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Nabari Ningaikyo Blog
Posted by - 2026.07.14,Tue
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Posted by 中 相作 - 2013.12.04,Wed

 まず、お詫びと訂正です。

 昨日のエントリに、「建築途中で放置された怪しげな神社の予定地みたいな乱歩生誕地碑広場に黒テントを特設して開かれたイベントは、なんだかまるで見向きもされなかったような扱い」と記しましたが、なんのなんの、これが大まちがい。

 なんと天下のNHKでとりあげてもろたみたいでっせ奥さん。

 NHK名古屋放送局の夕方の帯番組に「ほっとイブニング」というのがあるんですけど、そのなかの「東海スケッチ」というコーナーできのう、ぱんぱかぱーん、乱歩作品の朗読会が紹介されたそうです。

 NHK名古屋放送局:ほっとイブニング

 公式サイトではすでに削除されてますけど、なんのなんの、キャッシュにはまだ紹介文が残ってました。


 それはそうと、第二回怪人二十面相なりきりコンテストの募集記事は、そろそろ削除しといたほうがいいと思うぞ。

 名張地区まちづくり推進協議会運営・名張公民館:Home

 で、「ほっとイブニング」公式サイトのキャッシュにあった紹介文を引用。

【東海スケッチ】江戸川乱歩
推理小説の父ともいわれる江戸川乱歩。没後50年経っても読まれ続けているが、乱歩の生まれた名張市やゆかりある地では今、読書会などのイベントが行われている。現代にもたらした静かなブームを取材した。

 名張のほか、下記のエントリでお知らせした鳥羽の朗読会もとりあげられたみたいです。

 2013年11月8日:江戸川乱歩ナイト

 このSNSに報告あり。

 facebook:鳥羽商工会議所

 以上、誤った情報を発信いたしましたこと、心からお詫び申しあげ、ここに訂正を記しておく次第です。

 つづきまして、そんな名張が大好きだ、とつぶやきながら、しあわせな結婚生活を夢見ているあなた、いっそ名張に嫁ぎませんか、というプロジェクトのお知らせです。

 来年1月25日、名張でこんな街コンがくりひろげられます。

 ROICE:【女性限定】お見合いPJ 名張へ嫁ごう!

 名張市青蓮寺の国津神社がいつから縁結び神社になったのかは知りませんけど、つか、縁結びの神にして霊験あらたかな隠れバワースポットなら滝之原の赤岩尾神社をおいてほかにはないんですけど、そんなことはまあいいとして、とにかくお嬢さん、せっせと名張へ嫁ぎませう。

 あとあとどんなことになってもわしゃ知らんけど。
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Posted by 中 相作 - 2013.12.03,Tue

 お寒うございます。

 二日がかりのイベントを終えて、師走も3日となりました。

 名張のまちはきょうあたり、またすっかりもとに戻って、まるで死んだみたいに寒々しく静まり返っているものと思われますが、せっかくですから、名張のまちが熱く燃えた二日間を映像で振り返っていただきましょうか。


 第二回怪人二十面相なりきりコンテストは、残念ながら取材してもらえなかったようです。

 堂々誕生、名張のご当地アイドルはこちらでもごらんいただけます。


 えーっとまあ、名張発にして名張初のご当地アイドル、縁夢寿美ガールズをどうぞよろしくお願いいたします。

 それでまあ、倉敷vs名張、金田一耕助vs怪人二十面相の件ですが。

 2013年11月28日:金田一耕助vs怪人二十面相
 2013年12月03日:通風筒

 金田一耕助が八十一人、怪人二十面相が十一組二十三人、というのですから、まず人数の点で、それからたぶん参加者の地域的なひろがりという面でも、軍配はやはり金田一耕助にあがりました。

 がんばれ二十面相。

 つか、いやどうもすいませんねほんとに。

 しかし、無駄に立派な公衆便所つきの名張地区第二公民館として親しまれている旧細川邸やなせ宿で催された第二回怪人二十面相なりきりコンテストは、それでもまだこうして多少は話題にしてもらってますけど、建築途中で放置された怪しげな神社の予定地みたいな乱歩生誕地碑広場に黒テントを特設して開かれたイベントは、なんだかまるで見向きもされなかったような扱い、結局はこのエントリだけがしのぶよすがであるようです。

 やなせ宿イベント通信:11月30日 隠街道市 黒テント乱歩作品の朗読

 写真をぺたぺた並べてあるだけですから、乱歩のどの作品をどなたがお読みになったのか、みたいなことが、いやはやまるでわからんではないか。

 つか、いやどうもすいませんねほんとに。

 さあ、いつまでもめげてないで、つか、べつにめげてもおらんのやろけど、来年の乱歩生誕百二十年へ向けて新たなスタートだあッ。

 とかほんとかよ。
Posted by 中 相作 - 2013.12.02,Mon

 おはようございます。

 おかげさまで、おとといときのうの当地のイベント、大過なく終了したようです。

 伊賀タウン情報YOU:ご当地グルメや物産に7万人 名張で「圏際・食彩・文化祭」1日も(2013年11月30日)
 伊賀タウン情報YOU:2日目は10万人来場 名張でのまちおこしイベント(2013年12月1日)

 しっかし、来場者がおととい七万のきのう十万、二日あわせて十七万人、なんてのは、いくらなんでも盛り過ぎじゃね? と思います。

 ざっと検索してみたところ、名張市の公式サイトにこんな資料がありました。


 去年7月に作成された資料ですけど、名張市最大の観光名所、赤目四十八滝の観光入り込み客数は、2009年と2010年がそれぞれ十七万人台、2011年が十四万人台、というのですから、いやー、おとといときのうのわずか二日間で、なんとおととし一年間に赤目滝を訪れた観光客の数を軽くうわまわったのかあ、とか、そんな話が信じられまっか奥さん。

 それはまあ、お役所のひとはいくらうそをついてもかまわない、公務員は市民をだまくらかすのが商売だ、ということはあるにしても、なにもここまで盛ることはねーじゃねーか、と思います。

 ついでですから、この名張市の「施策評価管理シート」にいささかの説明を加えておきたいと思います。

 「重点目標」にこう書かれてます。

・「食」は観光の大きな魅力となることから、名張特有の多彩な食材を用いたB級ご当地グルメ「名張 牛汁」を全国にアピールし、集客の促進を目指し、平成25年秋に「中日本・東海B-1グランプリ」の開催誘致に取り組みます。

 平成25年秋、つまり今年の秋に中日本・東海B-1グランプリを誘致する、とありますけど、これは誘致できませんでした。

 おとといときのう、名張市で開催されたご当地グルメイベントがB-1グランプリだと勘違いしていたひともあったみたいですけど、あれはまあ、プチB-!グランプリ、あるいは、B-1グランプリのスピンオフイベント、とでも称すべきもので、今年の中日本・東海B-1グランプリは先月の9日と10日、愛知県の豊川市で開催されました。

 先月10日といえば、私は名古屋で開かれた昭和文学会秋季大会のスピンオフイベントである文学踏査に参加し、地元のかたにご案内いただいた大須のさる喫茶店で、生まれてはじめてエビフライサンドなるものを食しました。

 名古屋の老舗喫茶店 コンパル:Home

 あのエビフライサンドも、たしかにご当地グルメであったな、と思います。

 名古屋以外のどの土地の人間が、サンドイッチにエビフリャーをはさもう、などと考えつくというのか。

 それはともかく、豊川大会の公式サイトをのぞいてみました。

 中日本・東海 B-1グランプリin豊川:Home

 やはり二日がかりのイベントで、「1日目は8万2千人、2日目は13万6千人で二日間で21万8千人と多くのご来場をいただき誠にありがとうございました」とあります。

 ほんまもんのグランプリで二十一万八千人、グランプリを誘致できなかった名張市の代替イベントで十七万人、とか、そんなんほんまでっしゃろか奥さん。

 それはまあ、お役所のひとはいくらうそをついても、以下略。

 さてさて、全国の乱歩ファンの期待を集めていた、ということはまったくないと思いますけど、第二回怪人二十面相なりきりコンテストはどうなったのか。

 主催団体の公式サイトをみてみました。

 名張地区まちづくり推進協議会運営・名張公民館:Home

 なんじゃこりゃ。

 いまだにコンテストの出場者が募集されてます。

 ならば、無駄に立派な公衆便所つきの名張地区第二公民館、やなせ宿のブログはどうか。

 やなせ宿イベント通信:Top

 なんじゃこりゃ。

 第二回怪人二十面相なりきりコンテストのことなんて、なにひとつ報告されてはおりません。

 しかたありませんから、このあたりのエントリをどうぞ。

 やなせ宿イベント通信:11月30日(土) 隠街道市 in やなせ宿
 やなせ宿イベント通信:11月30日 隠街道市 黒テント乱歩作品の朗読
 やなせ宿イベント通信:11月30日 隠街道市 in やなせ宿 ライブコンサート
 やなせ宿イベント通信:12月1日 隠街道市 in やなせ宿

 うーむ。

 例によって例のごとく、ここらのみなさんのやることは、なにがなにやら私には。

 ならばウェブニュースで、と思ったら、毎日新聞のサイトがこッ、こんなことにッ。

 毎日jp:イベント:お祭りムード一色 名張で文化祭、街道市 /三重(2013年12月1日)

