文春オンライン
平成30・2018年3月29日 文藝春秋
友近「江戸川乱歩の世界観を笑いで表現したい」|この人のスケジュール表
Home > エンタメ > 記事
「週刊文春」編集部
2018/03/29
友近「江戸川乱歩の世界観を笑いで表現したい」
この人のスケジュール表
source : 週刊文春 2018年4月5日号
genre : エンタメ, 芸能, アート
■Photo■友近さん■
お笑い芸人の友近さんが、自らの原点である〈笑い〉の単独ライブを約2年ぶりに開く。『友近コントライブ 友近ワイド劇場』と銘打って、東京、大阪、高知、名古屋、福岡、仙台を2カ月かけて廻る。
「今回の世界観は江戸川乱歩。子供のころにテレビの2時間ドラマで乱歩作品の世界に魅せられました。天知茂さんや小川真由美さんといった俳優も独特の雰囲気で。あの妖しい世界を笑いで再現したい」
チラシのビジュアルは黒蜥蜴ならぬ黒いカエルの影のなかに、友近さん扮するヒロインの姿が浮かび乱歩世界を彷彿とさせる。共演者には、バッファロー吾郎A、ロバートの秋山竜次、ハリセンボンの近藤春菜、渡辺直美、飯尾和樹など、売れっ子がズラリ。
「実際に芸を拝見してピンときた人にオファーしています。ずんの飯尾さんは事務所が違うのですが、今回で3回目ですし、初参加のシソンヌじろうさんも、劇場でネタを見て共通の感性があるな、と(笑)」
過去のライブでは秋山さんと組んだ予備校教師、近藤春菜さんと組んだ奇妙なカップルのネタなどが傑作だった。
「2人で演じるコントは、まずこんな設定でやりたいと提案し、お互いアイデアを出して膨らませていく。合作です」
出身地の四国には、単独ライブとしては初凱旋になる。
「土地によって反応が違うのもライブの魅力。高知での公演がいまから楽しみです」
INFORMATION
『友近コントライブ 友近ワイド劇場』
東京・よみうりホール4月8日と5月20日。大阪・なんばグランド花月4月25日。高知市文化プラザかるぽーと大ホール4月29日 など
http://news.yoshimoto.co.jp/2018/02/entry79632.php
怪人二十面相 上巻
たくま朋正
原作:江戸川乱歩
平成30・2018年3月10日初版 ワニブックス ガムコミックスプラス
B6判 カバー 143ぺージ 本体640円
怪人二十面相
初出:COMIC GUM 平成29・2017年7月─12月更新
▼ワニブックス:怪人二十面相 -少年探偵シリーズ- 上巻
毎日新聞
平成30・2018年3月28日 毎日新聞社
自主公演|新派「怪人二十面相」
小玉祥子
Home > カルチャー > 紙面掲載記事 > 芸能 > 記事
自主公演
新派「怪人二十面相」
毎日新聞2018年3月28日 東京夕刊
■Photo■(左から)春本由香、貴城けい、喜多村緑郎、河合雪之丞、齋藤雅文■
歌舞伎界から新派入りした喜多村緑郎と河合雪之丞が、「怪人二十面相~黒蜥蜴二の替わり~」(江戸川乱歩原作、齋藤雅文脚色・演出)を自主公演で30日~4月1日、東京・サンシャイン劇場で上演する。
緑郎の明智小五郎、雪之丞の黒蜥蜴で昨年6月に上演された新派公演「黒蜥蜴」は好評で、今年6月の再演も決まった。今回の自主公演も好評を受けての企画となる。
乱歩の「怪人二十面相」と「幽霊塔」に着想を得たオリジナル作品。設定は「黒蜥蜴」の10年前。緑郎の明智、雪之丞の二十面相だ。
緑郎の妻の貴城けいがレビュースター花菱蘭子役で出演してのショー場面もあり、新派期待の娘役春本由香が誘拐される富豪令嬢役で参加するなど本公演顔負けの豪華な舞台となる。
「自主公演ですが、本公演に勝るものになっています」と緑郎。雪之丞は「自主公演をすることで成長できるものがあるのではと思います」と話している。問い合わせは0570・000・489。【小玉祥子】
4月になりました。
きのうはきのうを最後に閉店となる大型商業施設、近鉄プラザ桔梗が丘に足を運んで地元資本の本屋さんであるブックスアルデ近鉄店も覗いてみたのですが、これ買っとこ、と思う本が一冊もありませんでした。しばらく前から新刊を並べなくなっていたのか、角川文庫の2月の新刊『ドラコニアの夢』も近鉄店には入ってなくて、市内瀬古口にある本店に入荷していたのを近鉄店まで運んでもらい、それを受け取りにゆくという仕儀となりました。
