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平成23・2011年10月23日 産経新聞社、産経デジタル
【著者に聞きたい】川瀬七緒さん『よろずのことに気をつけよ』
海老沢類
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【著者に聞きたい】
2011.10.23 08:33 (1/2ページ)
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【著者に聞きたい】川瀬七緒さん
「小説とデザインは近い」
本作でミステリー作家の登竜門、江戸川乱歩賞(日本推理作家協会主催)を射止めた。女性の受賞者はじつに15年ぶり。「全部夢だった…という夢をいまでも見る。過去に感じたことのないプレッシャーを感じている」。先月行われた贈呈式では、そう言って気を引き締めた。
文化人類学者、中澤大輔のもとを訪ねた女子学生の砂倉真由。真由の祖父は1カ月前に惨殺され、現場から血判入りの呪術符(じゅじゅつふ)が見つかっていたのだ。事件の真相を探る2人は、人徳のある教師だった祖父の過去を知り…。
昨年、故郷の福島県白河市に帰省した際、祖母の家で念仏の書かれた紙を見つけたのが着想のきっかけ。題名も念仏の締めの文句から取った。「祈祷(きとう)の念仏なのに、恨みがましくて陰な感じ。子供のころ、老女が集まって念仏を唱える異様な光景を見た記憶もよみがえって、すぐに『呪(のろ)い』に結びつきました」
マイペースな中澤と、鼻っ柱の強い真由のユーモラスな掛け合いで物語を推し進め、最終盤で「贖罪(しょくざい)」という重いテーマを突き付ける。雪深い山や村社会の閉鎖性など、丹念に描かれた背景が登場人物の心情とうまく溶け合う。
「お地蔵さんの数がすごく多かったり…子供にとっては不思議で少し近寄りがたいものに囲まれて育った。都会的ではない土臭さにひかれる」
【著者に聞きたい】
2011.10.23 08:33 (2/2ページ)
小学校のころから、江戸川乱歩の推理小説を愛読。子供服のデザインを手がける傍ら、4年前に「突然思い立って」小説を書き始めた。乱歩賞では、初めて応募した前回も最終候補に残っている。
「無から何かを作り出す点で、小説とデザインは近い」と話す。犯罪現場にいち早く駆けつける機動捜査隊の奮闘、昆虫の生態が事件のカギを握る法医学の話…。聞けば興味深い小説の種がぽんぽん出てくる。「人が目を付けないところに着目しイメージを膨らませること」。そんなデザイナーの基本動作がどんな物語に結実するのか、楽しみになってきた。(講談社・1575円)
(海老沢類)
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【プロフィル】川瀬七緒
かわせ・ななお 昭和45年、福島県生まれ。文化服装学院卒業後、服飾デザイン会社に勤務。現在はフリーの子供服デザイナー。本作で第57回江戸川乱歩賞を受賞。「小説現代」(講談社)12月号に受賞後1作目となる短編が掲載される予定。
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川瀬七緒著『よろずのことに気をつけよ』(講談社・1575円)
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