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平成23・2011年12月1日 朝日新聞社
迷い捨て歩む染五郎 曽祖父襲名百年記念「十二月歌舞伎公演」
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遠藤真梨撮影
堂々たる芸風と進取の気性で歌舞伎界を牽引(けんいん)した七代目松本幸四郎の襲名100年を記念する「十二月歌舞伎公演」が7日、東京・日比谷の日生劇場で幕を開ける。出演はひ孫の市川染五郎、尾上松緑、市川海老蔵。「高麗屋」を継ぐ染五郎は、「同じ血を引く同世代の僕ら3人が比較され、競い合う。意気込みも格別」と覚悟を語る。
七代目は長男が十一代目団十郎、次男は初代白鸚、三男が二代目松緑。現代歌舞伎の文字通り父祖であると同時にオペラや翻訳劇にも出演し、後進に影響を与えた巨人だ。
「伝説の人の血を引く重みは、常に意識にある」と染五郎。昼の部では七代目襲名以来100年ぶりという「碁盤忠信」に、大幅に手を加えて挑む。「今、演劇として面白くなければ。復刻版は好きじゃない」。背景には劇団☆新感線への出演や江戸川乱歩の歌舞伎化など縦横に挑み続けた自負がある。「役者として人として、新たなものに興味を持ち挑みたいと思うのは、極めて健全じゃないのかな」
催事
横溝正史生誕地碑建立7周年記念イベント
平成23・2011年11月26日
東川崎地域福祉センター(兵庫県神戸市中央区東川崎町5-1-1)
主催:東川崎ふれあいのまちづくり協議会、神戸探偵小説愛好會
続・横溝正史と江戸川乱歩
講師:中相作
ゲスト:横溝亮一
催事
妖しの世界への誘い──谷崎・乱歩・横溝
平成23・2011年10月1日(土)-12月25日(日)
芦屋市谷崎潤一郎記念館(兵庫県芦屋市伊勢町12-15)
秋の特別展
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ミステリー講座
第1回「横溝正史・人と作品~神戸から」
10月23日(日)
講師:野村恒彦(神戸探偵小説愛好会代表)
第2回「谷崎と探偵小説の作家たち~乱歩を中心に~」
11月6日(日)
講師:戸川安宣(東京創元社相談役)
第3回「父・横溝正史の思い出」
11月27日(日)
講師:横溝亮一(横溝正史長男)
▼芦屋市谷崎潤一郎記念館:Home
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コミックナタリー
平成23・2011年11月30日 ナターシャ
藤原カムイ、水谷フーカらの「週刊マンガ世界の偉人」創刊
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2011年11月30日 18:53
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週刊マンガ世界の偉人創刊号は水谷フーカが描くエジソン。(C)Fuka Mizutani/Asahi Shimbun Publications Inc.
歴史上の偉人の生涯をマンガにして描く雑誌、週刊マンガ世界の偉人が、2012年1月17日に朝日新聞出版より創刊される。
週刊マンガ世界の偉人は、世界を動かした偉人50人を、毎号1人ずつオールカラーで描く子供向けの週刊誌。毎号、藤原カムイが描き下ろした「世界史人物カード」が9枚付いてくる。
創刊号のエジソンを担当するのは、「楽園 Le Paradis [ル パラディ]」などで活躍中の水谷フーカ。今後、3号のレオナルド・ダ・ヴィンチを藤原カムイが、12号のアイルトン・セナを六田登が、16号のガリレオを福山けいこが、37号のキュリー夫人をTOBIが、41号のエリザベス1世を美樹本晴彦が、50号のチェ・ゲバラを安彦良和が担当する予定だ。
第2号の付録には「世界史人物カード」専用のバトルスタンドが付いてくるほか、1号から10号に付いてくる応募券を集めた人には、全員に特製クリアファイルと偉人シールがプレゼントされる。また創刊号と同時に、週刊マンガ世界の偉人を17冊収納できるボックス型専用クリアファイルや、「世界史人物カード」全450枚を保存できるホルダーが発売となる。創刊号は特別定価180円で、2号以降は定価490円。毎週火曜日に刊行される。
偉人ラインナップと執筆マンガ家
1号:エジソン(水谷フーカ)
2号:マザー・テレサ(風屋カズヤ)
3号:レオナルド・ダ・ヴィンチ(藤原カムイ)
4号:坂本竜馬(伊藤伸平)
5号:モーツァルト(浦地コナツ)
6号:クレオパトラ(ねこだす)
7号:アインシュタイン(大井昌和)
