名張、神戸、芦屋の三都市を結んで講演会の話題をお届けした12月2日付エントリのつづきですが、11月26日に芦屋市谷崎潤一郎記念館の特別展「妖しの世界への誘い──谷崎・乱歩・横溝」を拝見してきました。展示品のなかでもっとも興味を惹かれたのは何かというと正史の書簡でした。ガラスケースのなかに陳列されていましたからつぶさに読むことはできなかったのですが、こういうのを垣間見てしまうと正史と乱歩の書簡集を読みたくなってしまいます。そういえば戦後まもないころの乱歩の書簡の写しが見つかったことがあって、ちょっと検索してみたらこんな記事が。
▼名張人外境:貼雑記録 朝日新聞 > 乱歩が探偵小説論 横溝正史らに(2001年9月5日)
▼名張人外境:貼雑記録 毎日新聞 > 乱歩の手紙発見(2001年9月6日)
いやー、もう十年も前のことになるのか。ちょっと驚いてしまいましたけど、これらの書簡はいずれ東京創元社から出版されると聞き及んでいた記憶があるものの、いまだに実現していません。東京創元社でじっくり熟成しているものと思われますが、そんなことはともかく、谷崎、乱歩、正史という三作家を結んだたぶん初めての企画展、規模の大きいものではありませんが充実した内容で、とくに三作家のファンのみなさんにお勧めしておきます。名張市立図書館蔵の乱歩宛献呈署名入りなれど乱歩の序文を欠く正史の著書『真珠郎』も展示されておりますし。
名張市立図書館といえば、12月2日付エントリに記した件、やはり名張市の公式見解が必要だろうなと判断いたしました。名張市立図書館が寄贈を受けたまま死蔵しているミステリ関連図書のことです。それはまあ、名張市立図書館のみなさんは知らん顔してればいいのかもしれません。乱歩のことで図書館にお客さんがあったとしても、お客さんのお相手を私に押しつけてしまえばそれで済むかもしれません。しかしお相手を務める私としては、地下書庫の寄贈図書、このまま眠らせてちゃだめだよね、とお客さんからお言葉を頂戴しても返答に窮するばかりなわけです。名張市立図書館には寄贈図書の活用についてどんな方針も構想もなく、もう十数年ほど問題をただ漫然と先送りしているだけだということは察しがつきますが、だからといってこれから先もずーっと眠らせたままにしておきますとお客さんにお伝えするわけにもいかんでしょう。
先日のエントリにも記したとおり、これは相手のある話です。しかも「市立図書館の乱歩関係の蔵書約千冊を移し、寄贈も受け付け」て、「古今東西の推理小説を一堂に集め『ミステリー文庫』を設置する方針を明らかにした」と朝日新聞のコラムで報じられた話でもあります。名張市立図書館に図書を寄贈してくださったミステリファンのみなさんからおおいに期待をお寄せいただいた話であったことはいうまでもなく、それにこれは名張市議会の定例会で表明された方針でしたから言葉としてはきわめて重いものであるというしかありません。やはり先日記しましたとおり、いったん表明された方針がなぜ変更されたのか、そのあたりの経緯の説明が必要ですし、長く死蔵しているミステリ関連の寄贈図書をどうするのか、新たな方針を表明することもぜひとも望まれます。じつに悩ましい問題ですが、やはり名張市の公式見解を求めるべきだろうなとの結論に至った次第です。
お役所のみなさんにはほんとに困ったものですが、毎度まいど申しておりますとおり、これは乱歩がどうのミステリがこうのという話ではなく、あくまでもものの道理の問題です。お役所のみなさんのおつむは自分たちの都合だけでいっばいになってますから、ひとのことなんてまったく顧慮しません。ひとの恩義に報いるということができない。純然たる厚意から図書を寄贈してくださったみなさんに対して、ちゃんと考えて、ちゃんと決めて、ちゃんと説明するという当然のことをさえいっさいしようとしない。しかし、だからといって、名張市立図書館が寄贈図書を長きにわたって死蔵しつづけ、活用策をいっさい考えようとしていないことに関してどうして私がお叱りを頂戴しなければならぬのか。ほんと、お役所のみなさんには困ったものです。
さらにまた名張市立図書館といえば、こんなページがあります。
▼アジアミステリリーグ:江戸川乱歩の韓国での受容
▼アジアミステリリーグ:江戸川乱歩の台湾での受容
どちらのページでも名張市立図書館の『江戸川乱歩著書目録』をご紹介いただき、同書の不備をご指摘いただいたうえ、「このページは、いつの日か行われるであろうその改訂の際の一助となるべく作成した」とまことにありがたいお言葉までいただいているわけで、要するにこれらのページは名張市立図書館のために作成していただいたものだということになるのですが、肝心の名張市立図書館はご存じのとおりの状態ですからこうしたご高配やご期待にいっさいお応えできないと思います。考えてみればばかみたいな話で、名張市立図書館が乱歩関連資料を収集しているオンリーワンの図書館として何をすればいいか、そんなことはとくに考えなくてもわかることであって、だからこそこうやって名張市立図書館の至らないところをフォローするためのページをつくってくださる方までいらっしゃるのですが、しかし当の名張市立図書館と来た日には……
いやいや、こんなぼやきに百万言を費やしても意味はありません。お役所では来年度予算の編成も始まったみたいですし、そろそろ市長判断をお願いして、なんとかお助けいただかないことには。
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