかもしれない。


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