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Posted by - 2026.07.15,Wed
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Posted by 中 相作 - 2013.11.17,Sun

 好評発売中の「伊賀百筆」第二十三号、朝日新聞のウェブニュースに登場いたしました。

 朝日新聞デジタル:戦後文化 支えた若者(2013年11月15日)

 ありゃりゃ。

 もうリンク切れ。

 だったら、こっちをどうぞ。

 朝日新聞デジタル:戦後文化 支えた若者(2013年11月15日)

 これじゃ尻切れとんぼ、なにがなんだかわかりませんから、リンク切れになってる記事をこっそり復元しておきます。

朝日新聞デジタル > 記事

戦後文化 支えた若者

2013年11月15日



伊賀百筆を持つ北出楯夫さん(左)と「パルナッスの丘」を持つ福田和幸さん=伊賀市役所

 【保田達哉】伊賀の地域雑誌「伊賀百筆」の23号が完成した。特集は終戦直後の数年間につくられた回覧文芸雑誌「パルナッスの丘」を取り上げた。「緊急レポート」として、大きな被害が出た9月の台風18号をとりあげ、川上ダムがあれば本当に被害が軽減できたのかを考察している。

 「パルナッスの丘」は1946年ごろから48年にかけて14号つくられた。会員約60人が手書きで原稿を書いて回覧する。自由に考えを述べることができるようになった当時の状況を反映し、20歳代と思われる若者たちが「黒澤明論」「文化国家としての日本」「宗教と生命について」といったテーマで生き生きと書いた。後年、大学教授や医師になった会員もいるという。当時を知る4人が貴重な証言をつづった。

 台風18号の緊急レポートは歯科医師の武田恵世さんが「実は老朽化?木津川の治水はどうなる?」として報告。国道422号の崩落原因について「国道内部のエグレか空洞だろうから、ダムがあってもなくてもいずれ崩れていただろう」と指摘。「ダムは何もかも解決するツールではなくて、上流からの増水を減らせるだけ」と述べ、河川の維持管理や補修の重要性を強調している。

 また、元高校教諭の福田和幸さんが「井上謙先生をしのんで」として、作家・横光利一研究の第一人者で今年2月に84歳で亡くなった井上さんとの35年間にわたる交流を書くなどした。

 北出盾夫さんは「伊賀は松尾芭蕉をうみ、横光利一が青春時代を送った。戦前には『郷土』という月刊誌があり、戦後も『現代』や『市民』といった雑誌を出してきた。その文化を受け継いだ伊賀百筆。ぜひ手にとってほしい」と話している。

 伊賀百筆は1995年に上野印刷の企業メセナとして創刊。2003年の11号以降は会費やカンパで運営してきた。伊賀にこだわり続ける「オピニオン文芸誌」として発行してきた。

 1年ぶりとなった23号はA5判220ページ。1千部発行。1300円。伊賀、名張両市の主要書店で販売している。問い合わせは伊賀百筆編集委員会(0595・21・2145)へ。

 遠からんものは通販で、近くば書店で手にも取れ。

 でもって、よろしかったらレジまでお進みください。

 気になるお値段は、たぶん千五百円、と予告しておりましたが、驚きの税込み価格千三百円となっております。

 前号よりページ数がやや少なくなり、よりお求めいただきやすくなっております。

 どんどんお買い求めください。

 私もひさびさに紙媒体で漫才の高座をあいつとめ、ひとりで五十四ページも誌面を占拠してしまって、自分で自分をほめてやりたい気分です。

 新聞報道で私の漫才が言及されることはまずありませんけど、第二十三号の編集後記では、こんなふうにご紹介いただいております。

 久しぶりに『田中善助伝記』の編著者・中相作氏に歯に衣着せぬ漫才で登場願ったのも、今号の大収穫だと自負している。

 どちらさまにも、歯に衣着せぬ、とはみえましょうけれど、これでもそこそこ歯に衣を着せておりまして、おかげさまで苦情やお叱りその他のたぐい、いまだ一件も寄せられてはおりません。

 ありがたやありがたや。

 世界人類が平和でありますように。

 地域社会が静穏でありますように。

 とはいえ、来年の第二十四号に寄稿する「続・僕の図書館戦争」では、もう少し歯に衣を着せず、地域社会が抱える問題に鋭く切り込んでゆきたいと思います。

 さらにとはいえ、切り込んだところでなんの甲斐もない、ということは、第二十三号の漫才をお読みいただくだけでじゅうぶんご理解願えるはずですけど、乱歩生誕百二十周年記念も兼ねて、名張市立図書館の問題だけはけりをつけとかなきゃな、とは思っております。

 ま、どうぞお楽しみに。

 お楽しみといえば、11月30日に催される第二回怪人二十面相なりきりコンテストの翌日、12月1日にお披露目されるご当地アイドルが誕生いたしました。

 中日新聞 CHUNICHI Web:名張大好き「縁夢寿美ガールズ」 12月1日デビュー(2013年11月17日)

 どうぞお楽しみに。
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Posted by 中 相作 - 2013.11.15,Fri

 いよいよ寒くなってきました。

 寒ッ。

 名張、寒ッ。

 しかも、きょうは冷たい雨だし。

 今月30日に開催される第二回怪人二十面相なりきりコンテスト出場者のかたは、どうぞ万全の寒さ対策をお心がけください。

 ちなみに11月30日と12月1日、当地へのご来駕はこの切符がお得です。

 近畿日本鉄道:圏際・食彩・文化祭 ご当地グルメでまちおこしin名張×B-1グランプリ 往復きっぷ

 しかし、こんなとこにも怪人二十面相のなりきりが出没しとるのか。

 面白いから無断転載しとこ。


 「ここな、ばりええとこ」というコピーに、いささかの解説を加えておきます。

 「ここ」は指示代名詞、「な」は間投助詞、「ばり」は「とても」「非常に」の意の副詞で、もとは博多弁というが近年は大阪でも使用される。

 「ええ」は「よい」という意の形容詞、「とこ」は「ところ」。

 「な、ばり」は地名「なばり」のかけことば。

 コピー全体の意味は、名張は国のまほろば、といったことになるでしょうか。

 ほんとかよおい。

 実際にはどんなとこなのかというと、たまたまおととい名張のまちをご紹介いただいたブログがあって、そのエントリはこんな感じでがす。

 香ばしい町並みブログ ~昭和レトロな町並み~:【三重県・名張市】上本町サンロードの昭和なアーケード その1(2013年11月13日)

 さびれっぷりが半端なく、いよいよもって廃墟マニア垂涎の的か、とも思われてきますけど、乱歩が生まれた名張のまちの現状は、まさしくここに撮影されたとおりでがす。

 先日、昭和文学会の文学踏査で、小酒井不木ゆかりの愛知県は蟹江町をひさしぶりで歩いたんですけど、雨が降ってたという悪条件はあったものの、とにかく人影というものが見当たらず、信号なんかいくらでも無視できるくらい自動車も通りません。

 ああ、名張みたいだ、と感じ入ったものでしたが、日本全国津々浦々、どちらの土地におじゃましても田舎町の衰退はえらい勢いで進行しているようで、地方の集約という名の切り捨てが否応なしに進められてゆく過程のどこかで、名張のまちなんてのはひっそり息絶えてゆくことになるのでしょうか。

 だが。

 だがしかし。

 名張は死すとも乱歩は死せず。

 ばかは死んでも治らない。

 死んだみたいな名張のまちから乱歩蔵びらきの会が雄々しく世に問う乾坤一擲の一冊、本日の『奇譚』は挿話第二編「妖怪ト心霊」全文でございます。

(83)

EPISODE 2.
妖怪ト心霊.

