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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2025.10.08,Wed
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Posted by 中 相作 - 2017.05.21,Sun

 序破急で終わらなかったので、松竹梅でつづけます。

 平成8・1996年の4月であったか、5月であったかの話ですが、私は津市のKさんから名張市立図書館が頂戴した「宝石」「別冊宝石」「鬼」その他の雑誌をすべて、Kさん宅から直接拙宅に運び込みました。

 私は名張市立図書館の事務室の隅っこに机をひとつ与えられていましたが、ざわざわがやがやしていてとてもお仕事に集中できる環境ではありません。

 それに、私が『乱歩文献データブック』の編纂作業にあてていたのはおおむね早朝の時間帯でしたから、図書館でお仕事をするのは不可能でした。

 もうひとつ、図書館にはKさんに寄贈していただいた雑誌を保管するスペースがなかった、という事情もありました。

 で、とりあえず拙宅の書斎に、ほかにも廊下であったか暗室であったかに一部はみ出したと記憶しておりますが、すべての段ボール箱を積みあげました。

 書斎が一気にかび臭くなり、いやだな、と思ったこともまたよくおぼえております。

 それでまあ、『乱歩文献データブック』と『江戸川乱歩執筆年譜』を二年連続で刊行するという狂気の沙汰を実現するにあたって、私は鬼神と化してKさんの寄贈雑誌をチェックしまくりました。

 あの寄贈雑誌がなかったら、たとえば、『探偵小説四十年』の初出を克明に跡づける、なんてことはとてもできませんでした。

 ほんとに奇蹟だったな、とあらためて思い返されます。

 さて、『乱歩文献データブック』と『江戸川乱歩執筆年譜』を発行したあと、Kさんに寄贈していただいた雑誌は段ボール箱に詰めて名張市立図書館に運び込んだと思い込んでいたのですが、というのも、拙宅の書斎にもかつて暗室であったトイレ兼書庫にも段ボール箱が見当たらなかったからですが、このたびの平成納屋騒動で狭い家のなかをあっちこっちひっくり返していたところ、思いもしない押し入れの隅にマジックインキで「宝石」と大書した一群の段ボール箱がひっそりうずくまっているのを発見してしまいました。

 えッ? とか思ってすべて引きずり出し、近所のホームセンター、ジュンテンドー名張店で衣装ケースだかなんなんだか、内部が透けて見える収納ケースを買ってきて、段ボール箱から移動して整理したのがこの写真です。


 これで「宝石」全冊です。

 「別冊宝石」全冊はまた別です。

 しかし、こんなものをこっそり秘匿し所有していたなんて、これはもう明らかに業務上横領、わが嘱託時代の犯罪ではないのか。
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Posted by 中 相作 - 2017.05.18,Thu

 名張市の公用車をすっ飛ばして、津市にお住まいだった探偵小説ファンのかた、かりにKさんとしておきますが、そのKさんのお宅にお邪魔いたしました。

 「宝石」全冊は、むろん「別冊宝石」全冊も含めて、Kさん宅の畳敷きの一室で、段ボール箱に収納され、その段ボール箱を積みあげて保管されていました。

 雑誌の重みで畳が沈み、段ボール箱を搬出したあとにへこみが残っていたことを記憶しています。

 あと、「鬼」全冊とか、そのあたりのものもごっそり頂戴して、公用車に詰め込んだあと、奥さんにメロンを出していただいたことをやはり記憶しております。

 その後、Kさんとは賀状をやりとりするだけのおつきあいがつづきましたが、あるとき、朝日新聞三重版の短歌欄にKさんの作品が採られていて、それがどう読んでも奥さんが亡くなった悲しみを詠んだものでしたから、Kさんに手紙を出して立ち入った事情をお訊きし、あらためてお悔やみを申しあげたものでした。

 そのKさんもお亡くなりになって、もう十年ほどになるでしょうか。

 名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック刊行事業がスタートした直後、願ってもないプレゼントをいただけたことは、いまから考えると奇蹟と呼んでいい僥倖だったのではないかと思い返されます。

