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Nabari Ningaikyo Blog
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Posted by 中 相作 - 2011.12.02,Fri

 まず名張市の話題です。先日来そこはかとなく言及してきましたが、名張市が日本推理作家協会のご協力をいただいて開催しているミステリ講演会「なぞがたりなばり」は、やはり今年度は開催されないとのことです。ただし名張市の公式サイトでは何の告知もなされておりません。

 

 名張市:なぞがたりなばり

 

 こうなると、どうなるか。名張市公式サイトの「市長への手紙」を利用してこんなことをお訊きいたしました。

 

「なぞがたりなばり」について

 

名張市が主催するミステリ講演会「なぞがたりなばり」についてお訊きします。

 

(1)今年度の「なぞがたりなばり」は中止されたと聞き及びましたが、中止となった理由をお教えください。

 

(2)来年度以降、「なぞがたりなばり」が再開されるのかどうか、その見通しをお知らせください。

 

(3)今年度の「なぞがたりなばり」が中止されると決定したのはいつのことでしょうか。もしも昨年11月25日以降に決定されたのであれば、なぜ名張市の乱歩関連事業アドバイザーである私にご相談いただけなかったのでしょうか。

 

以上です。よろしくお願いいたします。

 

2011/12/02

 

 いやー、名張市のやることは相変わらずようわかりません。名張市の乱歩関連事業といえば市立図書館における乱歩関連資料の収集とこのミステリ講演会「なぞがたりなばり」だけのはずなのですが、そのひとつを中止するにあたってえへん、恐れ多くも名張市長からご任命いただいた乱歩関連事業アドバイザーにひとことの連絡もないとはどういうことか。いまだ仔細が不明ですからなんともいえませんが、必要とされてないのであればアドバイザーなんて辞めるしかないということになりそうです。やれやれ。

 

 つづきまして神戸市の話題。11月26日に行った講演「続・横溝正史と江戸川乱歩」の件ですが、神戸に着くまで電車のなかで紀田順一郎さんの『乱歩彷徨』を熟読し、乱歩の自伝と評論集をワンセットにして考えるといったあたり、講演でさっそく受け売りした箇所があることをここにお断りしておきます。『乱歩彷徨』はすでにあちこちで話題になっていて、たとえばきょうこのブログに無断転載した有栖川有栖さんのレビューがこちら。

 

 ▼2011年12月2日:乱歩彷徨 紀田順一郎著 作家人生を貫く壮大なトリック

 

 乱歩の評伝としては画期的なもので、紀田さんが「あとがき」に述べていらっしゃるとおり文化論や都市論、情報論などの方向に傾斜しがちな近年の乱歩論のなかではむしろ異色とさえ映りますが、ひとことでいえば乱歩の戦略性を正面から見据えた出色の一巻。ぜひお読みください。

 

 ところで、有栖川さんが最後に触れていらっしゃる「怪人二十面相」休載の隠された事情は『乱歩彷徨』の白眉とも呼ぶべき箇所であり、大胆にして緻密な考察が鋭くくりひろげられているのですが、ちょっとどうかな、という気がしないでもありません。といいますのも、たしかに昭和11年の「少年倶楽部」7月号は「怪人二十面相」が休載となっているのですが、乱歩が手がけていたもうひとつの連載「緑衣の鬼」もやはり「講談倶楽部」7月号が休載となっていますから、そのあたりを考えるとちょっとどうかなという気がする次第ではあるのですが、それはともかくとして、「少年倶楽部」の初出と単行本を比較してテキストの異同から乱歩と時代の関わりを摘出してゆくブロセスはきわめてスリリングで、いうまでもなく労の多い作業でもあり、そういった作業のための資料を地道に収集するのはもちろん図書館の仕事であるとはいえ、日本でただひとつ乱歩関連資料を専門的に集めている名張市立図書館はどうかといいますと、なんだかもう。

 

 名張市立図書館といえば、11月26日に神戸でお会いした方から、名張の図書館、ミステリの寄贈を受け付けてくれなくなっちゃったよね、とのお言葉をいただいたことは先日も記しましたが、さっきふと気になったのは、それがいったいいつのことだったのか、もしかしたら私がえへん、恐れ多くも名張市長から乱歩関連事業アドバイザーにご任命いただいて以降のことではなかったのか、ということで、もしもそうだとしたらそういった決定に私がまったくタッチしておらず、それどころか私の耳にその決定が届いてさえいなかったのはちょっと問題なのではないか。ほんと、必要とされてないんだったら乱歩関連事業アドバイザーなんてやっぱ辞めてしまうしかないだろうな。いやー、名張市のやることは相変わらずようわかりません。

 

