催事
伊勢田邦貴遺作展
平成23・2011年10月24日-30日 ナンワギャラリー(中央区日本橋室町)
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毎日jp
平成23・2011年10月26日 毎日新聞社
第65回読書世論調査:あすから読書週間 本とどう向き合う
聞き手=井上卓弥 写真=西本勝
聞き手=木村光則 写真=手塚耕一郎
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27日から始まる「読書週間」--。東日本大震災によって日本中が揺さぶられた今年、毎日新聞が毎年9月に実施している「読書世論調査」では、「本は読まない」という回答が大きく減少し、例年以上に、読書を通じて世の中の出来事と向き合おうとする回答も目についた。日本人は今、本から何を学ぼうとしているのか。それぞれの世界で「読書の達人」として知られるお二人に、本とどう向き合ったらよいかを聞いた。
◇翻訳と書評、「源」は一緒 積極的にかかわって--翻訳家・文芸評論家、鴻巣友季子さん
8月、翻訳家の日常を余すところなくつづったエッセー集「全身翻訳家」(ちくま文庫)を刊行。今月には初の書評集「本の寄り道」(河出書房新社)が出版された。1987年以来、外国の文学作品数十冊の翻訳を通して豊かな世界を読者に伝えてきたが、本とのつきあいは、どんなふうに始まったのだろうか。
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翻訳家・文芸評論家の鴻巣友季子さん
「子供のころ、翻訳物の世界をバリアーみたいにして閉じこもっていました。原点はウェブスターの『あしながおじさん』。親が悲観するぐらい本ばかり読んで(笑い)小学6年までに、分からないなりに外国古典文学を一通り読み終えて」
15歳で安部公房の「箱男」「砂の女」に衝撃を受け、19歳で難解とされるジョイスに出会う。ポストモダンなどの「冒険」も重ねた。
「そうした読書遍歴の末、大学生時代には『絶対に翻訳家になる』と決心しました。本を読んで文章を書くのが好きだけど、作家になる技量はない。語学もわりと得意で、好きな三つのことを同時にかなえられるのが、私の場合、翻訳家という仕事だったんです」
当時はバブル真っ盛り。花形職種は国際線の客室乗務員や同時通訳で「なぜ、翻訳家なんて地味な仕事を?」と不思議がられたことも。それでも<なにを見ても翻訳を思い出す>(「全身翻訳家」あとがき)ほど没頭し、03年にE・ブロンテの名作「嵐が丘」(新潮文庫)新訳版を出すと、一気に書評の依頼が増えた。
「読者の多い全国紙で書き始めたので『分かりやすく言葉を凝縮する』が最大テーマ。話芸で盛り上げて読者を本の前につれていく書評もありますが、私のは作品のエッセンスを正確に忠実にすくい取って伝えようとするスタンスです」
翻訳、そして書評とエッセー執筆--。当初は「使う頭の筋肉がそれぞれ違う」と考えていたが、書評の仕事が増えるにつれ「あれっ」という発見があった。
「自分のコアな部分が出てきて『一行ずつ解釈して自分の言葉で書いていく翻訳と感覚的にいっしょだ』と気付きました。翻訳と書評やエッセーは『源』を同じくするものだったんです。私の書評は本当に『翻訳者書評』なんですね」
「本の寄り道」では04年から11年までの<おすすめの240冊>を厳選し、30代から読み込んだ日本の現代作家の傑作や「世界文学」を網羅した。最新書評のインドラ・シンハ「アニマルズ・ピープル」は1984年、インドの化学工場で起きた史上最悪とされる汚染事故を題材にした作品。
「ユートピアをうたった科学と企業に人々の暮らしがゆがめられるという点では、石牟礼道子の『苦海浄土』にも通じますし、3・11の原発事故にも重なる。想定って『想像力の壁』のことだと思うんですね。その壁を打ち壊していくのに読書ってやはり欠かせないだろうと」
最後に翻訳家ならではの本の楽しみ方を尋ねた。
「翻訳は文章を読んで情報として処理し、自分の言葉で変換する行為。実は人間が行動する時には必ず何らかの翻訳行為があって、いわば人間の活動の最小単位が翻訳なんです。翻訳家は、その最小単位からあんまり出ていない小心者(笑い)。テレビのバラエティーを受動的に眺めるのは、変換や翻訳がいらない分ラクですが、自分なりに翻訳しながら何事にも積極的にかかわったほうが面白いはず。『積極的な翻訳者』として読書を十分に楽しんでほしいですね」【聞き手・井上卓弥、写真・西本勝】
◇自分のための孤独、感じて 心の中では大冒険--女優・緒川たまきさん
演劇や映画、テレビドラマなどで幅広く活躍している一方で、澁澤龍彦や谷崎潤一郎などの純文学にも親しむ読書家として知られている。
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女優の緒川たまきさん=手塚耕一郎撮影
