演劇
乱歩・白昼夢
平成23・2011年12月3日
茨木市市民総合センター(大阪府茨木市駅前4-6-16)
主催:茨木市文化振興財団
台本・演出:斎藤憐
美術:宇野亜喜良
出演:結城孫三郎、結城千恵、真那胡敬二(客演)
音楽:黒色すみれ
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▼江戸糸あやつり人形劇団結城座:乱歩・白昼夢
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毎日jp
平成23・2011年12月7日 毎日新聞社
ブックウオッチング:街の本屋さん 往来堂書店(東京都文京区)
崔聡子
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ブックウオッチング:街の本屋さん 往来堂書店(東京都文京区)
◇心をくすぐる「文脈棚」
東京の文京区と台東区の境界に位置する通称「谷根千(やねせん)」地域は広い世代に人気の街だ。週末には昔ながらの商店街でメンチカツをほおばり、細い路地に点在する雑貨店やギャラリーをのぞく観光客であふれる。東京大と東京芸術大に挟まれた文化的な立地にあり、鴎外、漱石、一葉など文人居住の地として、近辺には文学碑や旧居跡が多い。周辺には個性的な新刊書店、古書店、図書館がある。近年は本の街として「一箱古本市」などのイベントでも知られている。
地下鉄千代田線の根津駅と千駄木駅の中間、不忍(しのばず)通り沿いにある往来堂書店はその中心的な存在の新刊書店だ。11月には開店15周年を迎えた。
往来堂書店の特徴は「文脈棚」と呼ばれる本の並べ方だ。通常の書店は「文庫」「新書」「文芸」「理工」「芸術」などに分類して本を並べているが、往来堂は、例えば「江戸・東京」がテーマなら、文庫から写真集、コミックまでを判型にかかわらず一緒に並べている。「テーマの観点からお客さんが興味を持ちそうな本を一緒に並べています」と店長の笈入建志(おいりけんじ)さん(41)。
約70平方メートルの小さな店舗は一見よくある街の本屋という見かけだが、書籍の並びを見ると本好きにはたまらない息遣いが感じられる。文庫や新書、コミックの棚も容量が少ないだけに、新刊をただ羅列するのではなく、一冊一冊考えて並べられている。作家、編集者、他の書店員にもファンが多いというのもうなずける。
夏と冬には周辺の店や近隣住人ら往来堂にかかわる人が選ぶ文庫を並べて紹介する「D坂文庫」というフェアが恒例になっている。「D坂」とは江戸川乱歩の小説の舞台になった、千駄木駅そばを通る団子坂のことだ。笈入さんは「大手出版社の文庫フェアをよそと同じようにやってもつまらない。自分たちでできないかと考えたのがきっかけ。結果として本を薦めた人が『自分がかかわった店』と思ってくれるのが良かった」と言う。
大手書店に勤務していた笈入さんは、11年前に往来堂の2代目店長として公募で選ばれた。「一冊の本、一人のお客さんに、もっとじっくり向き合える店が理想だった」と言う笈入さんが仕掛ける客と本屋の対話はほかにもある。ほぼ毎週発行されるフリーペーパー「往来っ子新聞」もそのひとつだ。A4判を三つ折りにした新聞で、すべてスタッフの手書きで開催中のフェア、新刊、往来堂ならではのランキングを紹介している。広告欄もあり、近隣の店やギャラリーの情報なども掲載されている。「本に関するあれこれを、店頭で立ち話する感覚で読んでもらえれば。本屋は本についての声であふれていないといけないと思う」と笈入さん。客同士の対話を演出できないかと考えている。「『あの店、小さいけどわかってる』と言われたいですね」【崔聡子】
◇「根津神社」のそばだけに
往来堂書店(東京都文京区千駄木2の47の11、電話03・5685・0807)。今年の夏は芥川賞作家の西村賢太さんが傾倒することで知られる藤澤清造の「根津権現裏」がよく売れた。まさに根津神社のそばに位置する地域だけに地元住民の関心度が高く、「同規模の店の10~15倍売れた」(笈入さん)。
毎日新聞 2011年12月7日 東京朝刊
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平成23・2011年12月4日 毎日新聞社