ことほどさように名張市ではいろいろ終わりつつあるわけですけど、市内にあった三重県立名張桔梗丘高校というのもこの3月で閉校となり、その吹奏楽部OBによる演奏会が市内の会場できょう催されます。
ちょっとした義理から、聴きに行かにゃなりません。
ほんとにあれこれ寂しい話ですけど、いまから二十四年前に放映された鮎川哲也原作のテレビドラマ、まだ活気があった名張のまちも出てきますので、ご参考までにお知らせしておきたいと思います。
いっぽう例のものは、おかげさまで一位をキーブしております。
▼Amazon.co.jp:作家研究 の 売れ筋ランキング
商品は出回ってるらしいんですけど、版元に代送を依頼してある献本、まだ届いてはいないみたいな感じで、まあ自転車に乗った小さな出版社のことですから、多少のことは大目に見てやっていただきたいなと思います。
ドラコニアの夢
澁澤龍彦
編:東雅夫
平成30・2018年2月25日初版 KADOKAWA 角川文庫20785
A6判 カバー 248ページ 本体560円
江戸川乱歩『パノラマ島奇談』解説
p114─118
初出:パノラマ島奇談(角川書店 角川文庫 昭和49・1974年7月30日)*初出タイトル「解説」
底本:澁澤龍彦全集13 河出書房新社 平成6・1994年6月15日
▼KADOKAWA:ドラコニアの夢
いや、二位でも三位でも、何位だっていいと思いますよ。
人間、何位につけていようと、堂々と胸を張って生きることが大事なんじゃないでしょうか。ま、私はいまんとこ一位ですけど。
▼Amazon.co.jp:作家研究 の 売れ筋ランキング
わは。
わはわは。
さて、3月もきょうでおしまい。
拙宅にほど近い大型商業施設、近鉄プラザ桔梗が丘もきょう31日を最後に閉店となります。
何もかも終わってしまう感じですけど、お役所のみなさんとの愉快なおつきあいは終わりません。
さっそく行きます。
▼2018年3月16日:心から安堵したことについて
▼2018年3月21日:転落から低迷へ
▼2018年3月29日:当地も桜の季節です
つづきです。
お世話さまです。
3月19日付「市長への手紙」に対する3月27日付ご回答、ありがたく拝受いたしました。
しかしながら、毎度同じお願いばかりくり返してまことに恐縮ではありますが、どうかまともなお答えをお願いいたします。
質問したことにちゃんとお答えいただかないと、いつまでも同じ質問をつづけることになります。
したがいまして、再質問です。
3月5日付「市長への手紙」で名張市立図書館によるネーミングライツパートナーの募集についてお聞きしたところ、3月15日付ご回答で「再募集については今後の検討課題としました」とお教えいただきました。
そこで、3月19日付「市長への手紙」で、「再募集に関する検討がいつ、何回にわたって、誰によって行われ、どういった情報が収集されているのか、さらに、現時点でどのような検討結果が得られているのか、ぜひご説明いただきたいと思います」とお願いしましたにもかかわらず、3月27日付ご回答にまともなお答えはいっさい記されておりませんでした。
もしかしたら、あれも、これも、と一度にお聞きしたことがいけなかったのかもしれない、と思いあたりましたので、とりあえず一問だけ、再質問することにいたします。
名張市立図書館のネーミングライツパートナー再募集に関する検討は、いつ、誰によって行われたのか、お教えください。
よろしくお願い申しあげます。
週明けに、「まともなお答えをお願いします」とでも題して、例のところにお送りする予定です。
とはいえ、私の見るところ、再募集に関する検討など、ただの一度もなされてはおりません。
名張市立図書館のネーミングライツパートナーを募集した関係者は、いざ蓋を開けてみて、名張市立図書館の評判の悪さに驚き、こらなんべん募集したかて手ェあげてくれるとこなんかいっこもないわな、と骨身にしみて理解してくださったのではないでしょうか。