 Kさんと探偵小説の神さまに、あらためてお礼を申しあげたいと思います。

 といったところで、序破急では終わりませんでした。

 さらにおはなしはつづきます。
Posted by 中 相作 - 2017.05.17,Wed

 平成8・1996年の4月であったか、あるいは5月であったか。

 津市在住のかたから、津市にある図書館を経由して、名張市立図書館へ連絡をいただきました。

 用件はどういうものであったか。

 そのかたは年季の入った探偵小説ファンでいらっしゃいましたが、名張市立図書館が『乱歩文献データブック』刊行の準備を進めているという新聞記事をお読みになって、たぶん役に立つはずだから、自分がもってる「宝石」全冊、まとめて寄贈しようか、と申し出てくださったのであった。

 全冊です全冊。

 「宝石」が創刊号から最終号まで、予約購読者しか手にできなかったというレアアイテムまで含めて、一冊残らずすべてただでいただけるというではありませんか。

 名張市の公用車に乗り込み、名張名物の乞食根性を丸出しにして、津市の中心地区にあったそのかたのお宅まですっ飛んでまいりました。
Posted by 中 相作 - 2017.05.16,Tue

 高木彬光の著名な短篇を踏まえたエントリタイトルとなっておりますが、ただそれだけの話です。

 平成納屋騒動で一番びっくりしたことを記します。

 私が名張市立図書館の乱歩資料担当嘱託を拝命したのは平成7・1995年10月1日のことでした。

 拝命してすぐ、名張市の次年度一般会計当初予算に『乱歩文献データブック』刊行のための予算を組み込んでもらうべく準備を進め、首尾よくそれが実現して、翌年3月の市議会定例会で新年度の一般会計当初予算が正式に成立いたしました。

 それで、年度が改まった平成8・1996年の4月であったか、5月であったか、名張市役所記者クラブのみなさんにお願いして、市立図書館は『乱歩文献データブック』の編纂を進めています、みたいな記事を掲載してもらいました。

 伊賀版ではなく三重県全県の地方版に載せてくれた新聞もあって、あれはたしか朝日新聞であったと記憶しますが、それを読んだという津市在住のかたからある日、津市の県立図書館であったか、あるいは津市立図書館であったか、とにかく連絡が入ったそうです。

 で、今度はその県立または市立の図書館から名張市立図書館に、かくかくしかじかなんですよ、と電話連絡がありました。

 つづく。
Posted by 中 相作 - 2017.05.13,Sat

 きょうなんか肌寒いくらいで、とても納屋で一夜を明かそうなどという気にはなれません。

 紙の本では夏目鏡子述、松岡譲筆録『漱石の思い出』を文春文庫版で読み終えましたが、奥さんというのは旦那さんのことをよく見ているというか、見抜いているというか、見切っているというか、とにかく冷静に観察していることにいささか驚かされました。

 乱歩の奥さんがこうした著述を残していたら汲めども尽きぬ興趣をたたえた一冊になっていたであろうものをと、やや残念な気がいたします。

 漱石の没後十年を過ぎてから未亡人述、娘婿筆録の聞き書きが始まったとのことですが、臨終の場面なども鮮明に記憶され克明に描かれていて、女というのは男よりよほど胆の据わった生きものなんだなと得心いたしました。

 ところで、自宅で死の床に横たわっていた漱石のもとに、ある日、和辻哲郎が見舞いに訪れたそうです。

 夫人の父親が癌にやられていた和辻は、

 「自分も絶望しはたのものもあきらめていたのが、ふと人のすすめである気合い術をうけてからというもの、今まで喰べられなかった食事をるようになり、たいへんいいぐあいだ。自分なども最初そんなことがあるものかと話を聞いたとき施術しじゆつにむしろ反対したぐらいなのだが、こうやって目の前で奇蹟的なことが行なわれればこれを疑うわけには行かない。もちろん難病が治ったとは思わないが、たとえ一時でも小康を得るようなことがあればそれに越したことはないと思う。現代の医学だって万能というわけではないのだから、だまされたと思ってそれにかかってみてはどうか」