 いやまいったな。

 乱歩が出てくるウェブニュースを地道にこつこつ無償で無断転載してる身にとって、こーりゃつらいぜ。

 伊勢新聞のウェブニュースでは、おしまいにちょこっとだけ出てきます。

 伊勢新聞:名張、食の祭典に3万5000人 ご当地グルメ、15の味巡り(2013年12月1日)

 そんなこんなで、おかげさまでなんとか、名張市渾身のイベントが終了いたしました。

 関係各位の労を多としつつ、ここにご報告申しあげる次第です。
Posted by 中 相作 - 2013.11.30,Sat

 本日の当地は、とてもよいお天気となっております。

 とはいえ、屋外イベントにおいでのかたは入念な寒さ対策をどうぞ。

 圏際・食彩・文化祭 ~ご当地グルメでまちおこしin名張~:Home

 とかいったって、イベントは午後3時半で終了ですけど。

 さて、『奇譚』の件ですが、やっぱホーソーンまで行かせてほしいの。

 第十章「ホーソーンその他」は、先日も記しましたとおり最初のほうにポーのつづきが流れ込んでいるのですが、おしまいのほうにもまたポーの訳書にかんする記述があって、『奇譚』のポー論はそれでようやく終了となります。

 だから、関係各位にはあれこれ大目にみていただいて、お願いだからホーソーンまで行かせてほしいの。

 ホーソーンのあとはいよいよドイルになるのですが、ちょっと読んでみるとこれがまた大変、ドイル論の最後のページはもともと余白になっていたのですが、あとになって追記が書き込まれています。

 乱歩が取り寄せたらしいドイルの原書にかんする追記なんですけど、これがとても小さい字で書かれていて、というか、文庫判に縮小したせいでかなり読みづらくなっていて、しかたないから朝っぱらから近所のコンビニで『奇譚』の当該ページを拡大コピーして、ようよう読めるようになりました。

 と思ったのですが、拡大しても判読できない文字が少なからずあって、ちょっと書き起こしてみたところはこんな感じです。

〓-7-24夜(本郷駒込林町六にて)

1917, His Last Bow, Some Reminiscence of Sherlock Holmesガ来タ。内容ハ、
The Adventure of Wisteria Lodge 一人ノ男が近頃友達になつた男を訪問して会食し翌朝目ザメルと家がカラになつてゐる。そして友達はその夜半、〓〓の〓で殺されてゐる。モンスターが窓からのぞく。仇うちの団体、仇うちせんと内部の婦人の手引により行けるも反対にやられた。会食したのは、又時間をまちがえて〓いたのは仇うちのばれぬ為。
The Adventure of the Cardboard Box EpisodeにResident Patientと同じものあり。カードボックスに二つの耳が入れて小包される。同じSの名ある姉の所ヘあやまり来る。ある男が夫人の間男をいきどほれる仇打。その結果を間男の手引したる婦人に知らせん為と知らる。
The Adventure of the Red Circle 不思議なる下宿人。顔を見せず。物言はず筆談。男が夫人のかくまふ為。近所の空屋よりのローソクの暗号通信。悪漢現れかへって打たる。
The Adventure of the Bruce-Partington Plans 潜水艦ノ図ヌすまる。地下鉄通の死人。汽車の屋根に死人を置く。国事探偵、死人の上〓の見所の犯罪。
The Adventure of the Dying Detective 春影の臨終の探偵
The Disappearance of Lady Frances Carfax 春浪のホシナ大探偵
The Adventure of the Devil's Foot devil's foot root と云ふ毒薬の話。アフリカ探検家。家内の戒め。兄がその毒によりて妹と弟二人を殺す。弟ハ狂気。探検家妹と恋仲〓仇打ちす。
His Last Bow ホームスが独探の手下によりてあばく。

 かなり無理して読んでみたのですが、それでも下駄にした文字が読めません。

 だったら、と新潮文庫の『シャーロック・ホームズ最後の挨拶』をひっぱり出してきて、活字の小ささに難渋しながら巻頭の「ウィステリア荘」を走り読みしてみたのですが、「〓〓の〓で殺されてゐる」も、「まちがえて〓いたのは」も、なにひとつ見当がつかないという結果に終わりました。

 なんか、ばかなのかな、おれって、と思いました。

 しかし、世の中というやつ、わるいことばかりではありません。

 このエントリに記した件、みごと自己解決にいたりました。

 2013年11月24日:名張市には期待しないでください

 『Detective Story of E. A. Poe』という六片本が丸善に来ていた、とあるのですが、六片本とはなにか。

 北村薫さんがどっかに書いていらっしゃったのですが、それがどうにも思い出せない私でした。

 いやー、おれもずいぶん焼きがまわったもんだなあ、このあいだなんか、焼きがまわる、という慣用句を思い出すのに五、六分もかかってしまったもんなあ、と悄然たる日々を送っていたのですが、おかげさまで自己解決することができました。

 きっかけはたぶん、文春文士劇のフィルムが発見された、というニュースだったみたいで、NHKで放送された、という文章を読んだとき、頭のなかで連想が働いた、という明確な自覚はなかったんですけど、それからしばらくして、六片本のことは北村薫さんの『北村薫のミステリびっくり箱』で読んだのであった、たしかNHKのラジオ番組「文壇よもやま話」にかんする話題であった、と不意にひらめきました。

 で、これが大正解。

 北村さんの「CD解説を中心とした、あとがき」から引用いたします。

 文と声を突き合わせて、初めて分かることもある。馬場孤蝶が読書家だったと語る部分が、活字ではこうなっている。

 馬場さんは当時、あれは百本ッて言うのかねえ、それをもう絶えず読んでる人でした。

 何だか分からない。今回、この録音に耳を傾けると、乱歩は、こういっている。

 馬場さんがねえ、毎日読んでんだ。小さな活字の本をねえ、当時、あれは六ペンス本て言うのかねえ、それをもう絶えず読んでる人でした。

 我々は、サマセット・モームの『月と六ペンス』を知っている。そこから、乱歩が、《廉価本》という意味でいったのだろうと類推出来る。こういうところは、元の音を聞けたから分かることだ。《百本ッ》から《六ペンス本》は、逆立ちしても出て来ない。

 『奇譚』に書かれていた「六片本」もこの六ペンス本のことだとみてまちがいないと思われますが、ならば、sixpence book、ないしは、sixpenny book、という表現が廉価本を意味することばとして英米あたりで一般的だったのかどうか、ということまでは、残念ながら私には調べがつきませんでした。

 いやはや、少年老いやすく、学なりがたし。

 ちょっとちがうか。

 それはそれとして、お願いだから、ホーソーンまで行かせて。

(115)

CHAPTER 10
HAWTHORNE & OTHERS.

 HAWTHORNE = 一寸 Poe ノ事ニツイテ = Lombroso ヲシテ曰ハシメレバ Poe ヲ狂人ノ天才トナスデアラウ。コノ思想ハ僕モ同感シ得ル所デ、欧米ノ文学ヲ見ルニ凡テコノ狂人ノ色合ノナイモノハナイ。殊ニ北欧ノ文学ロシヤノ文学ハ左様ダ。Parisニモ時ニ狂人ヲ出ス。米国ニ Poeヲ 出シタノハ珍ラシイ。日本ノ鏡花ハ極メテ薄クハアルガ狂人ノ色彩ガナイデモナイ。
Charles Baudelaire ガ Poe ヲ訳シテ Paris ニ出シタ時仏人ハ熱狂シテ之ヲ歓迎シタ。ソノ仏蘭西人ガ僕ハ好キダ。見給ヘ、Doyle ハ寧ロ仏蘭西デ歓迎サレテ居ルデハナイカ。Baudelaire ノ訳シタ短文ハ次ノ数篇ダ。序文等モ目次ノ儘上ゲレバ。
──Table──
A madame Maria Clemm
Edgar Poe, sa vie ses oeuvres
──
Double assassinat dans la rue morgue

(116)

La lettre volée
Le Scarabée d'or
Le Canard au ballon
Aventure sans pareille d'un certain Fans Pfaall
Manuscrit trouvé dans une bouteille
Une descente dans le maelstrom
La Vérité sur le cas de M. Valdemar
Révélation magnétique
Les Souvenirs de M. Auguste Bedloe
Morella
Ligeia
Metzengerstein
──
ソシテ書名ハ Histoires extraordinaires。Curious novel ヨリモコレヲ応用シテ extraordinary novel ノ方ガヨイカモ知レヌ。
────
 サテ、Hawthorne ニ入ル。

 いや懐かしい。

 「Histoires extraordinaires」というのは一般的に「世にも怪奇な物語」と訳されて、ポー原作のオムニバス映画のタイトルとしても使用されたことがあります。

 はるか昔の高校生のころ、名張市のおとなりの旧上野市にあった上野映劇という映画館に、この映画をみにいったのではなかったかしら。

 ちょっと検索してみたら、YouTubeに予告篇らしきものがありました。


 アラン・ドロンがウィリアム・ウィルソンを演じたオムニバス第二部のダイジェストらしきものはこちら。


 全然おぼえてませんけど、アラン・ドロンかっけー、とは思います。

 それにしても、懐かしいなあ。

 というか、乱歩もいってるとおり、青春とは畢竟、一瞬の酔いである、ということをしみじみ実感いたします。

 乱歩がどこにそんなことを書いてたのか、というと、『奇譚』の117ページです。

(117)