今週の本棚・新刊:『野蛮な読書』=平松洋子・著
晶
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(集英社・1680円)
「食べっぷり」ならぬ「読みっぷり」という言葉があるのなら、食のエッセーで知られる著者はまさに「読みっぷりがいい」読書家だ。開高健から沢村貞子、獅子文六、山田風太郎、官能小説の宇能鴻一郎、人気スタイリストのファッションエッセーまで。ジャンルをまたぐ豊穣な読書体験を、しなやかな言葉でつづっている。
行きつけの喫茶店、雪深い能登の宿、夜明け前の自分のベッド。さまざまな場所で著者は本の海に飛び込み、時を忘れる。手に取った一冊が、昔の記憶を呼び覚ます。子ども時代、布団に潜り込んで読んだ江戸川乱歩。旅先のシンガポールで夢中になった藤沢周平。著者は言う。「本は本を連れてくる」。その言葉が実感できる一冊だ。(晶)
毎日新聞 2011年12月4日 東京朝刊
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平成23・2011年11月6日 産経新聞社、産経デジタル
【書評】『野蛮な読書』平松洋子著
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【書評】
2011.11.6 07:54
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「野蛮な読書」
読書をめぐるエッセー集。まずは巻末の「この本に登場する書籍や作品」を眺めてウォームアップだ。自分も読んだ本を見つけ、その本の出てくる章から読み始めようかと思いつつ、やはり目につく第2章、「わたし、おののいたんです-宇野鴻一郎私論」。こういう読み方が「野蛮な読書」か、著者の術中に嵌(はま)ったわいと、苦笑い。
能登旅行に開高健の『戦場の博物誌』を持参した著者が、一夜、回想にふける。10歳で味わった快感がいまでも忘れられない。学校の図書館から借りた乱歩全集を布団の中でむさぼり読んだ記憶。〈冷え込む夜ほど、さっさと本を片手に布団にもぐりたくなる〉。まさに〈本に「読まされた」〉と述懐している。(集英社・1680円)
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平成23・2011年12月5日 毎日新聞社
嗜好と文化 vol.9 川瀬七緒
中村秀明
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なぜ誰もやらないの
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江戸川乱歩賞受賞作「よろずのことに気をつけよ」の扉にあった和服姿ではなく、グレーのセーターにジーンズ、チェックのストールをまとって、取材場所のホテルのラウンジに現れた。デザイナーというもう一つの顔を持つ川瀬さん。当たり前だけど、「さすがにおしゃれだな」と思った。ところが話題が進むにつれて、「おしゃれな女流ミステリー作家」の隠れた素顔が少しずつわかってくる。奥深い、そしてちょっと怖くもある話にどんどん引き込まれていった。
── 江戸川乱歩賞を受賞されて、変わったことはあります?
「自分では変わったことはありませんが、文章を書いていることは家族と一部の人を除いて、一切言っていなかったので翌日の新聞を見て、ちょっとした騒ぎになりました。デザインの仕事関係の人には、ミステリーはまったく世界が違うことなので、『どうして?』『何が起きたの?』といった反応でしたね」
「4年前に無性に何か書きたくなって、書き始めました。この4年間で20作くらい書いたでしょうか。だいたい原稿用紙800枚くらいの分量を一気に書き上げます。といっても家のこともやって、在宅でのデザインの仕事の合間を使ってです。『よろずのことに気をつけよ』は1カ月くらいかかりました」
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── ミステリーを書いていたのも驚きだったでしょうが、山里にひっそりと息づく呪術が題材というのもまさにミステリアスだったでしょうね。きっかけは何ですか?