 と鏡子にしきりに勧めたそうですが、これを読んだ私は漱石と同じ年に生まれた乱歩の父親、平井繁男が三重県鈴鹿郡の山奥で妙な行者みたいな人のもと、藁葺き屋根の小屋に籠もって咽喉癌の療養生活を送ったというエピソードを連想いたしました。

 なんとも非科学的な話だなと思っていたのですが、和辻哲郎でさえこんなことをいってたわけですから、薬石効なしと悟った繁男が擬似信仰めく治療に走ったのも無理はないか、と納得しておりましたところ、なんのなんの鏡子奥さまは、

 「しかしその話を伺っても、病人はたいがい死ぬ前にはちょっとよくなって、この分ならと傍のものが気を休めているとぽくりとくといった、いわゆる仲なおりというやつのあるものですから、和辻さんのお父さんの奇蹟というのもそれだろうというはらが私にあります」

 ってんできっぱり断ってしまいます。

 やっぱ、女の人って、タフだな。

 みたいな次第で、和辻哲郎「風土」の価格ゼロ円キンドル本を再読用にダウンロードしようと思ったのですが、いまだ青空文庫で公開されておらず、したがってキンドル本にもなっておりませんので、かわりといってはなんですけど「古寺巡礼」にいたしました。

 さ、お酒にしよっと。
Posted by 中 相作 - 2017.05.12,Fri

 小学館の電子書籍『江戸川乱歩電子全集 第13巻』をダウンロードいたしました。

 電子書籍まわりの話題、2ちゃんねるで検索してみると、こんな感じです。

 2ちゃんねる:ビジネスニュース+@2ch掲示板 > 【出版】電子書籍市場に異変、米国に続いて欧州でも販売部数が減少 紙書籍に回帰の動きが強まる [無断転載禁止]©2ch.net(2017年3月16日)

 先日、このエントリに──

 2017年5月1日:快適キンドル生活

 「電子書籍は紙の本に比べると、どうも記憶に残りにくい、読んでもすぐ内容を忘れてしまう、といったような印象があるのですが」と記したのですが、上の2ちゃんねるのスレッドにも似たようなことを書いたレスがあって、やっぱりな、と思いつつ読み進めると、間髪を入れずすぐ次のレスで「老害」という指摘がなされており、またまた、やっばりな、と納得した次第でありました。

 結局まあ、少なくともいまのところ、再読用に価格ゼロ円の電子書籍をダウンロードする、というのがキンドルの最善の利用法だという気がいたします。

 さ、お酒にしよっと。
Posted by 中 相作 - 2017.05.11,Thu

 パブリックドメイン二年目の今年も、乱歩の著書があいついで出版されています。

 いっこ前のエントリには2月に出ていた、ということは平成納屋騒動が勃発したあとでしょうか、とにかく乱歩の新刊をネット上のデータだけにもとづいて記載いたしました。

 ちなみに、この手の本は当地の本屋さんには絶えて並びません。

 もしも並んでいればそのまま手に取って購入しているものと思われますが、本屋さんで取り寄せを頼むか、それともアマゾンでポチするか、いずれにせよひと手間ふた手間、余計な手間がかかりますから、とくに最近、そうした手間が面倒でしかたありません。

 それに、もうこの先、『江戸川乱歩著書目録』を増補する機会なんて訪れないだろうな、とか思いあたると、さらにどうでもいいやという気になってきていけません。

 さ、お酒にしよっと。
Posted by 中 相作 - 2017.05.10,Wed

 一度は納屋で、犬といっしょに一夜を過ごしてみようと思いながら、きょうはなんだか肌寒いみたいですから先送りすることにして、納屋からキッチンへ移動してきました。

 納屋だなんだと大騒ぎしていたせいもあり、もうひとつにはこんなことに意味や意義があるのかという疑念にも苛まれて、ついついお留守になっていたわけですが、とりあえず記録しとくか、ってんでいっこ前のエントリにネット上の情報だけにもとづいて『東京少年D団 明智小五郎ノ帰還』のデータを記載しました。