彼ハ時ニ Poe ト併ビ称セラレ、Poe ヨリ内的ニ勝レタリトセラルヽ。然ルニ不幸ニシテ僕ハ未ダ彼ヲ余リ読ンデ居ラヌノデ確カニハ分ラヌガ、一部ヲ読ンデ直覚スル所ニヨレバ彼ハ Poe ヨリモ穏健デアリ随ッテ平凡デアルト思ハレル。僕ノ読ンダ中デ只一ツ面白イト思ッタノハ、Twice-Told Tales 中ノ何トカ云フ題デアッタガ、老人ガ若返ル薬ヲ飲ンデ青春ノ醜体ヲ極メ踏リ浮レル。ソレヲ一人ガ老人ノマヽ静カニ見テ居ル。軈テ薬ノ効ガ去ッテ皆老人ニナル。ソノ青年ヨリ老人ニ変ズル悲イ、厳粛ナ現象ガ Poe ニ近イ筆デ書カレテアッタ事ヲ記憶スル。青春畢竟一瞬ノ酔デアル。彼ノ作ヲ上グレバ、
Library of the world's best mystery and detective stories(上野 190、90)
コレハ Poe ノ Cryptography ト共ニ是非読マネバナラヌ。一度借リ様トシタラ出テ居ッタ。
Davit Pom(?)dexter's Disappearance and tales
Biographical stories
Golden touch(訳、金色王)
House of the seven gables

 「踏リ浮レル」は、たぶん「踊リ浮レル」。

 「Davit Pom(?)dexter's Disappearance and tales」は「David Poindexter's Disappearance And Other Tales by Julian Hawthorne」。

(118)

The Snow image(雪人形)
Little masterpieces 中、(日本人編)
The Marble Faun: Or, The Romance of Monte Beni
Mosses from an Old Manse
The Scarlet Letter(緋文字)
Selection from Tanglewood Tales 中、(日本人編)
Tales of the White Hills
True Stories from New England History, Ggrandfather's Chair(3)
Twice-Told Tales(原君ノ訳アリ)
 〃  〃  〃 and girls
Fields
Stories(The world's story tellers)
Tales, A selection with an introduction by Mathew(Cassell's National Library)
Tanglewood Tales
和訳ニハ、ありふれ物語、緋文字、ツワイストールドテールス、金色王、トモエ集、

 「 〃  〃  〃 and girls」とそれにつづく「Fields」は、なんのことだかようわかりません。

(119)

少年画師、ワンダブック、ギリシヤ勇士物語、雪人形、等ガアル。
 POE ノ訳=最近 Poe ヲ訳シタ人ハ谷崎精二氏デアル。ソノ内容ハ赤キ死ノ仮面、ウイリアムウイルソン、モレラ、楕円形ノ肖像、アッシャー家ノ滅落、モノストウナトノ対話、影、沈黙、アルンハイムノ地所、ランドアノ屋敷、リジア、早過ギタ埋葬、物云フ心臓、デアル。文檀ニ相当ノ地位ヲ有スル人丈ケニ評判ニナッタ。可也ヨク訳サレテ居ル。
大分前、本間久四郎氏ガ名著新訳ヲ出シテ之ヲ訳シタ。内容ハ、エドガーアランポーガ事(批評)、黄金虫、レーヴン(詩)、赤死病ノ仮面、陥井ト振子、黒猫物語、本間氏ハ僕ト似タ考ヲ持ッタ人ト見エ、最モ早ク黄色ノ顔ト題シテ自費デホームズノ叢書ヲ企テタ人ダ。惜イカナ余リ認メラレテ居ラヌ。ソノ後ホームズノモノヲ氏ハ大分訳シテ居ルガ、皆余リ売レタラシクモナイ。ドウモ日本人ニ探偵小説ヲ読ム力ノナイノハ遺憾ダ。氏ハ以来世ニ入レラレズドコカノ地方新聞ニ探偵小説ヲ出シナドシテ居ル。同情ニ値スル。

(120)

何トカ云フ文学博士ガ訳シテ甲虫附渦巻ト云フノヲ出シタ。本間氏ノ黄金虫ト云フノガアル、外ニ没落ト云フノモアル。山県五十雄ノ訳ニ宝堀リガアル。
森田思軒ノ訳ニ間一髪ガアル。思軒ノ漢文ヲ以テ Poe ヲ訳シタ所ニ味ガアル。Poe ノ絢爛タル文章ハ思軒ノ漢字ニシテ始メテ訳シ得ル。
上ゲ来レバ Poe ハ殆ンド過半訳サレテ居ルノダガ一向反響ノナイノハ批評家ノ疎漏カ剛慢カニヨラネバナラヌ。
我国デ多少 Poe ニ似タ人ヲ物色スレバ鏡花ヲ得ル。彼ノ文ハ物凄イモノガ多イ。然シ彼ノ深クナイ江戸子趣味ガ凄味ヲ深クセズ。意気ナ凄サニシテ居ルノガ慊ラヌ。然シ彼ハ彼デ一境地ヲ有スルノハ勿論ダ。Andreiyeff ノ血笑記ハアル点ニ於テ Poe ヨリ深イ。ロシアノ文字ガ慕ハシイ。仏語ト露語ヲ習ハネバナラヌ。烈風漁史ガ冒険世界デ髑髏ト甲虫ト題シ Gold Bug ヲ抄訳セリ。

◎楕円形の肖像 短篇ノ恋ニ関係アルモノヲ集ム。

 おしまいにある『楕円形の肖像』にかんする追記は、布施延雄の訳で大正8年12月18日に越山堂から出版された本のことらしく、たしかに巻頭の「訳者序」には「こゝには恋愛を取り扱つたものを主として集め、他に二篇だけ趣の違つたものを入れた」と記されています。

 近代デジタルライブラリー:楕円形の肖像:他七篇

 ですから、大正8年12月以降に書き込まれた追記、ということになるのですが、それがいつのことだったのかはわかりません。

 追記といえば、おとなりの121ページは余白となっているのですが、そこにこんな追記がでかでかと。


 これはいつごろの追記か。

 ちなみに、乱歩が江戸川藍峯なるペンネームを考案したのは大正9年のことだといいますから、その時点ですでにみずから和製のポーたらんとしていた、といっていいと思います。

 だとすれば、この書き込みは、とかいろいろ妄想するのも楽しいものですから、ぜひ一度おためしください。

 以上、ホーソーンまで行かせていただきましたッ。
Posted by 中 相作 - 2013.11.28,Thu

 さあ、いよいよあさって、開幕だ。

 名張市にはなにも期待しないでください、でおなじみの名張市で、やけくそみたいなこんなイベントが。

 圏際・食彩・文化祭 ~ご当地グルメでまちおこしin名張~:Home

 同時開催のご町内イベントでは、すっかりおなじみになってるかどうかはわかりませんけど第二回怪人二十面相なりきりコンテスト、無駄に立派な公衆便所つきの名張地区第二公民館として市民に親しまれている旧細川邸やなせ宿であさって正午から催されます。

 そういえば、金田一耕助のコスプレイベントはどうかとみてみると、先週の土曜日、過去最多の参加者を集めて催されたとのことです。

YOMIURI ONLINE > 地域 > 岡山 > 記事

金田一耕助わんさか 倉敷イベントに最多81人



名探偵・金田一耕助にふんして練り歩く参加者(倉敷市で)

 作家・横溝正史(1902~81年)のファンらが、小説中の人物にふんして散策を楽しむイベント「1000人の金田一耕助」(実行委員会主催)が23日、倉敷市真備町周辺であった。各地から集まった過去最多の81人が思い思いの衣装をまとい、横溝が戦時中に疎開したゆかりの地を巡った。

 イベントでは、帽子にはかま姿の“名探偵”や、「犬神家の一族」に登場する白いマスクの「佐清(すけきよ)」になりきったファンが、「本陣殺人事件」で金田一が降り立ったとされる総社市のJR清音駅前を出発した。

 真備ふるさと歴史館までの約3時間の道中(約6キロ)で、一行は小説の場面を描いた寸劇を鑑賞したり、横溝が疎開中に執筆した邸宅に立ち寄ったりし、作家が過ごした時間を追体験していた。

 2009年に始まり今回が5回目の開催。参加2回目の近くの無職森脇清さん(71)は、「最初は恥ずかしかったが、慣れると楽しくなった。若いファンと交流できるのもいいですね」と話していた。

(2013年11月24日 読売新聞)

 おなじコスプレとはいうものの、倉敷の金田一と名張の二十面相とを比較してみますと、倉敷のほうが何枚も上、というしかないようです。

 当日のことは、このブログでも報告されています。

 倉敷観光WEB > 倉敷観光ブログ > 1000人の金田一耕助 in 2013
(2013年11月26日)

 ウェブニュースを検索していて知ったのですが、横溝正史夫人の孝子さん、二年前にお亡くなりになったそうです。

 山陽新聞:横溝正史と妻の着物、共に倉敷に 親族寄贈、23日から公開(2013年11月22日)