「私は福島県白河市で生まれ育ちましたが、祖母が隣村にいて、よく遊びに行きました。昨年秋、その祖母の家で『よろずのことに気をつけよ』と書かれた祈とう念仏の紙を見つけたのがきっかけです」
「祖母の家とその周辺の山にはよく行きました。山の中で遊んでも退屈はしなかったです。神社の裏でわら人形を見つけるとか、墓場に入るのもまったく怖くなかった。そんな子でした。家族では私だけですね、こういうタイプは。妹は極度な怖がり屋ですから。」
── デザイナーとミステリー作家に共通点はありますか。
「何もないところから生み出していくこと、そして感性に頼るということでしょうか。小説を書くという作業も、私にとっては映像を文字化していくような感じなのです。だから、一気に早く書き上げないと勢いが弱まるというか、とにかく書き始めたら、先を急がないとイメージがどんどん薄まっていってしまうのです」
── デザイナーといっても子ども服のデザインですね。なぜ、そういう分野を選んだのですか?
「学校を出て、デザイナーの仕事を始めようとしたころは、子ども服にデザインという考えはありませんでした。着心地、動きやすさといった機能面ばかりに目が向けられて。『もっと可愛く、もっとカッコよくできるのに、なぜ、誰もやらないのだろう』と思ったのがきっかけです」
「誰もやっていないと感じると、じっとしていられなくなります。大人の服を子ども服にリメークするという発想、リサイクルではなくリメークですが、それを雑誌に持ち込み提案して連載にこぎつけ、最終的には本にしたこともあります。ちょっとした工夫で親も子も楽しくなるし、節約にもなるのです。その時もなぜ、誰もやらないのだろうと不思議でしたね」
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── どんな趣味をお持ちですか。
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「虫のちょっと変わった写真を撮るのが、趣味と言えば趣味でしょうか。たとえば、カマキリに寄生するハリガネムシとか。本当に針金のような虫なんです。そのハリガネムシは水辺で産卵するので最後はカマキリを水辺に誘って、カマキリの体から脱出しなければなりません。しかしハリガネムシの目的はいったい何なのか、よくわからないんですよ」
「身のまわりには見たこともない昆虫がそこらへんにいます。マンションのベランダにも。もしかしたら、まったくの新種を発見したのではないか、と思ったりします。普通のデジカメでパシャパシャ撮っています。虫にさわったり、マムシをつかんだりするのは子どものころから、まったく平気なので」
── マムシですか。もしかすると、かまれたこともあるのですか。
「マムシはありませんが、スズメバチは2回ほど。もう1回刺されると、アナフィラキシーショックで死ぬかもしれないと思っています。祖父が生物の教師だったのです。その影響で虫が好きになり、高校時代には昆虫学を学ぼうと真剣に思ったこともありました。でも、祖父から『食べていけないからやめておけ』とも言われましたし、それ以上にデザインに興味があったので、デザイナーの道に進みました」
「今は『法医昆虫学』にとても興味があります。人間の死体にどんな虫が、どんな生息状態でいるかを詳しく調べると、死因や死亡時間、あるいは殺害された場所などがわかるというものです」
── 法医昆虫学ですか、知りませんでした。
「人間の死体には、死んで何時間後にはハエがやってきて卵を産み、それからまた何時間かたつとウジがわいて、次に別の虫がやってきて、その次にスズメバチ、そしてクモといった非常に規則性のある経過をたどるのです」
「法医学の重要な分野で日本ではなじみがありませんが、森林などに遺棄死体が多く見つかる米国での研究が進んでいます。そうした外国の文献などにあたって研究しています。ちょっとグロテスクな面もあるけど、学問としてきっちりしている。非常に科学的で奥が深いですね」
── もしかすると、次の作品は法医昆虫学の研究者が主人公ですか?
「どういう形になるかわかりませんが、この分野を紹介してみたいと思っています」
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──趣味として集めているもの、長く持ち続けて捨てられないものはありますか。
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「人形が大好きで30体ぐらい持っています。人の形をしたものであれば、たとえ板きれでもいいです。今後自分で創ってみたいのは球体関節人形です。関節が球体になっているので手足を自由に曲げたり、いろんなポーズをとれるようになっていて、マニアがたくさんいますよ。人形って、そもそも何かが入っていると思うのです。そういう何かが入っていそうな人形が好きなんです」
── 「よろずのことに気をつけよ」の主人公・中澤はコーヒーに非常に詳しく、こだわりを持っていました。川瀬さんご自身の投影ですか?