「何をするより読書が好きって気付いたのは小学4年生のころ」。幼いころから一人遊びが好きだったという。「一番興奮できる時間が読書でした。はたから見ると静かなのに、心の中では大冒険というのが楽しみで」と振り返る。
江戸川乱歩の少年少女向けシリーズを読み尽くし、今度は古本屋で本物の江戸川乱歩の小説を買って読むようになった。「装丁も大人向けで心理描写もデリケートだし、面白くてどんどんのめり込んでいった。それから純文学に親しむようになりました」
中学校に進むとウラジーミル・ナボコフやフランソワーズ・サガンなどの翻訳本にはまる。「これがセシルカットの大本なんだな、って。少女期の『いろんなことを知りたい』という欲求もありました」
やがて、海外の小説は翻訳家の文章でニュアンスが変わることに気付き、「自分の感覚そのままで読める」日本文学に向かう。「すごく好きな作家と思ったのは谷崎潤一郎です。谷崎の小説を20代、30代で読み直すと違うものを感じられる。あのときはなぜこれに気付かなかったんだろう、って。同じ小説でも年代で違うものを感じられるのが小説の楽しさ」とも言う。
今年に入って読み直しているのは泉鏡花。「面白すぎて息絶え絶えです。人が人という姿を借りて妖怪変化な世界を描いている。その世界が立ち上ってくるとあまりの美しさに先を読み進められなくなるぐらい」とその魅力を語る。
自身も旅行記や紀行文を出版している。「出版物や紙媒体への興味や憧れは強くあります」。電子書籍の登場で携帯電話で小説が読める時代になったが、「電子書籍と紙の本はまったく違うもの。本はどこに気をとめてもいいし、しおりを挟んだり、付箋をつけたり、読みたいところにすぐページをめくれる。電子書籍を否定はしないけど、自由な感じはしない。電源が切れてしまうんじゃないかと気にしてしまう」と笑う。
3月の東日本大震災には自身も大きな衝撃を受けた。「いろいろなものを失った方や漠然と不安を感じている人々。共通しているのは生と死を強く意識するようになったことだと思う。私自身も生の実感をきちんと感じたいと思うようになった。そういう意味で読書を通じた感受性は高まっていると思います」。震災を受けて仕事への気持ちも変わった。「きちんと責任を持って情熱を傾けられる仕事かどうかを考えるようになりました」
読書は、現在の仕事にも大きな影響を与えている。「本の中では、現実に出会ったことのない人にも出会える。自分にはないものを想像できる。(女優という仕事の)いろいろな引き出しの一つになっている、と思います」という。
幼いころからさまざまな読書を通じ成長してきた。思春期の真っただ中にいる世代に向けて「若いころは自分の感覚と周りがちょっと違うだけで孤独を感じてしまうけれど、読書という行為を根気強く続けていけば、その時の自分にぴったり合うものにいつか出会える。孤独というものの、また違った魅力です。自分のためになる孤独もある、と感じてほしいですね」と語った。【聞き手・木村光則、写真・手塚耕一郎】
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■人物略歴
◇こうのす・ゆきこ
東京生まれ。お茶の水女子大大学院修士課程英文科専攻。クック、クッツェー、アトウッドなど英語文学の翻訳を手がけ、09年には「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」(河出書房新社)でV・ウルフ「灯台へ」を担当した。著書に「翻訳のココロ」(ポプラ文庫)、「明治大正 翻訳ワンダーランド」(新潮新書)、「孕(はら)むことば」(マガジンハウス)、「カーヴの隅の本棚」(文芸春秋)。現在、毎日新聞「今週の本棚」(毎週日曜掲載)に書評を執筆中。
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■人物略歴
◇おがわ・たまき
モデル活動を経て、映画「Pu プ」(94年公開)で女優デビュー。舞台「広島に原爆を落とす日」(97年)でゴールデン・アロー賞演劇新人賞、映画「SF サムライ・フィクション」(98年)で高崎映画祭最優秀助演女優賞をそれぞれ受賞した。最近の出演作品に映画「紙風船」(2011年)や舞台「赤色エレジー」(同)などがある。著書にフォト&エッセー集「Mexico ガイコツ祭り」(ピエ・ブックス)など。
毎日新聞 2011年10月26日 東京朝刊
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平成23・2011年10月25日 エキサイト
乱歩・ホームズ・ルパン……懐かしい小学校の図書館の匂いだ!『表紙でみるジュニア・ミステリ』
杉江松恋
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乱歩・ホームズ・ルパン……懐かしい小学校の図書館の匂いだ!『表紙でみるジュニア・ミステリ』