 お化ケト云フト何トナク滑稽ニ聞ユル。狸ノ腹鼓、狐ノ嫁入、猫ノ踊リヲ連想スル。幽霊ト云フト非常ニ凄ク聞ユル。尾花ノ様ナ痩セタ手ヲ前ニブラくサセタ、血ダラケノ女ヲ連想スル。亡霊ト云フト幽霊ノ優シサガナクナッテ凄味ガ加ハル。お岩の亡霊、累ノ亡霊ヲ連想スル。妖怪ト云フト三ツ目子僧、大入道ヲ連想スル。変化ト云フト水ノ滴ル様ナ美人ニ化ケタ魔性ノモノヲ連想スル。魔物ト云フト大空一杯ニ拡ガッテ夜ノ世界ヲ占領スル、アノ見エナイ(Invisible)怪シイモノヲ連想スル。魑魅魍魎ト云フト "瘤取リ" ニ出テ来ルアノゴタくシタ鬼共ヲ思ヒ出ス。然シコレハ平凡ナ観察ダ。コノ内最モオッカナイモノハ実ニ猫ノ舞踏デアルノデス。ソシテソレヨリモ怖イモノハナニカト問ハレタラ、僕ハ立所ニ「独リ縁側デ日向ボッコヲシテ考ヘテ居ル事ダ」ト答ヘマス。日光ヲ受ケテ白ク光ル礫ヲ見ツメテ御覧ナサイ。ジット見ツメ見ツメテ御覧ナサイ。ソレネ。蜥蜴ノ赤イ舌モ一寸ト凄イ。夜ノ蜘蛛モ

(84)

凄イ。Tarantula ニ至ッテハ尚凄イ。砂漠ノ沈黙ノ凄サモアル。白昼熱〓ニ見出ス最モ深イ凄サモアル。
ソシテ、妖怪ハ我 Curious novel ノ物質的有形的ナル一対象デアル。主観的ナル心霊ノ問題ハソノ精神的ナル一対象デアル。先ヅ妖怪カラ始メルガ。コレニ付テハ安価ナル怪談、例ヘバ講談ノソレ、小年小説ノソレナドヲ読ンダノミデ未ダ一ツトシテ見ラレルモノニ出合ヒマセン。只一ツ Maupassant ノ The Horla or Modern Ghosts ノ主観的ナル怪談ニ云ヒ知レヌ味ヲ見出シタヿヲ覚エテ居ル。有形ノ幽霊ハ到底無形ノ幽霊ノ凄サニ敵ヒマセン。平田篤胤ノ著ニ鬼神論、古今妖魅考、仙境異聞、神童憑談略記、七生舞ノ記、勝五郎再生記、幽郷真語、稲生物怪録、等ガアル。無論面白イモノト思ハレルガ未ダ読マヌ。是非読ミ度イモノデス。ソレカラ井上円了博士ノ妖怪学。コレハ見逃スコトハ出来マセン。不知火ダトカ七不思議ダトカ云フ題材ガ取扱ッテアッタト記憶スル。尨然タル大著ノ割リニハ解明的デ凄クナイ。

 「〓」は判読不能。

 といっても、どんな文字だかはよくわかります。

 もんがまえに、沓。

 つまり、悶絶の悶、という字の心が沓になってる、そういう漢字です。

 しかし、こんな漢字は存在しないのではないか。

 しいて似た字を探せば、闇、ということになると思いますけど、明らかに闇ではありません。

 前後の文脈から判断することも、ちょっとおぼつかない感じです。

 だいたいこのあたり、乱歩のいってることはあんまりよくわかんなくて、猫の舞踏、ひとり縁側でひなたぼっこして考えていること、日光に白く光るつぶて、蜥蜴の舌、夜の蜘蛛、タランチュラ、砂漠の沈黙、と列記されても、そんなに怖い? という印象を否むことができませんし、そのあとに「白昼熱〓」とつづけられても、それなに? というしかありません。

 しかし、そこにこそ、乱歩が後年、くり返し描くことになる恐怖の原型があるのかもしれません。

 それにしても、不意に読者に語りかけてくるあたり、後年の語り口を髣髴とさせて、まさに栴檀は双葉より芳しの観があります。

 「勝五郎再生記」は、正しくは「勝五郎再生記聞」です。

(85)

妖怪ニ付テ未ダ何カ重大ナモノヲ読ンダ様ダガ一寸ト思ヒ出セヌ。次ハ心霊的方面ダ。最モ早ク刺激ヲ受ケタノハ桑原俊郎トカ云フ人ノ精神霊動三部デアッタ。中学一年ノ頃ダ。催眠術ノ存在ハ已ニソノ以前カラ知ッテ居ッタ。僕ノ好奇的ナル性質ハ早クカラ斯ウ云フ方ニ向イテ居ッタ。以来古谷鉄石ダトカ大阪ノ神秘会ダトカノ書物ニヨッテ催眠術ヲ読ンダ。アル時 New York ノ何トカ云フ会ノ広告ヲ見テ規則書ヲ取リ寄セ二十円計リ伝習料ヲ出サネバナラヌノニ驚イタコトモアル。ソシテ精神ノ全能力ヲ信ジタ。健全ナル精神ハ健康ナル身体ニ宿ルト云フ格言ノ皮相的ナヿヲ笑ッタ。丹下君ト催眠術ノ実験ヲヨクヤッタ。理論ニ於テハ僕ガ勝ッテ居ッタノダガ、実行ハ丹下君ガ上手ダッタ事ヲ今更ラ丹下君ノ偉大ナリシ証トシテ驚嘆スル。僕ハコノ方面カラ哲学ニ入ッタ。宗教ニ入ッタ。
個人ノ霊モ宇宙ノ霊モ共通ナル渾一体ダト云フ事ヲ信ズルノハ催眠術ノ行ハレ得ル所以ダ。仏教ノ哲学ハコノ点ヨリシテ味ガアルト思ハレタ。涙香ノ天人論ニ感心シタノハ未ダ幼イ頃デアッタ。Swedenborg ノ The Heaven and Hell ハヅット後ニ始メテ知ッテ。ソノ深サヲ喜ンダ。

 「古谷鉄石」は正しくは「古屋鉄石」。

 「丹下君」とあるのは、乱歩と同年の親友、丹下高福のことで、大正2年9月25日に名古屋で早世してしまいましたが、それから一年もしないうちに書かれたこの催眠術のくだりには、友人の冥福をあらためて祈る気持ちがこめられているようにも見受けられます。

 それにしても、美少年ふたりが催眠術ごっこに夢中になっている、などというのは、じつは結構妖しい図柄だと思います。

 「ヅット」は「ズット」。

(86)

コノ点ヨリシテ僕ハ孔子ノ哲学ヲ嫌味ダト思ヒ老子莊子ヲ好ム。老子ヲ一読シテアッケナイトハ思ッタケレド。Poeノ所ニ書クガ、 Usher ノ読ンダト云フ色々ノ蔭欝ナル書物ハ是非読ミタイト思フ。William Blake ノ画ト詩ノ凄サヲ喜ンダ。Dante ノ詩ノ浅クハアルガ古キ重サニ喜ンダ。未ダ何カ書ク事ガ残ッテ居ルガ忙グカラコノ位ニ止メテ置ク。要スルニ物理学天文学ヨリ妖怪学心理学哲学神学ニ進ムノガ僕ノ希望ダト思ヘバヨイ。
蘇東坡ハ貝ハ病ノ為ニ珠ヲ生ジ人ハ病ノ為ニ文ヲ作ルト云ッタ。Verona ノ人 Cesare Lombroso ノ Genio e follia 及ビ L'uomo di genio(狂人ト天才ノ訳アリ)等ハコノ思想ヲ押拡メタモノダト森鴎外博士ガ云ッタ。Lombroso ノ思想ハ Poe ト共鳴シ僕ト共鳴スル。Hereward Carrington 及 John R. Header ノ著ニ Death, its causes and phenomena ト云フ書ガアル。死ハ分ラヌ随ッテ生ハ分ラヌ。ソノ分ラヌモノヲ取扱ッテ例証ニ豊富ダ。文明協会ガ之ヲ訳シテ死ノ研究ト云フ。Hearn ノ In Ghostly Japan

 「Header」は「Meader」だと思います。

(87)

未ダ読ンデ居ラヌヿヲ悲シム。
Strand Magazine ノ 15 年一月号デ Leonidas Andreev ノ Was he mad を読んで Poe ヤ Andreiyeff ト同ジ type ノ物凄サを喜ンダ。Andreev ト Andreiyeff トハ同ジ人ダ同理でよく似テ居ルト思ッタ。ソシテコレハ上田敏氏ノ思想ト云フ訳ガアル。

〓からハーンの妖怪談を借りて病中ノ徒然に読むことにした(大正六 五月七日)

 ひらがなになってるとこは、ほんとにひらがなになってます。

 「同理」は「道理」。

 「ハーンの妖怪談」にかんする追記は、走り書きとか殴り書きと表現すべき筆勢ですから、ほとんど読むことができません。

 とか思っていても、しばらくしてまたじっくりながめてみると、夕暮れを迎えて夕顔の花が静かにほぐれはじめるように、なんとか読めるようになってくるから不思議なものです。

 ただし、最初の「〓」は人名だと思われますが、この字だけは判読できません。

 文脈からあたりをつける、ということが不可能ですから、どうにも見当がつきません。

 まいったなあ。

(88)