 いかにも間の抜けた話ですが、ご冥福をお祈りする次第です。

 合掌。

 エントリをあらためて、横溝孝子さんのご逝去を記録しておくことにいたします。
Posted by 中 相作 - 2013.11.27,Wed

 お寒うございます。

 寒くなった寒くなったといってるうちに、早くも来年の話です。

 乱歩生誕百二十年を迎える来年、年のはじめのためしとて、ラジオではこんな番組が流れるそうです。


 いっぽう、乱歩生誕地の名張市はどうよ、とかそんなむごいことをあなた、三重県が世界に誇る借金自治体にお尋ねにはならないでくださいね。

 とか思いつつ、とりあえず『奇譚』のポー論、著作権の問題は認識しつつ特定秘密保護法案の採決もかくやといわんばかりな勢いでここにつづきを強行することといたします。

(110)

The Black Cat 猫ノ凄サハ東西変リガナイト見ユル。アル男ガ一匹ノ黒猫ヲ飼ッテ以来狂気ノ様ニ妙ナ精神状態ヲ呈シ。遂ニ妻ヲ殺シテ地下室ノ壁ニ塗リ込ンデ了フ。アル時誤ッテ猫ヲ打ッタノデ猫ハ見悪イ顔ニナル。猫ノ目ガ自分ヲ睨ンデ居ルノヲ見ルト無性ニ気ガ変ニナッテ遂ニ妻ヲ殺マデニ至ッタノダ。妻ヲ壁ニ塗リ込ンダ以来猫ノ姿ガ見エナクナッタ。アル日家ガ焼ケタ。取ルモノモ取敢ヘズ避難シタガ、後ニ焼跡ヲ見ルト壁ニ大キナ猫ノ姿ガ鮮ニ写ッテ居ル。妻ヲ塗リ込メル時猫ガ一緒ニ這入ッタノヲ知ラナカッタノダ。ソノ後何所カラトモナク一匹ノ猫ガ来タガ、飼ッテ居ル内ニ段々相格ガ変ッテ来テ遂ニ前ノ死ンダ猫ソックリニナッテ了フ。ト云フ様ナ筋。コウ書イテ了ッテハ凄クナイガ原文ハ極メテ凄イモノダ。
其他、原文ヲ読マズ訳文ダケ読ンダモノニハ、
モレラ(1) 神秘的ニ沈欝ナル妻ヲ持ッタ。彼女ノ眼ニハ云フニ云ハレヌ凄サガアル。ソノ為ニドウシテモ妻ヲ愛シ得ヌ。妻ハ彼ノ哲学カラ精神ノ不朽ヲ信ジテ居ッタ。ガ、アル時病ニ斃レタ。ソシテソノ時ハ妊ンデ居ッタノ

(1)'Morella'

 「殺マデニ」は「殺スマデニ」。

 「(1)」の注記は地のマージンに記載。

(111)

ダガ、彼女ガ息ヲ引取ルト同時ニソノ児ガ生レル。妻ノ呼吸ノ終ッタ時ガ嬰児ノ呼吸ノ始マッタ時ダ。ソノ子供ガ大キクナルニ随ッテ母ニ似テ来タ。ソノ似方ガ殆ンド母ソノモノナノデ気味悪ク思ッタ。殊ニソノ目ハ母ノ目ダ。遂ニ洗礼ヲ受クベキ日ガ来テ名ヲ附ケネバナラナクナッタ。不思議ニモ何ノ力カアッテ、ソノ時僕ガ夢中デ云ッタ名ハ "モレラ" ! ──母ノ名──
Poe ニ一ツノ癖ガアル。ソレハ一ツノ凄イモノガアッテ。ソレガ死後モ尚他ノ肉体ヲ借リテ現レルト云フ idea ダ。コレハ彼ガ全自我ヲ信ズル為カモ知レナイガ、モレラト云ヒ Black Cat ト云ヒ、其他コウ云フノガ大部アル。
モノストウナトノ対話(1) ズットズット後ノ世ニ生レ替ッタモノストウナノ夫婦ノ対話。始メニ一寸現代ノ澆季ナルヿヲ嘆ジタ所ガアルガ、主眼ハ死ヌ時ノ有様ダ。第六官ガ働キ始メテ宇宙的調和ヲ感得シ。ソノ為ニ不調和ガ馬鹿ニ気ニナル。家内中ノ人ノwatch ノ second ノ間違ッテルノヲ皆ハッキリト知ルヿガ出来タ。ガ之ハ死ニ入ル始リデ、軈テ墓ニ入ルト始メハ worm ノ不気味ヲ感ズルガ、遂ニハ肉体ガ亡セテ自己ト云フ観念ガ space ト云フ観念

(1)The Colloquy of Monos and Una

 「大部」は「大分」の意であろう。

 「(1)」の注記は地のマージンに記載。

(112)

混同シテ、自己ノ観念ハ失セ場所ト時トノ観念ノミトナル。茲ニ於テ自我ハ渾然タル宇宙ソノモノト合スルノダ。彼ノ唯心的傾向ノヨク現レタ作。
楕円形の肖像(3) 楕円形ノ肖像ヲアル古イ屋敷ニ見出ス。見レバ左程巧クモナイノダガ目ダケハ何ウシテモ本当ノ目ダ。生タ目トシカ物ハレヌ。不図一枚ノ書付ヲ見出ス。ソレニハコノ肖像ノ人ハ肖像ガ出来上ッタ瞬間ニ死ンダト書イテアル。ト云フ様ナ筋。
アルンハイムノ地所(1) アル一人。美術ノ真髄ハ庭園(風景)ヲ作ル所ニ現レルト主張スル人ガ或時不時ノ財産数億円ヲ得テ、ソノ理想ヲ実現スルト云フ筋。風景ノ奇シキ理想ガ Poe ニヨッテ書カレテアル。
嘗ッテ谷崎(兄)氏ガ大阪朝日紙上ニ金色ノ死ト題スル一篇ヲ出シタ事ガアル。アレハコレカラ suggestion ヲ得タノデハナイカト思ハレル。
ランドアノ屋敷(2) アルンハイムノ地所ノ続篇。
次ニ Poe ノ短篇ノ未ダ記サヌモノヲ上ゲテ置カウ。(224頁見ヨ)

The Adventure of One Hans Pfaall
The Balloon-Hoax


(1)The Domain of Arnheim
(2)Landor's Cottage
(3)The Oval Portrait

 「生タ目トシカ物ハレヌ」は「生キタ目トシカ思ハレヌ」か。

 注記は地のマージンに記載。

(113)

Von Kempelen and His Discovery
Mesmeric Revelation
The Facts in the Case of M. Valdemar
Ms. Found in a Bottle
The Thousand-and-Second Tale of Scheherazade
The Cask of Amontillado
The Imp of the Perverse
The Angel of the Odd
Mellonta Tauta
Loss of Breath
The Man That Was Used Up

〔以上 The Gold Bug and others 上野 '89 2〕

The Oblong Box
The Man of the Crowd
Some Words with a Mummy

〔以上 Tales of Mystery & Imagination 日比谷 33、506〕
Poe ノ短篇ヲ集メタモノハ、此ニ示シタ二ツノ外、

(114)

Gold Bug(Canterbury classics ノ内)
The Complete Poetical Works of E. A. Poe(早稲田)
E. A. Poe's Tales. A selection with Introduction by T. Hopkins(仝上)
Histoires extraordinaires(仝上)

〔Tales of Mistery モ早稲田ニアリ〕

Tales(1849. N. Y.)
Tales of Mistery
Tales of Mystery, Imagination and Humour; and Poems(1852)
Tales and Sketches and the Raven, a poem(Lond. 1852)
Poetical works; with a Notice of his Life and Geneus; by James Hannay(Lond. '52)
(少シ抜カシタヿガアルカラ次章ノ始リニ書ク)


 あちゃー。

 以前にも記しましたとおり、『奇譚』全二百二十八ページのちょうど半分、百十四ページでポー論が終わるから、なんとかそこまでは大目にみていただいて公開を進めよう、と考えていたのですが、えーい、「次章ノ始リニ書ク」とはなにごとか。

 次章というのは第十章「ホーソーンその他」で、「HAWTHORNE & OTHERS」という章題も大書してあるのに、その下にはさらにポーの話題がつづいているという寸法です。

 つまり、第九章の本文を書くより先に、第十章の章題が書かれてあった、ということになるわけですけど、どうしてそんなことをしたのか、どうもよくわかりません。

 しかし、それはそれとして、ポー論はすべて行っときたい、と思うんですけど。
Posted by 中 相作 - 2013.11.26,Tue

 来場者十万人か、ともうわさされる名張市のイベント、いよいよ盛りあがってまいりました。

 YOMIURI ONLINE:怪人二十面相、「隠街道市」に現れる縁とは(2013年11月24日)

 地域版ではなく、全国版で扱われたウェブニュースです。

 ですから、YOMIURI ONLINEのトップページにもヘッドラインが流れ、名張ならぬ隠の文字が全国に発信されました。


 さすが全国版の記事ともなると、見出しからして違ってきます。

 怪人二十面相がどうしてどっかの名も知れぬ田舎町に出現するのか、という読者の疑問を先取りし、その田舎町に誕生したご当地アイドル「縁夢寿美ガールズ」の名前を巧みにひっかけて、