2011年10月25日 11時00分
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『少年少女昭和ミステリ美術館 表紙でみるジュニア・ミステリ』森英俊・野村宏平編/平凡社
私は学校図書館の貸し出しがカードのころに小学校時代を過ごした。
と書き出そうとして、今でも貸し出しはだいたいカードであることに気づいた。学校図書館って、あまり進化しない場所なのです。
その学校図書館の貸し出しで特に人気があったのが、言わずとしれた江戸川乱歩の〈少年探偵団〉であり、〈名探偵ホームズ〉であり、〈怪盗ルパン〉シリーズだった。これはみんな読んだ。通過儀礼に等しいものがあったと思う。それらのシリーズは結構な冊数があるので、その気になればずっと読んでいられたのだ。
それら定番シリーズの次くらいに貸し出しされていることが多かったのが、あかね書房の〈少年少女世界推理文学全集〉だった。前出3シリーズの表紙はどちらかといえばおどろおどろしい感じで書かれていたが、〈少年少女〉はスマート。硬質の線画が表紙絵になっているものが多く、子供心に「文化」を感じた。「推理小説」じゃなくて「推理文学」なのもいい。格調高い感じがして、ますます文化的だった。現在ミステリー作家として活躍している人に話を聞くと、このあかね書房の全集の読書体験に言及する人が多い。当然だという気がする。みんなあの「推理文学」にやられたのだ。大人の階段を上ったつもりになってしまったのである。
森英俊・野村宏平編『少年少女昭和ミステリ美術館 表紙でみるジュニア・ミステリ』は、〈少年探偵団〉をはじめとする児童向けのミステリー、ジュニア・ミステリーやジュヴナイル・ミステリーなどとも呼ばれるジャンルの出版物をまとめて紹介する本である。
児童向けの探偵小説・冒険小説は戦前から刊行されていたが、戦後になって一気に増大した。海外作品の翻訳も進み、昭和30年代から50年代前半にかけて質量ともに充実期が訪れたのである。この流れの一部は秋元や朝日ソノラマなどのジュヴナイル文庫へと引き継がれた。現在でいうライトノベルの源流である。本書ではそうした昭和の児童文学史の一部が紹介される。現在の若い読者にとっては一見無関係に感じられる内容かもしれないが、流れを追ってみると意外なところに行き着くことに気づくはずだ。
といっても本書は堅苦しい文学史の本に終始するわけではない。文字通り「表紙でみる」「美術館」なのである。なんといっても写真がすべてカラーなのが嬉しい。読んだことのある本の写真を見ると、読書をしたときの記憶がつかの間甦ってくる。学校図書館で過ごした時間が再現されるかのような、くすぐったい気分を味わいながら私は読んだ。
乱歩・ホームズ・ルパン……懐かしい小学校の図書館の匂いだ!『表紙でみるジュニア・ミステリ』
2011年10月25日 11時00分
内容は第1展示室から第4展示室までの4章に分かれている。
第1展示室「乱歩・ホームズ・ルパン 児童ミステリ界のビッグ3」は、章題を見るだけで内容が判ってしまうはずだ。冒頭に掲げた3シリーズについての章である。多くの読者は、ここで自分がよく知っているつもりでいたはずの作品についての意外な事実を告げられ、面食らうはずだ。
たとえばポプラ社の〈怪盗ルパン全集〉の中にオリジナル長篇が混じっていることを知る人は、一般の読者には少ないだろう。『ピラミッドの秘密』がそれで、原作のどこを読んでも出てこないエピソードが登場する。この小説でルパンは、古代黒人帝国ウバンギの大秘宝を求めて、ナイル川をさかのぼって冒険するのである。大ニシキヘビと死闘を繰り広げたりもする。手元に本があるので、ちょっと引用してみよう。
――ルパンは山刀をすてて拳銃をぬきだした。つづけざまに三発を大ニシキヘビの下半身にうちこんだ。それが背骨をうちくだいたらしく、大ヘビはずるずると枝からおちて土人(原文ママ)をふりほどいて長くのびてのたうちまわった。
ニシキヘビの下半身ってどこだ、とかそういう問題ではなく、この場面自体が秘境冒険小説で人気を博した南洋一郎のオリジナルなのである。〈怪盗ルパン全集〉は近年になって文庫化されているが『ピラミッドの秘密』は収録されていない。
自由奔放な翻訳は南洋一郎版のルパンだけではなく、冒険作家・山中峯太郎が手がけた〈名探偵ホームズ全集〉も相当なものだったらしい。今手元に現物がないので編者の野村宏平を信用して書くが、この全集ではホームズが「根っからの負けぎらいで、あきれるほどの大食漢」として描かれているそうなのである。当時の子供たちにはまだなじみが薄かった英国人のキャラクターをわかりやすく紹介するための方便だったのだろう。現在ではあまり見られない自由な翻訳(ルパンの場合は翻案といってもいい)が、外国小説の紹介に一役買ったのである。