 このページは白紙ですが、ページ中央に「探偵興味」と落書きみたいなものが記されています。


 趣味、ではなくて、興味、となっている点が、文字どおり興味深い。

 さて、このあとはいよいよ、乱歩自身が「コレヨリ後ガ僕ノ最モ詳シク書キタイ所ダ」と記している第八章「エドガー・アラン・ポー」に突入することにあいなります。

 名張市教育委員会じゃあるまいし、おめーはいったいいつまで著作権の侵害をつづける気か、とお思いの諸兄姉もおいでのことと存じます。

 しかしまあ、もう少しだけ大目にみていただいて、なんとかポーのとこまではこっそり公開してみたいと思います。

 『奇譚』は全二百二十八ページ、第八章「エドガー・アラン・ポー」につづく第九章「続・ポー」は第百十四ページでおしまいになってますから、ちょうど半分。

 大目にみていただくにはうってつけの分量ではないでしょうか、とかわけのわかんないことをいってみました。
Posted by 中 相作 - 2013.11.11,Mon

 おととい、昭和文学会の秋季大会が名古屋市の金城学院大学で催されました。

 昭和文学会:2013(平成25)年度 昭和文学会 秋季大会【特集:群衆と文学――戦後から現代へ――】

 つづいてきのう、関連イベントとして「文学踏査~乱歩と不木、日本探偵小説の源流を追って~」というのがあって、そちらのほうにちょこっとおじゃましてまいりました。

 午前の部は不木ゆかりの蟹江町で歴史民俗資料館と鹿島神社文学苑を見学、午後の部では乱歩ゆかりの鶴舞公園から不木住居跡を経て結構いかがわしい大須界隈を探訪いたしました。

 ベストショットはこの一枚。


 場所はこちらです。

 大須商店街公式ホームページ:大須秋葉殿(オオスアキバデン)

 文学踏査の参加者に配られたスタッフによるまことによくできた手書き地図では、

 「★陽秀院(紙はり地蔵)水子供養」

 とされているところです。

 このお地蔵さんが、なんかこわいの。

 お地蔵さんには二枚十円で売られてる白い紙を貼っつけるのがならわしなんだそうで、げんにぺたぺたと紙を貼られたお地蔵さんは小さなミイラのような、でなければ諸星大二郎さんの漫画に出てきてもおかしくない奇怪な偶像のようなことになっていて、そばでみてるうちにじわじわじわじわじわなんだか恐ろしくなってきたんですけど、どうせなら紙を買い求めて謹んで供養してくればよかった、といまは反省している。

 それでは、ちょっとお休みしておりましたが、反省のけぶりもみせずにまいります。

(73)

CHAPTER 7
HUGO & BESANT.(思軒.)

〔Romance, Scientific novel, exploratory novel ヲ一束ニシテ茲ニ記ス。〕
 HUGO = Victor Hugo ハ Dumas ト同時代仏蘭西ノ二文豪ト称ヘラレ文学的価値ニ於テ Dumas ノ上ニアル小説家。Curious Novelist ナラヌ彼ヲ茲ニ詳評スル必要モナク、記スベク余リニ有名ナ人ダカラ別ニ云ハヌ。Les Misérables ジヤン、バルヂヤンノ奇シキ一生ヲ綴ツタモノ。Romantic ナ味ニ充チテ居ル。コウ云フモノハ最早ヤ Curious novel ノ範囲外ダ。Romance ハ多ク左様ダカラナルベク簡単ニ記シ後ノ Poe ヤ Doyle ニ多クヲ費シタイト思フ。
涙香ハ噫無情ト訳シタ流石ニ巧ミダガ深イ所ヲナクシテ涙香化シタ傾ガアル。全訳ハ近頃戸川秋骨(カ馬場孤蝶)ニヨツテ哀史ト題サレタ。Hugo ノ重ナル作ハ、

The Hunchback of Notre-Dame
The Laughing Man


(74)

Les Travailleurs de la Mer
Ninety-Three
Notre-Dame, or The Bellringer of Paris

コレハ尾崎紅葉等ニヨツテ鐘楼守トシテ訳サレテ居ル。

The Toilers of the Sea

彼ノ批評ニ Study of Victor Hugo ト云フ本ガアルヿヲ附加ヘテ置ク。
訳サレタモノニハ 英雄ノ肝胆(野田藤吉郎)ABC 組合(原抱一庵)地獄ノ虫、等デアル。森田思軒ノ訳ハ大分アルガソレハ次ニ
 思軒 = 森田思軒ハ日本ノ Hugo ト云ハレタ容皃迄ヨク似テ居ツタ。随見録 探偵ユーベル クラウド 懐旧 死刑前ノ六時間ナドアル。思軒コソ高等ナル意味ニ於テ Curious novelist ダ。Hugo ノモ彼ノ訳シタ様ナ作ハ Curious novel ノ内ニ入ル。思軒ハ外ニ Verne ヲ訳シテ大東号航海日誌、大叛魁、十五少年等ガアリ、Zschokke ヲ訳シテ破茶碗、Hawthorn ヲ訳シテ用達会社、Edgeworth ヲ訳シテ千人会、Poe ヲ訳シテ間一髪等アリ。
思軒ハ漢学ニ深キ素養ガ有リ英語ハ却

 「容皃」は「容貌」でいいように思いますが、いわゆる旧字体は新字体にあらためるとしても、「皃」のような異体字はどう扱うべきか、ちょっと悩まされます。

 「Hawthorn」は「Hawthorne」。

(75)

ツテ余リ深クナイ漢七英三ノ割合ダト云フ。嘗ツテ徳富蘇峰ガ "思軒ノ文ハ御姫様ガ味噌漉シ下ゲテ豆腐買ニ行クガ如シ" ト云ツタガ、plot ノ物質的ニシテ深カラヌモノヲ暢達ナル漢文ノ知識ヲ以テ文トシタ所ニ、成程コノ誹ハ免レヌ。我理想ハ思軒ノ筆ヲ以テモツト深イ Curious novel ヲ書カセタイノダ。Poe ノ Pit and Pendulum ハ稍ヤコノ理想ニ近カクハアルケレドモ。好キカラ云ヘバ思軒ハ涙香ヨリ勿論好キダ、Poe ト同ジ様ナ感ジデ好キダ。
 BESANT = 原作ヲ読ンダヿハナイ。
Armorel of Lyonesse 涙香ガ島ノ娘ト題シテ訳シタ。非常ニ豊富ナル plot ヲ有スル。アル部分、島ノ旧家ノ古イ老婦人ノ前デ古イ島ニ只一ツ新シイ島ノ娘ガ violin ヲ調ベル辺リハ、古イ古イ靄ノ中ニアル淡イ幻ヲ見ル様ナ物哀シサガアル。アル部分、悪人ガ変装ヲシテ戸籍帳ヲ切リ取ル辺リハ探偵小説ノ面白サガアル。然シ Curious novel トシテハ余リニ甘味ガ多イ。Curious novel ノ㐧一ノ特徴ハ苦イ戦慄ニアルヿヲ知ラネバナラヌ。Walter Besant ハ英国ノ人ダ。

(76)

作品ノ重ナルモノ。

All Sorts and Conditions of Men
The Captain's Room
Children of Gibeon
All in a Garden Fair
Dorothy Forster
Uncle Jack
The World Went Very Well Then
Herr Paulus

〔his rise, greatness, and fall〕

For Faith and Freedom
To Call Her Mine
The Bell of St. Paul's
The Ivory Gate
The Holy Rose
St. Katherine's by the Tower
Verbena Camellia Stephanotis
The Rebel Queen
Beyond the Dreams of Avarice
The Revolt of Man
In Deacon's Orders
The Master Craftsman
The City of Refuge


(77)

The Lady of Lynn
No Other Way
The Fourth Generation
Jerusalem
Sir Richard Whittington
Gaspard de Coligny
The Chaplain of the Fleet
The Orange Girl
The Monks of Thelema
By Celia’s Arbour
A Fountain Sealed
The Changeling
The Alabaster Box
Westminster
The Golden Butterfly
Ready-money Mortiboy
As we are and as we may be
Essays and Historiettes
London
South London
Fifty Years Ago
The Charm
The Eulogy of Richard Jefferies


(78)