 ──怪人二十面相、「隠街道市」に現れる縁とは

 という見出しができたという寸法でしょう。

 たしかに、全国的にみれば、怪人二十面相と名張の関係を知っている人間というのは、ほぼゼロに近いほどの少数でしょう。

 名張市に住んでいる人間の実感としては、名張という地名はやはり、全国的にいうならば、名張毒ぶどう酒事件の聖地として名を馳せているらしい、ということになります。

 ですからまあ、名張といえば冤罪のメッカ、関係者全員が口裏を合わせて平気でうそをつき、無実の人間をしれっと殺人犯に仕立てあげる土地柄、みたいなイメージがまつわりついているのではないかと案じられる次第なのですが、ま、そういうところは実際にあるかもしれません。

 平気でうそをつく、なんてのは、名張市役所のみなさんのおはこじゃねーかばーか、みたいなことはどうでもいいとして、読売新聞の記事では、

乱歩生誕地碑広場(名張市本町)では、午前10時から、「乱歩蔵びらきの会」のメンバーが、乱歩の作品朗読や関連資料の展示を行う。また、市旧細川邸「やなせ宿」(同市新町)では、30日正午から「怪人二十面相なりきりコンテスト」が行われる。

 と紹介してもらった乱歩関連イベントのうち、朗読や展示というじつにちまちましたご町内イベントを担当する乱歩蔵びらきの会が乱歩関連事業の王道として世に送るはずの『奇譚』、本日は「続・ポー」となっております。

(103)

CHAPTER 9
POE. CONTINURED.

"The tones in the voice of the shadow were not the tones of any one being, but of a multitude of things, and, varying in their cadences from syllable to syllable, fell duskily upon our ears in the well-remembered and familiar accents of many thousand departed friends."

── FROM "SHADOW" ──

(3)MYSTIC WORKS.
Poe ノ真面目ハコノ方面ニ存スル。
The Masque of the Red Death Red Death ノ国中ニ魔ノ翼ヲ拡ゲタ時、侯ハ城門ヲ固ク閉ジテ、恐怖ヲ紛ラハス為ニ一夜 fancy ball ヲ催ス。赤イガラス、赤イカーテン、赤イ壁、血ノ色ヲ連想スル第七室ハ誰レモ恐レテ入ラナカッタ。ソノ室カラ Red Death ノ仮面ヲ被ッタ一人ガ

 「things」は「beings」。

(104)

ヨロくト出タ。余リノ奇抜ニ、事ニコソヨレト人々ハ驚イタガ、何ゾ知ランソレハ真実ノ Red Death 患者デ稍々アッテ死ンデ了ッタ。Red Death ハ城中ニ拡ガッタ。人々ハ一人倒レ二人斃レ悉ク死屍トナッテ横ッタ。Red Death ! コレヨリゾ、赤ハ物凄イ色ノ一ツトナリヌ。
The Fall of the House of Usher 地ノ底ニ沈ミ行ク様ナ、厚イ霧ニ閉サレタ様ナ、沈欝ナ一篇。滅ビ行ク Usher 家ノ灰色ノ家ハ物凄イ。eye like window ト云フ字ヲ面白イト思ッタ。滅入ル様ナ暗イ室デ、メランコリヤノ Usher ガ読ム書物ハ次ノ如キモノダ。

Gresset:

Ververt et Chartreuse

Machiavelli:

Belphegor

Swedenborg:

The Heaven and Hell

Holberg:

The Subterranean Voyage of Nicholas Klimm

Robert Flud, Jean
D'Indaginé, Chambre:


(105)

The Chiromancy(掌文ト卦法)

Tieck:

The Journey into the blue distance

Campanella:

The City of the Sun

Dominican Eymeric de Gironne:

The Directorium Inquisitorium
────
Pomponius Mela(about the old African Satyrs and Oegipans)
────
The Vigiliae Mortuorum secundum Chorum Ecclesiae Maguntinae(The manual of a forgotten church)
僕自身モ一度読ミ度イト思フ。
William Wilson 「オ前ハ今二階ニ居ルカ下ニ居ルカ」ト問ハレテモ一寸ト分ラヌ様ナ、大キナ深イ、複雑ナ英国ノ学校ニ居ッタ時、自分ト同姓同名ノ William Wilson ト云フ青年ガ居タ。妙ナ事ニハ彼ノ生年月日ガ私ト全々同ジ

 「全々」は「全然」だと思います。

(106)

デアル。二人ハ仲ガ悪カッタガ、私ハ何故トモナク彼カラ威圧ヲ感ジタ。ソシテ彼ガ私ヲ苦シメタノハ彼ガ私ヲ真似ル事ダ。姿、声、身振リ、服装、ステッキニ至ル迄私ト同一ノモノヲ用ヰタ。而モ不思議ナ事ニハ同級ノ誰レモコノ事実ニ気ガ附カナカッタ事ダ。アル夜私ハソット彼ノ寝顔ヲ見タガ、戦キ乍ラ動ケナクナッタ。彼ノ寝顔ハ私ソノモノデアッタ。ソレカラヅット後、私ガ不正ナカルタヲ争ッテ居ル時、音モナク室ニ入ッタモノガアル。入ルト同時ニ蠟烛ガ消エタノデ何物ダカ分ラヌガ。私ノ不正ヲ曝露シタ。ソノ時ノ咡語ク様ナ声ガ、アノ Wilson デアッタ。彼ノ去ッタ後ニ残サレタ一ツノ外套ハ私ノモノト寸分違ッテ居ナカッタ。私ハ彼ヲ一室ニ押ツメテ遂ニ殴打シタ。彼ノ顔ニ血ガ流レタ。フト見ルト室ノ有様ガ俄然一変シタ。大キナ姿見ガ出来タ。私ガソレニ近ヅクト、向カラ私自身ガ近ヅク。ソノ顔カラハ真赤ナ血ガ流レテ居ッタ。ソノ私ガ私自身ニ云フ。己レヲ殺セバオ前モ死ヌノダ、オレハオ前ソノモノダ。ト私ハ眩暈ヲ感ジテ倒レタ。姿見ノ下リガ馬鹿ニヨイト思フ。
The Premature Burial 篇頭ニ記シテ曰ク。

(107)

 We thrill, for example, with the most intense of "pleasurable pain" over the accounts of the passage of the Beresina, of the Earthquake at Lisbon, of the Plague at London, of the Massacre of St. Bartholomew, or of the stifling of the hundred and twenty-three prisoners in the Black Hole at Calcutta.
 To be buried while alive is, beyond question, the most terrific of these extremes which has ever fallen to the lot of mere mortality.
 篇中ノ優ハ、アル婦人ガ死ンデ埋葬セラレタ。数十年ノ後再ビ死人ガアッテ墓地ノ穴蔵ノ戸ヲ開クト、カラくト音シテ落チタモノガアル。戸ノ内側ニ婦人ノ経帷子ガ引カッテフワく風ニ揺レテ居タ。カラくト音シタノハ足下ニ横ハル白骨ノ落チタ音デアッタ。婦人ノ棺ヲ見ルト捻ヂ開ケラテアッ

(108)

タ。ソレデ確カニ在ッタ油壺ノ油ガ一滴モナクナッテ居タ。然シソレハ蒸発シタノカモ知レナイ。恐シイデハナイカ。
何カ事ガアッテ墓ヲ発掘シテ棺ヲ開イタ時。ヨク死人ノ骸骨ヲ注視セヨ。棺ヲ破ラウトシテ悶ヘタ形ノ残ッテ居ルノモ多カラウ。人生コレヨリ凄惨ナコトハナイ。
コウ云フ医学上興味アル記事ノ出ルノハ仏国 Leipsic ノ Chirurgical Journal デアル相ナ。
挿話ニ面白ノガアルケレド本文ハ割ニ面白クナイ。
The Tell-Tale Heart 綿密ニ綿密ニ綿密ニ注意シテ老人ヲ殺ス辺ノ探偵的興味。心臓ノ音ノ聞ユル物凄サ。アヽ。一トシテ Poe ノ小品ニ Curious novel ノ理想ナラヌハナイ。一ツ一ツ名玉ノ如キ光リヲ放ッテ居ル。
Ligeia 愛妻ノ死後一人ノ後妻ヲ貰フ。彼ハ人ナキ室ニ人ノ気配ヲ感ズルト屡々云ヒ続ケテ死ンデ行ク。ソノ死骸ニ先妻ノ俤ガ現レル。無論夫人ガ入ッテ尚凄イモノ。

 「面白ノ」は「面白イノ」だろう。

(109)