江戸川乱歩の〈少年探偵団〉シリーズはさすがに翻訳ものほどの脱線はないが、それでも紹介されている事実には発見が多い。
本書の表紙を飾っているのは光文社全集版の『青銅の魔人』である(最初からポプラ社で全集を出していたと思っている人も多いと思うが、光文社が最初なのだ)。『青銅の魔人』は戦後初めて乱歩が書いた〈少年探偵団〉ものである。松野一夫が描いた表紙を見ると、小林少年の髪型はクリクリの坊主頭だ。
乱歩・ホームズ・ルパン……懐かしい小学校の図書館の匂いだ!『表紙でみるジュニア・ミステリ』
2011年10月25日 11時00分
乱歩が『青銅の魔人』を発表したのが1949年、この全集に収められたのが1958年。時代の色が折々の表紙画には反映されているのだ。
第2展示室「世界の名作・日本の名作 少年少女ミステリ全集」では冒頭で触れたあかね書房の全集をはじめ、さまざまな叢書がとりあげられている。比較して見ると、あかね書房の全集が当時としては(いや、今でも)相当垢抜けた装丁であったことが判る。ゲストエッセイを寄稿している、恩田陸の文章を引用する。
――表紙に、見返しに口絵に、いかにもダークでぞくぞくする物語への予感が滲み出ていた。なんといっても、ページを開いた時の字面からして独特の雰囲気があった。乾いた神秘的な空気。図書室で本を開いていても、フィルム・ノワールを見ているような、海外にいるような気分になれたのだ。
これだけの興奮・期待感を、「本を手に取るだけで」醸し出してくれる叢書は珍しい。児童向けに限らず、大人向けの本に広げても稀だろう。昭和のあのころに海外ミステリーの魅力にとりつかれた読者が続出したのは、良書が多く紹介されたという事情もさることながら、こうした本自体の持つ魔力のせいでもあったはずだ。同じような叢書がもし今あれば、とついつい夢想してしまう。
あとは駆け足で。第3展示室「ジュニア・ミステリの名匠たち」は児童向けミステリーを多く書いた作家たちの列伝だ。詩人の西條八十や、時代小説で知られる柴田錬三郎も、この分野では有力な作家だった。若い読者は、横溝正史に意外と児童向けの作品が多いことに驚かれるかもしれない。たくさんあるんですよ。この章に、前出の秋元文庫や朝日ソノラマ文庫の話題が出てくる。
第4展示室「付録・ガイド本の世界」は雑誌などの付録として供された文庫サイズの本を中心に、ひところはよく刊行されていた児童向けのミステリーガイド本についての言及もある。ガイド本は現在では廃れかけた文化なので、この部分だけを拡大した本というのも読んでみたい気がする。昔はそういうガイド本で「名探偵」の名前を知ったものだが、今の子供たちは『名探偵コナン』で知るのである(各巻に名探偵紹介のコーナーがあるのだ)。
私は本読みとして、身体の何割かを「ミステリー」というパーツで作ってもらったという実感がある。もちろん、いろいろなジャンルをつまみ食いし、おいしいものばかりをいただいてきたという記憶はある。だが身体を支える骨の何本かは、あかね書房の全集のような、優れた児童向けミステリーに作ってもらったものであるはずだ。
乱歩・ホームズ・ルパン……懐かしい小学校の図書館の匂いだ!『表紙でみるジュニア・ミステリ』
2011年10月25日 11時00分
そのことに感謝しつつ、本書を推薦する。懐古の情だけではない。新しい読者もここから得るものがあるはずと信じるからである。どきどきしながら学校図書館で時を過ごしたことのある、すべての読者に。(杉江松恋)
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『ピラミッドの秘密』
ルパンがナイル川をさかのぼる秘境冒険小説。〈怪盗ルパン全集〉にはこの他にも、ボアロー&ナルスジャックという別の作家がアルセーヌ・ルパン名義で書いた作品が入っているなど、自由極まりない構成です。その贋作版も以前は新潮文庫で読むことができましたが、現在は絶版。復刊しないかな。
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本書の裏表紙より。右上があかね書房の全集で、1冊あたりだいたい2作の長篇がダイジェスト版で収録されていた。この巻にはエラリイ・クイーン『エジプト十字架の秘密』と『靴に棲む老婆』の2作が。児童向けミステリーの特徴の1つに、ダイジェストがむやみやたらと巧いというのも挙げられる。昨今の重厚長大路線の作品とはまた別の、引きしまった味があった。
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平成23・2011年10月6日 メディアファクトリー
横溝賞の最高傑作登場か 学園が舞台の本格ミステリー
取材・文=杉江松恋 写真=川口宗道
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2011年10月06日(木) 13:09 電子ナビ編集部
