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Posted by 中 相作 - 2011.09.30,Fri

ウェブニュース

 

ゲンダイネット

 平成22・2011年9月24日 日刊現代

 

「よろずのことに気をつけよ」で江戸川乱歩賞を受賞した 川瀬七緒氏に聞く

 Home > 新刊レビュー > 記事

 

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【HOT Interview】

 

「よろずのことに気をつけよ」で江戸川乱歩賞を受賞した 川瀬七緒氏に聞く

 

【書籍・書評】

2011年9月24日 掲載

 

「呪いは特殊なものではなく日常のすぐ裏側にあるものです」

<変死体のそばで発見された呪術符の意味は?>

 

 ミステリーというよりは探偵小説と呼びたくなる作品である。殺された老人の家の縁の下に埋められていたのは「不離怨願」と書かれた呪術符。謎を解くのは、その孫と呪いを研究する文化人類学者。蔵の中でろうそくをともして執筆しているようなイメージが浮かぶが、ご本人は楚々とした女性で、本業は子供服のデザイナー。そんな川瀬氏をこのおどろおどろしい世界に導いたものは?

 

――呪いをテーマにしようと思いついた、きっかけは?

「母の実家のある福島県西白河郡西郷村には、お盆や彼岸などの時に、70歳以上のおばあさんばかりが座敷に集まって念仏を唱える風習があるんです。念仏中は他の者は入ってはいけない。その風習は呪いとは関係ないんですが、薄暗い中でおばあさんが念仏を唱えている姿は、ちょっと〈裏側の世界〉のような気がして、私には異様な記憶として残っていました」

――〈師走の月に雪なくば、よろずのことに気をつけよ〉という脅し文句のような念仏が謎を解くキーワードとなるのですが、この文句は、創作ですか?

「祖父の家で念仏の文句を見つけた時に、この物語を着想しました。それは実は豊穣(ほうじよう)祈願の念仏なんですが、意味不明な言葉で、いわくありげな節なので、豊穣祈願の言葉とは思えないんですよ。〈よろずのことに気をつけよ〉は元の念仏にあった文句ですが、それを呪いの言葉と結びつけて、念仏を創作しました」

――呪いをかける人は現在でもいそうですね。

「子どものころに、神社の裏の杉林に写真がクギで打ち付けてあるのを2度ほど見たことがあります。それがとても怖くて、すぐ神社の人に伝えました。子どもの目から見ても怖くて、近寄れない雰囲気でした。私は呪いはオカルトという感覚ではなく、現実の世界のこととして受け止めています。実際に写真にクギを打つなどの行動をとることで、人によっては憎しみが増幅することもあるかもしれないけれど、自浄作用というか、それで憎しみの感情が発散して楽になることもあるのでは。相手を許せるところまではいかないけれど、妥協点を見つけられるような気がします」

――最後に、読者へのメッセージを一言。

「呪いが日常のすぐ裏側にあるものだということを分かっていただきたいですね。私たちは嫉妬のようなマイナスの気持ちを外に出すことは悪だという教育を受けていますが、それが本当にいいのかなと問いたい。マイナスの感情を持っていることを自分が否定して内に押し込めると、どんどんつらくなっていく。むしろそれを許容して、にっちもさっちもいかなくなる前に、マイナスの感情の出口を見つけることは必要ではないかと思います」

(講談社 1500円)

 

▽かわせ・ななお 1970年、福島県生まれ。文化服装学院服装科デザイン専攻科卒。服飾デザイン会社に就職、子供服のデザイナーとして勤務するかたわら2007年から小説の創作を始める。10年に第56回江戸川乱歩賞の最終候補に残り、11年、第57回江戸川乱歩賞受賞。

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