East London


涙香ノ訳ニカヽルコノ種ノ Romance ヲ簡単ニ上ゲル何故ナラバ Romance ハ Curious novel トノ関係ガ極メテ浅イカラ。人ノ運 ミス、ブラツトン作 同女ノ作ニ女庭訓 捨小舟(Diayola, or Nobady's Daughter)ガアル。
野ノ花(1) コノ種ノ訳中噫無情ニ次グ好評アルモノ近頃縮冊ガ出タ。バルサ、エム、クレイ作、同人ノ作ニハ、
嬢一代、絵姿、古王宮、(at war with herself)雪姫、人ノ妻、心ト心、花あやめ、郷土椰子ノ話等モアルコレラハ作者ヲ詳ニセヌ。尚近頃出タノニ一夜ノ情ガアル。他ニ比ベテハ貧弱ナモノダガ彼ノ訳筆ガ面白クシテ居ル。何デモ涙香トサヘ云ヘバ面白イ様ニ思ハレルノハ妙ダ。

野ノ花ハハーデー夫人作

(1)クレイノ作ト云フ人アルモ、ハーデーノ作ラシ。嬢一代以下ハクレイノ作。

 「Diayola」は「Diavola」。

 「野ノ花」の追記は本文中の余白に記載。

 「(1)」の注記は地のマージンに記載。

(79)

 SCIENTIFIC = 彼ノ科学的小説ハ三ツアル 破天荒 アル学者ガ空気ノナイ所ヲ飛ビ得ル船ヲ発明シタ。ソレハ密閉サレタル一ツノ箱デ引力ト反引力トノ調節ニヨツテ昇降スルヿガ出来ル。ソシテ船内ニハ水空気ガ多量ニ貯ヘラレテアル。先ヅ月世界ニ行ク。空気ガナイノデ蔭ハ真ノ暗日向ハ眩シイ光ヲ発スル。種々ノ星ヲ廻ル。アル星ノ住民ハ已ニ老衰期ニアリ知識ハ極度ニ発達シテ種々ノ珍ラシイ事ガアル。コノ辺非常ニ面白イ想像ガ廻ラサレテアルガ今ハ忘レタ。アル星ノ住民ハ(金星カ)鳥ノ如ク自由ニ言語ハナクテ声ノ調子デ何事モ話セル極メテ音楽的美術的ダ。天文学的ニモ物理的ニモ非常ニ面白イ。地球ト月ノ引力ノ中間ニ来タ時ニドチラカラモ引力ガ働カヌ事ニナルノデニユートン運動ノ法則ガ実現シ。フト手デ壁ヲ押スト矢庭ニ身体ガ運動シ始メ四方ノ壁ニ当ツテ四角八面ニ動キ廻ル辺リ。理学的ノ面白サニ耐ヘヌ。米国ノシモン、ニユームノ作ニナル暗黒星ハ㐧二ノモノダ。ニユームハ天文学者デ、ソノ女ガ日本ニ来タ記念ニ訳

(80)

サレタモノ短イ小説デアル。軌道ヲソレタ Dark star ガ太陽ノ引力ニ引ツケラレ、遂ニ太陽ノ中ヘ非常ナ勢デ突入スル。ソノ為ニ太陽ノ熱ハ極度ニ上ツテ、地球ハ只見ル一面ノ火ノ海ト化スル。一人ノ学者ハ之ヲ予見シテ友達ノ人々ト共ニ植物ノ種子動物ナドヲ連レテ厳丈ナ地下室ニ隠レテ居ツタ為ニ危ク生残ル。熱ノ引イタ後ニコレラノ人ハ新シイ世界ヲ建設スル神ノ使命ヲ担フト云フ筋。段々ニ熱度ノ益シテ来ル間ノ恐怖ガ深イ味ガアル。
㐧三ハ Wells ノ作ナル八十万年後ノ世界ダガ之ハ後章 Wells ノ章ニ詳説スルカラ茲ニハ畧スル。
 EXPLORATORY = 只二ツシカナイ。一ハアドルフ、ベルロー作 Black Venus ノ人外境 アフリカ蕃地ノ探偵。野蛮人ノ恋ナド配シテアツタ様ニ記憶スル。ソレト、口絵ニ女野蛮人ガ身ニ針ノ様ナ冑ヲ付ケテ敵ヲ刺シ殺シテ居ル所ノアツタノヲ覚エテヰル。二ハフランク、バレツト作ノ山ト水 椿説ト銘打ツタ丈ケニ面白イ。底無シノ沼ニ陥ル人ノ惨ラシサヲ記述シタ辺ガ

(81)

ヨイト思ツタ。地底ノ洞穴ヲ舟デ通リ恋人ノ心ヲ得ルコトニナルノダガ、ソノ辺リハ Haggard ノ Allan Quatermain ニ似テ居ル。大幹ヲナシテ居ルノハ矢張恋デアツタ。始メニ首枷ヲ嵌メラレタ男ノ絵ヲ出シテ、何ト哀レムベキ耻曝シデハナイカ、実ハコノヲ画ハ私デアル。ト書キ出シタ辺リ椿説タルニ背カヌ。面白イ作ダ。

(82)


 このページは白紙です。

 以上、『奇譚』第二編「涙香及其他」の第七章「ユゴーとベザント(思軒)」の全文でした。

 しかしもう八十ページ以上、著作権の侵害をつづけておるわけだからなあ。
Posted by 中 相作 - 2013.11.09,Sat

 お知らせひとつめ。

 名張市が天下に誇るご町内イベント、第二回怪人二十面相なりきりコンテストはきのう8日を締切に参加者の募集がおこなわれておりましたが、応募が少なかったんだかなんなんだか、11月22日まで申し込みを受け付けることになったそうです。

 名張市:第2回 怪人二十面相なりきりコンテスト 参加者募集中!!

 「お子様、ペット大歓迎!!団体での参加も可能です」とのことですから、仲むつまじくご家族で、あるいは犬でも猫でもペットとともに、はたまた一族郎党魔界の眷属うちつれて、どちらさまもふるってご参加くださいな。

 最優秀賞の賞金は、どーんと二万円でがす。

 めざせ名張市、めざせ大二枚。

 名張市公式サイトには第一回コンテストに優勝したというおねえさん四人による怪人二十面相の画像が掲載されておりますので、こっそり無断転載しときますね。


 お知らせふたつめ。

 地域雑誌「伊賀百筆」第二十三号は絶賛発売中、というところまでは行かないかもしれませんが、たぶん好評発売中となっております。

 伊賀タウン情報YOU:23号を発刊 地域文芸誌「伊賀百筆」(2013年11月5日)
 2013年11月9日:伊賀百筆 第23号

 名張市箕曲中村にある地元資本による本屋さん、ブックスアルデ本店にはこんなポスターが。


 お店から許可を頂戴して撮影いたしました。

 「八重の桜」関連のパネルより高いとこに貼ってもらってあります。

 私の漫才のタイトルだけ、○○○の伏せ字とかあって、なんかばかみたいな感じです。

 まあ、実際ばかなんですけど。

 さて、つづきまして『奇譚』の話題ですが、きのうふと思いついて、ついうかうかと電子書籍もどきのパイロット版を試作してしまいました。


 表紙は講談社の江戸川乱歩推理文庫『奇譚/獏の言葉』のカバーにある写真を無断使用したもので、実物のサイズはまったくわからないのですが、写真から表紙の縦横の比率を割り出し、横は一〇五センチ、つまり文庫本サイズのA6判とおんなじとして、縦は割り出した比率をもとに一六五センチといたしました。

 文庫本の一四八センチよりはやや背が高く、新書判の一八二センチよりはやや背が低い、といった体裁ですが、もとより便宜的に設定したサイズにすぎません。

 ダウンロードしてアドビリーダーで開き、ページ表示を「見開き表示」にしてごらんいただくと、そこそこいい感じで序文をお読みいただけるものと自負しております。

 できるだけ『奇譚』のとおりに、をモットーにしておりますので、扉がなくていきなり序文からはじまってますし、むろん本文はカタカナ表記。

 ただし、こうやって組んでみると、カタカナでもさほど読みづらくはないな、という気がするのですが、これは暇さえあれば『奇譚』と首っ引きになってるせいなのかもしれません。

 序文冒頭の英文のエピグラフは、乱歩はすべて大文字で表記しているのですが、なんかダサっ、とか思って一般的な表記法にあらためました。

 引用作品のタイトルも、乱歩は「GOLD BAG」としているのですが、これは「Gold Bug」にいたしました。

 ただまあ、本来は「The Gold-Bug」なわけですが。

 本文の表記では、乱歩は段落冒頭を空きなしではじめているのですが、てめーは谷崎かよ、とか思いつつ、一般的なルールにしたがって一字下げといたしました。

 文中に挿入された英単語は、大文字ではじまったり小文字ではじまったり、なかにゃ大文字だか小文字だか判断できないものもあるのですが、とりあえず原文のままとしておきました。