Shadow A parable。読ンダケレドモヨク分ラヌ。モ一度読マネバナラヌ。終リガ凄イ。
Silence A fable。鬼ガ僕ノ肩ニ手ヲカケテ孤独ヲ好ム偉人ノ話ヲスル。余リ孤独々々ト云フノデ鬼ハ天地ヲ静寂ニ帰セシメタ。雲ハ動カズ月亦動カズ木立振ハズ草動カズ。虫鳴カズ、風吹カズ。天地寂トシテ音ナク声ナク真ノ Silence ガ現レル。偉人ハ顔ヲ押ヘテ淋シサニ泣イタ。
詩ヲ読ム様ダ。極メテ短イ。コレヲ暗誦シタイト思フ。Poe ハ僕ノ classic ダ。
A Descent into the Maelstrom 何ト云フ驚嘆スベキ想像ノ力ダラウ。大渦巻ニ捲キ込マレタ兄弟。大渦巻ノ真ニ迫ル描写。大キナモノ程捲キ込マレテ中心ニ至ル速度ノ遅イト云フ物理的ノ興味。実ニ只茫然タル外ハナイ。
The Pit and the Pendulum 清教徒ノ異教徒虐殺。暗黒デハ四方形ガ無数ノ角アル際シナキ広イ室ニ思ハルヽ也。Pendulum ノ一寸一寸近附キ来ル間ノ恐怖。凄サノ数々中々ニ数ヘ尽サレヌ。本当ニ幻ヲ見ル様ダ。

 切りがいいのでここまで。

 それでは、11月30日の土曜日と12月1日の日曜日、どちらさまもどうぞ名張へお運びください。

 圏際・食彩・文化祭 ~ご当地グルメでまちおこしin名張~:Home

 名張は寒いですから、暖かくしておいでくださいな。
Posted by 中 相作 - 2013.11.24,Sun

 『奇譚』の件でございますが、ほんとに乱歩蔵びらきの会が出すの? とか、もしかしたらあの出版社から? とか、名張市が出したら? とか、ごくたまに、なにかの連絡のついでに、お尋ねをいただくことがあるんですけど、いまだ海のものとも山のものともつかぬおはなしで、なにも決まってはおりません。

 ただまあ、乱歩生誕百二十年を記念して名張市が発行する、ということはありません。

 ありません、というか、とても無理です。

 無理な理由はいくつもいくつもありますけど、代表的なことをひとつだけあげておくと、財政難という問題があります。

 先日、まちBBSの伊賀市の板で、こんなやりとりがありました。

 【忍者】伊賀市ってどうよ!?PART9【芭蕉】:280-281

 ネタになってたのは、朝日新聞のこの記事です。

 朝日新聞デジタル:借金返済の割合 県平均0.6ポイント改善(2013年11月14日)

 といったって尻切れとんぼ、のみならず画像も小さくて見づらいですから、記事にある表のスキャン画像を掲載しておきます。


 三重県内二十九の市と町の決算をまとめた表ですけど、実質公債費比率では名張市が一七・七%で第一位、おとなりの伊賀市が一三・九%で第二位と、伊賀地域の二市が堂々のツートップでした。

 大丈夫か。

 実質公債費比率というのは、収入のうちどれくらいが借金の返済にまわるか、ということを示す数字で、ざっとしたところはこちらでどうぞ。

 Wikipedia:地方財政
 総務省:早期健全化基準と財政再生基準

 総務省のページから引用しときましょう。

●実質公債費比率
 早期健全化基準については、市町村・都道府県とも、地方債協議・許可制度において一般単独事業の許可が制限される基準であった25%とされています。
 財政再生基準は、市町村・都道府県とも、地方債協議・許可制度において、公共事業等の許可が制限される基準であった35%とされています。

●将来負担比率
 早期健全化基準については、実質公債費比率の早期健全化基準に相当する将来負担額の水準と平均的な地方債の償還年数を勘案し、市町村は 350%、都道府県及び政令市は400%とされています。
なお、将来負担比率では、財政再生基準は設けられていません。

 実質公債費比率が一八%を超えると、新たな借金をするためには国や都道府県の許可が必要になります。

 名張市の場合、それが一七・七%だというのですから、なかなかのものです。

 これが将来負担比率となると、名張市は三重県内でただひとつ、二〇〇の大台にとどいた二〇九・七%という突出ぶり。

 伊賀市も第三位に食い込んで、名張市には及ばぬものの一一四・〇%と、あなどりがたい健闘ぶり。

 伊賀市と名張市をあわせたエリアがいわゆる伊賀地域、昔の伊賀国なんですけど、財政難がもう半端ありません。

 大丈夫か。

 しかも伊賀市と来た日には、お金のかかるハード事業がいろいろ押し寄せてるみたいです。

 まずダム。

 伊賀タウン情報YOU:「ダム利水に頼らない方が費用高い」 伊賀市水道部が説明(2013年11月12日)

 市庁舎。

 伊賀タウン情報YOU:最終答申は2案併記へ 伊賀市の庁舎整備計画検討委(2013年11月19日)

 消防庁舎。

 伊賀タウン情報YOU:建設予定地に推定活断層 伊賀市の新消防庁舎 旧上野商高跡地で(2013年11月20日)

 ダムならびに水道。

 伊賀タウン情報YOU:水道計画の見直し結果 12月1日に市民説明 伊賀市(2013年11月20日)

 水道もしくは芭蕉翁記念館。

 伊賀タウン情報YOU:桃青中跡地に事業計画が集中 水道部が上野北部配水池の移設計画(2013年11月21日)

 図書館。

 伊賀タウン情報YOU:候補地は選定せず 事務局は5か所提示 伊賀市の新図書館検討委(2013年11月21日)

 大丈夫か。

 大丈夫ではないかもしれんな。

 名張市といい、伊賀市といい、結構やばい財政状況をこうして数字で示されたりなんかしてしまうと、これから伊賀地域に住もうと考えるひとなんかいなくなるかもしれんし、げんに住んでるひとも伊賀地域からの脱出を真剣に考えはじめるかもしれん。

 そういえば、きょうになってこんなツイートも。


 いやー、柔の道に生命をかけた男の意地が火ともえるような衰退一直線ではないか。

 したがいまして、全国の乱歩ファンのみなさんにはまことに申しわけないんですけど、名張市にはどのような期待もお寄せいただきませんよう、ここにあらかじめお願いを申しあげておく次第です。

 しかも名張市の場合、財政の問題以外に、お役所のみなさんがすこぶるあれである、という致命的な問題もあります。

 「伊賀百筆」第二十三号の漫才にも書きましたけど、このあたりのみなさんには、ものを考える、という習慣がありませんゆえ、乱歩生誕百二十年だからといって、まともな事業はとてもできません。

 それはもう、ほんとにそうなの。

 だいたいが、乱歩関連資料の総本山たるべき名張市立図書館にしたところで、じつは資料収集のことなんてこれっぽっちも理解できてないんですから、生誕百二十年だろうが八十万年だろうが、みたいなことは来年出る「伊賀百筆」第二十四号の漫才で徹底的に問題にすることにして、少なくとも名張市が発行することだけはないと断言できる『奇譚』の件、ポー論のつづきを進めたいと思います。

(99)

(2)DETECTIVE & CRYPTOGRAPHY.
コノ方面デ知ッテ居ル彼ノ作ハ Gold Bug, Rue Morgue, Marie Rogêt, Purloined Letter(1)デアルガ後二者ハ未ダ読ンデ居ラヌ。
Gold Bug アル人ガ海岸デ金ノ虫ヲ拾フ。ソレヲ包ンダ皮ヲ火ニ当テルト暗号文ガ出ル。ソノ暗号ヲ解ク所ニコノ小説ノ全興味ガカヽル。ガソノ巧ミナル事ハ実ニ驚クベキモノガアル。多少知的ニ傾イタ僕ノ頭ハコレヲ読ンダ時痙攣ヲ起ス程ノ興味ヲ感ジタ。彼ノ暗号ヲ解クベキ鍵ハ只 E ノ字ガ英語中最モ多ク使ヒラレルト云フ一点ニ過ギヌ。気味ノヨイ Deduction ガソレニ続イテ、長文ノ暗号ガ苦モナク解ケル所ハ何ト形容スルコトモ出来ヌ。本当ニ息モツゲヌ面白サダ。ソノ文ハ、
A good glass in the Bishop's hotel in the Devil's seat--twenty-one degrees and thirteen minutes--northeast and by north--main branch seventh limb east side--shoot from the left eye of the death's-head --a bee line from the tree through the shot fifty feet out.
コレダケノモノヲヨクモ E ノ一字カラ解キ得ルモノダ。

(1)及 "cryptography"

 「hotel」は「hostel」。

 「twenty-one」は「forty-one」。

 以上、「黄金虫」の邦訳でも英文でそのまま記されていますから、比較的楽に対照することができました。

 ほかにも、語頭の大文字やハイフンの使用などに異同がみられますが、とりあえず原文のままです。

 「(1)」の追記は地のマージンに記載。

(100)