なにしろあなた、ことあるごとにネット上で私に噛みつかれてる図書館なんですから、そんな図書館の命名権なんて死んでもいらねーよ、と思わない人間なんてひとりもいないんでないかい。
もっとも、全国でただひとつ乱歩の関連資料を専門的に収集してる図書館なんですから、その線で図書館としてごくふつうのことをごくふつうにやっていれば、ネーミングライツパートナーの募集に応じてくれるとこも出てくるんじゃないかと思いますけど、それには図書館から腐れ公務員を追い出すことが必要になります。
そんなことはともかくとして、関係者のみなさんには再募集する気なんてまったくないはずなんですけど、思いつきで募集してみましたけど全然だめだったのでもう二度としません、なんてことはいえませんから、適当なこといってその場しのぎをかましてるだけだと思われます。
ほんと、もうちょっと正直になろうぜ。
愛媛新聞
平成30・2018年3月26日 愛媛新聞社
来月8日|友近座長のライブツアー開始 ロバート・秋山など豪華メンバー
Home > エンタメ > 愛媛 > 記事
来月8日
友近座長のライブツアー開始 ロバート・秋山など豪華メンバー
2018年3月26日(月)(愛媛新聞)
■Photo■ポスター■
愛媛県松山市出身のお笑い芸人友近の全国ライブツアー「友近ワイド劇場」=写真はポスター=が4月8日から、東京都のよみうりホールを皮切りにスタートする。タレントや女優としても活躍する友近の真骨頂。友近は「すごいメンバーを引き連れて回る。面白くないわけがない」とPRする。
2014年に始めた「友近ハウス」「おそかれはやかれ」に続く、友近が座長を務めるコントライブツアーの第3弾。初開催の高知を含めた6都市(7公演)を5月末まで巡る。
メンバーは秋山竜次(ロバート)やバッファロー吾郎A、シソンヌじろう、渡辺直美、ゆりやんレトリィバァら芸達者な面々。新ネタやユニットコントで、友近が「幼い頃におどろおどろしい感を覚えた」江戸川乱歩の世界を表現する。
さあ腐れ公務員ぼこぼこにしてやろっと、とまいりたいところではありますが、よく考えてみたらきょう30日は『乱歩謎解きクロニクル』の発売日です。
▼言視舎s-pn.jp:乱歩謎解きクロニクルじつは数日前から出回っていたらしく、予約してあったのが届きましたというメールを26日の月曜に頂戴したりもしていたのですが、一応きょうが発売日ということになっておりますので、あらためてご案内をひとくさり。
すでにごらんいただきました目次とあとがきを再掲し、新たに「涙香、『新青年』、乱歩」のはしがきを転載したいと思います。
段落間の一行あきはブラウザ上の読みやすさに配慮し、転載にあたって新たに設けたものです。
目次の初出データも転載するにあたって添えたもので、実際には巻末にまとめて記載されております。
目次
涙香、「新青年」、乱歩 9
はしがき 9
第一章 「新青年」という舞台 14デビューと疎外感/回想記から自伝へ/かけがえのない場/紛れ込む誤認/発見された草稿/浮かびあがる疑問
第二章 絵探しと探偵小説 39
「二銭銅貨」の逸脱/「一枚の切符」の反転/「恐ろしき錯誤」の妄想/探偵趣味と小説作法/二重性の影/かりそめの器/謎ではなく秘密
第三章 黒岩涙香に始まる 68
人嫌いから社交家へ/小説を書けない日々/「本陣殺人事件」の衝撃/垂直性の選択/第一人者の戴冠/うつし世と夜の夢
初出:中相作『涙香、「新青年」、乱歩』名張人外境、二〇一〇年五月二十九日
江戸川乱歩の不思議な犯罪 97
昭和四年 虐殺/大正十五年 対立/昭和二年 放浪/大正十三年 猟奇/昭和三年 再起/昭和十年 敬慕/昭和四年 変転/昭和三年 詐術
初出:江戶川亂步『完本陰獣』藍峯舎、二〇一八年二月二十五日
「陰獣」から「双生児」ができる話 121
二組の双生児/正体をめぐる謎/カムバックの舞台裏/編集者横溝正史
初出:江藤茂博、山口直孝、浜田知明編『横溝正史研究4』戎光祥出版、二〇一三年三月一日
野心を託した大探偵小説 133
