本日は乱歩忌なり、ということが朝から珍しく念頭にあって、というのも毎年この時期は暑くて暑くてぼーっとして忘れてしまっていることが多いからなのですが、きょうがなにやら特別な一日であるかのような気はしていたのですが、まさか小松左京さんの訃報に接することになろうとは。
おりしも神戸文学館では小松左京展が開かれていて、8月6日には眉村卓さんの記念講演「SFを書きはじめたころ」も控えているわけですが。
▼2011年7月8日:歴史を未来へ SF作家 小松左京展
先日の残月祭でチラシを入手いたしましたので、なんだか間抜けな感じですけど掲載しておきたいと思います。
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小松さんは講談社版歿後第一次乱歩全集の第七巻『黒蜥蜴』に「巨人の輪郭」と題した巻末解説を寄せていらっしゃって、いま取り出してみたところこんな文章で始まっています。
青春のころに、自分では「卒業」してしまったと思っていた「乱歩全集」に、もう一度手を出すことになったのは、二年ほど前、万国博のテーマ館の地下部分のプロデュースをひきうけた時の事だった。
いやしかし、小松さんだってまぎれもない巨人であり、きょうはお酒を飲みながら小松左京という巨人の輪郭を偲ぶことにしたいと思います。しかしそれにしても、今年の夏はほんとになんという夏なのか。
「巨人の輪郭」からさらに引用を少々。
一通り読みおわってから、私はやや呆然として、この“巨人”のことを考えた。──たしかに、乱歩のスタートは探偵小説であり、堂々たる本格物もあるのだが、彼を「探偵小説作家」の枠の中でかたづけてしまう事は、どうしてもできないような気がする。むしろ、「探偵小説」「娯楽もの」「大衆小説」というのは、この巨人にとって、一つのマスクであって、このマスク故に、文壇的、あるいは思想的な制約にしばられる事なく、自由奔放に彼の壮大なイメージの世界を構築できたのではないだろうか?
かくて今年の乱歩忌は昏れてゆくなり。
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