Gold Bug is the most intellectual novel of these which ever written ! ト叫ビ度クナル。
Gold Bug ハ 1842 年 Philadelphia デ書カレ、翌年 Graham's Magazine ニ出ス為ニ $52 デ買ハレタ。然ルニ主筆 George Graham ハ愚カニモコノ金玉ノ文ヲ掲載ノ価値ナシトシテ Poe ニ突キ返シタ。コウ云ウ事ハ文学者ノ歴史ニヨクアルヿダ。コレニ挫折シテ了フヿハ少シモナイ。盲千人ノ世ノ中ダ。
恰カモ其頃、Doller Newspaper ガ $100 ヲ懸ケテ小説ヲ募ッタノデ Poe ハ返サレタ原稿ヲ之ニ投ジタ。同誌ノ editor ハ N. P. Willis 及 Joseph Sailer 氏デアッタガ流石ニ明ガアッタト見エ、Gold Bug ハ当選シタ。ソシテ 1843 年六月二十二日ト二十九日ト両度ニ掲載セラレタ。コレガ最初書物トナッタノハ N. Y. カラ Tales by E. A. Poe ト題シテ出版サレタモノデアル。コンナ episode モアルノダ。〔Gildemeister's Canterbury Classics ヨリ〕
The Murder in the Rue Morgue
Paris デ主人公 Dupin ト友達ニナッタ人ノ手記体ニナッテ居ル。

(101)

始リ-episode トシテ Dupin ノ deduction ガ書カレテアルガ、ソレハ友達ノ目ノ付ケ所ヲ見テ居ッテソノ心中ヲ察スルノデ、コノ辺リ Doyle ノ Holmes ヨリモ深イ所ガアル。然ルニ Doyle ハコノ episode ヲ攻撃ノ材料ニシテ居ルノハソノ意ヲ得ヌ。何ト云ッテモ Poe ハ Doyle ヨリモ天才デス。御覧ナサイ E ノ字ヲ暗号解釈ノ鍵トスルヿ、毎篇ノ始メニ episode ヲ挿レルヿ、其他 Doyle ハ大分 Poe ヲ真似テ居ルデハアリマセンカ。事件ハ殺人ガ犯サレタニモ不拘ズ何ノ手掛リモナイ。而モ殺人ノ行ハレタ室ハ戸モ窓モ内部カラ錠ガ下シテアル。煙突ハ狭クテ人ノ出入リハ出来ヌ。コレヲ Dupin ガ見テ突然 Orang outang ヲ捕ヘタ所有者ハ来談ト云フ広告ヲ出ス。コノ辺リ面白イ。新聞ノ記事ヲ余リ沢山出シタノハ普通ノ読者ニハチト不向キデアラウ。
The Mistery of Marie Rogêt 同ジク Dupin ノ探偵談。
The Purloined Letter 同上。(224頁)
Cryptography Gold Bug ト似タル暗号解釈法。未ダ読マズ。
以上ノ五ツヲ Detective story of E. A. Poe ト云フ

 「Orang outang」は「orangutan」。

(102)

六片本ニシタノガ丸善ニ来テ居ッタ。(大正五、三、廿八)

 「六片本」というのは、たぶん六ペンス本とかいうやつのことで、六ペンス本のことは北村薫さんがどこかにお書きになっていたはずなのですが、どこで読んだのであったか、どうにも思い出せません。

 ご存じのかた、いらっしゃいませんか。

 というところで、第八章「エドガー・アラン・ポー」はおしまい。

 つづいて第九章「続・ポー」となります。
Posted by 中 相作 - 2013.11.23,Sat

 例のもの、またちょっとだけ、本文を流し込んでみました。


 新聞記事をスクラップしてみてわかったんですけど、やはり本のサイズが小さい。

 実際に『奇譚』を本にするときには、新聞記事が原寸で貼りつけられる大きさにするべきだと思います。

 そのためには、やっぱ『奇譚』の現物をスキャンする必要があるわけですが、とりあえず原稿をつくる作業を進めます。

 で、いよいよポーです。

(89)

BOOK III.
POE & OTHERS

(90)

NOTICE.
[是レヨリノ順序ハ我読書ノ順序ニ非ラザル事ヲ記セ。]

(91)

CHAPTER 8
EDGER ALLAN POE.

SILENCE

There are some qualities-some incorporate things,
That have a double life, which thus is made
A type of that twin entity which springs
From matter and light, evinced in solid and shade.
There is a two-fold Silence-sea and shore-
Body and soul. One dwells in lonely places,
Newly with grass o'ergrown; some solemn graces,
Some human memories and tearful lore,
Render him terrorless: his name's “No More,”
He is the corporate Silence: dread him not!
No power hath he of evil in himself;
But should some urgent fate (untimely lot!)
Bring thee to meet his shadow (nameless elf,
That haunteth the lone regions where hath trod
No foot of man,) commend thyself to God!
──FROM POE'S POEMS.──

コレヨリ後ガ僕ノ最モ詳シク書キタイ所ダ。

 冒頭にポーの詩が引用されてます。

 東京創元社版全集に収録された「ソネット──沈黙」の訳を掲げておきます。

 訳者は福永武彦、入沢康夫の連名になっていますが、たぶん入沢康夫。

ある種の質──ある種の合成質が存在する。
  それは二重の生を持ち、その故にそれは
物質と光とから発生し固体と影とにおいて
  具現されるあの双子のような本質の典型をなしている。
二つの面を持った沈黙がある──海と浜辺──
  肉体と霊魂。草の新たに生い茂った淋しい場所に
  棲んでいるものがある。神の恵みと、人の記憶と
涙に満ちた知識の力は それを恐ろしいものでは
なくしているのだが、その名前は「もはやない」。
それは沈黙の化身だ こわがることはない!
  その身に 邪悪な力をそなえてはいないのだから。
だが 何かさし迫った運命(時ならぬ因縁!)に導かれて
  その影に(人跡未踏の荒涼の地を
うろつきまわる名なしの精に)出くわすことになった場合は
神に 自らをゆだねるがよい!

 では、つづけます。

(92)

(1)POE'S INFLUENCE.
Gold Bug ヲ書イタノガ 1842 年ダカラ Edger Allan Poe ガ米国ニ孤々ノ声ヲ上ゲタノハ今カラザット百年前ノ事ダ。島村抱月ガ彼ヲ評シテ恐怖ノ詩人死ノ詩人廃滅ノ詩人秘密ノ詩人暗黒ノ詩人官能ノ詩人芳烈ノ詩人ト云ッタノハ当ッテ居ル。Swedenborg カ Wiliam Blake ガ近代的ノ形ヲ取ッタ再来ト云フモ不可デナイ。彼等ニ見ル神秘主義象徴主義ヲ近世文学上ノ花ト咲カセル源ハ実ニ Poe ニ在ッタ。神秘ハ Poe ノ生命デ凄惨ハ Poe ソノモノデアル。僕ハ Curious novel ノ最モ高尚ナル実例ヲ Poe ニ見出ス。Poe ノ思想ハ前ニ上ゲタ Silence ノ詩ニモ現レテ居ルガ、尚彼ハ斯ウ云ッテ居ル。

"The real things of the world would affect me like visions, and only so; while the wild ideas of the land of dreams became in turn not only the feeding ground of my daily existence, but positively the sole and entire existence itself."


 「孤々ノ声」ハ「呱々ノ声」。

 英文の引用はポーの「ベレニス」ですが、ちょっと検索してネット上の「Berenice」と対照してみると、いささかの異同がみられます。

 ウィキペディアからたどった「Full Text of the first printing, from the Southern Literary Messenger, 1835」の当該部分は、こんな感じ。

The realities of the world affected me as visions, and as visions only, while the wild ideas of the land of dreams became, in turn, — not the material of my every-day existence — but in very deed that existence utterly and solely in itself.

 乱歩による引用の典拠はなにか、ということはまったくわかりません。

 ちなみに、東京創元社版全集の「ベレニス」の当該パートは、大岡昇平の訳でこうなってます。

この世の現実は私には幻として、ただ幻としてのみ、働きかけた。そのかわりに、夢の国の奇怪な観念が──毎日の生活の糧どころではなく──実質的に唯一完全な生活自身になったのである。

 なんだかよくわかりませんから、当該パートを含む段落を引用。

 この部屋で私は生れた。こうして、非存在のように見えながら、実際にはそうではない長い夜から眼をさますとすぐ、妖精の国──想像の宮殿──僧院の思想と学問の未知の領域に入ったのだから──私がびっくりしたような、熱心な眼で自分の周囲を見廻したとしても──そして少年時を書物の間で過し、青春を夢想に浪費したとしても不思議ではない。ただ月日が流れ、壮年の域に達しても、なお私が先祖達の館に住んでいるということが不思議なのだ。さらに奇怪なのは、私の生活の源に一種の渋滞が生じていることである。私のごく普通の思考の中に、完全な顛倒が起っているということである。この世の現実は私には幻として、ただ幻としてのみ、働きかけた。そのかわりに、夢の国の奇怪な観念が──毎日の生活の糧どころではなく──実質的に唯一完全な生活自身になったのである。

 では、つづけます。

(93)