「ささいなことにこだわる。呪術という人が見向きもしないものに情熱を傾け、これはということを突きつめる。そんなキャラクターをシンボリックに描くためです。私は毎日飲んでいますが、かつて 焙煎ばいせんに失敗してコーヒーの味がしないコーヒーにしてしまったくらいで、あの主人公ほどのこだわりはありません」
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── 音楽はどんなジャンルを聞きますか。
「原稿を書いている時は、クラシックを聴いているというか、必ず流しています。『よろずのことに気をつけよ』ではバッハのトッカータでした。ショパンとかの明るい曲は好きではありません。バッハ以外ではリストのラ・カンパネラとか。一つの曲を何度も何度もリプレーします。トッカータはあとで見たら3000回くらい聴いてました」
── 気分転換はどうされていますか?
「マッサージに行くことでしょうか。肩こりがひどくて、もう10年近く通っているところがあります。いつもお願いしている全盲の方が、ものすごい読書量で博学です。家族以外で私が小説を書いていることを知っている数少ない人です。『よろずのことに気をつけよ』はまだ朗読テープ録音が全部できていないので、読んでもらっていませんが、とても信頼できるお友達です。この出会いに感謝しています」
〈次回は2012年1月9日(月)・北方謙三氏掲載予定〉
川瀬 七緒(かわせ・ななお)
1970年福島県生まれ。文化服装学院卒。服飾デザイン会社に就職し、子供服デザイナーに。そのかたわら2007年から執筆活動に入り、2010年に第20回鮎川哲也賞で『静寂のモラトリアム』が、同年第56回江戸川乱歩賞で『ヘヴン・ノウズ』がそれぞれ最終候補に選ばれる。2011年、二度目の応募で『よろずのことに気をつけよ』が第57回江戸川乱歩賞を受賞。15年ぶりの女性受賞者として、今後が大いに期待される。
取材を終えて 毎日新聞社 編集編成局次長 中村秀明
「変わった人」と評するのはたやすいが、それだけではちょっと足りない。人と違う感受性や視点を持っているところが、その作品や雰囲気にも表れているようだ。「人形には何かが入っていると思う」との言葉にはドキリとした。「だから怖い」という人もいるが、川瀬さんは「だから好き」。法医昆虫学をはじめ、今後さまざまな世界を読者に描き出してくれそうだ。「川瀬ワールド」と言われる日が遠くない気がした。
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平成23・2011年12月5日 産経新聞社、産経デジタル
「乱歩」にスポット 教養講座参加者募集 名張で17日 三重
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2011.12.5 02:23
名張市教委などは17日午後2時から同市蔵持町里の市武道交流館多目的ホールで、無料の教養講座「江戸川乱歩と名張~路地の奥の幻影城主~」を開くことになり、参加者を募集している。
講師は皇学館大の三品理絵・文学部准教授。現在の名張市生まれの小説家、江戸川乱歩(1894~1965年)にスポットを当て、同市内の旧中心市街地に今も多く残る路地の風情と幻想的な作品を数多く世に送り出した乱歩の足跡との関連性などについて考察を加える。
定員100人で、参加希望者は事前の申し込みが必要。詳しくは名張市教委文化生涯学習室((電)0595・63・7892)へ。
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平成23・2011年12月4日 産経新聞社、産経デジタル
【書評】『乱歩彷徨 なぜ読み継がれるのか』『幻想怪奇譚の世界』紀田順一郎著
権田萬治
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【書評】
『乱歩彷徨 なぜ読み継がれるのか』『幻想怪奇譚の世界』紀田順一郎著
2011.12.4 10:30 (1/3ページ)
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「幻想怪奇譚の世界」と「乱歩彷徨」=28日(寺河内美奈撮影)
探偵小説嗜好を明確に反映
