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平成23・2011年11月19日 毎日新聞社
江戸川乱歩:パノラマ島モデルは三重の神島…作家が新説
林一茂
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「パノラマ島奇談」のモデルとして浮上した神島=三重県鳥羽市で、林一茂撮影
探偵小説家、江戸川乱歩(1894~1965年)の代表作の一つ「パノラマ島奇談」の舞台のモデルが、三重県鳥羽市の伊勢湾口に浮かぶ「神島」だったとする新説を同市在住の作家、岩田準子さん(43)が打ち出した。これまでは同市の「ミキモト真珠島」が有力とされた。準子さんの祖父は乱歩と親しかった風俗研究家の故岩田準一氏で、真珠島説は父親の故岩田貞雄氏が唱えた。準子さんは「父の説を覆すのは忍びないが、誤りを正したい」と話している。
「パノラマ島奇談」は1926~27年、雑誌「新青年」(博文館発行)に連載。売れない作家が亡くなった資産家になりすまし、ユートピア実現のため島を「パノラマ国」に改造するが、探偵に正体を暴かれ、自らを花火とともに打ち上げて死ぬ、という内容だ。
乱歩は17年から1年余、三重県鳥羽町(現鳥羽市)で会社勤めをした。小説にはM県(三重県)、I湾(伊勢湾)の表記で地名が出てくるため、かつての勤務地を舞台に選んだとみられている。
真珠王・御木本幸吉翁が真珠養殖に成功したことで知られる「真珠島」説を唱えた元同市文化財調査委員の貞雄氏(34~04年)は79年の自著で「想定を真珠島にとった」と断定。準子さんは根拠を「『T市の大富豪所有の島』との記述から連想したのでは」としている。だが小説は島の場所について、海岸を1時間汽車に揺られて終点のT駅に着き、船で1時間とし「ほかの島々から飛び離れて」と表現。小説が鳥羽市の市制施行(54年)前に書かれていることもあり、準子さんは「T市は津市、T駅は鳥羽駅。1時間も船に乗り、他の島々から飛び離れた島は神島しかない」と指摘した。【林一茂】
ミステリー評論家、新保博久さんの話 乱歩ほど自身や自作について詳しく書き残した作家はいない。今後は乱歩が書かなかったことにもっと目を向けるべきだろう。パノラマ島のモデルがどこかも語られていないが、神島説は新たな展望を開くものだ。
毎日新聞 2011年11月19日 2時30分(最終更新 11月19日 3時42分)
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