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日本ミステリー界の巨星の名を冠した横溝正史ミステリ大賞は、今年で31回を数える。最新の受賞作『消失グラデーション』は賞の原点に戻ったかのような謎解き小説だ。
「本格的に小説を書き始めたのは22歳のときで、20代に書いたものはすべてミステリーでした。ジャンルとしてはいわゆる本格ミステリーです。トリックがあって解決のためのロジックがあるというものですね」
受賞者の長沢樹は、子供のころから熱心なミステリーファンだったという。
「ミステリーを読み始めたきっかけはお決まりの江戸川乱歩〈少年探偵団〉シリーズです。図書館でそれを借りて読んでいるうちに、ああいう作品には論理的な解決があるということを知ったんです。それで俄然興味が湧きました。『透明怪人』という作品が少年探偵団のシリーズにあるんですが、小学生としては本当に透明怪人がいると思ってたんですよ。ところが読んでみると、二十面相が操っていたという。初めてトリックというものの存在を知りました」
長沢の小学生時代には、ちょうど角川映画『犬神家の一族』が火付け役を果たした、横溝正史ブームが盛り上がっていた。
「少年探偵団から金田一耕助シリーズの読破に向かったんです。アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンなどの海外の有名どころも一通り読みました。高校生のころに新本格の洗礼を受けて、そこからはどっぷりです。綾辻行人さんの『十角館の殺人』は人生3大びっくりの1つですね。あとの2つはヴァン・ダイン『僧正殺人事件』、そして今回自分が横溝正史ミステリ大賞を受賞したことです(笑)」
映像が仕事、小説は趣味とわりきっていた20代
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長沢が初めて小説を書こうと意識したのは中学1年生のときだった。中学2年生のときには国語の授業の課題として、150枚の長さのものを書いている。本人によればそれは、横溝正史『仮面舞踏会』の影響を真っ向から受けたものだった。高校時代から映像業界を志望していた長沢はその関係の専門学校に進学し、脚本を書くようになる。
「小説を書くのはあくまでも趣味だと割り切っていました。読書をしたり、パチンコに行ったりするのと同じといいますか。専門学校を出た後はテレビの仕事をするようになりましたが、ほとんど情報報道系の現場でした。ドラマといえばせいぜい事件の再現ドラマぐらいで(笑)。職業がら資料はたくさんあったので、それをこっそり小説書きに流用したりもしました」
当時は『このミステリーがすごい!』が発刊されたばかりで、ミステリーに対する世間の注目度も上がり始めていた。特に傾向と対策を勉強することもなく、長沢もミステリー関係の賞に投稿を開始する。日本推理サスペンス大賞(終了)で1次通過を果たしたときの優秀作受賞者は天童荒太である。また、同じ2次落ちの仲間にはミステリー作家の北川歩実がいた。
「そのころ、同じ職場にいた女性に失恋しちゃったんですよ(笑)。それで24から26まであまり仕事をしないで家にいて、目一杯小説を書きました。失恋のパワーを全部創作にぶつけていたんですね」
やがて職場復帰をした長沢はアシスタントからディレクターに昇格し、自分の裁量で番組が作れる状態になる。そのため30代後半までの10年間は小説を書こうという気持ちもなく忙しく仕事に打ち込んでいた。
「10年間は書いてもトリックやプロットをメモする程度でした。実は『消失グラデーション』も、そのころのメモが元になっている部分があります。36歳になったぐらいから、仕事のやり方が変わり始めました。それまでは一人のディレクターが全部の過程に携わっていたのを分業化するようになり、その結果週に2日ぐらいの休みが取れるようになったんです。それでもう一度小説を書いてみようかという気持ちになりました」
小説から離れていた10年間も決して無駄な時間ではなかったと長沢は言う。
「今回の作品でみなさんが読みやすかったとおっしゃってくださったんですけど、映像の仕事をしながらアナウンサーなりナレーターなりが読むことを想定した原稿をずっと書いてきましたから、その蓄積は大きかったと思うんです」
10年の充電期間を経て創作の舞台に戻ってきた長沢だったが、最初に選んだジャンルは意外なことにミステリーではなかった。
「そのころ、ちょうどライトノベルというジャンルの存在を知って、そっちに挑戦しようとしたのですが……結果は8連敗でした。ライトノベルというものをよく知らずに書いたので仕方ないのですが、ぜんぜんジャンル違いのものを応募したりしていたので、当然の結果だと思います。それと並行して2007年に『消失グラデーション』の原型になるものを書きました。最初は350枚ぐらいで書いて放置してあったのを、昨年の夏に思い出して現在の形に仕上げたんです。ライトノベルが連敗続きだったので、これを納得のいく形に仕上げて、在庫を一掃してまた一からやり直そうと。リライトのときには、自分の青春はあまり輝かしいものではなかったので、その辺の願望を付け加えたりもしています(笑)。完全に男目線で書いたという自覚はあるので、女性読者の反応は実は気になっています」
