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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2012.05.12,Sat

 先日のつづき。

 

 ほんと、わーけわかんねーよ、のつづき。

 

 なにがわかんないのか、というと、これ。

 

20120507a.jpg

 

 江戸時代に名張の地を領した名張藤堂家というのがあって、その陣屋跡は名張藤堂家邸跡として一般公開されている。

 

 その名張藤堂家で家老を務めた鎌田将監というひとがいて、そのひとの家に残されていた文書のたぐいが、どういう経緯や経路をたどったのかはわかんないけど、古書市場に流通した。

 

 で、その文書類を一括して伊賀文化産業協会が購入し、それにもとづいて『名張藤堂宮内家家老 鎌田将監家文書』をまとめた、ということなんやけど、いったいどうして、こんなことになってんの?

 

 名張藤堂家にかかわりのある文書なんだから、ふつうに考えれば、名張市が入手すべきやがな。

 

 名張藤堂家の関連文書、ゆうことは、いわゆる郷土資料やがな。

 

 郷土資料は、図書館の守備範囲やがな。

 

 市史編さん室の守備範囲でもあるけど、ま、大きな流れでいえば、図書館の守備範囲だ、ということにして話を進めると、名張市立図書館は館内に立派な郷土資料室を開設しておるくらいで、郷土資料の収集に力を入れておるはずやったがな。

 

 それやったら、この鎌田将監家文書は、名張市立図書館が郷土資料として収集し、活用するのが筋ゆうもんやがな。

 

 だというのに、どうして、それをせんのか。

 

 少し以前には、名張市立図書館だって、最低限のことはできていたはずではないか。

 

 乱歩にかんしては、終始一貫、からっきし、全然、まったくあれではあったけど、少なくともいわゆる郷土資料にかんしては、そこそこのことはできておったはずではないか。

 

 名張藤堂家の関連資料、ということでいえば、ちょっと本棚を探ってみたところ、こんな本が出てきた。

 

20120512a.jpg

 

 A5判、二百二十四ページ、発行は1986年3月で、編集は名張古文書研究会、発行は名張市立図書館、とある。

 

 だから、本来であれば、この『名張市史料集 第二輯 名張藤堂家文書』みたいな感じで、それにしても、集じゃなくて輯、ってのが、なかなかマニアックでいいと思うんだけど、とにかくこんな感じで、名張市立図書館が貴重な郷土資料である鎌田将監家文書を購入し、管理し、のみならず、解読し、整理し、体系化したうえで、だれでも読める印刷物として発行する、みたいな一連の作業が、当然、実現されておってしかるべきであった。

 

 伊賀文化産業協会の『名張藤堂宮内家家老 鎌田将監家文書』巻頭の「はじめに」によれば、名張藤堂家と丹羽家、つまり名張藤堂家の初代、高吉の実家が丹羽家だったんだけど、その丹羽家と名張藤堂家が幕末になってもなお浅からぬかかわりをもっていたことを示す書状があったり、さらにはいわゆる享保騒動、つまり享保年間に名張藤堂家第五代、長熙(ながひろ)が大名として独立することを水面下で画策し、それが露見して家臣三人が切腹、長熙も引退を余儀なくされたお家騒動に関連する文書もあるとのことで、そりゃもう名張市が入手しておくべき古文書であることはまちがいないんだけど、名張市はいったい、なにやってたんだろうね。

 

 てゆーか、どうして、なにもせんのやろうね。

 

 乱歩の関連資料より、名張藤堂家の関連資料のほうが、名張市にとって重要なんだけど、どうして、なにもしようとせんのやろうね。

 

 どうもようわからんけど、とにかく、名張市は、ほんと、だめになった。

 

 もともとだめではあったんだけど、輪をかけてだめになった。

 

 もともとだめだった、というのは、少なくとも乱歩にかんしては火をみるよりも明らかなことなんやけど、郷土資料にかんしては、いったいどうだったのか、というと、じつは先日、ひと月あまり前のこと、なんか知らんがお酒の席があいついだころのある日、伊賀市内某所の割烹で、名張市立図書館が開設された当時のことをご存じのかたがたとお酒をごいっしょする機会があって、いろいろ話が出たのだが、優秀な有識者の手助けがあったから、名張市立図書館はあれだけ立派な郷土資料室を館内に開設することができたのだ、とうけたまわった。

 

 つまり、最初からだめではあったんだけど、有能な市民が郷土資料関連の図書館活動をフォローしていたから、そこそこのことはできていた。

 

 しかし、そういうことがなくなったから、もともとだめ、という地金が出てしまった、ということらしい。

 

 それにしても、ほんと、ひどい話である。

 

 『名張藤堂宮内家家老 鎌田将監家文書』には六百五十二点もの文書が収録されているんだけど、「はじめに」にはこうある。

 

大変貴重な資料ですので出版も考えましたが予算などの都合で私製本十冊のみの制作として三重県立図書館、伊賀市上野図書館、名張市図書館と三重県史編さん室、伊賀市、名張市の市史編さん室に寄贈することとしましたので図書館等でご活用をお願いいたします。

 

 本来ならちゃんとした書籍のかたちで出版するべき貴重な資料ではあるけれど、予算その他の関係でそれができないから、とりあえず十冊、百三十二ページの冊子として発行し、関係先に寄贈した、ということなわけであるのだが、しかし、じつはこれみんな、わざわざ指摘するまでもなく、名張市がやるべきことなのである。

 

 名張の歴史を知るための貴重な資料なんだから、名張市が入手するのは当然のことで、しかも、入手してただ死蔵するだけでなく、解読し、整理し、体系化し、たとえ冊子のかたちでもいいから、だれもが気軽に読めるようにすることを考えなければならない。