何よりも本を愛する紀田順一郎が出版界や書物について詳しいのは当然だが、『日記の虚実』『東京の下層社会』などの多くの著作を見ればわかるように氏の研究評論の守備範囲は非常に広い。いわば、現代の百科全書派の一人といってもいい存在である。
が、こと小説に限っていえば、氏が特に好んでいるジャンルが探偵小説であり、また、怪奇幻想小説であることは、はっきりしている。
近刊の『乱歩彷徨(らんぽほうこう)』と、『幻想怪奇譚(たん)の世界』は、その意味で、氏の独特の文学的嗜好(しこう)を明確に反映した優れた研究評論として、興味深い。
若い世代の最初の乱歩体験は、大抵の場合、名探偵明智小五郎や小林少年が活躍するジュニアものの『怪人二十面相』から始まる。そしてそこで終わってしまうか、通俗長編の『孤島の鬼』『蜘蛛(くも)男』『猟奇の果』などの方向に向かうかすることが多いように思われる。自他ともに認める『二銭銅貨』『心理試験』『押絵と旅する男』『人でなしの恋』『人間椅子』『屋根裏の散歩者』『陰獣』をはじめとする多くの名作や、評論集『幻影城』や、推理小説史に欠かせない『探偵小説四十年』などにはなかなかたどり着かないのである。
【書評】
『乱歩彷徨 なぜ読み継がれるのか』『幻想怪奇譚の世界』紀田順一郎著
2011.12.4 10:30 (2/3ページ)
かつて詩人の長谷川龍生は、乱歩体験は子供が麻疹(はしか)にかかるのと同じと語ったことがあるが、これはこういう偏った乱歩体験を指していると思われる。
『乱歩彷徨』は、こういうジュニアものや通俗ものに偏りがちな乱歩像を修正し、芸術的な潔癖さゆえに苦悩しながら、通俗的な作品にも優れた才能を発揮した作家であるとともに、ミステリーの有能な研究者であり、探偵文壇の動きの生身の記録者として偉大な足跡を残した「大乱歩」の矛盾に満ちた人と作品の軌跡を見事に浮き彫りにしている。
特に優れているのは、著者の豊かな出版に関する知識が生かされている点で、『幻影城』の初版から増補改訂された「特製限定版」などについての書誌学的な記述や、人気連載の『怪人二十面相』が1936年7月号で1回休載になったことについての二・二六事件などを踏まえた詳細な分析などは他の人ではなし得えない独創的な指摘である。
また、記述が平明でわかりやすく、しかも著者の探偵小説体験なども時折織り込まれて、全体として面白く読める内容になっている。
さて、もう一方の『幻想怪奇譚の世界』は、これまでに発表された評論、解説、翻訳などを収録したもので、興味をそそられた文章から読むことができるのが楽しい。
草双紙や口碑伝説に基づく八雲の怪談は、決して世にいう「再話小説」などでなく、優れた芸術的創作だと指摘した巻頭の「小泉八雲 怪談の背景」をはじめとする評論は、それぞれ、力がこもっているが、私には「百物語の盛衰」が百物語の今昔がうかがえて興味深かった。
【書評】
『乱歩彷徨 なぜ読み継がれるのか』『幻想怪奇譚の世界』紀田順一郎著
2011.12.4 10:30 (3/3ページ)
文庫の解説なども入っているが、その水準は評論と同じくらい高い。例えば著者の「サマセット・モーム『魔術師』解説」などは氏の書誌学的な知識が生かされて、とても有益である。中でも、新稿の「H・G・ウェルズの『宇宙戦争』」は海野十三とウェルズの宇宙人の侵略への恐怖感の対照的な違いを明確に指摘していて面白かった。
『乱歩彷徨 なぜ読み継がれるのか』(春風社・2000円)/『幻想怪奇譚の世界』(松籟社・1995円)
評・権田萬治(文芸評論家)
◇
【プロフィル】紀田順一郎
きだ・じゅんいちろう 評論家、翻訳家、小説家。神奈川近代文学館館長。昭和10(1935)年、横浜生まれ。慶応大学経済学部卒。平成20年『幻想と怪奇の時代』で日本推理作家協会賞。『紀田順一郎著作集』全8巻をはじめ著書多数。
◇
【プロフィル】権田萬治
ごんだ・まんじ 昭和11年、東京生まれ。東京外国語大学フランス語科卒。日本新聞協会を経て専修大学教授、ミステリー文学資料館館長を歴任。51年『日本探偵作家論』で日本推理作家協会賞、平成13年『日本ミステリー事典』共同監修で本格ミステリ大賞。『現代推理小説論』ほか著書多数。
◇
【プロフィル】江戸川乱歩
江戸川乱歩(1894~1965年)は小説家で推理小説専門の評論家。三重県生まれ。早稲田大学政経学部卒。推理小説の祖、エドガー・アラン・ポーをもじった筆名。日本推理作家協会初代理事長。
