Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2011.09.02,Fri
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京都新聞
平成23・2011年7月28日 京都新聞社
乱歩忌
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凡語
東日本大震災以降、小説があまり読まれなくなったという。過酷な災害を前に「虚構」を楽しめないと感じる心情は理解できる。このまま文学は力を失ってしまうのだろうか▼きょうは乱歩忌。日本の推理小説の基礎を築いた江戸川乱歩の命日だ。殺人事件などの謎を名探偵が論理的に解き明かす本格推理の形式を築き、戦後の1940~50年代には後続作家が隆盛を誇った。80年代末には乱歩を愛読してきた若い作家が登場し、新本格ブームと呼ばれる活況を呈した▼作家で評論家の笠井潔氏は、乱歩の時代を第1の波、戦後を第2の波、80年代以降を第3の波と名付けた。無差別虐殺で人間性が失われた第2次世界大戦の体験、バブル景気の空虚な社会で生きる意味を実感できない若者のリアルへの渇望が第2、第3の波を生んだという▼確かに推理小説はいつの時代も若者たちに熱狂的に受け入れられてきた。自らが生きる時代という謎をいかに解明するのかという切迫感と重なるからかもしれない▼文学や芸術は、虚構の力をもって理不尽な現実と格闘し、意味を見いだす試みでもある。社会的な不安が増す一方、人と人とのつながりがあらためて評価されている現代にこそ求められているはずだ▼巨大災害や原発事故による将来の不安、非正規雇用の増加による社会的格差の拡大などで日本は新たな局面を迎えた。推理小説にこの時代をとらえる第4の波は訪れるだろうか。
[京都新聞 2011年07月28日掲載]
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