8号:マイケル・ジャクソン(竹谷州史)
9号:織田信長(日本橋恵太朗)
10号:コロンブス(谷口敬)
11号:ガウディ(今谷鉄柱)
12号:アイルトン・セナ(六田登)
13号:宮沢賢治(山崎浩)
14号:キリスト(馬場民雄)
15号:諸葛孔明(沢田一)
16号:ガリレオ(福山けいこ)
17号:マルコ・ポーロ(佐藤ヒロシ)
18号:手塚治虫(甘夏柑子)
19号:ナポレオン
20号:ピカソ(大富寺航)
21号:チャップリン(ねこだす)
22号:松下幸之助(ヱビスヤ)
23号:アンナ・パブロワ
24号:スティーブ・ジョブズ(小林たつよし)
25号:ベートーベン(楠美マユラ)
26号:江戸川乱歩(水原賢治)
27号:ヘレン・ケラー(逸架ぱずる)
28号:ブッダ(おおのじゅんじ)
29号:ダーウィン(颯田直斗)
30号:シェイクスピア(二星天)
31号:ジャンヌ・ダルク(桑原草太)
32号:本田宗一郎(城爪草)
33号:チンギス・ハン(結賀さとる)
34号:リンカーン
35号:アガサ・クリスティ(キムラダイスケ)
36号:植村直己
37号:キュリー夫人(TOBI)
38号:キング牧師
39号:ナイチンゲール(桑原晶)
40号:ライト兄弟(いわさき砂也)
41号:エリザベス1世(美樹本晴彦)
42号:円谷英二(樋口大輔)
43号:ファーブル(ふる鳥弥生)
44号:グリム兄弟(雪広うたこ)
45号:アレクサンダー大王(イセダイチケン)
46号:安藤百福
47号:ガンディー
48号:ガガーリン(九条友淀)
49号:アンネ・フランク(TNSK)
50号:チェ・ゲバラ(安彦良和)
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26号:江戸川乱歩(水原賢治)(C)Kenji Mizuhara/Asahi Shimbun Publications Inc.
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平成23・2011年12月1日 メディアジーン
江戸川乱歩『パノラマ島綺譚』の舞台は恋人の聖地だった!? プロポーズにうってつけの島・三重県鳥羽市神島
六島京
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江戸川乱歩『パノラマ島綺譚』の舞台は恋人の聖地だった!? プロポーズにうってつけの島・三重県鳥羽市神島
掲載日時:2011.12.01 12:00
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photo by
国土画像情報(カラー空中写真)
国土交通省
ミステリファンなら誰もが読んだことのある、江戸川乱歩の作品『パノラマ島綺譚』。
富豪の菰田源三郎(こもだげんざぶろう)と瓜二つの小説家、人見広介(ひとみひろすけ)は、源三郎が亡くなったのを良いことに、彼になりすまし、菰田家の莫大な財産で、M県のI湾に浮かぶ沖の島に夢のパノラマ島を作り上げます。ところが、2人が入れ替わったことに、源三郎の妻、千代子が気づき始め――。
という物語です。めくるめく狂気と幻想の世界に、読者はいとも簡単に引きずり込まれることでしょう。
パノラマ島のモデルとなった島は、三重県鳥羽市のミキモト真珠島と言われてきました。しかしこの程、「モデルになったのはミキモト真珠島ではなく、同じく三重県鳥羽市の神島ではないか」という新説が唱えられました。
新説を打ち出したのは、鳥羽市在住の作家、岩田準子さん。準子さんの祖父は江戸川乱歩と親交のあった風俗研究家の故・岩田準一氏で、ミキモト真珠島説は準子さんの父親の故岩田貞雄氏が唱えたもの。準子さんは「父の説を覆すのは忍びないが、誤りを正したい」と話していたそう。
さて、新たなパノラマ島である神島ですが、三島由紀夫の小説『潮騒』の舞台だったこともあり、「恋人の聖地」としても有名なんです。
NPO法人地域活性化支援センターでは「少子化対策と地域の活性化への貢献」をテーマとした『観光地域の広域連携』を目的に「恋人の聖地プロジェクト」を展開しているとのこと。
2006年4月1日より、全国の観光地域の中からプロポーズにふさわしいロマンティックなスポットを「恋人の聖地」として選定しているのだそう。
神島の八代神社でお参りをし、海の幸で舌鼓。神島灯台で潮風に吹かれ、青い海と空に抱かれながら愛を語り合う。何ともステキなデートスポットですね。パノラマ島の狂気と幻想の世界はどこへやらです。
ミステリの舞台が恋人の聖地......何だか対極にありますが、カップルは1度訪れてみてはいかがでしょうか?