2011年10月06日(木) 13:09 電子ナビ編集部
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ライトノベルを経由して作風は劇的に変化した
『消失グラデーション』はとある学園を舞台にしたミステリーだ。その中で二重の密室状態が成立し、ある生徒が敷地内から消えてしまうという謎が中心におかれている。創作の原点は、このトリックを思いついたことだったという。そしてトリックを魅力的に見せるための効果的な演出を、と考えているうちにさまざまな設定が生まれてきたのだ。
「書きながら意識していたのは有栖川有栖さんの『孤島パズル』でした。ああいう、解決へ向かうロジックが1つの証拠から出発しているような推理の形が好きなんです。有栖川さんの学生アリス・シリーズはとても好きな作品です」
小説の中核に触れるために曖昧にしか書くことはできないが、非常に現代的なテーマを扱った作品でもある。そのテーマで書かれた作品はこれまでにも多く出ているが、『消失グラデーション』における長沢の眼差しは非常に優しい。柔らかな手触りが、長沢作品の特長の一つでもある。
「ただ、書くときにテーマを先に決めているわけではないんです。昔、大島渚さんが『映画を作るのにテーマなんか必要なのか!』っておっしゃっていたことがあって、『そうだよな、好きだからやってるんであって、物語をつくる妄想をするのが好きなんだよな』と共感しました。『消失グラデーション』も、書いているうちに自然にテーマが出てきたということですね。後付なんです。一つだけ気を遣ったのは、この小説に出てくるような立場の人が現実にいるので、その方たちが不快な思いをしないようにということでした。そこは神経を使いました」
さまざまな紆余曲折を経てたどりついたミステリー小説という舞台で長沢はこれから戦っていくことになる。彼の作家としての最大の武器は、魅力あるキャラクター造形だろう。
「それはもうライトノベルを書いたことの賜物だと思いますね。ライトノベルを経由したことで、キャラ作りの大切さに気付いたんです。私は30代半ばをすぎてから意識してマンガを読むようになったんです。また、一般映画も見るようになりました。もともとB級映画が好きだったんですけど、アニメを観る量も増やしました。最近のアニメとかは全然知らなかったんですけど、意外に先鋭的だったんですよ。21世紀のハードSFのトレンドみたいなものまでちゃんと入っていて。話題になった『涼宮ハルヒの憂鬱』なども観ました。ライトノベルは本当に最初よく判っていなかったんですけど、中にはキャラクターだけで一冊持つようなのもあったんです。キャラクターって大事だなと思いました」
古典的な謎解きミステリーの骨格に、現代的なキャラクター重視の作風を併せ持つ。ミステリー作家としての武器を2つも備えた新人である。こういうタイプの新人作家は、実は珍しい。
「現段階では、次回作は『消失グラデーション』の登場人物が一部出てくるものにする予定です。この前日譚で、できればクローズドサークルの話にしたいなと。また、いつかは原点である『犬神家の一族』や『八つ墓村』のような世界にも挑戦したいと思います。自分は生まれも育ちも山の中のど田舎なので、ああいう風土を書く素養はあると思うんですよ。自分のこのテイストで、現代風の『八つ墓村』も書いてみたいですね」
馳星周、綾辻行人、北村薫の3選考委員から、最大級の賛辞を贈られて長沢はデビューする。巨匠の名を冠した賞出身の作家にふさわしい、盛大な活躍をされることを期待したい。
(取材・文=杉江松恋 写真=川口宗道)
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『消失グラデーション』
長沢 樹 / 角川書店 / 1575円
学園の敷地に不審者が侵入を繰り返している。バスケ部員の椎名康はクラスメートの樋口真由から調査協力を求められる。だが二人が動き出した矢先、椎名と同部の網川緑が人間関係の揉め事から不安定な精神状態にあることが判明する。そしてある日、最悪の事態が……。第31回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。
人事
北杜夫
平成23・2011年10月24日午前6時2分死去 腸閉塞 84歳
きた・もりお 本名=斎藤宗吉(さいとう・そうきち)
作家
昭和2年5月1日-平成23年10月24日(1927-2011)