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紀田順一郎
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権田萬治
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江戸川乱歩
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CHUNICHI BOOK WEB
平成23・2011年12月4日 中日新聞社
乱歩彷徨[著者]紀田順一郎 開拓者としての矜持と苦悩
郷原宏
Home > 書評 > 記事
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■書 評
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[評者]郷原 宏 (文芸評論家)
■開拓者としての矜持と苦悩
これまでに書かれた江戸川乱歩論は本になったものだけでも三十冊を下らないが、その多くはいたずらにペダンチックなマニア向けの研究書か、さもなければ乱歩作品をダシにした都市論や風俗論といった類のもので、まともな作家論は意外に少なかった。
その点、本書は国産探偵小説の開拓者としての乱歩の苦悩と彷徨(ほうこう)を「なぜ読み継がれるのか」(副題)という観点から追究した、すぐれて文学的な作家論である。
本書のモチーフは「あとがき」の次の一節に尽くされている。
「いまや乱歩は、若い世代には二十面相、明智(あけち)小五郎、少年探偵団、一寸法師、黄金仮面、黒(くろ)蜥蜴(とかげ)、人間豹(ひょう)などのキャラクターの原案者として親しまれている。…つまり、現在通用している乱歩は乱歩そのものではなく、“記号としての乱歩”なのである」
しかし、乱歩自身は『探偵小説四十年』『わが夢と真実』など自伝的なエッセーのなかで、創造的な新文学としての初期短編とそれ以後の通俗的な長編や少年物を峻別(しゅんべつ)し、後者(つまり「記号」的な作品)に対して厳しすぎるほどの自己評価を下している。
従来の論者は、それを乱歩の潔癖な性格に帰すことが多かったが、紀田氏はそこに、自分のめざす本格的な作品が書けなくなったあとでも、なお開拓者としての評価を維持しようとした乱歩の苦心を見る。
乱歩が生涯を通じて探偵小説の「定義」にこだわりつづけたのはそのためであり、その「コード」に対する忠実さにこそ、乱歩が戦前戦後という価値観の異なる二つの時代を生き抜いた秘密があるという。
戦時下の少年時代に『怪人二十面相』を読んだというリアルな乱歩体験と豊かな書誌学的知識に裏打ちされたこの作家論には、乱歩を「記号」から解き放って生身の「人間」に変えるだけの熱量と説得力がある。
きだ・じゅんいちろう 1935年生まれ。評論家・作家。著書に『幕末明治傑物伝』『古本屋探偵の事件簿』『幻想と怪奇の時代』など。
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毎日jp
平成23・2011年12月3日 毎日新聞社
江戸川乱歩:「幻の故郷」に迫る 皇学館大准教授、17日講座で解説──名張 /三重
広瀬晃子
Home > 地域ニュース > 三重 > 記事
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江戸川乱歩:「幻の故郷」に迫る 皇学館大准教授、17日講座で解説--名張 /三重
◇路地の迷宮…心の旅 作品彩る、記憶なき名張--皇学館大准教授、地元講座で解説
名張出身の小説家、江戸川乱歩をテーマにした教養講座が17日午後2時、市武道交流館いきいき(同市蔵持町里)で開かれる。生後のわずかな期間しか過ごさず、乱歩にとって見知らぬ故郷の名張。作品にも登場する「路地」「幻影」をキーワードに、名張の町が乱歩文学に与えた影響について、三品理絵・皇学館大准教授が解説する。【広瀬晃子】
乱歩は1894年、旧名張町に生まれた。しかし父親の転勤のため、わずか1年足らずで亀山に転居。名張で暮らした記憶はなく、57歳でようやく帰郷した。1955年、同市新町の生家跡に建てられた生誕地碑(後に移設)には「幻影城」「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」との自筆が刻まれた。除幕式には乱歩夫妻も参列したという。65年没。