(六島京)
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日本経済新聞
平成23・2011年11月27日 日本経済新聞社
乱歩彷徨 紀田順一郎著 作家人生を貫く壮大なトリック
有栖川有栖
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2011/11/27付
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(春風社・1905円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
傑作を書きたい。作家なら誰でもそう希望するが、その先の夢あるいは欲望には、個人差が出る。大勢に読まれたい、永く読まれたい、深く読まれたい(評論の対象となり、熱烈な愛読者を作りたい)など。
わが国における「探偵小説の父」と称される江戸川乱歩は、眼高手低(志は高いが実力が伴わない)と自作に対して厳しい見方を表明していたが、作家の夢・欲望をほぼすべてかなえたのではあるまいか。
本邦初の探偵作家=パイオニア。異端の文学者。臆面もなく通俗的な大衆作家。児童ミステリーの大御所。海外ミステリーの優れた紹介者にして研究家。探偵雑誌の編集者。現在の日本推理作家協会の創設者にして推理文壇の長。そして、驚異的なロングセラー作家。江戸川乱歩はいくつもの顔を持つ。探偵小説史の記録者としての功績も大きい。
これほど存在感の大きな探偵作家(今日風に言うとミステリー作家)は、もう現れまい。その作品が無類の面白さを有しているためだが、開拓者という特権的地位が揺るがないことも少なからず影響している。
と、ここまでは広く理解されてきた。「なぜ読み継がれるのか」を副題にした本書は、幾度もスランプに悩まされた乱歩の軌跡を追いつつ、まぶしいばかりの成功の秘密について精緻に検証をして、新しい乱歩像を私たちに提示してみせる。
その成功は、乱歩自身の計画・戦略にもとづいて成し遂げられた。探偵小説がいかなるものかというコード(基準ないし綱領)をいち早く明らかにし、自分の文学史上の位置付けを行い、どの作品を「殿堂入り」させてどの作品を切り捨てるかといった「ほかの作家なら、まず絶対にしない作業」を行った、と著者は見る。
乱歩の作家人生を貫く壮大なトリックがあったのだとしたら、見抜いた著者は名探偵ということになりそうだ。初出誌にあたって『怪人二十面相』休載の隠された事情を掘り起こすなどの発見もあり、乱歩ファンもミステリーファンも必読の一冊である。
(作家 有栖川有栖)
[日本経済新聞朝刊2011年11月27日付]
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平成23・2011年11月26日 朝日新聞社
「少年探偵団」主題歌の効果
福島礼子
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カフェ日和
2011年11月26日
◇◆エッセイスト 福島礼子◆◇
「ぼっ、ぼっ、僕らは少年探偵団」。私の世代にとっては、とても懐かしいフレーズだ。白黒テレビが普及し始めた昭和30年代、江戸川乱歩原作の「少年探偵団」は、待ち遠しい番組だった。名探偵・明智小五郎と助手の小林芳雄少年が、次々と事件の謎を解いていく小気味良さに、私は夢中になったものだ。
江戸川乱歩(1894~1965)、本名平井太郎は、三重県と縁が深い。名張で生まれ、父親の転勤に伴って一時亀山で過ごし、長じて鳥羽造船所に数年勤務した。平井家には江戸時代初期、見初められて藤堂高次公の正室となった女性がおり、その縁で弟に禄がつき、乱歩の祖父の代まで藤堂家の藩士であった。調べたがり屋の乱歩はこの事実を見いだし、祖先が武功でなく女の力で出世したことを「面白くない」と書いている。
私は「フィルム文学館」という番組を担当し、三重ゆかりの作家を紹介している。ナツメ家の龍之介青年があれこれ思案し、朗読と解説を交えて進行していく内容だ。今月の対象は乱歩。番組の最後は、猫のナツメが「ぼっ、ぼっ……」と口ずさみながら画面から去っていくシーンにした。ナツメの声を担当する若いナレーターは、この主題歌を知らない。私が繰り返し伝授し、撮影は無事終わった。
「屋根裏の散歩者」や「人でなしの恋」など、乱歩独特のちょっと怖い世界をどう表現するか。試行錯誤の撮影後、車内では軽い疲労と満足感があった。カメラマンがポツリといった。「『ぼっ、ぼっ……』は、妙に頭に染みつきますね」。なるほど、コンビニから車に戻る私は、無意識にフレーズを口ずさんでいた。もしかしたら、これも怪人二十面相の仕業?