 いちいち必死になって買い込まなくたって、もうこんな程度でいいんじゃないの、と思いますけど、それにしても、名張市立図書館がもうちょっとしっかりしてくれたら、ここまで悩まずに済むんだけどなあ。

 さ、お酒にしよっと。
Posted by 中 相作 - 2017.05.07,Sun

 大型連休もきょうでおしまいですが、今年はなぜか人の死や病、寿命に思いをいたすことの多い連休となりました。

 けさかかってきた一本の電話なんて、用件のあとに誰々さんが脳梗塞になりましてみたいな報告が添えられて、いやお互い還暦過ぎてんだからいろいろ気ィつけなくっちゃね、と人生の重みを感じさせる挨拶で結んだ次第です。

 この大型連休はまた、本や雑誌や資料の整理が山を越えたこともあり、整理してみるとつくづくこんなものいくら集めてみたってぽっくり逝ったらひとえに風の前の塵に同じではないかといった無常感や無力感をおぼえた連休でもありました。

 はたまた、いろいろ整理してるあいだに、ウェブサイトの始末はどうすっぺという問題にも思いあたりました。

 更新を停止して七年近くになるウェブサイト名張人外境も、この眼が黒いうちにきっちり始末をしておくべきではないか。

 むろんプロバイダーとの契約を解消すればその時点でウェブサイト名張人外境はネット上から消滅するわけですが、すべてのデータを手もとのパソコンにダウンロードしてブラウザでそのデータにアクセスすることは可能です。

 しかし問題なのは、ということにこの連休、初めて思い至ったわけなのですが、ブログのデータのほうです。

 私が利用しているブログサービスはたしか、半年間投稿がないと自動的にブログそのものが消去されてしまうことになっていて、そうなると毎日こつこつ記録していたデータもただ春の夜の夢のごときものとなって消えてしまいます。

 手もとに残しておこうと思ったら、すべてのエントリのテキストと画像をいちいち保存しておくことが必要ですが、そんな面倒なことはとてもできません。

 そもそもこのブログ、ウェブサイトの更新ができなくなった急場しのぎに備忘録めいたものとして始めたもので、いずれブログのデータはウェブサイトに移管しようと考えていたのかどうか、そのあたりがどうもよくわからなくなっているんですけど、なんかもうウェブサイトとかブログとか、いつまでやっとってもしゃーないんじゃないの? という気がしないでもありません。

 いやー、いろいろ考えさせられるなあ。
Posted by 中 相作 - 2017.05.05,Fri

 昭和11年から12年にかけて発表された随筆「蔵の中から」によれば、乱歩は夏、小さい窓と厚い壁で外界から隔てられ、酷暑を知らない土蔵を書斎のようにつかっていたそうです。

 土蔵の窓には鉄格子がはまり、厚みのある壁の外にはプラタナスの青い葉が茂っていたといいます。

 「僕はこの漫文をその蔵の中で書き始める」と乱歩は記していますが、私はこの漫文を納屋のなかで書いていて、窓の外には梅の木の若い葉が見え、その向こうには初夏の明るい空が広がっています。

 こんな感じに。


 納屋のなかで犬と寝っ転がってキンドルを読み、ふと窓を眺めて外界がばかみたいに明るいという事実を知ったときには、なんかもうずっとこのまま、できるだけ納屋に籠もって、できるだけ人目に立たず、できるだけ他人と交わらずに生きてゆければいいんだけどな、とか思ってしまいますけど、なかなかそうもまいりません。

 こどもの日にそんなことを考えておりました。
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