彼ノ思想ノ眩惑ハ茲ニ存スル。
彼ハ若イ頃仲々ノ道楽者デアッタソウナ。彼ニハ美シイ妻君ガ有ッタガ、ソレガ若クシテ逝ッタ相ダ。ソノ悲シミカラ彼ノ Ligeia ナドガ現レタノダ相ナ。
彼ハ文学界ノ流星ノ如ク突トシテ物質的ナル米国ニ現レタ。ソシテ瞬時ニシテ彼ノ生命ハ亡セタ。ガ流星ノ引ク尾ノ永ク光ル様ニ、彼ノ思想ハ次デ来ル時代ニ滲浸シタ。神秘主義象徴主義ノ詩人ニシテソノ作品ニ彼ノ色ノ交ッテ居ラヌモノハナイ。
Wild ノ Dorian Gray ニハ William Wilson ノ灰色ガ交ッテ居ル。Andreiyeff ノ血笑記(1)(二葉亭四迷訳)ニハ Masque of the Red Death ノ血ノ色ガ交ッテ居ル。Maeterlink ノ運命感ハ Poe ヲ一歩モ出デナイト極言スル人サヘアル相ダ。音ガ色ヲ持ツト云ッタノハ仏ノ象徴詩人アルツール、ラムボオガ始メテダト云フガ Poe ノモノストウナノ対話中ニ已ニ之ガ有ル様ダ。
Poe ハ自我ヲ無限ニ拡大シタ。精神ハ肉体ヲ支配シ無機界サヘモ左右スルト云フ僕ノ信念ト此点ニ一致ヲ見出ス。コノ点ニ於テ彼ハ独

(1)"The Red Laugh"

 「Andreiyeff」は、一般的には「Andreev」と表記されるようです。

 「Maeterlink」は「Maeterlinck」。

(94)

ノ Fichte ノ思想ヲ享ケテ居ル。只異ル所ハ Fichte ノ自我ハ determined ニシテ moral ナルニ反シ彼ノ自我ハ indetermined, mystic ナル点ニ存スル。コヽガ彼ノ特徴デアル。
米国辺リノ批評家ハ Poe ト Hawthorne トヲ比較シ前者ヲ外的後者ヲ内的トナス相ナガ。ドウモ左様断定スルノハ厭ダ。後者ニ前者ノ眩惑ト凄惨ヲ見出シ得ルカ。
Poe ノ作品ヲ精神ト物質ノ二ニ分ツコトガ出来ル。大部分前者ニ属スルガ、只 Dupin ノ探偵談ノミハ後者ニ属スル。精神方面ハ以上ニ大体述ベタカラ次ニ物質方面ニ於テ彼ノ影響ガ如何ニ後世ニ及ンダカヲ記サネバナラヌ。
彼ノ最モ有力ナル後継者ガ英国ニ現レタ。Conan Doyle ガ夫レダ。彼ハ Poe ノ Dupin ヲ批評シテ次ノ如ク言ッテ居ルガ、而モ彼ガ Poe ヲ似真タ事ヲ否ム訳ニハ行カヌ。似真タト云フノガ不当ナラバ影響ヲ受ケタト言ハウ。

WATSON "You remind me of Poe's Dupin. I had no idea that such individuals did exist outside of stories."
HOLMES "No doubt you think that you are complimenting me to Dupin.


 「indetermined」は「undetermined」だと思います。

 「似真」は「真似」。

 「that you are complimenting me to Dupin」は、ネット上で公開されている各種の文献によれば「that you are complimenting me in comparing me to Dupin」。

(95)

Now, in my opinion, Dupin was a very inferior fellow. That trick of his of breaking in on his friend's thoughts with an apropos remark, after a quarter of an hour's silence is really very showy and superficial. He had some analytical genius, no doubt; but he was by no means such a phenomenon as Poe appeared to imagine."(FROM Study in Scarlet.)

流石ニ急所ヲ突イタ批評デアル。然シ Holmes ダトテ showy デナイトハ云ヘヌ。余計ナコトヲセヌトハ云ヘヌ。Mark Twain ノ Double Barreled Detective ハ Doyle ヲコノ点デ諷シ得テ得ル。Detective story ノ妙ハ showy ナ所ニアルノダカラ仕方ガナイ。只 Poe ヨリモ Doyle ノ簡単ヲ喜ブ丈ケハ事実デアル。探偵小説トシテハ Doyle ガ或ハ勝ッテ居ルデアラウ。
次ニ Poe ノ物質的方面ニ似タ小説家ヲ上ゲル。コノ内 Poe ノ影響ヲ受ケテ居ルモノガ少クナイト思フ。

1 Detective Stories ──
 Boisgobey, Fleeman,


 「得テ得ル」は「得テ居ル」でしょう。

 「Fleeman」は「Freeman」。

(96)

 Gaboriau, AK. Green,
 Hawthorne, Reade,
 De Quincey("The Avenger", for example)
 Thompson("The Unfathomable Mystery" in "Centeola")
2 Treasure Stories
 Stevenson(Treasure Island ノ外ニ
 Treasure of Franchard, Merry Men 等)
 H. H. Jackson(Nelly's Silver Mine)
 Kingsley(Westward Ho!)
 Hawthorne(Peter Goldthwaite's Treasure)
 Dumas(Black Turip)
3 Gems or Jewels
 Collins(Moonstone)
 Hawthorne(The Great Carbuncle)
 Thackeray(The Great Hoggarty Diamond)
 Verne(1000 Leagues Under the Sea)

〔以上ハ Theda Gildemeister 編 Canterbury Classics 中 The Gold Bug ヨリ抜ク。本書ニハコノ外児童用ノ Curious novel 多ク掲ゲアリ好参考書タラン。コノ外ノ項目丈ケ上グレバ。Piracy, Life in English School, Reference for Cryptography コハ是非モ一度読

(日比谷、Gold Bug. 35. 355)後ノ㐧194頁ヲ見ヨ

 「Thompson」はつまびらかならず、「Centeola」も意味不明。

 「1000 Leagues」は「Twenty Thousand Leagues」ではないかと思います。

(97)

マネバナラヌ。Picture Writing, Dog Story,(コノ内ニ Dog of Flanders - Ouida 作等ヲ含ム), Showing Negro Fidelity, Courage, etc〕

4 Scientific novels
 Verne, Wells
5 Exploratory novels and others
 Haggard, Corelli

────────
僕ハ理想ニ近イ探偵小説ヲ Doyle ト Poe ニ見出ス。Du Boisgobey 素ヨリ語ルニ足ラズ。Gaboriau ト虽モ未ダ幼稚タルヲ免レズ(足跡ハ已ニ幼稚ダ)更ニ近クニ目ヲ転ジテ Sexton Blake 妙ナラズ、モリス、ルブラン行文ノ妙ハアレド Doyle ノ wit ナク、Leroux ルブランニ及バズ、僕ノ読ンダ範囲デ Doyle ヲ出ヅルモノハナイ Poe ヲ出ヅルモノハナイ。以上デ一先ヅ Poe ノ大体論ヲ終ル、未ダ書クコトハアルノダガ忙グノデ略スル。
序ニ Poe ノ評論ヲ上ゲテ置カウ。其他ソレニ関スルモノ。

Woodberry : Life of Poe

〔in "American Men of Letters" Series〕

Higginson : Short Studies of American Authors
Poe's Letter in New York


(98)

Poe's letter in South
 〃 〃 〃 Philadelphia
Poe's Opinion of the Raven
Legendary Years of Poe
Poe's William Wilson

又近頃出タノニ著者ハ忘レタガ

Edger Allan Poe ト云フノガアル。

尚 本間久四郎ノ名著新訳

谷崎精二ノ赤キ死ノ仮面
失名氏ノ渦巻

等ニ Poe ノ略評ガ載ッテ居ル。

E. A. Poe's Complete Works。

三百頁計ノ本ガ十数冊、中ニ短篇小説、詩、書簡、諸文学者ノ批評所記等ヲ含ム。上野図書館ニアリ。

 本日は以上でございます。

 さて、おはなしすっかり変わりまして、全国から名張のまちに十万人が参集する、ともいわれているこのイベントですが。

 圏際・食彩・文化祭 ~ご当地グルメでまちおこしin名張~:Home

 どちらさまも、よろしかったらぜひどうぞ。

 なにしろわれらが名張のまち、ふだんはとても閑散としていて、先日お知らせ申しあげたエントリのつづきがこれなんですけど、まあこんな感じです。

 香ばしい町並みブログ ~昭和レトロな町並み~:【三重県・名張市】上本町サンロードの昭和なアーケード その2(2013年11月15日)

 そうかと思うと、こんなふうなご紹介もいただいております。

 大和浪漫:江戸川 乱歩と名張(2013年11月20日)
 大和浪漫:江戸川乱歩生誕地碑広場へ(2013年11月21日)
 大和浪漫:二銭銅貨って?(2013年11月22日)

 そうかと思うと、名張市を代表する観光スポット、赤目四十八滝の紅葉はいまやみごろのようです。

 SankeiBiz:紅葉と名瀑が織りなす極上の眺め 三重県名張市「赤目四十八滝」(2013年11月17日)
 朝日新聞デジタル:染まる 赤目渓谷(2013年11月22日)

 どちらさまも、よろしかったらぜひお出かけください。

 ついでながら、「伊賀百筆」第二十三号もよろしくどうぞ。

 毎日jp:地域文芸誌:「伊賀百筆」最新の23号刊行 戦後間もない時代の息吹 回覧誌「パルナッスの丘」を特集 /三重(2013年11月23日)

 さ、どこへも出かけずに『奇譚』で遊ぼっと。
Posted by 中 相作 - 2013.11.20,Wed

 第三章まで本文を組んでみました。

 表紙の画像をクリックし、PDFファイルをダウンロードして、見開き表示でごらんいただければと思います。


 本日はこれにて失礼いたします。
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