◎「乱歩編」は、ケーブルネット鈴鹿で月末まで放映。乱歩の資料は名張市立図書館と鳥羽みなとまち文学館が充実しています。
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ゲンダイネット
平成23・2011年11月24日 日刊現代
「少年少女ミステリ美術館」森英俊、野村宏平編著
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【書籍・書評】
2011年11月24日 掲載
<読書の楽しみを教えてくれた児童ミステリの世界>
まだ年号が昭和だったころに子供時代を過ごした世代の多くにとって、小中学生を対象に刊行された「ジュニア・ミステリ」は、読書の豊穣な世界へと導いてくれたまさに思い出の書ではなかろうか。
本書は、昭和20年代から昭和末期までに各出版社から発売された往年の「ジュニア・ミステリ」シリーズの表紙を一堂に集めた紙上美術館だ。
第1展示室に並ぶのは、その高い人気で不動のビッグ3とも呼ぶべき江戸川乱歩の「少年探偵シリーズ」、コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ・シリーズ」、モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン・シリーズ」。
少年探偵シリーズは、昭和11年「怪人二十面相」でスタートするが戦争で中断、24年に「青銅の魔人」の連載が始まり復活する。26年から「少年探偵 江戸川乱歩全集」として順次刊行が始まった単行本の表紙を飾る主人公「小林少年」のさまざまな表情(松野一夫絵)がなんとも時代の雰囲気を伝える。
第2展示室には、朝日ソノラマ「サンヤング・シリーズ」(昭和44~47年)など、ジュニア・ミステリ史に残る名作の数々を取り上げる。あかね書房の「少年少女世界推理文学全集」(昭和38~40年)の箱のイラストには横尾忠則らが起用され、デザイン性が高いモダンな装丁が今見ても斬新だ。
その他、全集以外の単行本を集めた第3展示室、そしてお菓子の景品や雑誌の付録などの関連本を紹介する第4展示室まで。いつのまにか手元からなくなってしまった本たちとの再会に、さまざまな思い出が蘇ることであろう。
(平凡社 3800円)
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平成23・2011年11月25日 朝日新聞社
「割り算の文学」追求 土屋隆夫さんを悼む 有栖川有栖
有栖川有栖
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2011年11月25日10時45分
土屋隆夫さんがお亡くなりになった。享年94。日本推理小説界の最長老だった。
大学時代、推理小説研究会に所属していた私は、部内でこんなことを言い合ったのを思い出す。
「推理作家はバリバリ書かないと読者に忘れられる、なんて嘘(うそ)だ。何年ブランクが空いても、土屋隆夫を忘れることは考えられない。新作を待つのも楽しみのうちだ」と。
土屋さんは、1949年に短編「『罪ふかき死』の構図」が「宝石」誌のコンクールに入選してデビューして以来、郷里の長野県佐久市で中学教諭をしながら本格推理小説を書き続けた。最後の作品となった『人形が死んだ夜』は90歳の時の作品で、その作家人生は58年に及ぶ。しかし、兼業作家であり、高い質を追求したために寡作だった。
地方在住の作家が背負ったハンデは、今では想像しにくい。かつてご本人が「大阪だったらいざ知らず、地方で専業作家は無理だった」と笑いながら話すのを伺った。
ハンデといえば、土屋さんがデビューした後、社会派推理小説が席巻し、人工的な謎解きを盛った本格推理は退潮期に入るが、土屋さんは作風を曲げようとせず、信じた道を歩んだ。本格推理ファンには心強いかぎりだった。
根底に遊戯精神を持つ推理小説は文学たり得るか? 江戸川乱歩は至難だとした上で、遊びにすぎなかった俳諧を芸術に高めた芭蕉のような天才がいつか現れることを希望した。それを読んで推理作家を志した土屋さんの作風は、「トリッキーで、かつロマンティシズム漂う抒情(じょじょう)的な本格推理」と評される。
「私論・推理小説とはなにか」では、「推理小説は割り算の文学」であり、事件÷推理=解決で、剰余があってはならない、と唱えた。また、発案したトリックが実行可能かどうか実験して書くのを常としたが、身代金受け渡しの方法については実行できるから書くのをやめた、といった伝説的エピソードもある。
