Nabari Ningaikyo Blog
Posted by 中 相作 - 2017.01.01,Sun
謹賀新年。
新年早々、昨年の話題をひきずります。「二銭銅貨」の話題です。
御冗談は旧仮名遣いでもごじょうだんであってけっしてごじゃうだんではない、と気がついたのは昨年11月19日のことでした。
初出の「新青年」大正12年4月号では、こうなっておりました。
すなわち、「ゴジヤウダン」と「
じゃ、初刊はどうなんだろう、ということが気になり、年末進行もようやく切り抜けた12月28日、名張市立図書館の蔵書を調べさせてもらいました。
と、驚くべし。
大正14年7月に春陽堂から出版された創作探偵小説集第一巻『心理試験』では、こんなことになっていました。
すなわち、「
常は、旧仮名だと、じゃうになります。
常識は、じゃうしき。
諸行無常は、しょぎゃうむじゃう。
常談をネット上の辞書で調べてみると──
じょう‐だん〔ジヤウ‐〕【常談】 の意味
出典:デジタル大辞泉
1 ありふれた話。日常の話。
2 「冗談1」に同じ。
「―をいってるうちに、自分でも空々しくなって」〈山本有三・波〉
ちなみに冗談は──
じょう‐だん【冗談】 の意味
出典:デジタル大辞泉
[名・形動]
1 遊びでいう言葉。ふざけた内容の話。「冗談を交わす」「冗談を真に受ける」
2 たわむれにすること。また、そのさま。いたずら。「冗談が過ぎる」
「―な女どもだ。みんな着物をかぶってくるは」〈滑・膝栗毛・六〉
ですから、「御冗談」ではなしに「御常談」と記し、これをデジタル大辞泉の「冗談1」の意であると主張すれば、ルビは「ごじやうだん」で問題ないわけですが、しかし「御常談」という表記のなんともしっくりこない感は否定できません。
それにそもそも、「御冗談」から「御常談」への修正が乱歩自身によってなされたものかどうか、その点もじつはよくわからないわけですが、しかし、後年の文庫本なんかであればともかく、なにしろ初めての著作なんですから、乱歩は校正刷りにしっかり目を通し、適宜修正を加えていたと判断すべきでしょう。
「二銭銅貨」における最大の修正は、初出の「インテリゲンチヤ」が「多少知識的な靑年」に書き換えられたことですが、これは乱歩による修正だとしか考えられません。
ですから、「御冗談」が「御常談」になったのも、やはり乱歩の意志にもとづく変更であると考えるべきではないかと思われます。
かりにそうであったとすれば、乱歩は間違いに気がつき、あるいは人からそれを指摘され、なんとかつじつまを合わせるべく「御常談」という表記を採用したことになります。
けど、やっぱ変なものは変ですから、ならば平凡社版全集はどうじゃろうか、と昭和6年6月に発行された『江戸川乱歩全集 第一巻』も調べさせてもらいました。
と、驚くべし。
こげなこつになっとりましたばい。
すなわち、「
なんかもう、無理矢理感ありまくりなわけですが、とにかくこんなことにされておりました。
しかし、ここまでやってるってことは、乱歩は「御冗談」が「ゴジヤウダン」ではないという事実に気がついていたのではないか。
だとすれば、あの註記はどうなるのでしょう。
〔註〕ゴジヤウダンは旧仮名遣い。全文新仮名遣いに改めたが、これは直せなかった。
この註記の初出は昭和31年11月の『犯罪幻想』だと思われますが、昭和21年に新仮名遣いが登場してちょうど十年、それでなくても忘れっぽかった乱歩の頭から、もはや「ゴジヤウダン」にまつわる記憶はすっかり消え去っていたのかもしれません。
そんなこんなで、本年もよろしくお願い申しあげます。
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