書籍
死者たちの語り コレクション戦争と文学13
小川未明他
平成23・2011年11月10日第一刷 集英社
B6判 カバー 721ページ 月報12ページ 本体3600円
関連箇所
芋虫
江戸川乱歩
初出:新青年 昭和4年新春増大号(第10巻第1号)
初出タイトル:悪夢
Ⅰ> p77-103
解説 雄弁から遠く沈黙に近い死者たちの声
高橋敏夫
p687-704
著者紹介
p705-712
収録作品について
p713-718
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芋虫
江戸川乱歩
時子は、母屋にいとまを告げて、もう薄暗くなった、雑草のしげるにまかせ、荒れはてた広い庭を、彼女たち夫婦の住まいである離れ座敷の方へ歩きながら、いましがたも、母屋の主人の予備少将から言われた、いつものきまりきった褒め言葉を、まことに変てこな気持で、彼女のいちばん嫌いな茄子の鴫焼を、ぐりゃりと噛んだあとの味で、思い出していた。
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解説 雄弁から遠く沈黙に近い死者たちの声
高橋敏夫
「遺言執行人」のしずかで決然とした出現
いったいなぜ──、なぜ、戦争文学には、かくまでに死者が偏在するのか。
どうして死者が生者とおなじリアルさで、あるいは生者以上のリアルさで出現するのか。
ときに、生者のコンタクトを拒み孤独な死者が闇にうずくまり、ときに、元気な死者が無口な死者をはげます。ときに、死んでも死ねない兵士が戦場を、生きている兵士とともに駆け、ときに、寡黙な死者が生きのびた者を脅かす。また死者は、ときに、動く兜虫や蟻の、動かぬ陰画としてあらわれ、ときに、巨大カボチャや山鳩に姿をかえる。あるいは……。幻想文学、ファンタジーというより、並存しえないはずのふたつの現実を躊躇なく並存させ、交渉させるマジック・リアリズム的物語に近い。
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