 しかしそれにしても、たとえ図書寄贈を打ち切ったとしても、過去の寄贈分をどうするかという問題はあるわけで、先日名張市立図書館にいらっしゃったお客さんからも、地下書庫の寄贈図書、このまま眠らせてちゃだめだよね、みたいなお叱りを頂戴したことはすでに記したとおりですが、いったいどうすればいいのやら。つまりこれ、お役所内部の話ではなく相手のある話であって、しかも名張市はいったんこんなことを表明しているわけです。

 

 ▽推理小説の生みの親、江戸川乱歩の生誕地である三重県名張市は5日、古今東西の推理小説を一堂に集めた「ミステリー文庫」を設置する方針を明らかにした。

 

 ▽同市は、乱歩に関する街おこし事業が盛ん。08年までに完成させる予定で、市立図書館の乱歩関係の蔵書約千冊を移し、寄贈も受け付けるという。

 

 ▽「全国の推理小説ファンの集まる場に」と同市。しかし、具体的な運営方法や設置場所は未定だ。行政側の思惑通りにいくか、それもまた「ミステリー」。

 

 この方針があとになって変更されたのは仕方ないとしても、それこそ寄贈者のみなさんという相手のある話であり、直接の相手ではなくてもこの方針に期待を寄せてくださっていたミステリファンも存在するわけですから、なぜ方針が変更されたのか経緯の説明が必要でしょうし、すでにある寄贈図書をどうするのか、そのあたりの新たな方針を明らかにすることも必要になってくるのではないか。というか、そのあたりの方針を明確にするようアドバイザーたる私から名張市立図書館に求めたほうがいいかもしれません。そもそも名張市立図書館が何もしようとしないせいで私がお叱りを頂戴してしまうというのは考えてみればずいぶんおかしな話であって、頂戴したお叱りはそのまま名張市立図書館に伝えるべきだとは思うわけですが、いくら伝えてもどうにもならんか。

 

 なんか暗澹たる気分になってきましたが、つづいては芦屋市の話題。神戸の講演会に東京からおいでくださった横溝亮一さんがその翌日の11月27日、芦屋市谷崎潤一郎記念館で秋の特別展「妖しの世界への誘い──谷崎・乱歩・横溝」のイベントとして「父・横溝正史の思い出」と題した講演をなさいました。私はお邪魔できなかったのですが、ありがたいことに会場で聴講された方から講演要旨のメモをお送りいただきましたので、そのうち乱歩に関するパートを無断転載しておきます。

 

・父と乱歩さんの交友は愛憎半ばするものがあった。父は乱歩さんの「幻影城」のような仕事を認めず、どうして創作しないのか、と嘆き続けていた。夜は、寝床にウイスキーを入れた小さなグラス5つ並べ、それを飲みながら、ラジオで野球中継を聞いたり、小説の筋を練っていたり、うつらうつらするのだが、ある時、がばっと跳ね起きると、窓を開け、大音声で「乱歩のバカヤロー」と叫んだりしていた。「あんたが書かんでどうなる」と言って、ぼろぼろ泣いたりしていた。当時の我が家は成城でしたが、2000坪以上ある敷地にうちが一軒あるだけ。深夜わめいても問題なかったんですね。

 

・乱歩さんは優しくて、よくわたしも膝の上に載せられたりしたもです。「亮ちゃん、欲しいものあれば、なんでも買ってあげる」と言われて、八の字型のレールの上を走る電気仕掛けの機関車モデルが欲しいといったら、「そういうのは銀座の松屋にある。買ってあげよう」と乱歩さん。そして一週間後くらいにそれが届いたのにはびっくり。当時でも相当値段の張るものだったでしょう。その贈り物に「亮一君へ」とあって「きくゎんしゃ」とあったのを今でも覚えている。

 

・乱歩さんが死んだとき、わたしは東京新聞文化部でした。上司から乱歩が死んだ、君は知遇があるんだよねと言われて、すぐに社旗をたてた車で池袋に向かいました。もう水谷先生が来られていました。まだ乱歩さんの体が生温かったです。30分ほどして父が来ました。来るなり、わーっと覆い被さるようにして、号泣です。「なんで死んだんだ~」30分くらい続いたと思います。水谷先生が「ぼくたちだって、先が長いわけじゃない。すぐに向こうで会えるさ」という慰めで、やっと泣きやみました。父は、ほとんど毎日、乱歩さんの名前を口にしてました。恩師であり、よきライバル、そして乗り越えるべき壁、それが父にとっての乱歩さんの存在だったようです。

 

 以上、名張市、神戸市、芦屋市、と大小はあれどみっつの都市を結んで講演会の話題をお届けしました。

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