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Posted by 中 相作 - 2017.07.03,Mon
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朝日新聞デジタル
 平成29・2017年7月1日 朝日新聞社

なにも書けない夜、誰にでも 旧江戸川乱歩邸に又吉さん
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なにも書けない夜、誰にでも 旧江戸川乱歩邸に又吉さん

2017年7月1日09時36分



「幻影城」と名づけられた土蔵の内部は、現実と奇怪な幻想を行きつ戻りつした乱歩の脳内世界のようでもある。お気に入りの短編『人間椅子』に読みふける=東京都豊島区、時津剛撮影



又吉直樹さん=時津剛撮影



土蔵の窓から差し込む柔らかい光の中、ただ静かに時間が過ぎていった=東京都豊島区、時津剛撮影



旧江戸川乱歩邸のそばにある土蔵の内部。古びた本の香りがした=東京都豊島区、時津剛撮影



江戸川乱歩の肖像画=東京都豊島区の旧江戸川乱歩邸、時津剛撮影



旧江戸川乱歩邸の応接間=東京都豊島区、時津剛撮影



写真・図版 旧江戸川乱歩邸の地図

 なにも思い浮かばず、なにも書けなくなる夜が、暗闇にしかけられた冷酷な罠(わな)のように、創作者を待ちかまえている。ネタを書くお笑い芸人であり、作家でもある又吉直樹さんも、いままでどれだけ、その罠にはまり、のたうちまってきたことか。今回は、敬愛する大作家のひとり、江戸川乱歩がかつて暮らした家の書庫を訪れ、そんな感慨にふけりました。

     ◇

 一人で机の前に座り、朝までになにかを書かなければならないという状況を何度も経験したことがある。孤独で不安になることもあれば、これから自分だけの夜が始まるのだと、わくわくすることもある。必ず成功するとは限らない。書けない夜もあるから、毎晩、綱渡りをしているようなものだ。

 すでに読んだことのある漫画の1巻を読み始めてしまい、結局は2巻、3巻と続きを読んでいるうちに朝を迎えて後悔したこともあれば、妙に感覚が研ぎ澄まされ、「30分あれば充分(じゅうぶん)だ。今夜の自分は最強で、凄(すご)いものが書けるぞ」と全能感に支配されたがために、まずは少しだけテレビでも観(み)ようと余裕をかましてしまい、徐々に眠たくなり、まだ朝までは時間があるにもかかわらず、先程までの自信は消え失せて、「もう今夜は絶対になにも思いつかない」という取り返しのつかない状態に陥ったこともある。

 その癖、どこかで帳尻は合わせ…

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