初出:「小説現代」第五十一巻第九号、講談社、二〇一三年九月一日
乱歩と三島 女賊への恋 139
初出:江戶川亂步、三島由紀夫『完本黒蜥蜴』藍峯舎、二〇一四年五月十五日
「鬼火」因縁話 151
東京へ/暗い絵/水と火/廃園で/冬の旅
初出:横溝正史『鬼火』藍峯舎、二〇一五年六月二十五日
猟奇の果て 遊戯の終わり 175
土蔵の死骸/二冊の豪華本/猟奇耽異の器/文学派の領土/美しい死体
初出:江戶川亂步『幻想と怪奇』藍峯舎、二〇一五年十二月二十五日
ポーと乱歩 奇譚の水脈 191
初出:エドガー・アラン・ポー、江戶川亂步『赤き死の假面』藍峯舎、二〇一二年十二月二十五日
引用底本一覧 201
作品年譜 206
あとがき 215
はしがき
昨年十月三日、横浜市の県立神奈川近代文学館で特別展「大乱歩展」が開幕した。江戸川乱歩をテーマにした展示会としては、ともに池袋で開かれた二〇〇三年の「江戸川乱歩展 蔵の中の幻影城」、翌年の「江戸川乱歩と大衆の20世紀展」のあとを受ける大規模な催しで、館長の紀田順一郎先生が長く念願していらっしゃった企画だと聞く。
書籍や雑誌、原稿、書簡、写真のたぐいはいわずもがな、乱歩が不届きな出版社から召しあげた紙型までもが陳列された圧倒的な展示内容で、文学館のスタッフは毎朝、前日の入場者が息を呑みながら展示ケースのガラスに残していった指紋や掌紋を、開館時刻までにきれいに拭き取る作業に追われたという。開幕初日には記念講演会も催され、小林信彦さんが「乱歩の二つの顔」と題してお話しになった。
同じ日、池袋にあるミステリー文学資料館では、開館十周年を記念したトーク&ディスカッション「『新青年』の作家たち」がスタートした。土曜の午後に開講される全九回の連続講座で、毎回ひとりずつ「新青年」ゆかりの作家がとりあげられる。初日のテーマは江戸川乱歩。館長をお務めだった権田萬治先生からご慫慂をいただき、講師を担当することになった。開始は午後一時三十分。小林信彦さんの講演が始まる三十分前である。
撃沈だな、と観念した。どちらも乱歩をテーマとしながら、講師には雲泥というも愚かな開きがある。のみならず、むこうは異国情緒たっぷりな港の見える丘公園に建つ文学館、こちらはビルの地下一階、迷路のような狭い通路をたどった先の小さな会議室が会場である。選択に迷う乱歩ファンなど存在しないものと思われた。
何人の方にお集まりいただけるのか、撃沈の不安に怯えながら当日を迎えたが、ありがたいことに定員の三十五人近い入場があった。名張市民の税金で用意した二銭銅貨煎餅も、手みやげとして全員にお受け取りいただくことができた。「涙香、「新青年」、乱歩」と題して一時間ほど喋り、三十分あまりディスカッションして、講師としての役目を終えた。
このまま埋もれさせるには惜しい内容だ、といってくれる人はひとりもなかったが、本人としては喋りっぱなしで捨て置くのはしのびない。時間の制約から意を尽くせなかったところもある。そこで、トークの梗概を自分のウェブサイトに連載することにした。話した内容をただ再現するのではなく、昨年十二月に出た長山靖生さんの『日本SF精神史』(河出書房新社)に教えられて海野十三の「探偵小説雑感」を引用するなど、トーク以降に得た知識や所見も加えながら書き進めたものだから、いつまでたっても終わらない。年が改まり、バンクーバー冬季五輪もたけなわの二月なかばにようやくけりがついた。
今度は連載分を一本の原稿にまとめることを思いつき、この国では今年が電子書籍元年になると喧伝されていることから、新書判のフォーマットでレイアウトしたPDFファイルをインターネット上で公開することにした。ダウンロードすれば、アドビ社のAdobe Readerで読むことができる。ツールバーの「表示」で「ページ表示」を選択し、「見開きページ」と「見開きページモードで表紙をレイアウト」をオンにすると、しょせんまがいものとはいうものの、電子書籍らしい雰囲気は思いのほかに実感される。
