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Posted by 中 相作 - 2012.01.07,Sat

書籍

 

死者たちの語り コレクション戦争と文学13

 小川未明他

 平成23・2011年11月10日第一刷 集英社

 B6判 カバー 721ページ 月報12ページ 本体3600円

 

関連箇所

芋虫

 江戸川乱歩

 初出:新青年 昭和4年新春増大号(第10巻第1号)

 初出タイトル:悪夢

 Ⅰ> p77-103

解説 雄弁から遠く沈黙に近い死者たちの声

 高橋敏夫

 p687-704

著者紹介

 p705-712

収録作品について

 p713-718

 

…………………………………………………………………………………

 

芋虫

 

江戸川乱歩  

 

 時子は、母屋にいとまを告げて、もう薄暗くなった、雑草のしげるにまかせ、荒れはてた広い庭を、彼女たち夫婦の住まいである離れ座敷の方へ歩きながら、いましがたも、母屋の主人の予備少将から言われた、いつものきまりきった褒め言葉を、まことに変てこな気持で、彼女のいちばん嫌いな茄子の鴫焼を、ぐりゃりと噛んだあとの味で、思い出していた。

 

…………………………………………………………………………………

 

解説 雄弁から遠く沈黙に近い死者たちの声

 

高橋敏夫  

 

 「遺言執行人」のしずかで決然とした出現

 

 いったいなぜ──、なぜ、戦争文学には、かくまでに死者が偏在するのか。

 どうして死者が生者とおなじリアルさで、あるいは生者以上のリアルさで出現するのか。

 ときに、生者のコンタクトを拒み孤独な死者が闇にうずくまり、ときに、元気な死者が無口な死者をはげます。ときに、死んでも死ねない兵士が戦場を、生きている兵士とともに駆け、ときに、寡黙な死者が生きのびた者を脅かす。また死者は、ときに、動く兜虫や蟻の、動かぬ陰画としてあらわれ、ときに、巨大カボチャや山鳩に姿をかえる。あるいは……。幻想文学、ファンタジーというより、並存しえないはずのふたつの現実を躊躇なく並存させ、交渉させるマジック・リアリズム的物語に近い。

 

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 ▼集英社:戦争×文学 > 刊行リスト

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