 促音や拗音のいわゆる小書きの問題は、乱歩の手跡にもとづいて、カタカナの場合は小書きする、ということにいたしました。

 そのほか、たとえ思いつきとはいえ、こうしてPDFファイルでパイロット版のお試し品をつくってみますと、やはりいろいろと気づかされることが出てくるわけですが、乱歩はこの『奇譚』をつくったとき、できることなら活字をつかってちゃんとした本にしたかったのではないかいな、とも思いあたって感慨深いものをおぼえます。

 名張市に乱歩の生家を復元することはできませんでしたが、名張市の乱歩蔵びらきの会が『奇譚』を復元することはいくらだって可能でしょう。

 つか、やれよ。

 やれよおら。

 若き日の乱歩が小説への情熱を託した『奇譚』を現代によみがえらせる乱歩生誕百二十年記念事業。

 乱歩蔵びらきの会はやれよなおら。
Posted by 中 相作 - 2013.11.08,Fri

 と、とうとうこんなものまでッ。

 な、なにをやっとるんじゃッ。


 ではまたあした。
Posted by 中 相作 - 2013.11.07,Thu

 今月30日に名張市で開かれる第二回怪人二十面相なりきりコンテストは、あす8日が募集の締切となっております。

 詳細はこちらでどうぞ。

 名張地区まちづくり推進協議会運営・名張公民館:Home

 ついでに、こちらのほうもよろしくお願いいたします。

 圏際・食彩・文化祭 ご当地グルメでまちおこし in 名張:Home

 こんなのもあります。


 建築途中で放置された怪しげな神社の予定地みたいな乱歩生誕地碑広場では、「乱歩黒テントの世界」と「乱歩作品の朗読」が催されるそうです。

 いやどうもすいませんねほんとに。

 ほかにも、ご当地アイドル「縁夢寿美ガールズ」のお披露目ライブをはじめとして、いろんな催しがてんこ盛りみたいですから、11月30日と12月1日の両日、どちらさまもお誘いあわせてぜひ名張市までお運びください。
Posted by 中 相作 - 2013.11.05,Tue

 能書きなし、いきなり行きます。

(65)

(B)
非探偵的涙香
[I THRILLING NOVEL。
 II ROMANCE。
 III SCIENTIFIC NOVEL。
 IV EXPLORATORY NOVEL。]

(66)

CHAPTER 6
DUMAS & BENGISON.

 DUMAS = 仏蘭西ノ新聞ガ二三年前ニ読者カラ世界現在ノ人物中最モ偉ナルモノ十人ヲ投票セシメタ。ソノ時仏ノ Alexander Dumas ハ文豪トシテソノ一人ニ当選シタノデアル。カクノ如ク仏蘭西人ハ彼ヲ崇拝シテ居ル。彼ノ筆ノ魅力ニ富ミ又 plot ノ通俗的ナ所ガコノ大名声ヲ得タ重ナル理由デアラウ。彼ハ文学ノ立場ヨリ見テハ Hugo ニ劣ルガ、評判ノ大ナル事カラハ遥カニ Hugo ヲ抜イテ居ル。僕ハ世界ノ小説家中彼ノ如ク通俗ニシテ而モ彼ノ如ク壮厳偉大ナル説ヲナスモノヲ知ラヌノデアル。ソノ偉大ナル思想ハ単ナル通俗文学ヲ脱シテ独自ノ境ニ入ツテ居ル。穴勝チニ彼ヲ普通的文学者トシテ排シサル事ハ出来ヌ。
The Count of Monte-Cristo 彼ノ作中最モ通俗的ニシテ且最モ興味中心的ナルモノ。物質的デハアルガ如何ニシテカクモ偉大ナル譚ガ出来タカト只管驚嘆ノ外ハナイ。作ノ Back トナル Napoleon 再挙ノ事実。獄中ノ物凄イ数十年。Etaly ノ某法師ノ頭脳ト殆ン

 取り消し線をほどこした文章は斜線で抹消されているのですが、とりあえず生かしておきました。

 どうして抹消されたのかは、見当がつきません。

 「Alexander」は正しくは「Alexandre」。

 「Etaly」は「Italy」だと思います。

(67)

ト機械ノ如ク冷静ナル忍耐。破牢ノ計画。Monte-Cristo ノ秘密。大復讐ノ決心。ソノ遠大周密ナル大準備。徐々ニ忍耐強ヨク計画ヲ行ツテ行ク経路。何カラ何迄奇シキ力強サヲ以テ心ヲ圧スル様ナ作デアル。二度程読ンダガモウ一度読ミタイ様ニ思フ。之ヲ涙香ガ訳シテ岩窟王ト名附ケタ。少シク好奇心ノアルモノデ岩窟王ヲ知ラヌモノハナイデアラウ。三原天風ハ同ジモノヲ新訳岩窟王ト名附ケテ出シ相当ニ売レタノヲ見テモ如何ニ歓迎セラルヽカヾ分ル。続岩窟王ノ書ハ仏蘭西ニ於テ色々ノ人ガ沢山ニ出シタ。日本ニモソノ一ツガ訳サレテ居ル。
The Man in the Iron Mask plot ハ到底前者ニ及バヌガ。仏蘭西ノ恐怖時代一人ノ何物トモ知レヌモノガ鉄ノ面ヲ被セラレテ終身ヲ獄中ニ過シ面ヲ被ツタマヽ葬ラレタト云フ奇シキ事実ヲ材料トシタ所ニ curiosity ガ湧ク。全体ノ筋ハ今忘レタ左程ノモノデモナカツタト思フ。殺人寝台ト云フモノヲコノ書デ始メテ知ツタ。
The Lady with the Camelias コレハ Curious novel デハナイ。Sentimental

 「Camelias」は「Camellias」。

(68)

ナ人情小説デアル。椿ノ好キナ女優ガ恋人ノ父ノ懇請モダシ難クテ涙ヲ呑ンデ恋人ヲ離レル。ソシテ淋シサニ絶ヘズ、物哀レナ余生ヲ縮メテアル日病ノ床ニ伏ス。病ガ危篤ニ陥ルト枕辺ニ弟子ヲ呼ンデ自分ノ書イタ日誌ヲ読マセル。人ノ死ニ行ク淋シサト恋ヲ捨テタ物足ラナサト。肌ニヒシくト迫ルノヲ覚エル。日本訳ハ二ツアルソノ内一ツハ有名ナ太田三次郎ノ訳デアル、一ハ椿姫一ハ椿御前ト称スル。嘗ツテ川上貞奴ノ椿姫ヲ見テ涙グマシクナツタ事ガアル。ドチラカト云ヘバ彼ノ作ハ Curious novel ニハ関係ガ浅イノデ批評ハコノ位ニシテ彼ノ作ヲ上ゲテ終ル。

The Black Turip
Chicot The Jester
The Crimes of Ali Pacha and others
The Crimes of the Borgias and others
The Crimes of the Marquise de Brinvilliers and others
The Crimes of Urbain Grandier and others


 「絶ヘズ」は「絶エズ」でいいと思います。

(69)

The Forty-Five Guardsmen
Louise de la Valliere or The Love of Bragelonne
Marguerite de Valois
Memoirs of a Physician
The Page of the Duke of Savoy
The Three Musketeers
Twenty Years After
The Two Dianas
Ten Years Later
Queen's Necklace
The Prussian Terror


(70)

 BENGISON = The Phantom Tower 一ツヨリ知ラヌ。ソレモ直接デハナイ。中学三年ノ夏休ミハ熱海ニ送ツタ。温泉町ノ雨ノ頃ハ遣ル瀬ナイ徒然ヲ感ズルモノダ。徒然ナルマヽニ貸本屋カラ種々ノ小説ヲ借リテ読ンダ中ニ幽霊塔ト云フノガアツタ。名ノオカシサニ不図借リタノダガ。読ンデ見ルト始メテ逢ツタコノ種ノ小説ノ面白サニ引入レラレテ、物凄サガ背中ヲ這ヒ上ルノヲ感ジ乍ラ三冊ヲ一日ニ読ンデ変ナ心持ニナツタモノダ。不思議ノ時計塔、ソノ塔ノ奇怪ナ伝説、塔中ニ逢フ怪シイ婦人ハ何トナク妙ナ所ガアル左手ノ手袋モソノ一ツダガ顔ガ仮面カ彫刻ノ様ニ一点ノ難モナイ。ゴム製ノ仮面カト思ツタ。塔ヲ作ツタ人ハ塔ノ地下ニ不思議ノ穴倉ヲ作ツタガ余リニ道ヲ複雑ニシタ為自分ノ作ツタ道ニ迷ツテ出ル事ガ出来ズ、数日ノ間助ヲ求ムル幽カナ声ガ絶エナカツタト云フ。怪シイ古イ Bible ノ中ノ奇シキ経文緑動キ云々ト云フノガ今モ我好奇心ノ底ニ残ツテ居ル。暗イ屋敷ノ大キナ室柱モ天井モ壁モゾウくト異様ニ浪打ツ。ソレハ蜘蛛屋敷デアル。大キナ像ヲ壁