簡単な作業だと踏んでいたのだが、サイト連載分が冗漫でばか長くなったため、結局は最初から書き改めるに等しい手間がかかった。一月に刊行された川西政明さんの『新・日本文壇史 第一巻 漱石の死』(岩波書店)の影響で年月日や住所をやたら詳しく記したりもして、去年のトークはほとんどかたちをとどめていない。面目を一新した、といいたいところだが、枝葉に筆を費やしたせいでまとまりを欠き、というよりは、幹になったのが一時間程度のトークでしかないのだから、そもそもまとまりなど求めようもなく、大きく深いはずのテーマを表面だけ軽くなぞることに終始しているのは致し方のないところであろう。こんなことならやんなきゃよかった、と思わぬでもないが、なにしろ電子書籍元年である。ついうかうかと調子に乗ってしまった。
「涙香、「新青年」、乱歩」というタイトルについて述べておくと、お読みいただけばおわかりのとおり、黒岩涙香にはまったくといっていいほど関係がない。こんな内容でタイトルに涙香を謳っては羊頭を掲げて狗肉を売るの謗りを免れないところだが、これもお読みいただければおわかりのとおり、乱歩の顰みに倣ってまず涙香を掲げた、などと記してしまうと、天国の涙香からも乱歩からも、ともに大目玉を頂戴してしまうに相違ない。罰当りないいわけはこのあたりまでとしておく。
二〇一〇年五月二十九日、アップル社iPadの国内発売が開始された翌日に
あとがき
江戸川乱歩の生誕地、三重県名張市に生まれ育って一九九五年十月から二〇〇八年三月まで市立図書館の乱歩資料担当嘱託を務めた。知性にはまるで無縁な土地柄である。図書館といっても館長は日本語の読み書きさえ怪しいお役人だし、乱歩関連資料を収集しておりますと立派な看板を掲げても内情はいっそ痛快なまでにでたらめである。どれほどでたらめであるかは昨年十月に配信された電子書籍『江戸川乱歩電子全集 第16巻』(小学館)収録のインタビュー「カリスマ嘱託の驕慢と頽落」で委曲を尽くしておいたからここでは述べない。とにかく嘱託を拝命したのだからと名張市立図書館の江戸川乱歩リファレンスブック1として『乱歩文献データブック』を編纂し、第一章第六節「大衆意識の可能性──江戸川乱歩」で乱歩を思想史に位置づけた鷲田小彌太さんの『昭和思想史60年』(三一書房、一九八六年)も乱歩関連文献の一点として記載した。刊行は一九九七年三月。ふと思いついて、鷲田さんに一冊お送りしたと記憶している。
ちょうど二十年後の昨年三月、その鷲田さんから突然連絡が入った。津市立三重短期大学の教え子との会合に出席するため津へ行く、名張まで足を伸ばすから会えないかというのが用件だった。五月の夜、初めてお目にかかった鷲田さんは凄まじいような勢いでお酒を飲みながら、乱歩の本を書け、とおっしゃった。枚数は二百五十枚、締切は十一月末、出版社も決めてあるからとかなり強引なお話だったが、せっかくのご指名をお断りする道理はどこにもない。とはいえ半年で二百五十枚、田舎でのんびりくすぶっている非才の身にそんな芸当が可能かどうか、内心首を傾げながらわかりましたと答えてさっそく書き始めてみたものの、じきに不可能だと判明した。しかし、やっぱり無理でしたと開き直れるような度胸はない。これまでに書いたものを寄せ集めてお茶を濁すことに決め、なんとか二百五十枚、言視舎の杉山尚次さんに電子メールでPDFファイルを送信した。同じようなことばかり書いてあるからものにならないだろうと踏んでいたところ、杉山さんからひとつのできごとにいろいろな角度からスポットが当てられている点が興味深いと意外な評言をいただいて、ああ、江戸川乱歩は富士山だなと思い当たった。
富士の頂角、広重の富士は八十五度、文晁の富士も八十四度くらい、北斎に至っては三十度くらいという著名なフレーズが事実かどうかはともかく、富士山は見る位置、描く人間によってさまざまに姿を変えると伝えられる。乱歩も群盲に撫でられる一頭の巨象のような存在で、『乱歩文献データブック』に頂戴した中島河太郎先生のエッセイ「江戸川乱歩評判記」も「各人各説でまだまだ乱歩の全貌を摑むのは容易でない」と結ばれていた。だから本書も変わり映えのしない素材を扱った同工異曲の実話読みもの八篇、何の愛想もなく漫然と並べてお茶を濁しているだけの本では決してなく、視点を少しずつずらしながら仰ぎ見た富嶽百景ならぬ乱歩八景の試みなのであると思い込むことにした。同じ時代の同じ舞台に同じような人物がくり返し登場することからフォークナーや中上健次の向こうを張ってタイトルにサーガと謳おうかとも考えたのだが、それでは印象がフィクションめいてくるうえ大仰に過ぎる気もしてクロニクルに落ち着いた。巻末の「作品年譜」にはクロニクルの面目が躍如としているような気配がないでもないだろう。