作者が永遠の眠りに就こうと、作品は私たちから去らない。『危険な童話』『影の告発』『針の誘い』といった傑作の数々は、これからも永(なが)く読み継がれていくことだろう。
◇
ありすがわ・ありす 1959年生まれ。本格ミステリ作家クラブ初代会長。土屋隆夫とともに鮎川哲也賞の選考委員を務めた。近刊に『真夜中の探偵』など。
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平成23・2011年11月24日 朝日新聞社
育て!新人賞作家 出版社の戦略、あの手この手
中村真理子
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2011年11月24日10時41分
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今年の江戸川乱歩賞贈呈式。女性2人の受賞者を選考委員が囲む
作家になる大きな一歩は新人賞の受賞。全国の公募の新人賞は100を超え、毎年大量の新人作家が生まれている。しかし、専業作家として食べていける人は、ひと握り。デビューより、作家であり続ける方が難しい。息の長い作家は、どうしたら生まれるのか。
「昨日の会議でさあ、新人賞の歩留(ぶどま)りの話が出たんだ」。「新人賞の歩留り?」と尋ねる後輩に伝説の編集者は答える。「うちの新人賞でデビューした作家のうち、何パーセントが会社を儲(もう)けさせる作家に成長したかってことだ」
「小説すばる」11月号に掲載された、東野圭吾の「戦略」は新人作家を売り出すため、編集者があれこれ作戦を立てるユーモラスな短編だ。小説の題材になるくらい、新人賞の「その後」は、作家にも出版社にも課題なのだ。
■勢い続かぬ次作
受賞作なしだった今年の「ミステリーズ!新人賞」(東京創元社)では、貫井徳郎選考委員が選考経過の報告で「ミステリーが好きというより、どの賞でもいいから小説家になりたいという人が多いような印象だった」と語った。「殺人事件が解決したらミステリー? 違います。伏線がないのに『犯人はあなたです』というのもミステリーの作法がわかっていない」
10件ほどの新人賞で選考に携わる文芸評論家の池上冬樹さんも「1本なら偶然、良い作品が書けることもある。しかし、次作で編集者に書き直しを命じられると壁にぶつかったり、また別の賞に応募したり、さまよう人が多い」と言う。
■2年かけ見極め
息の長い作家を育てるため、賞とは別の形で新しい才能を見つけられないか。そんな思いから「別冊文芸春秋」(文芸春秋)は「新人発掘プロジェクト」を始めた。「これぞと思った方には最長2年間、担当編集がつきます」が売りだ。賞金はない。
「2年」は書き直し前提だから。1人2編まで応募できるのも数を書ける「体力」を見たいとの理由だ。「応募作の欠点をつくより、新人とじっくりつきあって才能をすくい上げたい」と吉田尚子編集長。
こうした試みは、かつてあった原稿持ち込み方式に近い。1990年代半ばにできた「メフィスト賞」(講談社)も、編集者が原稿を読み、面白かったら本にするという持ち込み方式のような新人賞。00年代に辻村深月、西尾維新ら人気作家を出している。
■小説講座で特訓
作家の底力をつけさせようと、デビュー前からつきあう動きはほかにもある。「小説野性時代」(角川書店)は7月号から、大沢在昌が講師を務める「誌上小説講座」を始めた。「書きたい人はたくさんいる。しかし、書き方はなかなか教えてもらえない」と三宅信哉編集長。応募原稿から生徒12人を選び、毎月、小説の書き方を学ぶ。大沢さんは「優れた受賞第一作をすばやく出せなければ、生き残ることは難しいでしょう」と生徒に説く。
今年の小説現代長編新人賞(講談社)を受賞した山形県の吉村龍一さんは、小説講座育ちだ。97年にできた「小説家(ライター)になろう講座」に10年前から通い、今は代表を務める。
吉村さんは講座で「毎日書くことの大切さ」を学んだという。自信満々で提出してもめった斬りにあう。先にデビューされて悔しがったり、励まされたり。「ひとりだと続かなかったかもしれない。講師の作家や編集者に読まれて自分のレベルがわかり、刺激にもなった」。この講座からは4人がデビューし、プロとして書き続けている。「開花時期は人によって違う。しっかりと根を作ることが必要です」と講師兼世話役の池上さんは話す。
作家志望者が足腰を鍛える小説講座は、丹羽文雄の「文学者」や、富士正晴、島尾敏雄らの「VIKING」など、かつての同人雑誌が果たしていた機能と似ている。切磋琢磨(せっさたくま)が底力をつける。今も昔も変わらないのだろう。(中村真理子)
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