(71)

ニ立テヽソ目カラ私カニ人ノ室ヲ覗クト云フ方法ヲ始メテ知ル。人ノ顔面ヲ換ユル不思議ノ老人。時計ノ仕掛ノ面白サ。
Bengison ハ婦人ダト云フヿダガ実ニ怪奇談ノ天才デアル。外ニ著ノナイ筈ハナカラウ是非探シテ読ミ度イモノダ。
怪ノ物ト云フノモ確カ涙香ノコノ方面ノ作ダト覚エタガ今ハ忘レタ。エドワード、ドーニー作、涙香ノ作中ノオリスノ訳、露国人、女退治ノ二編ハ何ノ Category ニモ入ラヌ妙ナモノダ強ヒテ名附クレバ諷刺的滑稽小説デアラウ。

 「ソ目」は「ソノ目」だろうと思います。

(72)

 BENGISON = 何カ発見シタラ茲ヘ書キ加ヘヤウ。

 ベンジソンなる女流作家が涙香の放ったフェイクであったことは、いまではひろく知られているはずです。

 くわしくお知りになりたいかたは、小森健太朗さんの論考が収録された次の二点をどうぞ。

 Amazon.co.jp:灰色の女 (論創海外ミステリ) [単行本]
 東京創元社:英文学の地下水脈

 涙香の「幽霊塔」はこちらで読めます。

 青空文庫:図書カード:幽霊塔

 これにて第六章「デュマとベンジソン」はおしまいです。
Posted by 中 相作 - 2013.11.04,Mon

 うっかりしてる、うっかりしてる、とかそんなことばっかいってると乱歩ファンのみなさんからお叱りを受けるかもしれませんけど、意に介することなく話を進めますと、乱歩最大のうっかりは、いうまでもなく『幻影城』巻頭における探偵小説の定義でしょう。

 いくたびもいくたびもくり返し述べてきたことをあらためてくり返すために、昭和26年5月10日、岩谷書店から出版された『幻影城』から「探偵小説の定義と類別」の冒頭を引用いたします。

 念のため、スキャン画像で引用いたします。


 ここに秘密ということばを使用してしまったことこそ、乱歩の探偵作家人生最大のうっかりだと思われます。

 秘密ではなくて謎ということばを、乱歩は使用すべきでした。

 ここはやっぱ、秘密ではなくて謎でなければ変だよね、というのは、いわば自明のことでしょう。

 たとえば、乱歩の「一人の芭蕉の問題」から引用。

探偵小説に求むる所のものは普通文学に求め得ない所のものである。これを仮りに謎と論理の興味と名づける。探偵小説に求むる所は謎と論理の興味であって、人生の諸相そのものではない。探偵小説にも人生がなくてはならない。しかしそれは謎と論理の興味を妨げない範囲に於てである。

 ひとは探偵小説に「謎と論理の興味」を求めるのですから、『幻影城』巻頭の定義だって、

 「難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれて行く」

 ではなくて、

 「難解な謎が、論理的に、徐々に解かれて行く」

 となっていなければおかしい。

 だというのに、乱歩はうっかり、これはまさしくうっかりと呼ぶしかないことだと思われますけど、秘密ということばをつかってしまいました。

 じゃ、この秘密ということばはなんなのか、というと、これはもう明らかに、「新青年」に自伝を連載するにあたって起筆されながら筐底深く封印されてしまった原稿に記された秘密ということばと照応しているはずです。

 その原稿は「私が探偵小説に心酔するに至った経路」という小見出しを立てられ、「私の探偵趣味は『絵探し』からはじまる」と書き出されていて、みたいなことは私家版無料電子書籍『涙香、「新青年」、乱歩』に詳述しましたから省くとして、当時の私は「絵探し→探偵小説」だと単純に考えていたのですが、その後、手製本『奇譚』の存在に思いあたり、じつは「絵探し→奇譚→探偵小説」だったんだな、と気がついたのが運の尽き、暇さえあれば『奇譚』と首っ引きというこのところの因果な毎日も、もとはといえば乱歩がうっかりしてたから、ということになります。

 なんか、とんでもないことに手をつけちゃったな、とか思いつつ、きょうも敢然と邁進いたしましょう。

(60)

 CORELLI = コノ人モ原作ハ一ツモ読マヌ。只涙香ノ一訳書アルノミダ。ソレハ Ven Detta(白髪鬼)デ何デモ題名モ示ス通リ復讐奇譚ト云フ事丈ケハ覚エテ居ルガ、内容ヲスツカリ忘レテ了ツタカラ批評ガ出来ヌ。後日ニ譲ラウ。二三 Marie Corelli ノ作ヲ上グレバ、

Holy Orders, The Tragedy of a Quiet Life
The Mighty Atom
Boy, a sketch
God's good man
The Master-Christian

其他涙香ノ探偵方面ニハ大金塊 巧ナル狂言ニヨツテ大金塊ノ相続者ト偽ル悪人夫婦ガ遂ニソノ陰謀ヲ発見セラルヽ迄ノ波瀾曲折我天一坊ト同様ノ趣ガアル。作者不詳。銀行ノ賊 確カ面白カツタト記憶スルガ今ハ忘レテ了ツタ。只尾行者ヲ撒クノニ他人ノ家ニ入

(61)

ツテ裏口カラ抜ケル方法ヲコノ書デ始メテ教ヘラレタヿ丈ケ覚エテヰル。妾ノ罪 アル夫人ガ己ノ罪ニ苦シメラレル間ノ物凄サガ味デアル。確カニハ覚エヌ。前二者共ニ米人ノ作デアルガ名ハ分ラヌ。
 MARCHMONT = 涙香ノ探偵方面ハ以上ニ終ツタガ、コレヨリ少シク彼ニ似タモノヲ掲ゲテコノ章ヲ終ラウト思フ。Arthur W. Marchmont ノ探偵小説中去年上野ノ図書館デ読ンダノニ Miser Hoadley's Secret ト云フノガアル。原文デ読ム故カ Corelli ナド訳文デ読ンダモノヨリ面白ク感ジタ。 Hoadley ナル吝嗇漢ガ不正ノ宝石商ヲ営ンデ莫大ノ金ヲ溜メタ。ソノ娘ハ typist デアル青年ヲ恋シテ居ル。Hoadley ニハ一人ノ仇敵ガアルソノ仇ヲ打ツテ呉レト娘ニ遺言シテ死ヌ。ソノ時財産ノ隠場所ヲ示シタ暗号文ヲ渡ス。娘ノ恋人ガ仇ノ子(?)デアルナドノ曲折アリ。暗号文ガ type-writer ノボタンノ順序ニヨツテ解キ得ル様ニナツテ居ル所ニ味ガアル。結末ハ目出度ク終ツテ居ルガ、最モ主要ナル点ハ暗号文ニアル。暗号文丈ケガ書物ノ二三頁モ続ク程永イモノデアツタ。コノ書ノ中ニ Jew ノ大々的 Broken English ガ沢山出テ

(62)

居ツタノデ何カノ参考ニモト写シテ置イタノダガ何時カソレヲ失クシテ了ツタ。彼ノ作ヲ二三上グレバ。

The Heritage of Peril
The Price of Freedom
The Queen's Advocate


露国ノロア、イ、ラウロフト云フ探偵小説家ガアル。長谷部湘雨ガソノ作ヲ訳シテ恋仕掛ノ殺人犯ト云フノヲ出シタ。山中ノ淋シイ宿ニ一人ノ陰欝ナ青年ガ泊ツタ。夜突然近クノ景色ヲ見ニ出ルト云フノデ番頭ハ審シク思ツテ止メタガ無理ニ出テ行ク。夜更ケテ青年ハ帰ツタガ突然表カラ声ヲカケタ儘ソノ地ヲ去ツテ了フ。番頭ガ不審ニ思ツタノハソノ声ガ先ニ似ズ非常ニ快活ニ変ツタ居ツタコトデアツタ。翌朝山中ノ谷ニ墜チテ死ンデ居ル死体ガ発見サレタ。ト云フ書キ出シガ先ヅ面白イ。永ク外国ヘ行ツテ居ツタアル富豪ガ一人ノ娘ヲ連レテ帰国ノ途ニアル。ソレハ彼ガ選定シタ婿ニ娘ヲ目合セン為デアル。突然彼ガ車中ニ死ンデ了フ。ソノ原因ハ少シモ分ラヌ。娘ガ独リボツチニナツテ降車スルト婿トナル青年ガ迎ヘニ来テ居ル。写真デ見タリ兼ネテ聞イテ居ツタリ