収録作品に簡単に触れておくと、「涙香、「新青年」、乱歩」は「はしがき」に記したとおり二〇〇九年の短い講演がもとになっている。残りは乱歩作品を中心に少部数の豪華本出版を手がける藍峯舎の書籍に寄せた解説が大半を占め、刊行時期は二〇一二年からつい先日の今年二月まで。二〇一三年の『横溝正史研究』は「横溝正史の一九三〇年代」を特集したナンバーだったが、あいにく一九二八年から二九年にかけての話題しか思いつかなかったから「一九三〇年代前夜の正史と乱歩」という副題をつけてお茶を濁した。同じく二〇一三年の「小説現代」はグラビア「奇跡の発見! 江戸川乱歩『黄金仮面』、戦前の生原稿450枚」の掲載号で、解説を担当したところ肩書を求められたため江戸川乱歩書誌作成者というのをでっちあげてお茶を濁した。
振り返ればお茶を濁してばかりの世渡りである。なりゆきに任せてただ馬齢を重ね、この三月には晴れて前期高齢者の仲間入りを果たす仕儀となってしまったが、ほぼ時期を同じくして本書を世に送る機会に恵まれた。講演であれ、解説であれ、出版であれ、田舎でのんびりくすぶっている非才の身を引き立て、ここに至る道を開いてくださったみなさんには感謝の言葉もない。さらにさかのぼればすべての起点は名張市立図書館にほかならず、名張市のお役人がいっそ爽快なまでに無能だったからこそこうした僥倖に逢着できたのである。知性にはまるで無縁な土地柄にも尽きせぬ謝意を表しておくべきかもしれない。
二〇一八年二月二十五日、バンクーバー冬季五輪から早八年、平昌冬季五輪の閉会式が催される日に
おかげさまで、アマゾンの作家研究部門、堂々一位に輝きました。
▼Amazon.co.jp:作家研究 の 売れ筋ランキング
記念のスクショでございます。
ポチはこちらとなっております。
▼Amazon.co.jp:乱歩謎解きクロニクル
イシグロもキングもはるか下に見つポチのみ待ちてわれ高齢者。
以上、『乱歩謎解きクロニクル』発売日のご案内をお届けいたしました。
春が遅い当地にも、ようやく桜の季節が訪れました。
昨日午後、伊賀市内のお寺にある芭蕉ゆかりの茶室で催された茶会に顔を出したのですが、境内の桜も一気に満開を迎えておりました。さて、この件。
▼2018年3月21日:転落から低迷へ
昨日、茶会から帰宅したら、メールで回答が届いておりました。
こんなんです。
中 相作 様
市長への手紙をお寄せいただきありがとうございました。
お尋ねのありましたことについて、以下のとおり回答させていただきます。
平成28年2月以降、再募集についての検討を進めるための情報収集等は、随時市立図書館で行っています。
平成28年2月時点で、公立図書館にネーミングライツを導入している自治体は全国で二つありました。その後の導入状況は、いずれも県外になりますが三つの自治体で導入したとの情報を得ています。それらとは別に一つの自治体では、図書館全体ではなく館内の一部の施設にネーミングライツを導入したとの事例も把握しています。また、市立図書館では、事業者の応募に関する意向を確認していますが、興味を示す事業者は今までのところございません。
以上のように、公立図書館へのネーミングライツの導入は全国的に見ても少ない状況にありますが、市立図書館へのネーミングライツの導入については引き続き情報収集等を行ってまいりたいと考えています。
平成30年3月27日
名張市長 亀井利克
いやー、3月27日に行われた前国税庁長官、佐川宣寿さんの証人喚問を彷彿とさせるお答えではありませんか。
もうぼこぼこにしてやろうっと。
Powered by "Samurai Factory"