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北杜夫さん=東京都世田谷区の自宅で2008年11月、平田明浩撮影
毎日出版文化賞を受賞した長編小説「楡家(にれけ)の人びと」(64年)や上品なユーモアあふれるエッセー「どくとるマンボウ」シリーズで知られる作家の北杜夫(きた・もりお、本名・斎藤宗吉=さいとう・そうきち)さんが24日午前6時2分、腸閉塞(へいそく)のため東京都内の病院で亡くなった。84歳だった。葬儀は親族のみで営む。喪主は妻喜美子(きみこ)さん。
アララギ派を代表する歌人、斎藤茂吉の次男として東京に生まれ、旧制松本高校を経て東北大医学部卒、医学博士。水産庁のマグロ調査船での船医としての体験をつづった「どくとるマンボウ航海記」(60年)が大ベストセラーになり、ナチス政権下の精神病患者をめぐる医師の苦悩を描いた「夜と霧の隅で」(同)で芥川賞を受賞した。
その後も「昆虫記」「青春記」などの“マンボウ”ものが爆発的な人気を集め、「船乗りクプクプの冒険」(62年)や「さびしい王様」(69年)など、大人も楽しめる童話でも親しまれた。カラコルム遠征隊を扱った「白きたおやかな峰」(66年)や、日系ブラジル移民を描いた「輝ける碧(あお)き空の下で」(82年)などの純文学作品も精力的に発表。98年、「青年茂吉」など父の人生を描いた評伝4部作で大仏次郎賞を受賞した。
兄は精神科医で著述家の斎藤茂太、長女はエッセイストの斎藤由香さん。作家の遠藤周作や辻邦生、佐藤愛子さん、なだいなださんらとの交友でも知られた。
毎日新聞 2011年10月26日 9時05分(最終更新 10月26日 12時43分)
ウェブニュース
ZAKZAK
平成23・2011年10月25日 産経デジタル
「伊勢田邦貴 遺作展」を開催!乱歩作品に花添えた天才画家
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2011.10.25
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伊勢田邦貴遺作展
今月30日まで、東京・日本橋ナンワギャラリーでは「伊勢田邦貴 遺作展」を開催している。新聞や週刊誌、婦人雑誌などで多くの連載小説の挿絵を執筆した故・伊勢田邦貴。「少年探偵団」で知られる江戸川乱歩の他、一流作家の名作に花を添えた彼の代表作を展示する。
原画の購入も可能、挿絵の黄金時代を駆け抜けた天才画家の作品を、ぜひ間近で見てもらいたい。
ギャラリーの営業時間は午前11時から午後7時(最終日は午後5時)まで。問い合わせは(電)03・3241・3927。
ウェブニュース
SANSPO.COM
平成23・2011年10月24日 産経デジタル
伊勢田邦貴遺作展24日から開催
Home > 社会 > 社会 > 記事
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2011.10.24 05:00
「伊勢田邦貴遺作展」(協力・日本出版美術家連盟)が、24日から日本橋ナンワギャラリー(東京・中央区)で開催される。伊勢田氏は新聞や雑誌で挿絵を手がけ、1966年にサンケイ児童出版文化賞を受賞。2009年、88歳で亡くなった画家。同展では、江戸川乱歩や横溝正史らの連載小説や少年少女向けの文学作品に掲載された挿絵の原画など約50点を展示し、原画やグッズの販売も行われる。30日まで。時間は11時から19時(最終日は17時)まで。
(紙面から)
演劇
少年探偵団
平成23・2011年10月5日-16日 青山円形劇場(渋谷区神宮前)
主催:ネルケプランニング
原作:江戸川乱歩 『怪人と少年探偵』
脚本:石井幸一(一徳会/K・A・G)
演出:中野成樹
出演:佐藤永典、阿久津愼太郎(D2)、岩義人、鯨井康介、根岸拓哉(D2)、平井浩基、石倉良信、細見大輔
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平成23・2011年10月23日 産経新聞社、産経デジタル
【著者に聞きたい】川瀬七緒さん『よろずのことに気をつけよ』
海老沢類
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【著者に聞きたい】
2011.10.23 08:33 (1/2ページ)
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【著者に聞きたい】川瀬七緒さん
「小説とデザインは近い」
本作でミステリー作家の登竜門、江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)を射止めた。女性の受賞者はじつに15年ぶり。「全部夢だった…という夢をいまでも見る。過去に感じたことのないプレッシャーを感じている」。先月行われた贈呈式では、そう言って気を引き締めた。