 「変ツタ居ツタ」は「変ツテ居ツタ」でしょう。

(63)

シタ青年トハマルデ違ツテ非常ニ快活ナ男デ又好男子デアル。ソノ日停車場ノ構内ニ印度ノ毒蛇ガ現レテ人々ヲ驚カシタ。名探偵ノ聞エアル Hero ガ富豪ノ死ト毒蛇トヲ結付ケ遂ニ婿トナル青年ヲ疑ツテ、彼ト花々シイ頭脳ノ戦、意志ノ戦ヲ開ク。ソシテ遂ニ真相ヲ曝クト云フ筋。原作者ハ知ラヌ人ダガ必ズ近頃ノ人デアラウト思ハレル。近頃ノ仏蘭西ノ探偵小説ニ見ル様ナ。悪人ト探偵トノ精力ノ争ヒ、剣道ノ達人ガ気合ヲ以テ勝負ヲ争フ、アノ種類ノ心ノ力ノ争ヒヲ描イタ所ニソノ近代的特徴ガ現レテ居ル。実ヲ云ヘバ茲ニ書カズ、モツト後章ニ記スベキ性質ノモノデ、上記ノ凡テヨリモコノ精神的ナル点デハ確カニ勝ツテ居ル。
岡本綺堂ハヨク探偵小説ヲ訳スル。ソノ一ツニ金貨ト云フノガアル筋ハ忘レタガ左程面白イト云フ記憶ガ残ツテ居ラヌ。又彼ハ近頃ノ文芸倶楽部ニ幽霊ノ旅、黒沢家ノ秘密ナド云フ探偵人情小説ヲ出シテ居ル誰レノ飜訳ダカ知ラヌガ余リ感興ヲ引カヌモノダ。無論アル物凄サハアルガネ。
其外色々ナ人ガ色々ノ探偵小説ヲ書イテ居ル魔法医者ト云フノモアル、昔袖珍探偵文庫

半七捕物帳ソノ他、松井松葉ノ悪人手形帖(帳)

 「半七捕物帳」などの注記は天のマージンに記入。

(64)

ト云フノモアツタ。近頃呉田博士ヲ出シタ書肆カラ探偵文庫ガ出テ居ル。其他上ゲレバ数限リナクアルデアラウガ以上記シタモノヽ外ハ皆語ルニ足ラヌモノガ多イ。

 これで『奇譚』第二編「涙香その他」は第四章「ガボリオと素人」と第五章「ボアゴベ、コリンズ、ならびに、マーチモント、コレリ」を終え、第六章「デュマとベンジソン」に突入いたします。
Posted by 中 相作 - 2013.11.03,Sun

 『奇譚』52ページの追記について、makさんからコメントによるご指摘をいただきました。

 2013年10月30日:10月の伊勢に散った > 無題(2013年11月1日)

 makさんには重ねてお礼を申しあげます。

 さてそれで、ご指摘を受けて11月2日付コメント「付け焼き刃は困ったものです」を投稿し、『奇譚』46ページには追記を記しました。

 2013年10月26日:いよいよ涙香の登場です

 でもって考えてみたわけですけど、ボアゴベ作品を原書や英訳で読んだことはなかった、と乱歩は『奇譚』に記しています。

 そのうえで、『奇譚』49ページから52ページにかけて、涙香訳で読んだボアゴベ作品として、「海底ノ重罪」「劇場ノ犯罪」「塔上ノ犯罪」「The Cat's-Eye Ring」「執念」「巨魁来」があげられ、乱歩はそれぞれに紹介や批評を加えています。

 52ベージにはそのほか、評文なしで題名だけをあげた涙香訳ボアゴベ作品も、「其他 片手美人、悪党紳士、決闘ノ果、活地獄、美少年〔where is Zeno Bia〕、女夜叉、死美人、武士道 等ガアル」と記され、その「死美人」の下に「(Gaboriau 也)」という注記が添えられているわけですが、これらタイトルだけの作品、乱歩は読んでいなかったようです。

 ただし、『奇譚』をつくったあとに読んだものもあって、そうした作品の批評がマージンに追記されています。

 すなわち、52ページには「片手美人」が、53ページには「決闘ノ果」が記されているのですが、「死美人」の追記はありません。

 ですから、「片手美人」と「決闘の果」の追記が書かれた時点で、それは大正5年4月19日だとみられますが、その時点でも乱歩は「死美人」を読んでいなかったのではないか、という推測が成り立ちます。

 ここで問題になるのが、「(Gaboriau 也)」という注記がいつ記されたのか、ということです。

 つまり、コメント「付け焼き刃は困ったものです」にも記しましたとおり、この注記を書いた時点で、乱歩は「死美人」を読んでいたのかどうか、というより、「死美人」はガボリオのルコック探偵が出てくるけれども書いたのはボアゴベである、という事実を知っていたのかどうか、ということが問題になるわけですけど、これはよくわかりません。

 いっぽう、ガボリオの項では、46ページに「涙香ノ Gaboriau ヲ訳シタモノニ大盗賊 大盗賊 人耶鬼耶 他人ノ銭 等ガアルガ皆今ハ忘レテ了ツタ」と記され、英訳されたガボリオ作品として、「File 113」「Last Adventure of Lecoq, the detective」「Mystery of Orcival」「死美人。Old age of Lecoq, the de.」「Paris of Lecoq, the de.」「Blackmailers」があげられています。

 これをみるかぎり、乱歩は英訳されたガボリオ作品に「Old age of Lecoq, the de.」というのがあることと、それが「死美人」というタイトルで日本でも訳されていることは知っていたものの、英訳も和訳も読んではいなかったと判断されます。

 ですから、いつのことだかはわからないある日、『奇譚』を再読した乱歩が、46ページから読み進んだ先の52ページ、ボアゴベの項にある「死美人」というタイトルをみて、これはガボリオの項にあった「死美人。Old age of Lecoq, the de.」だからガボリオの作品だよな、と思って「(Gaboriau 也)」と書き込んだのか、それとも、「死美人」のいわば補足情報として、それがガボリオ作品のいわゆるパスティーシュであることを示すために「(Gaboriau 也)」と書き加えたのか、あるいは、ほかになんらかの理由があったのか、いやはや、どうにもさっぱり見当がつきません。

 まあ、見当がついたところで、どうということはないわけですが。

 さっぱり見当がつかないといえば、先日記した「金色の死」の件ですが、『探偵小説四十年』では大正6年とされている「金色の死」の初読が、『奇譚』では大正3年のことだったと明かされていて、これはもちろん『奇譚』に書かれているところが事実だとみるべきでしょう。

 では、乱歩が『探偵小説四十年』を、というか、「探偵小説三十年」の「谷崎潤一郎とドストエフスキー」を書いたとき、自分がはじめて「金色の死」を読んだのは学生時代の大正3年であったという事実を忘れてしまっていたのか、それとも、おぼえてはいたけれどなにかしらおもわくがあって大正6年の放浪中にはじめて読んだということにしてしまったのか、これもさっぱり見当がつきません。

 乱歩はじつに周到なタクティシャンでしたが、いっぼうでずいぶんうっかりしたところもあったひとで、乱歩流タクティクスの集大成とも呼ぶべき『探偵小説四十年』にも、たとえば横溝正史と西田政治にはじめて会った日のこととか、名古屋駅で置き引きに遭った日のこととか、うっかりにもとづく事実誤認が存在しています。

 で、「金色の死」の初読にかんする『探偵小説四十年』の記述も、そうしたうっかりにもとづく事実誤認であるとみることはできます。

 「谷崎潤一郎とドストエフスキー」が発表されたのは昭和24年11月、「金色の死」が連載されたのは大正3年12月、両者のあいだには三十五年の開きがありますから、記憶があいまいになっていたとしても不思議ではありません。

 しかし、いくら三十五年が経過していたからといって、乱歩は「金色の死」を読んで衝撃を受け、「殆んど狂喜した」というのですから、新聞の連載で少しずつ読んだのか、本になったのを一気に読んだのか、みたいなことが記憶として明瞭に残っていたとしても、これまた不思議なことではありません。

