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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.11.22,Fri
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Posted by 中 相作 - 2010.10.29,Fri
 乱歩の「悪霊」に関してメールでご質問をいただきました。このブログでお答えすることにいたします。まず、ご本人からOKを頂戴いたしましたので、メールの全文を以下に転載。
 
 中相作様
 
 ずいぶん長い間、ご無沙汰しておりました。
 名張人外境ブログと名張まちなかブログ、毎日楽しく拝見しています。
 今日は、長年疑問に思っていた事について、中さんに訊けばその疑問が氷解されるのではと思い、メールしました。
 正史と都筑道夫との対談「われら華麗なる探偵貴族  vs都筑道夫」<別冊問題小説冬季号・1976年1月15日>での正史の発言の意味がよく分からないなとずっと思っていたのです。正史の「夜歩く」の自己評の後の都筑の発言から引用します(引用は「髑髏検校」<正史著、講談社・大衆文学館>から)。
 
 都筑 しかし、一人称の記述者が嘘を書くというのは、最初からやってやろうという気がおありになったわけですね。
 横溝 「スミルノ博士の日記」というのがあるけれど、あれと「アクロイド」と、どっちが古いのかな。
 都筑 「スミルノ博士」でしょう。
 横溝 あれは惜しいことをしたな。乱歩の「悪霊」がそうですよ。ぼくが毒づいたばっかりに、よしてしまったけどね。ぼくが乱歩に聞いたら、いや「スミルノ博士」だよといった。その一言でわかるのよ、記述者が犯人だということが。
 
 この『ぼくが毒づいたばっかりに、よしてしまったけどね。』の発言は(1)中さんが、人外境ブログで紹介していた正史の「江戸川乱歩へ」のことを指しているのか?(2)正史が乱歩に個人的に会ったときに、「悪霊」は手紙の主が犯人だろうと連載序盤にもかかわらず正史に的確に指摘され、その事が乱歩にショックだったのか、少なからず「悪霊」中絶に影響を与えたのか? 
 『探偵小説四十年』には、(2)のようなことは無論書かれていませんが、私は(2)のようなことが二人の間にあって、正史は「あん畜生。俺が犯人を指摘したからといって、さっさと中絶しやがって」と激怒し、だからこそ乱歩に何の前触れもなしに「江戸川乱歩へ」を寄稿したのかなと想像しているのです。『毒づいた』という言い回しがとても気になります。
 中さんのご見解をご教示いただければ、幸いです。
 神戸での講演、大盛況になることを願っております。
 それではまた。お元気で。
 
   長谷川泰久
 
 追伸
 昨年、ミステリー文学資料館で名張市から戴いた二つの乱歩飴、いまだに舐めずにいます。一つは青山さんにあげました。青山さんも永久保存するとのことでした。
 
 いやー、「われら華麗なる探偵貴族」が講談社大衆文学館の『髑髏検校』に収録されているとは知らなんだ。さっそくこっちに追記しました。1月15日のデータです。
 
 名張人外境:乱歩文献データブック > 昭和51年●1976
 
 長谷川さんとは昨年10月5日、国立劇場で乱歩歌舞伎第二弾「京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)」をいっしょに観劇し、そのあと劇場前から東京駅までともにバスに揺られ、東京駅でお別れして以来のご無沙汰で、なんかずいぶんお懐かしい。乱歩が生まれた名張のまちはいよいよさびれまくってますけど、また当地にもお運びいただきたいと思っております。
 
 さて、本題。正史が毒づいたというのは(1)か(2)か、ということになると、これはもう(1)だと判断して間違いないと思われます。「噂」の1971年9月号に掲載された座談会「男色まで実験した常識人」で、正史は「悪霊」の中絶についてこんなふうに話しているからです。
 
横溝 あとで、何を書こうとしたのといったら、スミルナ博士の日記なんだ。手紙の書きぬしが犯人なんだ。それは惜しいことをしたねと言ったことがあった。手紙の形式で乱歩の味を出そうとしているんだから、書きにくいことも書きにくかったでしょうな。
 
 「あとで」というのは、連載が中絶したあとで、だと理解するべきでしょう。「惜しいことをしたね」というのは、中絶したせいであんな面白いトリックをつかえなくなったのは惜しかったね、といったことでしょうか。正史が「毒づいた」といっているのはやはり「江戸川乱歩へ」のことを意味しており、ただし「江戸川乱歩へ」が載った号に乱歩の「『悪霊』についてお詫び」も掲載されているのですから、乱歩が中絶を決めたのは「ぼくが毒づいたばっかりに」ということではなかったはずだと思われます。
 
 それにしても、去年のトーク&ディスカッションでお配りした名張市の乱歩飴を永久保存していただいているというのはなんともありがたいことで、たしかにあの飴、市販はされておりませんから結構レアなアイテムということになるのかもしれません。また何かのおりにはばらまきたいと思います。
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