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平成24・2012年2月24日 毎日新聞社
名張市:予算案 一般会計、初の赤字 土地開発公社清算で歳出膨らむ /三重
矢澤秀範
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名張市:予算案 一般会計、初の赤字 土地開発公社清算で歳出膨らむ /三重
名張市は23日、総額260億5700万円の12年度一般会計当初予算案を発表した。経営が行き詰まった市土地開発公社の清算に伴う累積債務の公費処理などで歳出が膨らみ、前年比13億1500万円(5・3%)増となる過去最大の予算規模に達した。収支不足は5億2000万円で、初の「赤字編成」となった。亀井利克市長は会見で「財政健全化が最大の山場を迎えた。13年度からは何とか単年度黒字を達成したい」と述べた。【矢澤秀範】
12年度中に解散する土地開発公社の債務の代理弁済に加え、土地区画整理事業の借入金返済、「総合教育」「子ども発達支援」の両センター整備などが歳出を大幅に押し上げた。新規事業の抑制や経費削減を図ったが、歳出が歳入を上回る赤字となった。7特別会計、2企業会計を合わせた総額は517億5841万円で、同32億612万円(6・6%)増加した。
■歳入
市税は96億680万円で、前年比0・9%増。固定資産税は評価替えで減収が見込まれるが、個人市民税が年少扶養控除の廃止で増加するほか、法人市民税で企業誘致による増収が見込まれる。
借金にあたる市債は、同37・8%増の37億3640万円。12年度末の残高見込み額は311億3000万円で、市民1人あたりに換算すると37万7000円(同1万円増)に膨らんだ。
財源不足は貯金に相当する財政調整基金から1億円を取り崩すが、残高はわずかしかない。このため、不足の5億2000万円を「歳入補填(ほてん)収入」として計上。13年度予算の歳入から繰り上げ充用する。
■歳出
公共事業など投機的経費は21億9745万円(前年比27・3%増)。昨年の台風12号で被害を受けた市道の整備として災害復旧費に1億6759万円。企業の施設を買い上げ、整備する総合教育センターなどに計3億1440万円を計上した。
義務的経費は139億5411万円(同0・1%減)。民生費では障害者自立支援費や生活保護扶助費、子ども医療助成事業などが増加した。一方、職員の若返り効果で人件費は抑制され、退職手当は減額が見込まれる。
借金返済にあたる公債費は、37億2258万円(同4・9%増)となった。
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■視点
◇負の遺産「総仕上げ」を圧迫
名張市の新年度予算案について、亀井利克市長は02年に出した「財政非常事態宣言」以降、行財政改革に取り組んできた「総仕上げ」と位置づけた。だが、初の赤字編成となり、13年度の歳入から「前借り」してしのぐなど、依然過去の市政の負の遺産に苦しめられる状態は変わらない。
歳出を引き上げたのは市土地開発公社の清算事業費だ。市が代理弁済する累積債務は総額12億3700万円にも上る。69年設立の同公社は、公共施設用地などの土地の先行取得を進めたが、バブル崩壊後は利用のあてのない多くの土地など不良資産を抱え込んだ。金利負担は年約1億円に達し、財政を圧迫している。
公社解散は全国的な流れで、市は12年度中に地方債「第三セクター等改革推進債」を活用し、県内初となる解散を目指している。とはいえ、新たな借金を重ねるわけで、見通しの甘い経営のつけが最終的に市民に回される構図に変わりはない。
亀井市長は13年度からの「単年度黒字」を強調する。だが、景気回復の見通しは依然として不透明で、社会保障費も増え続けるなど環境は厳しい。自主財源の確保や既存事業の見直し、黒字への道筋をしっかり示すなど、今後の手腕が問われている。【矢澤秀範】
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◇主な新規事業◇
▽生活習慣病予防
3130万円。慢性腎臓病・高血圧症の重症化の予防や特定健診の受診率向上、40~60歳の節目を迎えた市民のがん検診の自己負担金無料化。
▽感染症予防
2億4025万円。子どものロタウイルス胃腸炎予防にワクチン接種。高齢者の肺炎球菌ワクチン接種。
▽県営ふるさと農道整備
1億9075万円。国道165号と県道上野名張線を結ぶ農道新設。
▽市民野球場改修
6600万円。バックスクリーン改修、防球ネット設置、外野フェンス改良など。
▽ふるさと能文化振興
687万円。東日本大震災の被災地・宮城県塩釜市の復興支援の一環で、江戸川乱歩原作の狂言を制作・上演。
▽地場産業振興
100万円。8月開業予定の「とれたて名張交流館」(仮称)への運営金負担。
〔伊賀版〕
毎日新聞 2012年2月24日 地方版
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