 というか、ふつうはおぼえてるはずではないか、と思われます。

 もしもそうだったとすれば、乱歩は「金色の死」の初読が大正3年のことだったと記憶していながら、自伝にはあえて大正6年だったと書き記したことになります。

 いったいどっちだったのか。

 乱歩の戦略性を考慮に入れれば、たぶん後者だったんだろうな、つまり、探偵作家として立つまでの人生をできるだけ印象的に再構成するために、大学ではポーとドイルを発見し、就職したもののばっくれて放浪していた最中に谷崎作品に出会った、としたほうがいいと判断したんだろうな、と察しがつきますが、しかしいっぽう、うっかりしたとこもあった人だからなあ、と思い返すと、「金色の死」を新聞連載で読んだことは記憶に残っていなかった、というのもありだろうな、という気がしてきます。

 ほんと、どっちなんでしょうか。

 どうだっていいようなことに思い惑いつつ、三連休でも相も変わらず、『奇譚』のつづきでございます。

(56)

 COLLINS = 涙香ノ訳ニナルモノハ只非小説一ツデアルガ。他ニ二ツ計リ原作ヲ読ンダカラ多少批評ガ出来ル。Wilkie Collins ハ英国ノ小説家デ通俗的ニヨリ知ラルヽ人ダ。curious ノ理想ヨリ云ヘバ彼ハ極メテ低イ所ニアル。plot ニ富ミ物凄サヲ特徴トスルガ要スルニ、ソノ儘ノ populer noverist タルニ過ギナイ。
The Woman in White 全体ヲ三部ニ分ツテ各異ツタ人ノ日記体ニシテアル。奇怪ナル白衣ノ婦人トソノ子供ニ関スル多少冗漫ナル記述デアル。仏国ニモ訳サレタ程名高イ。第一編ハアル豪家ニ家庭教師ニ雇レタ画家ノ手記デ。彼ハソノ家ノ姉娘ニ恋シ、互ニ同感スル。然ルニ嘗テ画家ヲ脅シタ白衣ノ不思議ナ夫人トソノ娘トヨク似テ居ル、戦慄スル程似テ居ル。白衣ノ婦人ト娘トハ如何ナル関係ガアルノデアラウ。コレヲ妹娘ノ助ケヲ借リテ探ツテ居ル内ニ、娘ハ進マヌ婚礼ヲ強ヒラレ、画家ハ絶望ノ中ニ都ニ帰ラネバナラナクナル。茲迄読ンデ冗漫ト Episode ノ多イノニ厭気ガサシ止シテ了ツタ。
The Dead Secret 去ル田舎ノ旧家ニ雇

 「populer noverist」は「populer novelist」。

(57)

レタ婦人ガアル百姓ト恋中ニナツタガ或時ソノ若者ガ不時ノ出来事デ死ヌ。恰カモソノ時主人ハ遠キ航海ノ留守中。夫人ハ子供ノナイ為ニ主人ノ愛ヲ他ニ移サン事ヲ恐レテ雇人ノ彼ノ婦人ニ子ノ出来タヲ幸ヒ自レノ子ト偽ツテ主人ノ愛ヲ得ヤウトスル。数年ノ後夫人ハコノ秘密ヲ書イタモノヲ残シテ主人ニ渡ス様ト雇婦人ニ云残シテ死ヌ。婦人ハコノ dead secret ヲ抱イテ苦シサノ余リ家内ノアル物置ニソノ手紙ヲ隠シテ遠ク去ツテ了フ。ソレカラノ数年十数年、主人ハ秘密ヲ知ラズシテ死ンダガ偽リノ子ハ立派ナ娘トナル。ソノ娘ト婦人トノ会ツタ時ノ婦人ノ奇シキ振舞。遂ニハ苦ミニ苦ンダ罪モ許シテ目出度ク終ル。The twenty-third of August, 1829 ノ章ヨリ The dawn of a new life ノ章迄大分長イモノデアル。コノ dead secret ヲ最後迄少シモ読者ニ知ラシメヌ所ニ味ガアル。ガ左程ノモノデモナイ。只読ンデ居ル文章ノ口調ノヨイノニ(ソノ tone ニ)一種ノ melody ヲ感ジテ知ラズ々々々読ンデ行ク所ニ英文小説ノ美点ガアル。
非小説 前二者ニ比シテ plot ニ富ンデヰル。

(58)

悪事ニカケテ寸毫ノ油断モナイ偽医者ニ進メラレテ Heroine ノ義弟ガソノ夫ヲ殺ス。Heroine ハ夫ノ財産ヲ狙フ弟ニ放逐セラレテ不幸ノ中ニナキ夫ノ遺児ヲ育テル。数十年ヲ経ルト都ノ兎アル町ニ、ソノ義弟ガ名ヲ替ヘテ住ンデ居ル。ソノ室ニ印度製ノ手文庫ガアルガ、ソノ中ニハ故キ夫ノ遺書ノアルヿヲ知ツテ居ル Heroine ハ、アル夜男装ヲシテ義弟ヲ訪レル。彼ハ怒ツテ彼女ヲ切ラウトシタガソノ瞬間仮死ノ状態ニ陥ツタ。都一流ノ大新聞ノ記者ガ Hero トナツテ現レル。彼ト Heroine トハ協力シテ義弟及悪医者ノ罪悪ヲ曝露セント力メル。ソノ結果ハ意外ニモ目出度イ局ヲ結ブ。ト云フノハ Heroine ノ夫ガ実ハ死ナズニ医者ノ病院ニ狂人ノ身替リトシテ生キテ居ツタヿデアル。夫婦ガ再生ヲ喜ブ所デ幕ガ下ル。義弟ガ蘇生スル辺ハ奇ニ富ンデ居ル。然シコレトテモ余リ感心スル程ノモノデハナイ。
Collins ノ著ヲ挙グレバ、

Antonina
Basil
The Moonstone
Man and Wife


(59)

After Dark
The Queen of the Hearts
No name
My Miscellanies
Armadale
Poor Miss Finch
Miss or Mrs?
The New Magdalen
The Frozen Deep
The Law and the Lady
The Two Destinies
The Haunted Hotel
The Fallen leaves
Jezebel's Daughter
The Black Robe
Heart and Science
"I Say No"
A Rogue's Life
The Evil Genius
Little Novels
The Legacy of Cain
Blind Love
Hide and Seek


 きょうはこれくらいにしときます。

 お気づきのことはお気軽にお知らせください。
Posted by 中 相作 - 2013.11.01,Fri

 この話題でございます。


 朝日新聞デジタル:怪人二十面相 募る(2013年10月30日)

 こんなニュースも来ました。

 MSN産経ニュース:ご当地グルメでまちおこし狙う 名張で催し 三重(2013年10月30日)
 毎日jp:隠街道市:怪人二十面相求む なりきり2部門 高校生「若者元気塾」企画--名張・来月30日、12月1日 /三重(2013年10月31日)

 いやどうもすいませんねほんとに。

 ちょっとツイッターを検索してみました。

 まずは朝日新聞伊賀支局。


 さっそく、拡散していただきました。


 どうもありがとうございます。

 なんと、鯨統一郎さんにも。


 どうもありがとうございます。

 そうかと思うと、矢崎存美さんにも。


 どうもありがとうございます。

 しかし、どうもいまひとつ盛りあがりに欠けてる感が否めませんから、心あるみなさんはツイッターでどんどんどんどん拡散していただければと思います。

 よろしくお願い申しあげます。

 ではここで、第二回怪人二十面相なりきりコンテストの開催要項をお知らせしておきたいと存じます。

 これでがす。


 「江戸川乱歩の代表作の一つである怪人二十面相を市内外に PR するため、怪人二十面相のなりきり度を競うコンテストを開催し」とのことですから、べつに名張地区まちづくり推進協議会にPRしてもらわなくたって、怪人二十面相はじゅうぶん有名じゃね? とかよけいな疑問は差しはさまずに、どんどんどんどんご応募ください。

 気になる賞金は、最優秀賞二万円、審査員賞五千円、来場者賞五千円、参加賞二千円とのことでございます。

 詳細はこちらでどうぞ。

 名張地区まちづくり推進協議会運営・名張公民館:Home

 いやどうもすいませんねほんとに。

 検索してて知ったんですけど、怪人二十面相ってラーメン屋さんがあるそうです。


 全国ラーメン祭in富山、11月4日まで絶賛開催中です。

 BBTWEB:全国ラーメン祭 in 富山

 お店はこちら。

 立川ラーメンたま館:濃厚鶏ソバ 怪人二十面相

 名張市のグルメイベントには、この怪人二十面相、出没してはくれないのかしら。

 ともあれ、第二回怪人二十面相なりきりコンテスト、ご応募ご拡散その他、よろしくお願い申しあげます。

 いやどうもすいませんねほんとに。
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