三品准教授は、文学部国文学科の教員で、近代日本文学が専門。名張が持つ独特の風情が作品に色濃く反映されている点に着目している。
名張の地名は「隠れ」「こもる」という意味があり、幻想の世界にずっとこもっていたいという乱歩の願望に結びつく。乱歩作品に度々登場する路地。旧名張町の趣を残す名張地区では「ひやわい」と呼ばれ、乱歩時代をしのばせる。
講座では、「押絵と旅する男」「幻影の城主」など幻想小説の一部を紹介。作品と「記憶にないはず」の名張との不思議な関係にスポットを当てる。
定員100人。無料。申し込みは電話かファクス、メールに名前と連絡先を書いて、市教委文化生涯学習室(0595・63・7892、ファクス同63・9848、Eメールsyougaigaku@city.nabari.mie.jp)へ。
〔伊賀版〕
毎日新聞 2011年12月3日 地方版
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平成23・2011年12月3日 朝日新聞社
横溝ワールド、コスプレで案内
Home > マイタウン > 岡山 > 記事
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2011年12月03日
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■「文庫本手に、ぜひ真備へ」/ファン歴40年、笠岡在住の網本さん
倉敷市真備町で開催中の横溝正史没後30年イベントで案内役を務める「岡山の金田一耕助」がいる。笠岡市職員の網本善光さん(51)。金田一のコスプレ姿で登場し、「40年来のファン」を自負する横溝作品の魅力を伝えている。
「私、金田一が皆さんをご案内します」
イベントの初日、全国から金田一のコスプレをして集まった横溝ファン約50人の先頭に立ち、金田一が初登場した「本陣殺人事件」のモデルになった真備町内を案内した。11月26日のトークショーでは、推理作家の有栖川有栖さんらと作品世界について語り合った。
映画「獄門島」(1977年)の冒頭シーンで、石坂浩二演じる金田一が船に乗り込む笠岡港。自宅はその倉庫街の一角にある。9年前、このロケ地が売り出されたことを知り、妻を説得して買い求めた。
金田一に夢中になったのは中学1年の時。最初に手にした「八つ墓村」でサスペンスに引き込まれ、寝るのも忘れて一気に読んだ。出る本を次々に読破し、探偵・由利麟太郎シリーズなども含めて全巻を高校卒業までに読み終えた。その後も古書店で初版本などを求め、横溝作品の蔵書は約200冊になる。
小学3年で江戸川乱歩の少年探偵団シリーズに魅せられて以来のミステリーファン。国内外約3千冊のミステリーを読んできた。
「中盤がだれる作品は、エラリー・クイーンやアガサ・クリスティら大家にもあるが、横溝には一作もない。無数のドラマで読者をあきさせない横溝の手法は、昔の紙芝居と同じ。稀有(け・う)のストーリーテラー」
笠岡市では総務課参事として条例づくりなどを担当する。一方で、旧真備町時代から金田一を活用した町おこしに協力。作品のモデルとなった場所をたどるルート作成などにかかわり、これまでも折にふれ、金田一のコスプレ姿で案内役を務めてきた。
金田一が活躍する小説は77作あり、うち13作の舞台が岡山だという。
「岡山は金田一ファンの憧れの地。中でも、横溝が戦時中に疎開し、金田一を生み出した真備町は、当時と変わらぬ風景と人情が残り、小説の世界に浸れる。ぜひ文庫本を手に訪れてほしい」(鈴木裕)
■作品の舞台紹介/網本さんの紀行文、出版
網本さんの「岡山ぶらりスケッチ紀行」(岡山文庫、860円)が出版された。「悪魔の手毬唄(て・まり・うた)」や「獄門島」などの横溝作品を読んでモデルとなった場所を推定。漫画家の南一平さん=笠岡市=とともに訪れ、その紀行文などをまとめている。
「八つ墓村」の映画ロケ地なども訪問。思い入れたっぷりの網本さんの文と、南さんの風景画が楽しい。
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