文化人類学者、中澤大輔のもとを訪ねた女子学生の砂倉真由。真由の祖父は1カ月前に惨殺され、現場から血判入りの呪術符(じゅじゅつふ)が見つかっていたのだ。事件の真相を探る2人は、人徳のある教師だった祖父の過去を知り…。
昨年、故郷の福島県白河市に帰省した際、祖母の家で念仏の書かれた紙を見つけたのが着想のきっかけ。題名も念仏の締めの文句から取った。「祈祷(きとう)の念仏なのに、恨みがましくて陰な感じ。子供のころ、老女が集まって念仏を唱える異様な光景を見た記憶もよみがえって、すぐに『呪(のろ)い』に結びつきました」
マイペースな中澤と、鼻っ柱の強い真由のユーモラスな掛け合いで物語を推し進め、最終盤で「贖罪(しょくざい)」という重いテーマを突き付ける。雪深い山や村社会の閉鎖性など、丹念に描かれた背景が登場人物の心情とうまく溶け合う。
「お地蔵さんの数がすごく多かったり…子供にとっては不思議で少し近寄りがたいものに囲まれて育った。都会的ではない土臭さにひかれる」
【著者に聞きたい】
2011.10.23 08:33 (2/2ページ)
小学校のころから、江戸川乱歩の推理小説を愛読。子供服のデザインを手がける傍ら、4年前に「突然思い立って」小説を書き始めた。乱歩賞では、初めて応募した前回も最終候補に残っている。
「無から何かを作り出す点で、小説とデザインは近い」と話す。犯罪現場にいち早く駆けつける機動捜査隊の奮闘、昆虫の生態が事件のカギを握る法医学の話…。聞けば興味深い小説の種がぽんぽん出てくる。「人が目を付けないところに着目しイメージを膨らませること」。そんなデザイナーの基本動作がどんな物語に結実するのか、楽しみになってきた。(講談社・1575円)
(海老沢類)
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【プロフィル】川瀬七緒
かわせ・ななお 昭和45年、福島県生まれ。文化服装学院卒業後、服飾デザイン会社に勤務。現在はフリーの子供服デザイナー。本作で第57回江戸川乱歩賞を受賞。「小説現代」(講談社)12月号に受賞後1作目となる短編が掲載される予定。
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川瀬七緒著『よろずのことに気をつけよ』(講談社・1575円)
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平成23・2011年10月19日 読売新聞社
谷崎・乱歩・横溝…ミステリーな交流を紹介
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子どもたちから大人気を得た「少年探偵団」のバッジやかるたなどのグッズ
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乱歩が愛用していた8ミリや双眼鏡、カメラ
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横溝愛用のすずりやキセル、直筆の色紙
兵庫県の芦屋市谷崎潤一郎記念館(同市伊勢町)で開催されている秋の特別展示「妖しの世界への誘いざない」(読売新聞大阪本社など後援)は、ミステリーを通じて交流していた谷崎、江戸川乱歩、横溝正史を紹介するという異色の企画だ。
来場者は、書簡や色紙、愛用品を見て、3人の巨匠の内面や人間関係にも思いをはせている。
「こんなのを読まされると、たしかに自分で創作するのがいやになります」。1925年(大正14年)7月、当時23歳の横溝は、乱歩にこんな手紙を送っている。その3か月前に乱歩と初めて出会い、若手小説家らで親睦団体「探偵趣味の会」を発足させた時期。乱歩の短編ミステリー「屋根裏の散歩者」を読んだ横溝が作品を称賛する一方で、自信喪失に陥っている様子がよくわかる。
展示では、谷崎の初期作品「金色の死」を読んで作家を志した乱歩や、中学生の頃から谷崎作品に親しんでミステリーを学んだ横溝など、3人の内面も垣間見ることもできる。「謎の骨格に論理の肉附づけをして浪漫の衣を着せましょう」(横溝)や「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」(乱歩)などの直筆の色紙、谷崎が乱歩に宛てたはがきなどを公開。乱歩の8ミリカメラや少年探偵団のグッズ、横溝のすずりなど展示品は約100点に上る。
同館学芸員の永井敦子さんは「谷崎の探偵小説に触発された乱歩や横溝の直筆原稿などを見てもらい、日本でミステリーが育った当時の雰囲気を感じ取ってほしい」と話している。
(2011年10月19日15時28分 読売新聞)
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