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平成23・2011年11月26日 朝日新聞社
「少年探偵団」主題歌の効果
福島礼子
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カフェ日和
2011年11月26日
◇◆エッセイスト 福島礼子◆◇
「ぼっ、ぼっ、僕らは少年探偵団」。私の世代にとっては、とても懐かしいフレーズだ。白黒テレビが普及し始めた昭和30年代、江戸川乱歩原作の「少年探偵団」は、待ち遠しい番組だった。名探偵・明智小五郎と助手の小林芳雄少年が、次々と事件の謎を解いていく小気味良さに、私は夢中になったものだ。
江戸川乱歩(1894~1965)、本名平井太郎は、三重県と縁が深い。名張で生まれ、父親の転勤に伴って一時亀山で過ごし、長じて鳥羽造船所に数年勤務した。平井家には江戸時代初期、見初められて藤堂高次公の正室となった女性がおり、その縁で弟に禄がつき、乱歩の祖父の代まで藤堂家の藩士であった。調べたがり屋の乱歩はこの事実を見いだし、祖先が武功でなく女の力で出世したことを「面白くない」と書いている。
私は「フィルム文学館」という番組を担当し、三重ゆかりの作家を紹介している。ナツメ家の龍之介青年があれこれ思案し、朗読と解説を交えて進行していく内容だ。今月の対象は乱歩。番組の最後は、猫のナツメが「ぼっ、ぼっ……」と口ずさみながら画面から去っていくシーンにした。ナツメの声を担当する若いナレーターは、この主題歌を知らない。私が繰り返し伝授し、撮影は無事終わった。
「屋根裏の散歩者」や「人でなしの恋」など、乱歩独特のちょっと怖い世界をどう表現するか。試行錯誤の撮影後、車内では軽い疲労と満足感があった。カメラマンがポツリといった。「『ぼっ、ぼっ……』は、妙に頭に染みつきますね」。なるほど、コンビニから車に戻る私は、無意識にフレーズを口ずさんでいた。もしかしたら、これも怪人二十面相の仕業?
◎「乱歩編」は、ケーブルネット鈴鹿で月末まで放映。乱歩の資料は名張市立図書館と鳥羽みなとまち文学館が充実しています。
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