 

 資料の収集ってのは、そういうことなの。

 

 いつもいつもゆうとるとおり、収集は活用とワンセットなの。

 

 そういうことが、名張市役所のみなさんには、まったくわかっとらんみたいやね。

 

 わかっとります、とは、口が裂けてもいえぬであろう。

 

 わかっとったら、ここまでわけのわからんことが、現実に起きとるわけがないがな。

 

 名張藤堂家の関連文書の収集と活用を、名張市ではなく、伊賀文化産業協会にみーんなやってもらいました、というのは、いったいどういうことか、というと、たとえていえば、わが家の子供をとなりの家で大きくしてもらった、一人前にしてもらった、みたいなことである。

 

 名張市にとっての貴重な資料を、おとなりの伊賀市にまるっと面倒みてもらった、ということである。

 

 ほんと、なんでこんなことになってんだ?

 

 わーけわかんねーよ。

 

 しかし、まあ、こういったあたりが、名張市のレベルだ、ということなのであろうな。

 

 予算がどうのこうの、という問題もあるのかもしれんけど、これは要するに、見識の問題ということになる。

 

 いわゆる有識者の手助けがなくなったせいで、地域の公共図書館として郷土資料を収集するために必要な見識というやつが、きれいさっぱりなくなってしまった、ということだ。

 

 もう少し、しっかりしてもらえんものか。

 

 無理かもしれんな。

 

 無理か。

 

 有識者のフォローがなくなって、おそまつな地金がむき出しになった、というだけでもえらいことなのに、図書館の質というやつが、おそらく全国的に劣化しつつあるみたいだからな。

 

 こんな話も出てるくらいだ。

 

 ▼YOMIURI ONLINE:市図書館、ツタヤが運営…年中無休でカフェも(2012年5月5日)

 

 なんかもう、無茶苦茶である。

 

 検索してみたら、2ちゃんねるニュー速板では、こんなことで話題になっとる。

 

 ▼【社会】図書館問題で武雄市長がセキュリティ研究者に公開討論に誘うが断られ「卑怯だ」と怒り圧力をかける ★2:全部

 

 武雄市の市長さんって、かなり香ばしいひとみたいだけど、そんなことはべつにしても、公共図書館をツタヤが運営する、ということには、ちょっと考えただけでも、とにかく問題ありまくり、みたいな感じがする。

 

 ありまくりな問題のひとつは、まったく問題にされてないことだけど、もしもツタヤに丸投げなんて事態になったら、いわゆる無料貸本屋としてのサービスは飛躍的に向上するかもしれんけど、地域独自の資料収集というのは壊滅的に劣化してしまうのではないか、ということだ。

 

 それでなくたって日本全国津々浦々、公立図書館はコストカットを目的とした民間委託の大波にのみこまれて、いまやいろいろえらいことになってるわけなんだけど、それが致命的なとこまで行ってしまうという気がする。

 

 吉村昭『わたしの流儀』(新潮文庫)に収録の「図書館」から。

 

 小説の資料収集に地方都市へ行くと、私は必ず図書館に足をむける。その都市の文化度は、図書館にそのままあらわれている。

 図書館に関することは自治体の選挙の票につながらぬらしく、ないがしろにされている市もある。それとは対照的に充実した図書館に入ると、その都市の為政者や市民に深い敬意をいだく。

 図書館は、市役所の機構の一部門となっていて、そのため新任の館長の前の職場が土木部であったり通商部であったりする。

 そうしたことから、館長がすぐれた読書家とはかぎらない。図書館経営の長であるのだからそれでもよいではないかという意見もあるだろうが、やはり館長は書物について深い愛情と造詣を持っている人でなければおかしい。

 図書館には、生き字引のような人がいる。私が求めているものを口にすると、間髪を入れずそれに関する書物を出してきて並べてくれる。このような時には、この図書館に来てよかった、と幸せな気分になる。

 

 図書館というのは、一般的な書籍や雑誌を閲覧に供することのほかに、その土地にかかわりのある資料を収集し、必要としているひとに提供する役目、吉村さんの文章にある「間髪を入れずそれに関する書物を出してきて並べてくれる」ような役目も期待されている、というよりは任務として背負ってるわけなんだけど、これからの世の中、そういう役目や任務は加速度的に衰えてゆくのであろうな、というか、すでに急速に衰えつつある、といっていいだろうね。

 

 なにしろ、地元の図書館が名張藤堂家の関連文書を収集せず、おとなりの自治体にある公益財団法人に入手から活用までまとめて面倒みていただいた、というんだからね。

 

 ほんと、わっけわっかんねーよ実際。

 

 しかし、わけがわかんないといえば、 母さん、名張市民の八億六千万円、であったか、八億九千五百万円、であったか、九億八千万円、ということになるのであったか、とにかく、どうしたでせうね? という問題で、さらにわけのわかんない展開があったみたいだね。

 

 ▼朝日新聞デジタル:「計画変更で損害」牛舎経営者が市提訴(2012年5月9日)

 ▼MSN産経ニュース:牛舎移転先の土地 指定解除されず損害 名張の男性、市を提訴 三重(2012年5月9日)

 ▼毎日jp:損賠訴訟:斎場建設変更で「損害」 牛舎経営者、名張市を賠償提訴--地裁伊賀支部 /三重(2012年5月9日)

 ▼伊勢新聞:名張市斎場問題 5億5400万円賠償請求 市に、牛舎経営の男性(2012年5月9日)

 

 母さん、名張市民の五億五千四百万円、どうなるでせうね?

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