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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2024.11.23,Sat
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Posted by 中 相作 - 2010.11.21,Sun
 キンドルに入れた「半七捕物帳」、おととい読んだ第五話「お化け師匠」にこんなシーンがありました。
 
 二人を引っ張って、半七は近所の自身番へ行った。浅鯏あさりの殻からを店の前の泥に敷いていた自身番の老爺おやじは、かかえていた笊ざるをほうり出して、半七らを内へ入れた。
 
 自身番という言葉が出てきますが、きのう読んだ第六話「半鐘の怪」には半七が自身番について解説してくれる場面が出てきましたので、ついでに引用しておきます。引用といったって、PDFファイルからコピー&ペーストするだけですが。
 
 「自身番というのは今の派出所を大きくしたようなものです」と、半七老人は説明してくれた。
 「各町内に一個所ずつあって、屋敷町にあるのは武家持ちで辻番といい、商人町あきんどまちにあるのは町人持ちで自身番というんです。俗に番屋とも云います。むかしは地主が自身に詰めたので自身番と云ったんだそうですが、後にはそれが一つの株になって、自身番の親方というのがそれを預かって、ほかに店番の男が二、三人ぐらい詰めていました。大きい自身番には、五、六人も控えているのがありました。その頃の火の見梯子は、自身番の屋根の上に付いていて、火事があると店の男が半鐘を撞くか、または町内の番太郎が撞くことになっていました。それですから半鐘になにかの間違いがあれば、さしずめ自身番のものが責任を帯びなければならないのです。今お話し申すのは小さい自身番で、親方が佐兵衛、ほかに手下の定番じょうばんが二人詰めているだけでした」
 
 半七老人からこうした説明を聞くことも「半七捕物帳」を読む愉しみのひとつにあげられるのですが、問題は第五話「お化け師匠」にある「浅鯏の殻を店の前の泥に敷いていた」というシーン。どうしてあさりの殻を泥に敷くのかというと、履物が泥にはまり込んだりめり込んだりするのを防ぐためなのですが、おとといこの場面を読んだとき、そういえば子供のころにはまだこんな光景が見られたなということを思い出しました。昭和30年代ということになりますが、当時の名張市では未舗装道路が一般的でしたから、そこらのおばさんが、というかうちの母親なんかもそうでしたが、ごく当然のこととしてぬかるみにあさりを撒いていました。初めて読んだときには思い出しもしなかったそんな記憶がどうして再読時によみがえってきたのか。
 
 もしかしたら、昔の話に敏感になっていたのかもしれません。『文壇よもやま話』が文庫化されたあと、それを待っていたような岡本経一さんの逝去が報じられ、以前青蛙房に電話したところ「昔のことをよく知っている者が毎日、午前中だけ出社しております」と教えられたことが思い出されて、そのエピソードから綺堂が描いた三浦老人や半七老人が連想されてきたせいで、こちらもついつい昔の話に敏感になり、過去の情景を想起しやすくなっていたということなのかもしれません。あるいは、将来について考えるのがなんとなくいやで、知らず識らず過去に眼が向いてしまう、みたいなことがあるのかもしれません。
 
 岡本経一さんのそれと同じ日に、黒岩比佐子さんの訃報も報じられました。時事通信のウェブニュースを無断転載。
 
 
 黒岩比佐子さん(くろいわ・ひさこ=ノンフィクション作家)17日午後1時37分、すい臓がんのため東京都中央区の病院で死去、52歳。東京都出身。葬儀は19日午前10時30分から東京都文京区小石川3の7の4の真珠院で。喪主は弟の清水章(しみず・あきら)氏。
 慶大卒。フリーの編集者などを経てデビュー。明治のベストセラー「食道楽」の著者の知られざる人物像を掘り起こした「『食道楽』の人 村井弦斎」(04年)でサントリー学芸賞、「編集者 国木田独歩の時代」(07年)で角川財団学芸賞を受賞した。古書店などで収集した膨大な資料に基づく丹念な調査に定評があり、「古書の森 逍遙」などの著書もある。(2010/11/17-20:35)
 
 五十二歳というのは、ちょっとつらい。というか、かなりつらい。将来について考えるのがいやになってしまいます。いやまあ、そんなこともいってられないわけですけど。
 
 岡本経一さんと黒岩比佐子さんのご冥福をお祈りいたします。
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