Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2011.03.21,Mon
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平成23・2011年3月10日 読売新聞社
ミステリー、SFの小説史
佐藤憲一
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置き去られた系譜に光
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ミステリーやSFの近代の変遷を探る小説史が相次いで出版された。純文学中心の既成の文学史が置き去りにした物語の系譜を明らかにする労作だ。(佐藤憲一)
「普通の文学史の本には探偵小説(推理小説)の作家、翻訳家はほとんど登場しない。それなら、自分が探偵小説の側から近代文学史を書けないか」――文芸評論家の郷原宏さん(68)は、『物語日本推理小説史』(講談社)の執筆理由をそう語る。
明治中期の黒岩涙香による翻案小説ブーム、大正末期の江戸川乱歩の国産探偵小説の創始、戦後の松本清張の社会派推理小説の台頭と、伊藤整『日本文壇史』にならった「武将列伝を読むような」筆致で、隆盛を追う。
夏目漱石ら純文学作家の探偵小説的側面を探求したこともユニークだ。例えば、『吾輩は猫である』の「吾輩」を、近代人の「自覚心」の謎を推理小説的手法で追究した<「三毛猫ホームズ」の遠くて近い先祖>と位置づけ、大正期の谷崎潤一郎や佐藤春夫も、涙香と乱歩の間の空白期を埋める「探偵小説の中興の祖」ととらえる。
「谷崎の『秘密』などの初期短編は、ドイルやポーの影響がみられ、『指紋』など多くの探偵小説を書いた佐藤は、乱歩より先に日本で探偵小説という形式を確立した」という。
古典SF研究で知られる横田順彌さん(65)が半世紀の研究成果を1200ページに集大成したのが、『近代日本奇想小説史 明治篇』(ピラールプレス)だ。
東洋の国の副将軍がイギリスに攻め込む幕末の架空戦記から、オランダ語から訳された最初の翻訳SFなど、広い視野でSF的奇想小説を紹介する。
横田さんは高校生のとき、潜水艦を巡る科学冒険譚『海底軍艦』(1900年)で最初のSFブームを起こした押川春浪を知り、「戦前にもSFがあったんだ」との驚きが長年の研究につながった。
本書では春浪の豪放な人物像に踏み込むとともに発明小説の村井弦斎、先史時代ロマンスの江見水蔭という同時代の作家が忘れられていることも指摘する。「近代の日本人が、想像力を膨らませた“とんでもない”小説が多くあることをこの本で示すことで、後に研究者が出てきてくれると期待している」
両書に共通するのは、明治中期の『小説神髄』の頃から、文壇の主流に探偵小説や奇想小説へのある種の蔑視があったことを書いていること。文学史でミステリーやSFが疎外されてきたのは、それ以来の長い分断の歴史の影響だろう。郷原さんは、「小説は読者が読んで面白いことが重要で、文学にしきりをつけるべきではない」と語る。
(2011年3月10日 読売新聞)
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